今日の産経ニュース(2019年3月25日分)

麻生氏、新幹線延伸めぐり「札幌はもう奥地ではない」 - 産経ニュース
 奥地云々とはいつもながら非常識な男です。


【正論】長期的視野で日露関係を進めよ 同志社大学教授・村田晃嗣 - 産経ニュース

 安倍首相にも、第2のニクソン*1、第2のロナルド・レーガン*2になりうる素地がある。ニクソンレーガン反共主義者として知られながら、前者は米中関係を、後者は米ソ関係を大きく改善しINF全廃条約を締結した。

 さすがに本気で言ってるわけではないでしょうがそれはさておき。ロシア問題では産経内部も完全に混乱していますね。この村田*3 論文は「日露友好」を訴えていますが、一方で産経には袴田茂樹*4木村汎*5による「プーチン*6にだまされるな!」という村田とは真逆の安倍対ロシア外交批判論文も載るわけです。


【主張】「徴用工写真」訂正 嘘の刷り込み放置するな - 産経ニュース
 すぐに写真が差し替えられた事から考えて単なるミスでしょうに嘘呼ばわりとはいい度胸です。産経の方こそ「ミンダナオで旧日本兵発見」「江沢民国家主席死去」などデマ常習なのに。
 シャブ中毒で逮捕された「元北朝鮮工作員安明進が「シャブの金目当てに、拉致問題であることないこと言った」と自白したことを理由に「北朝鮮拉致なぞ、そもそも存在しなかった」と強弁するレベルのデマを産経ははいています。
 しかも産経の場合「徴用工は法的にも道義的にも問題なかった」と嘘を言い出すのだから話になりません。


ロシア疑惑、共謀認定せず トランプ氏「無罪放免」 司法妨害は「証拠不十分」 - 産経ニュース
 注意しなければならないのはこれは「モラー*7特別検察官の報告書そのもの」ではなく「バー*8司法長官によるモラー報告書の要約だ」ということです。
 当然ながら要約が信用できるかという問題があります。民主党側は報告書の全面公開を求めており、まだなんとも言えません。島田洋一はツイートで「トランプの無実が証明された」などと放言していますが、現時点ではそこまではとても言えません。


【iRONNA発】靖国神社 「天皇御親拝ゼロ」の衝撃 島田裕巳氏(1/2ページ) - 産経ニュース

 平成の時代は陛下の御親拝が一度もないまま幕を閉じる可能性が高い。これは靖国の存立にかかわる危機である。なぜこうなったのか。
 天皇自らが神社に参拝することは「親拝(しんぱい)」と呼ばれるが、平成の時代には、一度も親拝が行われなかった。平成が終わる4月の末までに親拝が行われる可能性はゼロに等しい。
 戦没者の慰霊のための天皇親拝が、靖国神社にとって最も重要な事柄である。それが果たされなくなったことは、二代続けて宮司が任期途中で交代した事態とは比較にならないほど重大事である。

 もちろん天皇が参拝しないのは政教分離上問題がある上、「A級戦犯合祀」により「参拝=戦前賛美」と見なされ外交問題にもなりかねないからです。
 今の天皇一家はそれでも参拝を強行するほどの右翼ではないと言うことです。

 首相の靖国参拝もずっと問題になってきたが、親拝に比較すれば本来それほど重要なことではない。

 この島田発言は「島田氏や産経など」日本ウヨにとって「天皇参拝>絶対に越えられない壁>首相参拝」であることを示しています。
 とはいえウヨ連中が尊敬してるのは「制度としての天皇」であって左派や中道、リベラル保守ではないにせよ「彼らほどウヨではない現天皇(だからこそ靖国参拝しない)」を個人として尊敬してるとはとても思えませんが。

靖国では、戦没者を英霊として祀(まつ)っているが、先の大戦が終わってから、74年が過ぎようとしている。参拝者の中には、戦没者の遺族が膨大な数に含まれたわけだが、今や遺族の多くは他界している。
 戦没者の遺族が亡くなるということは、靖国神社に肉親が祀られているために参拝する人の数が大幅に減少することを意味する。それは、靖国神社の存在意義を曖昧なものにすることに結びつく。
・(ボーガス注:1960~1970年代に)靖国の国家護持の運動が盛り上がりを見せたとき、それを実現するには「非宗教化」が必要だとされた。内閣法制局も、非宗教化には何が必要か、具体的な指針も示した。
靖国神社のことを国民全体で考え、その上で将来の方向性を定めるには、改めて非宗教化によって国の機関に戻す*9道を模索する必要もあるのではないだろうか。

 こうした島田氏*10の主張はもちろん「産経の社論」「右翼の総論」ではありませんが、それにしても「靖国万歳」産経にこうした意見がのることが意外です。
 とはいえこうした意見は靖国側にも「反靖国側」にもほとんど支持されないでしょう。
 「A級戦犯分祀」すら拒否する靖国がよりハードルの高い「非宗教化(非神社化)」を目指すわけがない。そもそもいわゆる「靖国国家護持法案」が出たときに「非宗教化論」に「そんなことになるなら国家護持など不要」と反発したのが靖国です。
 非宗教というからには法制局も1960~1970年代当時に指摘したように「靖国神社」とは呼ばず「靖国会館(仮称)」とでも呼び、鳥居など神社的建物も撤去し、「神社業界」と「人的・財政的に完全に縁切りする(神社本庁から経済支援も受けないし、人事交流もしないなど)」必要がありますが、靖国にはとてもそんなことはできないでしょう。
 一方、小生のようなアンチ靖国にとっては、そこまでして靖国を残さなければならない理由はどこにもないわけです。「国営の追悼の場」としては千鳥ヶ淵があります。靖国が衰退しても何ら問題などない。

*1:アイゼンハワー政権副大統領を経て大統領

*2:カリフォルニア州知事を経て大統領

*3:著書『米国初代国防長官フォレスタル』(1999年、中公新書)、『アメリカ外交』(2005年、講談社現代新書)、『レーガン』(2011年、中公新書)、『銀幕の大統領ロナルド・レーガン』(2018年、有斐閣)など

*4:著書『現代ロシアを読み解く』(2002年、ちくま新書)など

*5:著書『新版 日露国境交渉史:北方領土返還への道』(2005年、角川選書)、『現代ロシア国家論:プーチン型外交とは何か』(2009年、中公叢書)、『プーチン 〔人間的考察〕』(2015年、藤原書店)、『プーチン 〔内政的考察〕』(2016年、藤原書店)、『プーチン 〔外交的考察〕』(2018年、藤原書店)、『プーチンとロシア人』(2018年、産経新聞出版)など

*6:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*7:ブッシュ父、クリントン政権司法次官補(刑事局担当)、ブッシュ子、オバマ政権FBI長官など歴任

*8:ブッシュ父、トランプ政権で司法長官

*9:「非宗教化」はまだしも「国の機関」て(唖然)。従来の靖国神官を「国の職員」にするのではとても非宗教化とは言えませんし、「宮内庁の役人」など「今までの靖国と全くつながりがない」官僚による靖国運営は靖国側がのまないでしょう。つうか何のために国の機関にするのか。

*10:著書『カルロス・カスタネダ』(2002年、ちくま学芸文庫)、『創価学会』(2004年、新潮新書)、『ほんとうの親鸞』(2012年、講談社現代新書)、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』(2012年、幻冬舎新書)、『キリスト教入門』(2012年、扶桑社新書)、『仏像鑑賞入門』(2014年、新潮新書)、『靖国神社』(2014年、幻冬舎新書)、『八紘一宇』(2015年、幻冬舎新書)、『ほんとうの日蓮』(2015年、中公新書ラクレ)、『戦後日本の宗教史:天皇制・祖先崇拝・新宗教』(2015年、筑摩選書)、『「日本人の神」入門:神道の歴史を読み解く』(2016年、講談社現代新書)、『天皇憲法皇室典範をどう変えるか』(2016年、朝日新書)、『「人間革命」の読み方』(2017年、ベスト新書)、『神社崩壊』(2018年、新潮新書)など