今日の産経ニュース(2/8分)(追記・訂正あり)

■【人口戦】日本の少子化は「人災」だった(中) 政府主導で「産むな殖やすな」 料理・編み物とセットで「計画出産」講習
http://www.sankei.com/premium/news/160208/prm1602080016-n1.html
1)単に「戦後長い間、政府が問題にしていたのは出産増による貧乏人の増加」でありだから出産調整に積極的だった
2)それでも長い間、日本では少子化など起きない時代だった
てだけの話です。1950年代の出産調整を「今の少子化の理由にする」など無茶苦茶です。
 つうか中絶なら「胎児も生命だ」として批判するのは分かりますが、「避妊まで敵視する」とは産経は何考えてるんでしょうか。「子どもを産まないセックスなど邪道」とでも言い出す気でしょうか。

 社員や妻の抵抗感を和らげるため、受胎調節の指導は「新生活運動」と呼ばれ、栄養料理の作り方や洋裁・編み物、家計簿の付け方、電気器具の取り扱い、美容体操や子供のしつけなど多彩な講習会とセットで実施された。

 認識として間違ってますね。「生活の近代化=新生活運動」であり新生活運動の一部が「受胎調整」という話です。「受胎調整がメインで受胎調整への忌避感を和らげるため、多彩な講習会がセットされた」という産経理論には何か根拠があるんでしょうか。
 ちなみにこの運動の影響で今でも埼玉、栃木、群馬(つまり北関東)では「葬儀の香典や結婚のご祝儀を安く済ませること」を俗に新生活方式、あるいは単に新生活といいます(以前、みのもんたの番組「ケンミンショー」でも北関東の面白い風習として紹介されていましたが)。ただ小生の経験では北関東以外の人に新生活方式、あるいは新生活と言ってもまず通じません。


■【野口裕之の軍事情勢】ロシアがソ連から引き継いだ毒殺史 日本の元外務省調査員や首相の長男*1にも魔手が
http://www.sankei.com/world/news/160208/wor1602080001-n1.html

 筆者が95年に追跡した事件には状況証拠すらなかった。日本の戦後最大のスパイ事件*2の発覚後、19年も経過して謎の死を遂げる元外務省調査員

どう見てもできの悪い「根拠レスの陰謀論」としか思えない書き出しですが、続きを見てみましょう。

73年3月、室井はモスクワ行き民間航空機内で不可解な死を遂げる。

 まあ、病死のわけですが急病死だったため陰謀論の余地があるわけです。しかし「モスクワ行きの飛行機内で病死」て小説「不毛地帯」のオチを連想しますね(なお、映画のオチはどうか知りませんが、唐沢寿明主演のフジテレビドラマのオチは実は小説とは違います。後で説明します)。
 結果的に、主人公・壱岐に「勝ち逃げされてしまう」ライバル「鮫島*3」は小説では近畿商事(伊藤忠がモデル)を辞め、シベリア抑留者慰霊をライフワークとし、モスクワに行くという壱岐に向かって、「あなたはシベリア帰りだから飛行機内で病死*4しないよう気をつけた方がいいですよ」という捨て台詞を残して去っていきます。失礼ながら鮫島があまり、かっこよくない。
 マジで壱岐が飛行機内で死んだらしゃれにならないし、一方死ななければそれはそれで鮫島の発言は完全に滑ってるわけです。どっちにしろかっこよくない。
 一方、ドラマ最終回の鮫島はこんな感じです(違法動画なんだろうなと思いながらユーチューブ動画を参照)。

鮫島(遠藤憲一
壱岐さん、石油に私がまんまと気を取られてる間にやりましたな。ユナイテッドモーターズ(GMがモデル)と千代田自動車(いすゞ自動車がモデル)を提携するなんて。私はこれからアメリカに飛んでフォーク社(フォードがモデル*5)会長と対策会議です。このままじゃ済みませんよ」
壱岐唐沢寿明
「そうですか」
鮫島
壱岐さんは辞めたと見せかけて私に奇襲を仕掛けるつもりでしょう。次は何が狙いですか」
壱岐
「鮫島さん、私はもう、あなたの世界とは無縁の人間です。」
鮫島
「私はだまされませんよ、あなたの考えは何から何まで分かってるんだ。まだ勝負はついていないぞ。壱岐正を倒せるのはこの鮫島だけだ」

 明らかにドラマの方が格好いい。まあ、それはともかく。

東京監察医務院*6の判定からはクモ膜下出血や脳内出血の症状。

だそうですから、急病死に疑惑を感じた遺族の要望からか、司法解剖がされたのでしょうが殺害の疑いなど、何もでなかったわけです。しかし「旧ソ連が、親ソ連派の室井が何らかの理由*7で邪魔になって検出が難しい特殊な薬物を使って暗殺したのでは」と言い出す産経です。まあ、そういう事を根拠レスで言い出せば何でも「謀殺」にできますよね(苦笑)。
 まあ百歩譲って仮に「特殊な薬物による謀殺」だとしても根拠がないんじゃどうにもならないわけです。

 近衛文麿*8・首相(1891〜1945年)の長男・文隆氏(1915〜1956年)も毒殺したとされる。ソ連側公表の「動脈硬化を発端とする脳出血と急性腎炎」は、到底信じ難い。戦後11年もの間、過酷な抑留・拷問に耐え、協力者要請を拒絶した若くハツラツとした貴公子が、敗戦・占領で虚脱した日本の指導者に迎えられる→生気を取り戻した日本に、ソ連収容所の表裏を知り尽くす首相が誕生*9…。こうした構図はソ連にとり最悪だった。「一服盛った」との有力観測は、この辺りより浮上する。

 またもや根拠レスの陰謀論です。近衛文隆の死がソ連発表通りかは疑問の余地があるのかも知れない。「酷い処遇をしたから死亡した」なんてことはソ連も認めたくはないでしょう。
 ただ「彼の政界入りを恐れたソ連の謀殺」なんて主張には何の根拠もないでしょう。つうか彼が帰国したとして「政界入り→首相、外相などの有力ポストに就任」なんてあり得たんですかね。ちなみに文隆が亡くなったときの首相は鳩山一郎*10で、その後は「石橋湛山*11岸信介*12池田勇人*13佐藤栄作*14(以下略)」です。彼が石橋、岸らをおさえて首相になったり、石橋、岸らに評価されて有力閣僚になったり、なんて事が本当にあり得たのか(それ以前に政界入りの意思があったか、あったとして政治家になれたかも疑問ですが)。

*1:暗殺だとしても近衛文隆は死亡時には「元首相の長男」です。

*2:いわゆるラストボロフ事件のこと。ただし人によっては石田博英自民党代議士(三木内閣運輸相、福田内閣労働相など歴任)、勝間田清一社会党委員長、伊藤茂社会党代議士(後に細川内閣運輸相)、山根卓二サンケイ新聞編集局長らの名前がレフチェンコによって「ソ連工作者」として暴露されたレフチェンコ事件を「日本戦後最大のスパイ事件」とする(なお暴露された側はレフチェンコの主張をデマと否定したが、山根はさすがに産経にいづらくなったのか退社に追い込まれている)。

*3:鮫島は東京商事(日商岩井がモデル)の有能なビジネスマンだが壱岐には勝てないまま終わるキャラとして描かれています

*4:もちろん「病死に見せかけたソ連の謀殺」と言う意味ですが

*5:なお鮫島は、東和自動車(マツダがモデル)とフォークの提携を実現させている。

*6:司法解剖をする機関

*7:ラストボロフ事件から大分時間が経っていますのでそれは関係ないでしょう。

*8:貴族院議長、首相を歴任。戦後自殺。

*9:その理屈だと伊藤忠商事会長、中曽根ブレーンに成り上がった「シベリア帰り」瀬島龍三はどうなるんですかね?。

*10:戦前、田中内閣書記官長、犬養、斉藤内閣文相

*11:吉田内閣蔵相、鳩山内閣通産相などを経て首相

*12:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相など歴任。戦後、自民党幹事長、石橋内閣外相を経て首相

*13:吉田、石橋内閣蔵相、岸内閣通産相などを経て首相

*14:吉田内閣郵政相、建設相、岸内閣蔵相、池田内閣通産相科学技術庁長官などを経て首相