今日の産経ニュース(9/1分)

■2日に日露首脳会談 安倍晋三首相がロシア経済担当相新設、世耕弘成*1経産相に発令 領土交渉加速狙う
http://www.sankei.com/politics/news/160901/plt1609010033-n1.html
 何で安倍が「ロシア経済担当相」なんてもんをつくるほどロシア・プーチン*2政権に肩入れするのか、さっぱりわかりませんが「在任中に北方領土問題が進展する」とでも思ってるんでしょうか?。そう思う理由はさっぱりわかりませんが。
 大体、世耕にこんな発令をしたところで世耕が岸田外相を無視してロシア問題で動けるわけもないし、意味あるんですかね?。どうせ発令するなら岸田外相に発令すべきではないのか。

【追記】
 正直小生はプーチンを「大変有能な人物」と思っています。
1)多選制限を逃れるため、「メドベージェフを一時、大統領にしながら」、彼が「プーチンに反逆しないよう」うまくコントロールしながら大統領に返り咲いたことといい 
2)ウクライナ問題で欧米の制裁を受けながらもクリミアへの影響力を保持し続けていることといい
3)シリア問題で米国のアサド政権打倒計画を挫折させたことといい
「それらの行為の是非はともかく」、どれ一つとして「並みの政治家」では困難なことだったでしょう。
 たとえば「我が国の安倍総理」なんぞにはどれ一つしてできる行為ではないでしょう。
 たとえば安倍に「いつまでも総理やってると批判されるから子飼いを総理につけて院政を敷こう」なんて「プーチン大統領によるメドベージェフ大統領擁立」的な事ができるのか。まず無理でしょう。
 「裏切られること」が怖くて安倍にはそんなことはできないし、実際裏切られるのが安倍でしょう。
 そんな「策士」プーチンにとって「北方領土問題解決の意志があるかのように装って安倍から経済支援を引き出し適当なところで『返還しない』と言い出す」なんてもうへのカッパ、朝飯前でしょう。
 そう言う危機感がどうも安倍に感じられないところが何ともかんとも。


■【海底資源 「燃える氷」の真相】(上)「海上原発」二兎追う中国 南シナ海の軍事化・メタハイ
http://www.sankei.com/life/news/160901/lif1609010008-n1.html
 メタンハイドレート(メタハイ)については「採掘費がやたらかかるので現時点では『石油、石炭、天然ガス』などにかわる資源として有望ではない」「今後も有望か疑問(採掘費が石油など他と比べて安くできると思えない)」「当面、実用化の見込みはない」という批判があります。「技術的に資源化が可能」なのと「それが経済的にペイするかどうか」は全然違う。「100万かけて、1万円のものを作る」ような馬鹿な事は「技術的に可能」でも誰もしないわけです。
 しかし、もちろん産経はそんな事は無視します。産経は石井吉徳氏が言う「メタンハイドレート・ムラ」の構成員なんでしょうか。
 メタンハイドレート有望論自体が怪しいのですがそれに『メタンハイドレートを中国が狙ってる』という「怪しげな反中国」をくっつけた怪しさ満点のアホ記事がこの記事です。たぶん中国の南シナ海東シナ海での振る舞いはメタハイ関係ないでしょうね。別に「実用化できるかどうか怪しい」メタハイを持ち出さなくても「石油や天然ガスの採掘」「漁業権」「国の面子」などで充分説明がつきますので。もちろん中国と南シナ海で領土争いをしてるフィリピンやベトナムもメタハイを理由に争ってるわけではないでしょう。

参考

http://www.alterna.co.jp/7097
■「メタンハイドレートは資源ではない」石井吉徳・元国立環境研究所長
(前略)
 楽観的な話ばかりがメディアに流される。既に利権構造化しているのであろうか、「メタンハイドレート・ムラ」が出来上がったようだ。
 もう止めにして欲しいものである、税を負担しつつ幻想を追う国民が哀れである。

■石井吉徳ブログ「メタンハイドレートにダマされるな」
http://oilpeak.exblog.jp/20280892/

隅田金属日誌
メタンハイドレートの採掘コストはどんなものかね
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-991.html
メタンハイドレート詐欺からは手を引いたほうがよい
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1179.html
■(ボーガス注:採掘コストの点で現実的でないと言う意味で)メタンハイドレート詐欺に似た海底レアアース
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1617.html


■【海底資源 「燃える氷」の真相(中)】韓国が竹島問題すり替え メタンハイドレートと日本の領土的野心結びつけ危機感あおる
http://www.sankei.com/world/news/160902/wor1609020004-n1.html

 (ボーガス注:尖閣周辺、竹島周辺だけでなく)北方領土の周辺にもメタハイは存在しているとみられる。ロシアの有力経済紙、コメルサントも13年、クリール諸島(千島列島と北方領土)の近海にメタハイがある可能性が高いと報じた。
 「ロシア側が北方領土を軍事要塞化させるとか、メタハイの調査をするとか、資源開発の拠点にするとかいろいろ聞こえてくる」と(ボーガス注:第二次安倍内閣総務相を務めた)新藤氏は言う。
 竹島でも北方領土でも、メタハイ開発という主権侵害は許されない。日本は強靱な外交を忘れてはならない。(編集委員 斎藤浩)

 昨日は尖閣、今日は竹島北方領土です。メタハイ(メタンハイドレート)をまじめに考えてるというよりはどう見てもただナショナリズムを煽っているだけです。恐らく領土問題などなくてもメタハイの開発はすべきではない。経済的合理性はないでしょう。


■【海底資源「燃える氷」の真相(下)】「日の丸海洋資源」のメタンハイドレート開発へ正念場 「資源貧国」の未来は
http://www.sankei.com/premium/news/160903/prm1609030031-n1.html

 メタハイに関する著書がある科学技術ジャーナリスト、石川憲二氏*3(58)はこう指摘する。
「石油・天然ガスを輸入した方が安ければ元が取れない。開発コストはどうするのか。こういった問題の解決には時間がかかる。商業化は最速で30年後、もしかしたら50年以上かかるかもしれない」

 結局メタンハイドレート(メタハイ)なんてその程度の話のわけです。「実用化に30年以上かかるかも知れない」なんてもんに民間企業は手を出さないでしょう。そうなると「政府機関(後で名前が出てくる独法のJOGMECなど)がやるしかない」でしょうが「税金で研究をやっても実用化で元が穫れるか分からない、税金の無駄遣いになるかも知れない」なんてとんでもない代物がメタハイです。何度も書きますが「やらない方がいい」んじゃないか。

 愛知・三重県沖で25年3月、経済産業省から委託された石油天然ガス・金属鉱物資源機構JOGMEC)が海底からのメタンガスの産出試験に初めて成功した。「砂層型」から採取されたガスが船上で赤々と燃える映像が世界に流され、メタハイ開発のトップランナーを印象づけた。

 「技術的に成功したこと」は「経済的にペイすること」を意味しませんし、この産経記事ですら「予定していたメタハイ産出量に比べて実際のメタハイ産出量が少なかったこと」を認めています。先行き不透明な技術としか言い様がない。


■【産経抄築地市場から豊洲市場へ 移転の裏にはまったく違う種類の怪物がうごめいているようだ 9月1日
http://www.sankei.com/column/news/160901/clm1609010003-n1.html
 当然ながら「移転計画の裏に怪物」、つまり利権を漁ろうとする政財官界の動きがあるなら「移転計画を始めた石原*4から、猪瀬、舛添*5に至るまでの歴代知事」もその「利権あさりの一員だったのではないか」という話になりますが、もちろん産経は「石原万歳」なのでそう言う話はしません。
 また移転論に当初から批判的だった共産党などを褒めたりもしません。
 ただただ、「移転延期(白紙撤回ではない)」を表明した現知事・小池*6も認めます。問題は「日本からの影響が全くなかったのか」「米国の圧力で米国案をそのまま、いやいや飲まされたのか」つうことです。
 そうではなく国会への憲法案提出前に、日本政府側からも米国側にさまざまな働きかけがあったし、国会審議で変わったところもある。たとえば有名な話ですが当初の米国案では議会は一院制でした(まあ一院制支持と言うよりは、非民主的な貴族院を廃止したかったんでしょう)。日本の反対で二院制が維持されたわけです(もちろん貴族院は廃止され参議院になった)。他にもこうした「米国案の変更」は色々あったかと思います。
 「米国の案をそのまま渋々、いやいや飲まされたかどうか」と言う意味で見れば、「そのまま飲まされてない」ので日本国憲法は「単純に米国製と言える代物ではない」。最近、■東京新聞『「9条は幣原*7首相が提案」マッカーサー、書簡に明記 「押しつけ憲法」否定の新史料』(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201608/CK2016081202000116.html)で報じられたように、九条の提案者が幣原首相かどうかはわかりませんが、いずれにせよ「日米合作」とでも言うべきでしょう。
 また米国案(GHQ案、マッカーサー案)がそもそも「鈴木安蔵憲法学者)、高野岩三郎*8統計学者)らの憲法研究会」の憲法案など日本の民間憲法*9を参考にしている点にも注意が必要です。阿比留らウヨが非難する「天皇象徴制(天皇主権の廃止)」は「憲法研究会案がルーツ」というのが通説です。
 この辺りは、古関彰一『憲法九条はなぜ制定されたか』(2006年、岩波ブックレット)、『日本国憲法の誕生』(2009年、岩波現代文庫)、小西豊治『憲法「押しつけ」論の幻』(2006年、講談社現代新書)などを読めば詳しい事が分かります。
 第二に「日本国憲法憲法九条や天皇象徴化)」には日米両国の保守が「東京裁判などとセット」で「日本は戦争を放棄し、天皇も象徴にして民主的な平和国家を目指すから昭和天皇は処罰も退位もしなくていい」「日本は民主的な平和国家を目指すから戦争の賠償金はできるだけ安く」という宣伝として使われたという面があることに注意が必要です。少なくとも制定当時において保守派(例:吉田茂*10首相)は極右を除けば「そう言う思惑から」天皇象徴化や九条に反対なんかしてない。もちろん多くの保守派は「制定から10年くらい経ってほとぼりが冷めたころに九条を改憲する気だった」わけですが(ただそれは国民の支持が得られず挫折した)。この辺りも既に紹介した古関本、小西本を読めば詳しい事が分かるかと思います。
 第三にGHQ統治下の法律は憲法に限らず大なり小なり米国の影響はあります。しかし、阿比留のようなウヨが米国製云々というのは憲法だけです。
 第四に問題は「どこが作ったか」ではなく「内容」ではないのか。阿比留らの右翼的改憲論が長年、国民に支持しされなかったのはそう言うことです。だから「改憲派は長いこと、国会の2/3を占めることができなかった」。だから護憲政党社会党が最大野党として長く存在し続けたし、自民党ですら三木武夫*11のようなハト派*12は「少なくとも明文改憲には消極的だった」わけです。
 勿論こうした指摘を「原案はマッカーサーが作ったから米国製といって何が悪い、米国製だから押しつけだ、自主憲法が必要だといって何が悪い。護憲派はすり替えをしている」の一言で片付ける暴論が阿比留です。

参考
■マガジン9〜この人に聞きたい『古関彰一さんに聞いた』その1〜
http://www.magazine9.jp/interv/koseki/koseki.php

*1:第一次安倍内閣首相補佐官(広報担当)、第二次安倍内閣官房副長官を歴任した安倍のお気に入り。

*2:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*3:著書『海底資源:海洋国日本の大きな隠し財産』(2012年、オーム社)など

*4:福田内閣環境庁長官、竹下内閣運輸相、都知事、維新の会共同代表、次世代の党最高顧問など歴任

*5:第一次安倍、福田、麻生内閣厚労相

*6:小泉内閣環境相、第一次安倍内閣防衛相、自民党総務会長(谷垣総裁時代)を歴任)を褒め「小池の政敵」とされる「都議会のドン、自民党都連のドン」こと「内田都議会議長、前自民党都連幹事長」を非難するだけです。実にバカバカしい。それとも産経は今後は都知事を辞めて以降、政治力の衰退が激しい「水に落ちた犬」石原慎太郎の批判を始めるんでしょうか。 ■【阿比留瑠比の極言御免】「日本国憲法は米国製」を認めぬ護憲派の倒錯 論点すり替え陳腐な反論 http://www.sankei.com/premium/news/160901/prm1609010004-n1.html  やれやれですね。  先ず第一に「米国の影響があった」ということは勿論護憲派((小生も護憲派の端くれですが

*7:戦前、加藤高明、若槻、濱口内閣で外相。戦後、首相、衆院議長を歴任。

*8:大原社会問題研究所所長、NHK会長、日本統計学会初代会長、社会党顧問を歴任。

*9:もちろんこうした案はGHQとは直接の関係はありません。

*10:戦後、東久邇、幣原内閣外相を経て首相

*11:片山内閣逓信相、鳩山内閣運輸相、岸内閣経済企画庁長官(科学技術庁長官兼務)、池田内閣科学技術庁長官、自民党政調会長(池田総裁時代)、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣副総理・環境庁長官などを経て首相

*12:三木も含め、自民党ハト派の多くは社会党共産党と比べれば「充分右」なので過大評価は禁物ですが。