今日の産経ニュース(11/10分)

■【話題の本】『日本は誰と戦ったのか』江崎道朗著*1「歴史の再検証」で成長発展へ
https://www.sankei.com/life/news/181110/lif1811100019-n1.html

 日本を開戦に追い込み、東欧とアジアの共産化に手を貸した米ルーズベルト民主党政権は、ソ連工作員に乗っ取られていた。

 馬鹿馬鹿しくて話にならないですね。
 まず第一に太平洋戦争を開戦したのは日本です。それで何が「ルーズベルト政権ガー」なのか。
 ルーズベルト政権は確かに日本に厳しい態度をとりましたがそれは「戦争したかったから」ではなく「蒋介石政権打倒という日本の戦争目的を蒋介石支持者として絶対に容認できなかったから(日本がその方針を撤回しない限り経済制裁で締め上げるが日本が撤回しさえすれば締め上げることはやめる)」にすぎません。
 そして第二に日本が宣戦布告したのは米国だけでなく英国(英国領だったマレー侵略)やオランダ(オランダ領だったインドネシア侵略)にも宣戦布告しています。
 第三に「東欧とアジアの共産化」は結果論に過ぎません(まあ、ほとんどすべての国が共産化した東欧はともかくアジアについていえば中国、北朝鮮ベトナムラオスの4カ国しか共産化してませんが)。
 「日本のアジア侵略」「ナチドイツの東欧侵略」に対抗するのに「ソ連に力を借りなければ勝てない」との判断のもと共闘したら、結果的にソ連の影響力がアジアと東欧に及んだに過ぎません。
 そもそも「ナチドイツと日本が侵略しなければソ連の力を借りる必要もなかった」という意味では全く因果関係が逆です。
 また、結果論で「陰謀云々」といっていいなら、例えば「本能寺の変の後、秀吉が天下人になったから変の黒幕は秀吉*2」「朴チョンヒ暗殺で全斗煥が実権を握ったから朴暗殺の黒幕は全斗煥」などともいえてしまいます。
 もちろん彼らは黒幕ではなく、事態を自分に都合よく利用しただけですが。通説的見解はどちらも信長や朴による粛清を恐れた実行犯(明智光秀KCIA部長・金載圭)による単独犯行説です。
 第四にむしろ日本は「東南アジア侵略(米英オランダとの対立が不可避)」を順調に進めるために「日ソ中立条約」を結びソ連との対決を避ける方向に結局動いています(その後、関特演発動などの問題はありますが、基本、ソ連との戦争は回避され続けました)。
 まあ、ハルノート*3の立案者だったとされるホワイトが「ソ連に好意的だった」という事実はあります。ただし彼はソ連スパイではありませんし、基本的に「ホワイトも含めて」当時の米国政府関係者が日本に厳しかったのは「共産主義云々」ではありません。
 当時の中国政府は蒋介石であり、日本への批判は「蒋介石政権を転覆しようとする日本は許せない」というものであり共産主義云々は全く関係ありません。
 日本が蒋介石政権転覆を諦め、蒋介石と和平しさえすれば、米国にとって日本に対し石油や鉄くずの禁輸措置を執る理由はないし、当然日米開戦もありませんでした。
 そして「蒋介石との和平」は共産主義の陰謀云々という話ではもちろんありません。
 もちろん当時の日本は蒋介石をなめていたが故に和平工作どころか、たとえば汪兆銘工作を仕掛けるわけですが。

*1:著書『コミンテルンルーズヴェルトの時限爆弾:迫り来る反日包囲網の正体を暴く』(2012年、展転社)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(2016年、祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(2016年、青林堂)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(2017年、PHP新書)、『日本は誰と戦ったのか:コミンテルンの秘密工作を追求するアメリカ』(2018年、KKベストセラーズ)、『日本占領と「敗戦革命」の危機』(2018年、PHP新書

*2:ご存じの方もいるでしょうがそういう絵空事を描いた娯楽時代小説もあります。もちろん「事実は事実、虚構は虚構」と区別すれば、虚構の世界では「黒幕は秀吉」でかまわないわけです。

*3:米国相手に無謀な戦争をするくらいならハルノートを受諾する方がましだったでしょう。