■「孔子学院はシャープパワー」 全米民主主義基金副会長のクリストファー・ウォーカー氏インタビュー
https://www.sankei.com/world/news/180426/wor1804260003-n1.html
まあ孔子学院に悪口雑言て非常識にもほどがありますね。要するに「全米民主主義基金(NED)=米国版国家基本問題研究所」「ウォーカー氏=米国版・産経文化人(櫻井よしこ・国家基本問題研究所理事長や田久保忠衛・日本会議会長など)」なんでしょうけど。
それにしても「シャープパワーて何やねん?」ですね。
https://www.tbsradio.jp/227727
忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月〜金、6:30-8:30)8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」。
全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さん*1の「雑学コラム」!
2月22日(木)は「世界に登場してきたシャープパワー」
「シャープパワー」について紹介したいと思います。
簡単に説明すれば、相手国の社会制度や文化伝統などを鋭利な、すなわちシャープな刃物で切り裂くように分断し、自国に有利な状態を作る戦略のことです。
去年11月に、アメリカの研究機関「全米民主主義基金(NED)」という組織の2人の研究者が、中国とロシアという独裁(オーソリタリアン)国家の戦略をシャープパワーと名付けた論文を発表し、それを欧米のメディアが取り上げるようになり、注目されるようになりました。
(中略)
未来学者のアルビン・トフラー*2、カーター大統領の特別補佐官であったズビグニュー・ブレジンスキー*3、ハーバード大学の政治学者ジョセフ・ナイ*4などの見解が有名ですが、要約すれば、冷戦構造が崩壊するまでは、「軍事力(ハードパワー)」が国力であったが、70年代以後の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代は「経済力(エコノミックパワー)」が重要でした。
しかし、90年代のバブル経済の崩壊とともに、ジョセフ・ナイが提唱した「文化力(ソフトパワー)」が重要だと言われるようになりました。ソフトパワーは自国の文化や制度を外国に浸透させ、友好的な関係を構築するという戦略で、その本質は魅力(アトラクティブネス)と説明されています。これは人材、物資、資金、情報などを自国に有利になるように他国に提供したり、他国から受け入れるということです。
その影響で登場したのがイギリスの「クール・ブリタニア」や日本の「クール・ジャパン」で自国の文化を積極的に海外に売り出すということでした。ところが、最近になり、中国とロシアという独裁国家の新しい戦略が登場し、これを冒頭に紹介した研究機関の研究者が「シャープパワー」と名付け、話題になりはじめたというのが現状です。
といわれても意味がよくわかりません。全然説明になっていない。
孔子学院の何が「分断」なのか。まあ、「親中派と反中国派」は分断されるかもしれませんが、それ「相手国の社会制度や文化伝統などを鋭利な、すなわちシャープな刃物で切り裂くように分断」つう話じゃないでしょう。
結局「違法でも不当でも何でもない行為」に言いがかりをつけるために「発明された概念」がシャープパワーにすぎないんじゃないか。違法、不当な行為ならそれこそ「これこれこういう点が違法で不当です」といえば済むことで、シャープパワーなんて言う必要ないですから。シャープパワーなんて言われても、こちらが想像するのは「家電メーカーのシャープ」「シャープペンシル」なんですが。
2010年のノーベル平和賞は中国の人権運動の活動家で何度も投獄された経験があり、当時も獄中にあった劉暁波氏*5に贈られ、ノルウェーのノーベル委員会は劉氏の釈放を中国に求めました。
これはノーベル賞の歴史上、中国在住の中国人として初めての受賞で、かつ獄中にあった人物に授与した最初の例でした。
「中国在住の中国人として初めての受賞」
まあ中国人の定義にもよるでしょうが、例えば「中国人に該当すると理解できる劉以前の受賞者」の中では「1989年平和賞受賞者のダライ・ラマ」はインド在住ですし、「2000年文学賞受賞者の高行健*6(ただし受賞時はフランス国籍に帰化)」はフランス在住です。
なお、その後「中国在住の中国人の受賞」としては「2012年文学賞の莫言*7」「2015年医学・生理学賞の屠ユウユウ」がいます(ウィキペディア「中国人・華人のノーベル賞受賞者」参照)。
「獄中にあった人物に授与した最初の例」
あれ、サハロフ(1975年の平和賞、ソ連)は、アウン・サン・スーチー(1991年の平和賞、ミャンマー)は、マンデラ(1993年の受賞、南アフリカ)は?、と思うところですが、彼らは「迫害されてても軟禁で投獄じゃない(サハロフやスーチー)」「投獄されていたが、受賞時点では釈放(マンデラ)」などといったことのわけです。
しかし、中国は「内政干渉は許さない」とか「ノーベル平和賞は西側の利益の政治的な道具である」などと強硬に反発しただけではなく、ノルウェーから輸入していた養殖サーモンの輸入制限をするなど経済制裁を実施。
ノルウェーは新政権のソルベルグ首相が外務大臣と貿易産業大臣を伴って、去年4月に中国を訪問して習近平*8国家主席に面会し、「今後、中国の核となる問題については批判しない」という声明に署名して、ようやく関係が修復されました。
エコノミックパワーを利用して、自国の制度や文化を押し通すとともに、相手国の制度や文化を切断したシャープパワーというわけです。
id:Mukkeさんが失言したあげく、はてなブログからトンズラする羽目になった「ノルウェーに霞を食えとはいえない」案件ですね。
それはともかく、自らの要求を通すため、圧力を掛けるなんてのは中国以外もやってることです。
だったらトランプの報復関税も「エコノミックパワーを利用したシャープパワー」なのか?。「パレスチナのユネスコ加盟を認める限り、ユネスコ分担金は一円も払わない。それが嫌ならパレスチナ加盟を撤回しろ(最近はユネスコ脱退論まで台頭)」つう米国政府のイスラエル寄りの立場も「エコノミックパワーを利用したシャープパワー」なのか?。
実際にはさすがにやらなかったとはいえ「南京事件ユネスコ記憶遺産登録」時に日本ウヨから出てきた「ユネスコ分担金支払い停止や脱退論」も「エコノミックパワーを利用したシャープパワー」なのか?。
「中国やロシアの時だけシャープパワー呼ばわり」なら既にシャープパワーという概念は概念として「ただの中国、ロシアたたきでしかない政治的偏見まみれのゴミ概念」でしかないでしょう。
つうかこれのどこが「相手国の制度や文化を切断したシャープパワー」なんでしょうか?。そしてこんな話は「文化力(ソフトパワー)」と全く関係ない。
大体、ソフトパワーなんて冷戦終了以前からそれなりに重視されていたでしょうに。
「中国のいわゆるパンダ外交」なんてのはその一例の訳です。まあ他にもいろいろあるでしょうが。
全米民主主義基金の論文が指摘した、もう一つの国がロシアですが、そのシャープパワーはアメリカの大統領選挙の時に発揮されました。
今月16日にアメリカのロバート・モラー特別検察官が13人のロシア人と、3社のロシア企業を起訴しました。容疑は先の大統領選挙で、アメリカ市民を装って、ソーシャルメディアの何百というアカウントを使って架空のオピニオンリーダーを作り出し、クリントン候補を落選させるための情報を発信したというものです。
中国のケースと違い、政治的、道義的妥当性以前に明らかな違法行為ですね。違法行為(ロシア)でも「違法でない行為(中国、典型的には孔子学院)」でも何でもかんでもシャープパワー呼ばわりすることはかえって「違法行為の違法性を矮小化すること」にもなりかねないでしょう。
つうか「違法行為と違法でない行為」をごっちゃにすることで「違法でない行為を違法であるかのように印象操作するための政治的偏見まみれのゴミ概念=シャープパワー」ではないのか。
そしてこれまたこんなことはソフトパワーと全く関係がない。
■福田元首相、文書改竄で政府を批判 「今は役所が考えず、政府が命令した通り」
https://www.sankei.com/politics/news/180426/plt1804260002-n1.html
このタイトルでは福田氏が「文書改竄は政府に言われるがままに官僚がやったのだろう」といったように読めますね。実際本文読んでもそういう印象ですし、実際そう福田氏はいってるのでしょうが、これをそのまま紹介する「安倍応援団のはずの」産経の気持ちは今ひとつ良くわかりません。安倍を見放しつつあるのか。まあ福田氏が「安倍を見放しつつある」のは間違いないでしょうが。
■【主張】福田次官の辞任 うみ出し切る機会失った
https://www.sankei.com/column/news/180425/clm1804250002-n1.html
事態の早期収束*9を妨げているのは、事後対応を誤り続ける財務省であり、閣議決定で福田氏の辞任を許した政府なのではないか。
安倍の名前を出してないとはいえ「事態の早期収束を妨げているのは、閣議決定で福田氏の辞任を許した政府」ですから、一応これは安倍批判と理解していいのでしょうね。
福田氏の個人的犯罪をなぜかかばい続ける安倍には産経もさすがにつきあきれないというところでしょうか。
■自民・森山裕*10国対委員長、内閣不信任案提出なら「解散も選択肢」
https://www.sankei.com/politics/news/180425/plt1804250007-n1.html
牽制してるつもりなのでしょうがおそらく解散はできないでしょうね。過半数割れはしないにしても議席減は確実ですから。
安倍の個人的疑惑でそういう無茶苦茶な解散はしづらいでしょう。一方で、石破*11元幹事長、石原*12元幹事長、岸田政調会長(前外相)などは安倍の居直りを招きかねない「解散」は避けたいでしょう。
議席減は確実にせよ過半数割れまで行くかは怪しく、過半数割れしない場合、非常識な安倍が居直りかねないからです。
一方で野党も当面は不信任案提出はしないのではないか。それは別に解散を恐れて、ということよりも、「議席数的に、自民から造反者が出なければ残念ながら可決の見込みがない」し、一方で「柳瀬証人喚問要求」など、「不信任案を仮に今後出すにしても」、その前に「安倍の問題点を天下にさらすためにやっておきたいこと」がいろいろあるからです。
それにしても「審議拒否が続けば」でなく「不信任案が出れば」というのが興味深い。素直に考えれば「審議拒否では解散理由にしづらい」とか「そんなことを言っても審議拒否は撤回されずかえって反発で拒否が長期化しかねない」とか理解していると言うことでしょう。
自民党の二階俊博*13、公明党の井上義久*14両幹事長の会談に同席後、東京都内で記者団に語った。両氏の会談で衆院解散が話題にのぼったわけではないとも説明
森山発言が事実ならば反対はしないまでも「大義なき解散は適切でない」として賛同が得られなかったと言うことでしょう。
■生活保護改正法案を可決、衆院厚労委 野党欠席のまま
https://www.sankei.com/politics/news/180425/plt1804250009-n1.html
野党側は後発薬の原則化に対し、「差別的取り扱いだ」と反発。生活保護基準や児童手当を拡充する「子どもの生活底上げ法案」(通称)を提出し、対案型の姿勢を見せた。しかし財務省次官のセクハラ疑惑や、過労死があった野村不動産に対する特別指導などを理由に急遽、欠席戦術に転じた。
こうなると欠席戦術が適切か、やや疑問ですね。もちろん出席しても強行採決をしてくる危険性はありますが。
■【浪速風】“寸止め”できない麻生*15さん、危機管理は落第…最強官庁の辞書に「反省」の言葉はないのか(4月25日)
https://www.sankei.com/west/news/180425/wst1804250049-n1.html
また余計なひと言を発した。辞任した福田淳一前財務事務次官のセクハラ問題について、「はめられて訴えられているんじゃないかとか、世の中にご意見はいっぱいある」。
調査結果が出るまで退職金の支払いを当面留保する−まででよかったのに、“寸止め”が身についていないようだ。
▼企業などが不祥事を起こした時に、「調査もしていないのに事実を否定する」「楽観的な予測を口にする」「最悪は逆ギレする」は事態を悪化させる。トップをはじめ財務省の危機管理はお粗末というしかない。
さすがの産経も麻生をかばうつもりはないようですが、麻生を更迭しない安倍*16を非難できないあたりは所詮産経です。
*1:東京大学工学部建築学科卒業。東京大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了。余暇開発センター主任研究員、名古屋大学工学部建築学科助教授、東京大学生産技術研究所客員教授を経て、1991年から2003年まで東京大学工学部建築学科教授(2003年に定年退職し名誉教授)。著書『縮小文明の展望』(2003年、東京大学出版会)、『ヤオヨロズ日本の潜在力』(2004年、講談社プラスアルファ新書)、『水の話:人類の必須の資源の物語』(2011年、遊行社)、『先住民族の叡智』(2013年、遊行社)、『日本が世界地図から消滅しないための戦略』(2015年、致知出版社)、『転換日本:地域創成の展望』(2017年、東京大学出版会)、『幸福実感社会への転進』(2017年、モラロジー研究所)など
*2:著書『パワーシフト:21世紀へと変容する知識と富と暴力(上)(下)』(1993年、中公文庫)など
*3:カーター政権で国家安全保障担当大統領補佐官。著書『地政学で世界を読む:21世紀のユーラシア覇権ゲーム』(2003年、日経ビジネス人文庫)など
*4:カーター政権国務副次官、クリントン政権国防次官補など歴任。著書『ソフト・パワー:21世紀国際政治を制する見えざる力』(2004年、日本経済新聞社)、『スマート・パワー:21世紀を支配する新しい力』(2011年、日本経済新聞出版社)、『アメリカの世紀は終わらない』(2015年、日本経済新聞出版社)など
*5:著書『現代中国知識人批判』(1992年、徳間書店)、『天安門事件から「08憲章」へ』(2009年、藤原書店)、『「私には敵はいない」の思想』(2011年、藤原書店)、『最後の審判を生き延びて』(2011年、岩波書店)など
*6:著書『ある男の聖書』(2001年、集英社)、『霊山』(2003年、集英社)、『母』(2005年、集英社)
*8:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席
*9:建前論ですら「真相の解明」「セクハラ被害者の救済」「正義の実現」などと書けないあたり、「事態の早期収束」にすぎないあたり、実に産経らしい愚劣さです。
*11:小泉内閣防衛庁長官、福田内閣防衛相、麻生内閣農水相、自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任
*12:小泉内閣国交相、自民党政調会長(第一次安倍総裁時代)、幹事長(谷垣総裁時代)、第二次安倍内閣環境相、第三次安倍内閣経済財政担当相など歴任
*13:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相、自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)などを経て幹事長
*15:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て首相。現在、第二〜四次安倍内閣副総理・財務相