三浦小太郎に突っ込む(2020年1月25日分)

月刊Hanadaに連載をさせていただくことになりました。今日発売の3月号に載っています | 三浦小太郎BLOG Blue Moon

 月刊Hanadaに連載をさせていただくことになりまして、今月(1月)24日発売の3月号に「【新シリーズ 戦後名論文再読1】三浦小太郎 清水幾太郎 日本よ、国家たれ―核の選択」が掲載されます。

 清水論文がどんな代物か、三浦が簡単にすら説明しないのは「日本核武装」という清水の主張があまりにも非常識すぎるからでしょうか?。
 まあ「核の選択」なんてタイトルの文章が、月刊Hanadaで紹介され紹介者が三浦という時点で「Hanadaと三浦が極右だ」と知ってれば別に清水を知らなくても、内容は「核武装論だろう」と想像がつきますが。
 まあ昔はともかく今は清水幾太郎なんて無名に近い「忘れられた存在」だと思います。後で簡単に触れますが「安保反対派から核武装支持」という常人には理解しがたい変節をしたこと(しかも核武装という非常識主張に変節したこと)がやはり「忘れられた理由」でしょう(とはいえ、非常識極右でも三島由紀夫などは忘れられていませんので、学者としての能力に疑問符がつく御仁なのでしょう。一応「オーギュスト・コント研究者」ではあるのですが)。日本核武装論には批判的な「左派やリベラル保守は勿論」、核武装支持の極右派にとってもこの種の変節者は褒めづらいものがあります。
 いわゆる1960年安保闘争では鶴見俊輔*1日高六郎*2丸山真男*3などとともに左派、ないしリベラル派の学者として岸*4政権批判を展開した清水は晩年、三浦が月刊Hanadaで紹介したというウヨ論文「日本よ、国家たれ―核の選択」で日本核武装を主張するまでに極右化します。
 常人には理解しがたい変節であり、「藤岡信勝*5」「筆坂秀世*6」など、「1990年代以降に、極右に転向した元左翼(あるいは元リベラル保守)」の先輩と言っていいでしょう。

参考

清水幾太郎(1907~1988年、ウィキペディア参照)
 1932年「唯物論研究会」幹事、1938年「昭和研究会」文化委員、1939年東京朝日新聞社学藝部専属、1941年読売新聞社論説委員終戦時は海軍技術研究所嘱託。戦後は1946年二十世紀研究所設立、1949年平和問題談話会参加。
 1949年から1969年まで学習院大学教授。
◆著書
・『流言蜚語』(1937年、日本評論社→2011年、ちくま学芸文庫)
・『愛国心』(1950年、岩波新書→2013年、ちくま学芸文庫)
・『論文の書き方』(1959年、岩波新書)
・『私の文章作法』(1971年、潮新書→1995年、中公文庫)
・『社会心理学』(1972年、岩波全書)
・『倫理学ノート』(1972年、岩波全書→2000年、講談社学術文庫)
・『本はどう読むか』(1972年、講談社現代新書)
・『日本人の突破口』、『無思想時代の思想』(1975年、中公叢書)
・『私の読書と人生』(1977年、講談社学術文庫)
・『オーギュスト・コント』(1978年、岩波新書→2014年、ちくま学芸文庫)
・『昨日の旅:ラテン・アメリカからスペインへ』(1977年、文藝春秋→1990年、中公文庫)
・『戦後を疑う』(1980年、講談社→1985年、講談社文庫)
・『日本よ国家たれ:核の選択』(1980年、文藝春秋)など
◆参考文献
小熊英二*7清水幾太郎』(2003年、御茶の水書房
・庄司武史*8清水幾太郎』(2015年、ミネルヴァ書房

*1:1922~2015年。元同志社大学教授。著書『北米体験再考』(1971年、岩波新書)、『アメリカ哲学』(1986年、講談社学術文庫)、『柳宗悦』(1994年、平凡社ライブラリー)、『老いの生きかた』(1997年、ちくま文庫)、『アメノウズメ伝』(1997年、平凡社ライブラリー)、『限界芸術論』(1999年、ちくま学芸文庫)、『太夫才蔵伝:漫才をつらぬくもの』(2000年、平凡社ライブラリー)、『戦時期日本の精神史:1931‐1945年』、『戦後日本の大衆文化史:1945‐1980年』(以上、2001年、岩波現代文庫)、『夢野久作・迷宮の住人』(2004年、双葉文庫)、『回想の人びと』(2006年、ちくま文庫)、『期待と回想』(2008年、朝日文庫)、『教育再定義への試み』、『竹内好』(以上、2010年、岩波現代文庫)、『思い出袋』(2010年、岩波新書)、『文章心得帖』(2013年、ちくま学芸文庫)、『埴谷雄高』(2016年、講談社文芸文庫)など(ウィキペディア鶴見俊輔』参照)

*2:1917~2018年。元東京大学教授。著書『戦後思想を考える』(1980年、岩波新書)、『私の平和論:戦前から戦後へ』(1995年、岩波新書)、『戦争のなかで考えたこと:ある家族の物語』(2005年、筑摩書房)、『私の憲法体験』(2010年、筑摩書房)など(ウィキペディア日高六郎』参照)。

*3:1914~1996年。東京大学名誉教授。著書『日本の思想』(1961年、岩波新書)、『戦中と戦後の間:1936-1957』(1976年、みすず書房)、『後衛の位置から』(1982年、未来社)、『「文明論之概略」を読む(上・中・下)』(1986年、岩波新書)、『忠誠と反逆:転形期日本の精神史的位相』(1998年、ちくま学芸文庫)、『福沢諭吉の哲学他六篇』(2011年、岩波文庫)、『政治の世界他十篇』(2014年、岩波文庫)、『超国家主義の論理と心理他八篇』(2015年、岩波文庫) など(ウィキペディア丸山真男』参照)

*4:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(いずれも鳩山一郎総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*5:1943年生まれ。元東大教授、元拓殖大教授。元「新しい歴史教科書をつくる会」会長(現在は副会長)。右翼転向後の著書に『自由主義史観とは何か』(1997年、PHP文庫)、『「自虐史観」の病理』(2000年、文春文庫)、『汚辱の近現代史』(2001年、徳間文庫)、『教科書採択の真相:かくして歴史は歪められる』(2005年、PHP新書)など(ウィキペディア藤岡信勝』参照)

*6:1948年生まれ。元参院議員(元日本共産党政策委員長)。セクハラ問題で政策委員長を更迭後、離党し右翼転向。右翼転向後の著書に『日本共産党中韓:左から右へ大転換してわかったこと』(2015年、ワニブックスPLUS新書)、『日本共産党の最新レトリック』(2019年、産経新聞出版)など

*7:慶應義塾大学教授。著書『単一民族神話の起源』(1995年、新曜社)、『<日本人>の境界 沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮:植民地支配から復帰運動まで』(1998年、新曜社)、『<民主>と<愛国>:戦後日本のナショナリズムと公共性』(2002年、新曜社)、『市民と武装アメリカ合衆国における戦争と銃規制』(2004年、慶應義塾大学出版会)、『社会を変えるには』(2012年、講談社現代新書)、『生きて帰ってきた男:ある日本兵の戦争と戦後』(2015年、岩波新書)、『日本社会のしくみ:雇用・教育・福祉の歴史社会学』(2019年、講談社現代新書)など

*8:首都大学東京助教