新刊紹介:「経済」7月号

「経済」7月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
世界と日本
EUのAI倫理指針(高野嘉史)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。つまりはAIについてはまだ「全世界統一的な倫理指針」がなく、今後、議論がされるだろうという話です。

EUがAI倫理指針 人間主体、説明責任果たす仕組みを :日本経済新聞
 欧州連合EU)の欧州委員会は8日、人工知能(AI)の倫理指針を公表した。指針はAIが現行法や規制を順守した上で、AI設計時に守るべき7つの必要条件を明示した。あくまで人間が主体でAIが補完的な役割に徹するとし、市民が自分の情報を管理できるようにすべきだと主張した。問題が起きた際の説明責任を果たす仕組みを整えるよう求めた。


■鉄鋼需要予測に見る世界(大場陽次)
(内容紹介)
 鉄鋼需要予測に比べ供給が過剰であり、生産調整が必要なこと、そのため今後、鉄鋼業界で企業倒産や企業統合などがあり得ることが指摘される。鉄鋼というのは「産業のコメ」という異名があるほど、建材や自動車部品などいろいろな分野に使われるのでどうしても、需要を過大評価して過剰生産する傾向があるという話です。
 なお、トランプが「アメリカへの鉄鋼輸出」に高額関税をかけてる背景にも「供給が過剰」という面があるわけです。

参考

ミタル、欧州の減産を拡大 需要低迷し独仏でも (写真=ロイター) :日本経済新聞
 鉄鋼世界最大手の欧州アルセロール・ミタルは29日、欧州での減産を拡大すると発表した。
 ミタルの1~3月の欧州での鋼材平均販売価格は前年同期比9%下がり、営業利益は98%減った。自動車を中心とする製造業の需要が弱いうえにトルコやロシアなど域外からの安い鋼材の流入が増え、販売価格を押し下げた。

米、対カナダなど鉄鋼関税を撤廃 日中勢に影響も :日本経済新聞
懸念されるのは米中貿易戦争による中国の景気冷え込みだ。
 「中国の経済全体がおかしくなり、鉄鋼需要に影響が出ることを懸念する」(日本製鉄の宮本勝弘副社長)。

 なぜこんなことを宮本副社長が言うかと言えば「今一番、鉄鋼需要が大きいのが中国」「当然、日本製鉄など日本鉄鋼メーカーも中国輸出で儲けている面が大きい」からです。まあ、中国ビジネスでもうけてるのは鉄鋼業界だけではありませんが、そうした状況で日本が中国敵視など出来る話ではありません。

英鉄鋼大手が経営破綻 EU離脱で受注減か (写真=ロイター) :日本経済新聞
 英鉄鋼2位のブリティッシュ・スチールが22日、管財人の法的管理下に入り経営破綻した。債務超過に陥り、英政府に対し3000万ポンド(約42億円)の緊急融資を要請していたが認められなかった。同社は、英国の欧州連合EU)離脱に伴う不透明感で受注が減少して破綻したと主張している。
 同社は約5千人の従業員を抱え、取引先なども含めると2万人に影響する可能性がある。クラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略相は22日、「地元経済への打撃も考慮し、管財人などと協力して工場の操業を守りたい」と述べた。
 英産業界ではEU離脱を巡って混乱が続いている。ホンダが英撤退を決め、日産自動車も多目的スポーツ車SUV)「エクストレイル」の生産を日本に切り替えると発表した。製造業の撤退は鉄鋼需要の減少に直結し、鉄鋼業界にとって死活問題となる。野党の労働党からはブリティッシュ・スチールの国有化の案も出ている。

 まあ鉄鋼業自体が不況産業なのですが、日経記事を信じれば「EU離脱をきっかけとするホンダの英国撤退」がさらに追い打ちをかけたようです(この記事を読むにおいて、日経がEU離脱反対派であることは割り引く必要がありますが、それを割り引いてもEU離脱はやめるべきだと思いますね)。もはや「EU離脱撤回、この道しかない(自民のアベノミクスポスター風に)」気がしますが、なかなかそうもいかないのでしょう。
 いずれにせよ「EU離脱が追い打ちをかけた」とはいえ大手鉄鋼メーカーが経営破綻する英国の経済が厳しいのは事実でしょう。
 そういう状況下で「少し古い記事」ですが

【習近平訪英】中国と英国、7兆円超の巨額契約締結 習主席「中国は社会主義の道を選択」と演説 - 産経ニュース
 キャメロン英首相は21日、英国を訪問中の習近平*1・中国国家主席と会談後、経済界との会合で、英国が進める原子力発電事業への中国による投資など、総額400億ポンド(約7兆4千億円)の契約を締結したと述べた。習氏は、両国は「グローバルな包括的戦略パートナーシップを構築し、黄金時代を開く」と宣言した。

などとなるのはある意味自然な話です。


■スペイン総選挙(宮前忠夫*2
(内容紹介)
 極右政党ボックスが躍進するという問題点はあるが、社会労働党が第一党となり政権を維持できたことを一つの希望としている。
参考
スペイン総選挙 右派・国民党が歴史的敗北/社会労働党、第1党
 詳しくは赤旗記事を読んでほしいと思いますが、国民党が議席を減らした分が極右政党に回ってるので、「国民党が議席を減らし、一方社会労働党議席を増やしても」素直には喜べません。
 また社会労働党と共に「連立相手のポデモス」も議席増すれば良かったのですが、議席を減らしたため「社会労働党議席増」が「ポデモスの議席減」で相殺されて与党連合の総議席数が横ばい(厳密に言えばやや微減)という厳しい結果になっています。
 なお、この選挙結果が「カタルーニャ問題にどう影響するか」が気になるところです。
 極右の躍進は「カタルーニャ民族政党」の支持を得ないと政権維持が厳しいということで逆に「カタルーニャ問題の対話」に行く可能性もないではないようです(カタルーニャ民族政党は極右や国民党と違い条件さえ整えば、社会労働党政権に対し閣外協力の用意があるとしている)。


特集「消費税の30年」
■「平成の大悪税」による健全国家財政の破綻(二宮厚美*3
■消費税導入と公平原則の変質(安藤実*4
■すすむ法人税の「空洞化」:あるべき税源(垣内亮*5
所得税の後退と所得再分配機能の低下(梅原英治)
■消費税反対運動の広がりと教訓(浦野広明*6
■高齢者、低所得者に過酷な「公租公課」負担(唐鎌直義*7
■欧州の付加価値税率との比較でみた消費税(中西啓之*8
(内容紹介)
 全ての論文に共通する内容として、「いわゆる逆進性」「景気に与える悪影響」などが指摘され、消費税増税ではなく、消費税減税(最終的には廃止)と「消費税増税」にともなって減税された法人税所得税増税が主張されます(いわゆる応能負担原則の徹底、累進課税の強化)。

参考
主張/消費税10%の増税/集め方も使い方も格差拡大だ
消費税10% 増税計画は中止を/強行なら経済に破滅的影響/志位委員長の質問 衆院予算委
消費税増税の中止 くらしに希望を―三つの提案│労働・雇用│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会


特集「どうなる日本の林業
■森林経営管理法に見る官邸主導林政(佐藤宣子*9
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
森林の健全育成に逆行/田村氏 経営管理法案を批判
ねつ造 立法事実揺らぐ/森林経営管理法案差し戻しを/田村貴氏が追及
自発的経営への介入に/紙氏 森林管理法案を批判
森林経営管理法が成立/市町村に過大負担 紙氏が反対


国有林コンセッション(民間開放)の問題点(三木敦朗)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
国土の荒廃をまねく/国有林野管理経営法改定案ただす/田村貴昭議員
目先の利益 禍根残す/国有林野管理経営法改定案 参考人が批判/田村貴昭議員質疑


UR賃貸住宅雇用促進住宅の民間売却問題(坂庭国晴*10
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。基本は「売却反対」ですが、既に売却された住居もあるので、一方では「売却後の居住者の権利保障」といった話もされています。
雇用促進住宅 民間売却は中止を/佐々木氏、退去強要を批判/衆院予算委分科会
雇用促進住宅存続を/島津議員 厚労相「退去促進せぬ」
入居者の権利保障を/島津氏 雇用促進住宅売却ただす/衆院内閣委

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*2:著書『あなたは何時間働きますか?:ドイツの働き方改革と選択労働時間』(2018年、本の泉社)、『増補改訂版:企業別組合は日本の「トロイの木馬」』(2019年、本の泉社)、『新版 企業別組合マルクス・エンゲルスの労働者組合論』(2019年、共同企画ヴォーロ)など

*3:著書『現代資本主義と新自由主義の暴走』(1999年、新日本出版社)、『日本経済の危機と新福祉国家への道』(2002年、新日本出版社)、『構造改革とデフレ不況』(2002年、萌文社)、『ジェンダー平等の経済学』(2006年、新日本出版社)、『格差社会の克服』(2007年、山吹書店)、『新自由主義破局と決着』(2009年、新日本出版社)、『新自由主義からの脱出』(2012年、新日本出版社)、『安倍政権の末路:アベノミクス批判』(2013年、旬報社)、『終活期の安倍政権』(2017年、新日本出版社)など

*4:著書『富裕者課税論』(編著、2009年、桜井書店)など

*5:著書『消費税が日本をダメにする』(2012年、新日本出版社)、『「安倍増税」は日本を壊す:消費税に頼らない道はここに』(2019年、新日本出版社

*6:著書『納税者の権利ハンドブック』(1993年、新日本出版社)、『納税者の権利と法』(1998年、新日本出版社)、『たたかう税理士の税務相談』(2006年、新日本出版社)、『税民投票で日本が変わる』(2007年、新日本出版社)、『税務行政における予防法学の実践:所得税に関する事例研究』(2010年、成文堂)、『税務調査に堂々と立ち向かう』(2014年、日本評論社)、『税が拡げる格差と貧困:日本版タックスヘイブンVS庶民大増税』(2016年、あけび書房)など

*7:著書『日本の高齢者は本当にゆたかか』(2001年、萌文社)、『脱貧困の社会保障』(2012年、旬報社

*8:著書『地方自治のはなし』(1984年、新日本新書)、『日本の地方自治』(1997年、自治体研究社)、『増補新版・市町村合併』(2004年、自治体研究社)など

*9:著書『日本型森林直接支払いに向けて』(編著、2010年、日本林業調査会)、『林業新時代』(共著、2014年、農文協)など

*10:著書『どうする住宅難時代』(1991年、学習の友社)