今日の中国ニュース(2019年3月31日分)

「 日本の国益に重なる台湾総統選挙 親日派の若き政治家は健闘できるか 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト

 台湾が中国の支配下に入るかどうかは、インド・太平洋の地政学を揺るがすほどの影響を及ぼす。

 もちろん「支配下に入ること」など近い未来においてはありえません。
1)まず第一に台湾において即時統一は超少数派です。よしこが親中国呼ばわりする国民党も即時統一など主張していません。
2)第二に中国が軍事侵攻する可能性もまずありません。
 過去(1950年代)に軍事侵攻が失敗したため中国は侵攻を諦め「軍事侵攻しない」「当面は即時統一を諦める」「しかし台湾の独立宣言は認めない」「台湾が独立宣言した場合のみ軍事侵攻がありうる」という方針に変更しています。軍事侵攻しても軍事的に勝てる見込みは決して高くないし、仮に軍事的に勝利できてもその後予想される欧米の経済制裁を考えたら「台湾が独立宣言し、軍事侵攻以外のあらゆる手段を中国が執っても撤回しない場合」の最終手段以外には軍事侵攻の可能性はまずありません。

 その台湾で来年1月、総統選挙が行われる。現職の民主進歩党蔡英文総統の支持率は低迷しており、中国との統一を望む台湾国民党が政権を奪還する可能性が現時点ではかなり高い。
 中国とほぼ一体だとみるべき国民党が政権を握れば、実質的な中台統一につながると考えてよいだろう。

「中国との統一」といったところで、国民党のそれは
1)中国と対等な立場で統一し、台湾の現状に変更はない(一党独裁にはならない)
2)台湾住民の支持を得た上での統一
という代物です。従って統一は将来的目標であり近い未来に問題になる話ではありません。
 当面問題になるのはせいぜい文化・経済の交流です。
 馬英九*1・国民党政権時代にだって統一なんて現実的課題として浮上していません。

 台湾に関して『汝、ふたつの故国に殉ず』(角川書店)を上梓したノンフィクション作家の門田隆将(かどた・りゅうしょう)氏は、来年の台湾総統選挙は日本の国益に重なる選挙であり、日本人はわが事として見守るべきだと語る。
「国民党で一番人気の韓国瑜氏*2が主張するように、国民党政権ができれば中国本土による投資拡大政策が採用されます。現在も中国資本は台湾に注入され続けていますが、それでも、表面上、台湾人の社長を据えたりして、カモフラージュしています。政権奪取となれば、一変して、大手を振って中国資本が流入すると思います」
 武力行使に至るまでもなく、台湾は実質的に中国に「所有」されてしまいかねないということだ。

 馬鹿馬鹿しい。経済交流は政治支配とは違うし、仮に中国資本が進出してきても、「台湾経済を中国資本が完全に支配する」ようなことはないでしょう。台湾企業の力を馬鹿にしすぎです。

 そのような事態を防ぐには、次の選挙で民進党が勝つしかない。だが、蔡氏の支持率は、中国の習近平*3国家主席の唱える「一国二制度」を「絶対に受け入れない」と拒否したことで8%上昇したものの、まだ23%にとどまっている。

 そりゃ「一国二制度による統一」なんてそもそも現実性は当面ないですからね。そんなもんに反対した程度では支持率が大して上がらないのも当然です。


公有施設売り外資ボロ儲け 鈴木道知事候補に問われる資質|日刊ゲンダイDIGITAL
【北海道知事選2019】鈴木直道・前夕張市長に中国系企業への転売協力疑惑~中国系企業本社と同フロアには指定暴力団有力団体も入居:データ・マックス NETIB-NEWS
 自民党公明党が擁立したこの鈴木・北海道知事候補(前夕張市長)による「在日中国人がオーナーの企業への公共施設売却の件」が日刊ゲンダイなどがいうように不正行為なのかどうかは「現時点では判断できる材料がない」のでひとまずおきます(不正ではないにせよ、結果的に転売による利ざや稼ぎを許したのは鈴木市長以下、当時の市当局の落ち度ではないかと思いますが)。 
 ここで問題にしたいのはこの件についての産経のデタラメな態度です(産経がデタラメなのはいつものことですが)。
 さてこの鈴木氏の話、「産経が例の『北海道が危ないー、中国が狙ってる!』」記事にしてないかなと思ってググったら予想通りでした。

【北海道が危ない 第4部(中)】中国資本の影が忍び寄る「北海道人口1000万人戦略」のワナ “素性”不明の発電所が多数存在…跡地は誰も把握せず(5/5ページ) - 産経ニュース編集委員 宮本雅史*4
・かつて炭鉱の町として知られた夕張市は2月8日、ホテルやスキー場など観光4施設を不動産会社、元大リアルエステート(東京)に2億2千万円で売却する契約を締結。4月1日、現地法人「元大夕張リゾート」に引き渡すという。同社は22年に設立。代表は中国人で、長野県や道内でリゾート開発の経験があるとされる。
 中国系企業への売却について、同市の担当者は、「日本の会社として認識している」と説明。同社は2~3年で100億円を投資し、中国などからの集客で「第二のニセコのようなリゾートを造る」という。
 中国系企業への売却について、同市の担当者は、「日本の会社として認識している」と説明。同社は2~3年で100億円を投資し、中国などからの集客で「第二のニセコのようなリゾートを造る」という。
・中国資本がニセコトマムリゾートなど観光地に進出していることは知られているが、洞爺湖温泉でも、昨年12月、中国企業が経営するホテルがオープン、さらに、日本企業の保養地を買収した中国企業がホテル経営に乗り出すという。
 北海道での中国資本の活動は、規模が大きく盛んになってきている。
 在日中国人のチャイナウオッチャーは、「中国は移民のために、これからもどんどん土地を買っていく」と述べ、「集落を造り、病院や軍隊用の事務所も設置する可能性は高い。太陽光発電はその集落で使え、水源地や農地では、農産物を作れる。北海道の場合、中国人はドンドン増えるから、農産物や水が占領される可能性が高い」と忠告する。

 ここまで産経が「夕張市の『在日中国人がオーナーの企業』への公的施設売却」を否定的に書いた以上、産経的には「中国の走狗である鈴木・前夕張市長など知事候補にするな!」などと鈴木氏や自民、公明を非難しなければ全く筋は通りません。まあ、市長時代は保守系とはいえ、鈴木氏は自民党系じゃないし、施設売却については「自民党からも批判があった」ので気軽に産経はこう書いたのでしょう。
 ところが「予想の範囲内ですが」鈴木氏を自民党が「北海道知事候補」として擁立すると何一つ非難しない。それどころか野党共闘候補と全面対決という構図もあって鈴木氏を応援している。
 当然「なら、夕張の土地売却は問題なかったのかよ!」「なら夕張以外も問題ないんじゃねえのか!」「中国が狙ってる!、て要するにお前ら産経ですら本当は全く信じてない、デマなんだろ!」て話です。まあ、そのあたり、誰かに聞かれたら産経も宮本もまともに答えられないでしょうが。

【北海道知事選2019】鈴木直道・前夕張市長に中国系企業への転売協力疑惑~中国系企業本社と同フロアには指定暴力団有力団体も入居:データ・マックス NETIB-NEWS
 今回の北海道知事選で鈴木氏を応援するニトリグループ(本社:札幌市)は、千歳空港そばで中国人富裕層むけの別荘地を開発している。鈴木氏が市有財産を中国系企業に売却したことや、ニトリのこうした動きは、ともすれば「(ボーガス注:中国に日本を売ったとして)売国的」と批判を浴びる可能性もあるが、こうした動きに敏感なネット右翼が抗議活動に乗り出すこともなく静観されているのはなぜか。
 「ニトリの創業者でニトリHD会長の似鳥昭雄氏は、安倍政権の閣僚に献金をするなど、安倍首相と極めて近い人物として知られています。産経など安倍政権寄りのメディアが(ボーガス注:中国人富裕層むけの別荘地を開発したことを理由に反日媚中国として)ニトリ批判に踏み込まないのは、こうした事情が背景にあるのかもしれません」(横田氏)
 要するに、売国的かどうかの判断基準は、安倍首相との距離の近さということなのか。

という指摘の通りです(しかしこの記事が事実なら「家具の安売り」ニトリってのは社長が安倍シンパなんですか。今後は買うのよそうかな)。
 なお、夕張の件についていえば

公有施設売り外資ボロ儲け 鈴木道知事候補に問われる資質|日刊ゲンダイDIGITAL
 問題となっているのは、3月末に香港系ファンドに約15億円で売却される夕張市のホテルマウントレースイや、マウントレースイスキー場など4施設。もともと市所有だったが、中国・上海生まれの呉之平氏が社長を務める不動産業者「元大リアルエステート」(東京)が2017年2月、約2・2億円で買収。現地法人の「元大夕張エステート」を設立し、運営を引き継いだ。売却時、呉社長はメディアの取材に対し、「経営者として、中国人として日本に貢献ができるのではないかとの思いがありました」と語っていたが、それから2年余りで施設を転売。同社は短期間で10億以上の利益を得たワケだ。
 香港系ファンドへの売却について施設の老朽化などを理由に挙げているらしいが、一連の経過だけを見れば、最初からスキー場運営などが目的ではなく、不動産転売だったのではないかと疑われても仕方がないだろう。
 「行政はふつう、こうした転売をさせないため、契約時に買い戻し特約を付けたり、転売禁止などの条件を付ける。ところが、17年2月8日の夕張市議会で、議員から『契約に際して、短期の譲渡を制限する特約などを設定する予定は』と問われた当時の鈴木市長は『契約上、何年間で転売を禁止するというような文言についてはうたっておりません』『地域に根差して長年にわたり営業を継続していきたいというお話』などと答弁。業者の言い分をうのみにして、大切な公有施設を外資に売り払ってボロ儲けさせてしまった。これは行政トップの資質としては失格です」(夕張市民)
 市税務課によると、市は売却に当たって固定資産税の3年間免除も付けていたというから、踏んだり蹴ったりだろう。
 こういう不可解な転売について、もっと早い段階で問題視されていないことが不思議だ。北海道に支社・支局を置く全国紙の記者はいったい毎日、何を取材しているのか。

であり、「移民村云々」なんて産経の与太とは別の意味での問題「最初から転売目的を知りながら安く売り渡し、元大の利権あさりに鈴木市長が加担した森友のような話でないか」「仮にそうした不正ではないにせよ2年で転売するような企業に、転売禁止特約などもつけずに安く売ったのは重大な落ち度ではないのか」という問題があるわけです。そして当然ながら「こんな人間を北海道知事にしていいのか」「自民はもっとまともなタマを擁立できなかったのか」という問題もあるわけです。

*1:連戦内閣法相、台北市長などを経て総統

*2:現在、高雄市

*3:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*4:著書『「電池が切れるまで」の仲間たち:子ども病院物語』(2006年、角川文庫)、『「特攻」と遺族の戦後』(2008年、角川ソフィア文庫)、『電池が切れるまで』(2009年、角川つばさ文庫)、『対馬が危ない:対馬を席巻する韓国資本』(2009年、産経新聞出版)、『海の特攻「回天」』(2011年、角川ソフィア文庫)、『爆買いされる日本の領土』(2017年、角川新書)、『領土消失:規制なき外国人の土地買収』(共著、2018年、角川新書)など