今日の産経ニュースほか(9/6分)

■浅井基文*1ブログ「日露領土問題:プーチン*2発言」
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2016/841.html

 日露首脳会談を前に9月2日、ロシアのプーチン大統領は、ブルームバーグ通信社との単独インタビューに応じ、日露領土問題に関する質問に答えました。日本のメディアでも紹介されましたが、プーチン発言の特に重要な(と私には思われる)部分については何故か報道されていませんので、以下では、ロシア大統領府WS(英文版)に基づいて、その発言の詳細を紹介します。
(中略)
(質問)
(安倍首相のウラジオストック訪問に関して)実質的な経済協力、その拡大との見返りで千島諸島について取引を行う用意があるのか。
(回答)
 日本との平和条約締結はカギとなる問題であり、日本の友人とともに解決を見つけたいと思うが、領土について取引はしない。1956年に条約*3に署名し、驚くことに両国で批准された。しかし、その後日本は(ボーガス注:二島返還で合意という)その履行を拒否し、それを受けてソ連も、条約の枠組みの範囲で到達されたすべての合意を無効とした。
 数年前、日本側は問題の議論を再開することを我々に打診してきたので、我々は(中略)会合を行った。過去数年間、我々ではなく、日本側の意向で接触は事実上凍結されてきた。現在、相手側はこの問題についての協議を再開する熱意を表明している。それは、いかなる形の(ボーガス注:領土の)交換または売り渡しとも関係がない。それは、いずれの側にも不利益にならず、いずれの側も征服されたとかやられたとか考えることのない解決の探究である。
(質問)
 その取引には今どれほど近づいているか。(ボーガス注:日ソ国交正常化がされた日ソ共同宣言当時の)1956年当時よりも近づいているか。
(回答)
 1956年よりも近づいているとは思わないが、我々は対話を再開したし、両国の外相及び次官級の専門家がこの仕事を強化することにも合意した。当然のことだが、(中略)解決を見出すためにはよく考えて準備することが必要であり、その解決は、ダメージを生むという原則に基づくものではなく、両国間の長期にわたる結びつきを発展させる条件を創造するという原則に基づくものである必要がある。
(質問)2004年、貴下は(ボーガス注:中ソ国境紛争の解決において)タラバロフ島を中国に引き渡したが(ボーガス注:北方領土でも同じ事がなされるのか)。
(回答)
 我々は何も手放したことはない。これらの地域は係争があったのであり、中国との間で交渉してきた。強調するが40年にわたってだ。そして、最終的に合意にたどり着いた。(合意では)領土の一部がロシアに割り当てられ、他の部分*4が中国に割り当てられたのだ。
 この点が非常に重要なのだが、この合意は、ロシアと中国がその時までに非常に高度な信頼関係を実現していたことで可能になったということだ。もし我々が日本との間でも同じレベルの信頼を達成するならば、なんらかの妥協を達成することは可能かもしれない。
 しかし、日本の歴史に関連する問題と我々の中国との交渉との間には基本的な違いがある。それは何か。日本の(ボーガス注:北方領土)問題は第二次大戦から帰結するものであり、その結果に関する国際諸文書に定められているということだ。それに対して、中国との国境諸問題に関する議論は第二次大戦その他のいかなる軍事紛争とも関係がない。

 これは浅井氏が言うようにどう見ても「北方領土交渉は日本の四島返還要求実現で成立しそうにない(二島返還ですら実現するかどうか)」でしょう。
 なにせインタビュアーが「1956年と今とどちらが解決に近づいてるか」と聞いたら「今の方が近づいているとは思わない」、「中国にタラバロフ島を渡したようなことはありうるのか?」と聞いたら「中露と日露と関係が違うから単純に比べないで欲しい」です。
 浅井氏が言うようにまさに

 日本のマス・メディアが政府・外務省の垂れ流す情報を鵜呑みにして、「ロシアが返還に応じる可能性がある」かの如き報道一色に染まっている現状は本当に危ういと思います。もちろん、日本のマス・メディアの「怪しさ」は今に始まったものではないし、この問題だけに限ったことではないのですが。

でしょう。
 プーチンの態度も浅井氏が言うように

極東開発をロシア経済再興の柱の一つに据えているプーチンとしては、日本の経済協力を渇望していることは間違いありません

ということで安倍をうまく利用しているに過ぎないでしょう。北朝鮮問題では散々「安易に北朝鮮支援するな」つうウヨ連中が「ロシアに安易に経済支援するな」とは言わずにこの件では黙りなのも実におかしな話です。例の大森勝久氏(http://1st.geocities.jp/anpo1945/)辺りは「領土問題を軽視してプーチンに媚びている」云々と散々安倍を罵倒するでしょうけど(苦笑)。
 安倍が
1)プーチンの策謀を能天気にも理解していないのか
2)理解した上でプーチンと外交でやり合って勝てると能天気にも思ってるのか
3)理解した上で「別に取り返せなくてもいい、話題づくりになって支持率が上がればいい。アベノミクスも限界に来てるし何か話題づくりが必要なんだ!」程度の事しか思ってないのか*5
はともかく、安倍の態度は非常に問題だと思います。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160904/1472958341
 (ボーガス注:領土返還の確かな見込みもないのに、ウクライナ問題で欧米の制裁を食らってるプーチンにすり寄るという、欧米の反発を買いかねない愚行をしてる安倍は)どうしようもないね。(ボーガス注:リオ五輪直後の共同通信世論調査に寄れば、リオ五輪日本勢活躍に影響された瞬間風速的なご祝儀相場*6でいずれ落ちるだろうが)こんなの*7を日本国民の62%が支持してるってわけだ。

つうid:kojitaken氏の嘆きは小生も同感です。


【ここから産経です】
プーチン露大統領、領土問題で歩み寄り促す 「日ソ共同宣言」めぐり自説を展開 経済協力8項目は高く評価
http://www.sankei.com/world/news/160906/wor1609060009-n1.html
 何だか「ロシアが歩み寄ってもいい」といってるかのようなプーチンの物言いですがはっきりそう言ってるわけではない。態度は曖昧です。
 プーチンが「日ソ共同宣言」を評価したというのを「日本政府にどんなに都合良く解釈したところ」で「日ソ共同宣言は二島返還論の立場」です。四島一括返還論の立場に立てば手放しで喜べる発言じゃありません。もちろん産経や日本政府が従来の立場を改めて「二島返還」の立場に立てば話は別ですが「二島返還完全決着論」はもちろん「二島返還で完全決着ではない二島先行返還論」ですら日本政府や産経に採用する意志はあるんでしょうか?。ないように思いますが。それを見込んでのプーチン発言ではないのか? 

*1:元外務官僚。退官後、日本大学法学部教授、明治学院大学国際学部教授、広島市立大学広島平和研究所所長を歴任。著書『日本外交:反省と転換』(1989年、岩波新書)、『どこへ行く日本:湾岸戦争の教訓と外交の進路』(1991年、かもがわブックレット)、『外交官』(1991年、講談社現代新書)、『新しい世界秩序と国連』(1991年、岩波セミナーブックス)、『私の平和外交論』(1992年、新日本出版社)、『PKOと日本の進路』(1992年、ささら書房)、『国家と国境』(1992年、ほるぷ出版)、『「国際貢献」と日本』(1992年、岩波ジュニア新書)、『新保守主義』(1993年、柏書房)、『「国連中心主義」と日本国憲法』(1993年、岩波ブックレット)、『国際的常識と国内的常識』(1994年、柏書房)、『大国日本の選択』(1995年、旬報社)、『非核の日本・無核の世界』(1996年、旬報社)、『茶の間で語りあう新ガイドライン』(1997年、かもがわブックレット)、『新ガイドラインQ&A』(1997年、青木書店)、『平和大国か軍事大国か』(1997年、近代文芸社)、『中国をどう見るか?』(2000年、高文研)、『集団的自衛権日本国憲法』(2002年、集英社新書)、『戦争する国しない国』(2004年、青木書店)、『13歳からの平和教室』(2010年、かもがわ出版)、『ヒロシマと広島』、『広島に聞く・広島を聞く』(以上、2011年、かもがわ出版)、『すっきりわかる!集団的自衛権』(2014年、大月書店)など。

*2:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*3:日ソ国交が回復された日ソ共同宣言のこと(当時は鳩山一郎内閣)。ソ連との国交が回復したことによりソ連の拒否権発動を恐れる必要がなくなり、1956年に日本の国連加盟が実現した。

*4:タラバロフ島のこと

*5:安倍だと1)〜3)全てあり得ると思います。

*6:もちろん「安倍の功績でないこと」で上がるのは非常におかしいですが今の日本ではそう言う常識は通用しないようです。

*7:無論安倍のこと