今日の中国ニュース(2019年6月19日分)

【主張】香港の一国二制度 G20で主要議題に加えよ - 産経ニュース

 議長役となる安倍晋三首相には、香港の高度自治の問題をG20サミットの主要議題としてもらいたい。

 他の国の首脳はさておき、安倍はそんなことしないでしょう。おそらく日中首脳会談でもそんなことには触れないでしょう。そして、それを産経も結局は容認するでしょうね。


【国際情勢分析】“狂犬”マティス氏不在のアジア安保会議 シャナハン氏に不安感(1/4ページ) - 産経ニュース

 基調講演で、シンガポールのリー・シェンロン*1首相は「中国を大国だと認めなければいけない。大国が台頭すれば周辺の国はそれなりに調整を求められる。我々は調整しなければならない」という趣旨の演説を行い、融和的な姿勢を打ち出した。簑原氏は「(シンガポールの姿勢は)典型的な小国外交だが、生存のためには他にやりようがないから仕方がない」と指摘。昨年は中国に強い態度を示したベトナムの国防相をはじめ、マレーシアやフィリピンなど他の東南アジア諸国の代表も「南シナ海問題をめぐり、中国とASEANが行動規範(COC)の策定を進めていることを意識してか、全体的に中国と融和的だった」という。

 そりゃ産経じゃあるまいし無茶苦茶な反中国なんてどこの国もしません。

 簑原氏は、岩屋防衛相が講演で言及した「自由で開かれたインド太平洋」について、「最後に『戦略』という言葉が欠落している点が米国と違う。たった2文字だが、戦略という誰かを対象としている言葉をあえて使わなくなったのは中国に対する配慮にほかならない」と指摘。「今の日本に求められているのは、中国のさらなる膨張を食い止める『自由で開かれたインド太平洋戦略』へのより実質的な貢献ではないか」と述べ、明確な戦略意識を持つ重要性を強調した。

 要するに安倍も反中国路線を転換しているし、産経はそれが不快だという話です。とはいえ「安倍以上の反中国で、首相になる可能性がある人間」なんてどこにもいないので結局安倍万歳の産経ですが。石破*2元幹事長、石原*3元幹事長、岸田政調会長(前外相)、枝野*4立民党代表といったあたりが、ポスト安倍でしょうが、彼らは安倍ほどの反中国ではないわけです。
 いずれにせよ、安倍はこんな産経文化人の反中国主張は無視するでしょう。


リベラル21 文化大革命―最終勝利者は官僚だった
 まあそれいったら、「ソ連・東欧民主化」だって「最終勝利者は官僚だった」つうことになりかねませんけどね。独裁色を強めるロシアのプーチンハンガリーのオルバンなんかがわかりやすい例ですけど。
 「ならばソ連東欧民主化は無価値だったのか」といったら、さすがに阿部もそうはいわないでしょう。
 あるいは米国公民権運動も「最終勝利者はトランプ」つうことになりかねないわけです。これまたさすがに阿部もそうはいわんでしょうけれど。

 楊によれば、劉・鄧集団は、はじめ文革に強く抵抗した。官許の文革史が劉少奇を犠牲の羊のように描いたのは、官僚集団に文革の責任を負わせないため

 劉少奇に対して失礼すぎでしょうよ。
 もちろん「文革以前の彭徳懐防相失脚」などにおいては「事情はともかく劉少奇も共犯(積極支持でないにせよ黙認したわけですから)」つう面はあるでしょう。「毛沢東文革には劉少奇国家主席トウ小平副首相にも、文革以前に、文革のような無法が可能になるほど毛沢東を増長させたという意味で責任はある」し、そうした指摘が「官許の文革史」においては弱いかもしれない。
 しかしそれは「文革において劉少奇が酷い迫害を受け、無念の思いを抱きながら死んでいったこと」を否定しません。そうしたことを否定していい訳もない。
 「劉少奇は犠牲の羊」は事実であり、「昭和天皇平和主義者説(終戦の聖断説)」のような完全なデマとはわけが違います。
 「スターリン粛清以前の政治的抗争」において、事情はともかく、スターリン(党書記長)のふるまいを容認したからと言って「カーメネフソ連共産党政治局員など)、ジノビエフコミンテルン議長など)やトロツキー(外相や国防相など)、ブハーリンコミンテルン議長など)などはスターリン粛清の犠牲者ではない」というに等しい暴論です。

 混乱が続くのをみて、毛は方針を転換した。造反派の一部を切りすて、大衆組織を解散させ、従わないものは軍によって鎮圧した。1967年1月から68年9月までに全国に「革命大衆・解放軍・革命幹部」の三結合による革命委員会が成立した。革命委員会という形で文革以前の統治機構が復興した。

 つまりは「それなりのシステムが存在しない」と統治なんかできないわけです。政治とは素人の思いつきで出来る話ではない。
 トウ小平文革期に一時復権したのも同じような話です。官僚制の弊害是正とは「無茶苦茶な官僚たたき」とは意味が違う。

 1981年6月中共中央委員会の「建国以来の党の若干の歴史的問題についての決議」は「(文革は)指導者が間違って引き起こし、反革命集団に利用されて、党と国家と各民族人民に大きな災害をもたらした内乱である」とした。
 楊は、この決議は改革開放への合意を達成するための、妥協の政治決議であって、歴史の総括ではないという。「反革命集団に利用された」としたのは、毛に責任を負わせないためである。だが事実は、「歴史決議」で反革命とされた林彪*5集団も江青「四人組」も、毛を支持して文革を推進したのである。彼らは毛に利用されたのであって、毛を利用したのではない。

 「毛沢東を完全否定してないから無意味だ」つう暴論です。いやいやそういう話じゃないでしょうよ。「限界はある」にせよ、中国は文革を否定したわけです。「共産党体制を批判してないからフルシチョフソ連共産党第一書記のスターリン批判は無意味だ」的な暴論ですね。
 あるいは「最高指導者・昭和天皇が裁かれなかったから東京裁判は無意味だ」「東京裁判東条英機*6陸軍大臣板垣征四郎*7陸軍大臣木村兵太郎*8・元陸軍次官、武藤章*9・元陸軍省軍務局長など、陸軍にもっぱら責任を押しつけたから無意味だ(東条、板垣、木村、武藤は死刑になり後に靖国に合祀)」的な暴論です。まあ、限界や問題点があるというなら間違いではないですが。
 なお「毛沢東が完全に利用された」と見るのももちろん間違いですが、「彼らは毛に利用されたのであって、毛を利用したのではない」というのも間違いですね。彼らは「毛の作った枠組みの中」とはいえ「毛を利用しようとした」し、それを毛もある程度容認したわけです。

 「歴史決議」は文革を否定したが、文革を生み出した毛沢東の理論、路線、制度は否定しなかった。

 制度が「共産党一党独裁」を意味するならまあ確かにそうです。ただし「理論、路線」は既に改革開放によって否定されてるでしょう。一方、日本は「昭和天皇平和主義者説」であの男の在位を戦後も認め続けたのですから、そんなに偉そうなことも言えません。

 日本では、中国通と称する人々の中国危機論が盛んである。

 「称する人々」つうのは要するに福島香織のような代物のことです。浅井基文氏(元外務省中国課長)のようなある程度まともな中国ウオッチャーはそんな馬鹿なことは言いません。

*1:初代首相リー・クアンユーの息子。貿易・工業大臣、財務大臣などを経て首相

*2:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)など歴任

*3:小泉内閣国交相自民党政調会長(第一次安倍総裁時代)、幹事長(谷垣総裁時代)、第二次安倍内閣環境相、第三次安倍内閣経済財政担当相など歴任

*4:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*5:防相、党副主席など歴任。

*6:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相を歴任

*7:関東軍高級参謀として満州事変を実行。関東軍参謀長、第一次近衛、平沼内閣陸軍大臣朝鮮軍司令官、第7方面軍(シンガポール)司令官など歴任

*8:関東軍参謀長、陸軍次官、ビルマ方面軍司令官など歴任

*9:支那方面軍参謀副長、北支那方面軍参謀副長、陸軍省軍務局長、近衛師団長、第14方面軍(フィリピン)参謀長を歴任