マンガ「アルキメデスの大戦」の山本五十六が日朝交渉を連想させた

 まあこのマンガ(週刊ヤングマガジン連載)自体は「東条英機が首相就任前、関東軍参謀長時代から東南アジア進出を画策してた」だの「アメリカは日本を挑発して、日本から開戦させた上で、叩き、アメリカの属国にしようとしていた*1」だの「そんな事実ねえだろ」「フィクションでも許されるレベルじゃねえだろ」つうアホマンガで、あんなもん映画化しようだの、それに「産経ならまだしも」毎日新聞がコミットだの実に腹立たしいですが、それはさておき。
 まあ小生も「戦前の歴史」に全く詳しくないのですが、このマンガ、最近では
1)ドイツの快進撃から「まず我々が相手しなければいけない敵はドイツだ、日本じゃない」ということで米国政府内で対日交渉派が力を強め、日本に外交交渉を持ちかける
2)海軍では山本五十六連合艦隊司令長官)が交渉を推進する
という流れになっています。
 で以下、手元にマンガがないのでうろ覚えで書きますが、「海軍内反米派(親ドイツ派)」は

 「アメリカが何考えてるか分からない」
 「裏があるんじゃないか」
 「だまされたらどうする」
 「交渉するかどうか決める前にアメリカの真意をまず突き止めよう」

と言い出す。
 これにマンガの山本(交渉派)が「馬鹿なことを言うな」と一喝するわけです。

 「向こうが交渉したいというなら交渉すればいいじゃないか」
 「君らは交渉しないで、どうやって日米間の問題を解決する気なんだ」
 「交渉するより戦争したいのか、ならば、そうはっきり言ってくれ。で、戦争して勝てるのか」
 「真意なんてもんは交渉してればいやでも分かるはずだ。真意が分からないから交渉しないなんて話がおかしい」
 「いや米国の真意なんかどうでもいい。とにかく交渉して、日米の対立解消という日本にとっていい成果がでればそれでいいじゃないか」
 「交渉していい成果が出なかった時点で交渉を打ち切ればいいだけの話だ、それで君らは何の不満があるのか」

と。
 で海軍内反米派も沈黙する。
 でこれは「フィクションだと断ってるマンガ」の台詞だからある意味どうでもいいんですが、日朝交渉も話は同じ訳です。

 「向こうが交渉したいというなら交渉すればいいじゃないか」
 「君らは交渉しないで、どうやって日朝間の拉致問題を解決する気なんだ」
 「交渉するより戦争したいのか、ならば、そうはっきり言ってくれ。で、戦争して拉致被害者が救えるのか」
 「真意なんてもんは交渉してればいやでも分かるはずだ。真意が分からないから交渉しないなんて話がおかしい」
 「いや北朝鮮の真意なんかどうでもいい。とにかく交渉して、拉致被害者帰国という日本にとっていい成果がでればそれでいいじゃないか」

という話でしょう(ただし拉致の場合、被害者救出を諦めない限り、「交渉を打ち切る」つうのは事実上あり得ませんが)。
 問題はそういうことを蓮池透氏が言ったら「裏切り者」扱いされて、家族会から除名されるつうことのわけですが。だから俺は以前から書いていますが家族会には全く同情も共感もしてない。むしろ軽蔑し憎悪している。
 けっきょく巣食う会と言っていることが変わらない(代弁しているだけじゃん) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)という家族会批判には全く同感です。

*1:結果的には「日本の敗戦で米国の属国になった」と言っていいのでしょうが、「国力の差」から、アメリカは「日本から開戦してくる」なんて全く思っていません。その結果が真珠湾での大敗です。そもそもアメリカ的には「日本が蒋介石政権転覆を諦め、中国から撤退すればそれでよかった」わけです。「日本を戦後、支配し、親米国家にしよう(ソ連と対抗するために)」なんてのは、開戦前などではなく「アメリカの勝利の見通しが立つと共に、戦後のソ連との冷戦が予想されるようになる」開戦したずっと後のことです。