「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」を笑おう(2019年6/24日分:黒坂真の巻)

黒坂真リツイート
・古是三春*1・ゴスロギ
‏ 「北朝鮮に取材に行く」というのは、批判的なジャーナリストには不可能なんです。

 勘の鋭い方は、すぐに気づいたでしょうが、何のことかと言えば
家族と生き別れ北朝鮮で暮らす「残留日本人女性」その哀しき人生(伊藤 孝司) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)*2
ジャーナリストが訪朝して感じた「閉ざされた国」北朝鮮のリアル(立岩 陽一郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
スマホが普及した「平和な独裁帝国」北朝鮮で忘れられていく日本(立岩 陽一郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
経済制裁下の北朝鮮が、それでも「経済成長」を続けられる理由(伊藤 孝司) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)
など訪朝取材してるライター(伊藤孝司氏*3、立岩陽一郎氏*4)に対する「北朝鮮シンパ」呼ばわりというくだらない話です(もちろんそうしたライターは伊藤氏、立岩氏だけではありませんが)。
 当然ながら、伊藤氏、立岩氏の記事を掲載した現代ビジネス(講談社)や伊藤氏の著書を出版した岩波書店もウヨ連中的には「北朝鮮シンパ」なんでしょう。
 そしてウヨ連中的には

小倉紀蔵*5編『新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮』(2012年)を出版した角川書店
ファンキー末吉*6平壌6月9日高等中学校・軽音楽部 北朝鮮ロックプロジェクト』(2012年)を出版した集英社インターナショナル

北朝鮮シンパなんでしょう(勿論、小倉氏や末吉氏も北朝鮮シンパ扱いでしょう)。
 まあ伊藤氏、立岩氏、小倉氏、末吉氏が「黒坂と類友」のような「病的なアンチ北朝鮮」でないことは確かですが。とはいえそのレベルでも黒坂らにとっては「北朝鮮シンパ」なんでしょう。おそらく田中均*7蓮池透*8、和田春樹氏*9、あるいは小生やid:Bill_McCreary氏なども北朝鮮シンパ扱いでしょう。
 「左派の岩波書店はともかく*10」そうした政治性などない角川書店講談社集英社北朝鮮シンパだなんていったら正気を疑われますが、そういう常識は黒坂らには期待できないわけです(ちなみに「朝鮮学校無償化除外反対」「太陽政策支持」と俺がブログ記事に書いただけで俺のことを北朝鮮シンパ呼ばわりした野原燐なる御仁も「北朝鮮シンパ認定」においては黒坂らと同レベルなのだろうと思います。たぶん野原的には伊藤氏も立岩氏も北朝鮮シンパじゃないか?)。
 それにしても内容に関係なく「訪朝取材しただけで北朝鮮シンパ扱い」とは吹き出しました。その理屈だと、「北朝鮮に限らず」独裁国家の取材は「取材しない」か、「密入国者として処罰されるリスクを覚悟して、密入国して取材」しかないんでしょうか?。当たり前ですがそんなことはないわけです。
 まあ、独裁国家では取材が難しいことは確かですが、そこが「記者の腕の見せ所」でしょう。まあ、確かに無能な人間では「反発買って、取材拒否になる」か、「相手の言い分をただ垂れ流す*11」かという「極端な結果」になるでしょうが。
 というか「独裁国家と同一視は出来ませんが」、取材なんて皆同じでしょう。
 取材先(国、自治体でアレ、企業その他の民間団体でアレ、個人であれ)が「どんな都合の悪いことでも自由に取材させてくれる」なんてあるわけもない。「いわゆる番記者が政治家に取り込まれる」とか「記者クラブが役所批判が出来ない」とかいうのはそういうことです。
 「北朝鮮以外の取材なら、取材先から恫喝されることも、買収されることもない」なんて話はない。
 しかし「訪朝取材する奴は北朝鮮シンパ」で片付けて一丁上がりとは随分とお手軽なもんです。そんなことするのではなく「事実に基づいて伊藤氏や立岩氏などを批判すればいい」でしょうが、まあ、黒坂と類友にはそんな能力はないわけです。
 さてせっかくなので、伊藤氏の最近の記事経済制裁下の北朝鮮が、それでも「経済成長」を続けられる理由(伊藤 孝司) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)を紹介しておきます。内容的には立岩氏の記事(北朝鮮はもちろん「制裁の影響ゼロではない」ものの、中露の支援や『北朝鮮自身の改革開放の努力』もあって、即時崩壊論者*12が言うほど苦境にはない。むしろ10年前、20年前に比べれば遅い歩みであっても一定の経済成長をしているように思われる)とかなりかぶるように思います。立岩記事については今日の朝鮮・韓国ニュース(2019年6月16日分) - bogus-simotukareのブログで既に紹介したので拙記事をお読み頂ければ幸いです。

経済制裁下の北朝鮮が、それでも「経済成長」を続けられる理由(伊藤 孝司) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)
 5月20日が初日の「平壌国際商品展覧会」は、年2回開催されていて今年は22回目。取り引きだけでなく商品販売をするブースもあるので、市民で大変な賑わいだった。
 北朝鮮は、国連安保理による厳しい制裁と日米韓の独自制裁を受けてきた。それによってどの程度の影響を受けているのかは、国際社会の大きな関心事だ。
 4月15日にリニューアルオープンした「大聖(テソン)百貨店」を2度にわたって訪れた。店内の撮影は規制されているものの、見て回るだけでも価値があると思ったからだ。
 ここ数年、多くの大規模で斬新な内装の店舗が次々と開店したが、この百貨店はさらに規模が大きく、輸入した高級品がたくさん並ぶ。家電製品売り場には、パナソニックなどの大型テレビが売られていた。
 この国で高級店を利用できる人たちがいる理由をズバリ聞いてみた。
「海外派遣された労働者や医師、合弁企業の従業員といった高収入の人たちがいます。そして企業の独自活動で目標を達成すれば、利益を従業員に配分できるんです」
 教授は少し戸惑いながらそう答えた。
 金正恩キム・ジョンウン)体制になり、工場や協同農場で労働者の勤労意欲を刺激する政策が始まった。そのことで、生産量がかなり増加しているという話はいろんな事業所で聞いた。

 「文革終了後、改革開放の中国」「ドイモイベトナム」のように「一定の改革開放を行い、それが一定の成果を上げてる」ということでしょう。もちろん過大評価は禁物ですし、北朝鮮が「全面的な情報公開」をしているわけでもないので正確な評価は難しいですが、どうみても「北朝鮮の即時崩壊」などありそうにありません。「改革開放」も一定の成果を上げてるようです。
 とはいえ繰り返しますが、そうした事実を黒坂ら「反北朝鮮ウヨ」は認めたくないからこそ、こうした記事に「北朝鮮シンパ」のレッテルを貼って片付けようとするわけです。

*1:篠原常一郎(筆坂元参院議員の元秘書、元共産党員)のペンネームのようです。著書『ノモンハンの真実 日ソ戦車戦の実相』(2009年、産経新聞出版→後に2018年、光人社NF文庫)など

*2:この伊藤記事についてはぜひ購入して読んでみたい(「ドキュメント 朝鮮で見た〈日本〉: 知られざる隣国との絆」)(こういう基本的なことをどうにかしてもらわないとどうしようもない) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)と拙記事今日の韓国・北朝鮮ニュース(2019年4/21分)(追記あり) - bogus-simotukareのブログを紹介しておきます。

*3:著書『ヒロシマピョンヤン:棄てられた被爆者』(2010年、風媒社)、『無窮花(ムグンファ)の哀しみ:「証言」性奴隷にされた韓国・朝鮮人女性たち』(2014年、風媒社)、『朝鮮民主主義人民共和国:米国との対決と核・ミサイル開発の理由』(2018年、一葉社)、『ドキュメント 朝鮮で見た〈日本〉:知られざる隣国との絆』(2019年、岩波書店)など

*4:NHKテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクとして主に調査報道に従事。「パナマ文書」の取材を中心的に関わった後にNHKを退職。現在は認定NPO「ニュースのタネ」編集長、公益財団法人「政治資金センター」事務局長(アマゾンの著者紹介による)。著書『NPOメディアが切り開くジャーナリズム:「パナマ文書」報道の真相』(2018年、新聞通信調査会)、『トランプ王国の素顔』(2018年、あけび書房)、『ファクトチェックとは何か』(共著、2018年、岩波ブックレット)、『トランプ報道のフェイクとファクト』(2019年、かもがわ出版)、『ファクトチェック最前線:フェイクニュースに翻弄されない社会を目指して』(2019年、あけび書房)など

*5:著書『韓国語はじめの一歩』(2000年、ちくま新書)、『心で知る、韓国』(2012年、岩波現代文庫)、『入門 朱子学陽明学』(2012年、ちくま新書)、『新しい論語』(2013年、ちくま新書)、『朝鮮思想全史』(2017年、ちくま新書)、『京都思想逍遥』(2019年、ちくま新書)など

*6:1959年生まれ。1980年にアマチュアバンド「爆風銃」(バップガン)を結成。その後、1982年のヤマハEastWestで出会った「スーパースランプ」(当時)のボーカルのサンプラザ中野リードギターパッパラー河合を勧誘し、直前に爆風銃に加入していたベースの江川ほーじんとともに爆風スランプを結成。以降、1998年の活動休止に至るまで、爆風スランプのドラム及び作曲を担当した。爆風スランプの活動休止後、1999年に二井原実LOUDNESS)らとともに「X.Y.Z.→A」を結成。また、「夜総会BAND」のドラマーとしても活動する。中国人女性と結婚したこともあり、2001年には生活の場を北京に移し、中国を拠点として活動するようになった(ウィキペディアファンキー末吉」参照)。著書『ファンキー末吉 中国ロックに捧げた半生』(2015年、リーブル出版)など。個人サイトFunky末吉 HomePage!!

*7:著書『日本外交の挑戦』(2015年、角川新書)など

*8:著書『私が愛した東京電力福島第一原発の保守管理者として』(2011年、かもがわ出版)、『13歳からの拉致問題』(2013年、かもがわ出版)、『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(2015年、講談社)、『拉致と日本人』(共著、2017年、岩波書店)、『告発:日本で原発を再稼働してはいけない三つの理由』(2018年、ビジネス社)など

*9:東京大学名誉教授。著書『歴史としての社会主義』(1992年、岩波新書)、『金日成満州抗日戦争』(1992年、平凡社)、『歴史としての野坂参三』(1996年、平凡社)、『北朝鮮:遊撃隊国家の現在』(1998年、岩波書店)、『朝鮮戦争全史』(2002年、岩波書店)、『朝鮮有事を望むのか:不審船・拉致疑惑・有事立法を考える』(2002年、彩流社)、『同時代批評(2002年9月〜2005年1月):日朝関係と拉致問題』(2005年、彩流社)、『テロルと改革:アレクサンドル二世暗殺前後』(2005年、山川出版社)、『ある戦後精神の形成:1938〜1965』(2006年、岩波書店)、『これだけは知っておきたい日本と朝鮮の一〇〇年史』(2010年、平凡社新書)、『北朝鮮現代史』(2012年、岩波新書)、『領土問題をどう解決するか』(2012年、平凡社新書)、『「平和国家」の誕生:戦後日本の原点と変容』(2015年、岩波書店)、『慰安婦問題の解決のために』(2015年、平凡社新書)、『アジア女性基金慰安婦問題:回想と検証』(2016年、明石書店)、『米朝戦争をふせぐ:平和国家日本の責任』(2017年、 青灯社)、『レーニン:二十世紀共産主義運動の父』(2017年、山川出版社世界史リブレット人)、『ロシア革命』、『スターリン批判・1953〜56年:一人の独裁者の死が、いかに20世紀世界を揺り動かしたか』(以上、2018年、作品社)、『安倍首相は拉致問題を解決できない』(2018年、青灯社)など

*10:まあ、昔はどうか知りませんが、今の岩波は到底北朝鮮シンパなどとは言えないでしょうが。

*11:とはいえその場合でも今時「北朝鮮の主張が全て正しい」と思う記者もいないでしょうが。

*12:まあ黒坂らが伊藤記事、立岩記事を「北朝鮮シンパの記事だ(だから信用できない、評価しない)」で片付けるのは「即時崩壊論者(反北朝鮮のウヨ)として北朝鮮の経済成長を認めたくないが、伊藤氏、立岩氏らに具体的に反論するだけの能力がないから」でしょう。