黒坂真に突っ込む(2020年2月16日分)

◆黒坂ツイートにコメント

黒坂真リツイート
 中野顕さん。昭和54年3月、(ボーガス注:中越戦争取材中の)高野赤旗記者がベトナム人民解放軍に射殺されました。中国共産党はこの件について謝罪も償いもしていない。


 id:Bill_McCrearyさんも拙記事に批判コメントしていますが、また「高野記者ガー」だそうです。
 日本共産党が近年、「ウイグル問題や香港問題など」を理由に中国批判を強め、M谷N子*1.・明治大学准教授などに一定の評価を得てることがよほどに気にくわないようですが、まあ、ばかばかしいですね。
 以前も指摘しましたが「文革当時、日本共産党を攻撃したことはすまなかった(1998年の日中両党関係回復当時の中国共産党の謝罪)」に高野氏の件も入ってるとみるべきでしょう。回復当時は「鄧小平(1997年2月死去)」など高野氏死去当時の関係者も死去している。
 これ以上「高野の名前を挙げて謝罪しろ」だの「高野の遺族に慰謝料を払え」だの言っても現実的ではなく、当然建設的でもない。

黒坂真リツイート
・Davisys
 そもそも、共産党が暴力的破壊活動を敢行したから破防法ができて、公安調査庁ができたというのが歴史的事実。そして、その後の共産党敵の出方論に基づく暴力革命の方針を捨てていないのも歴史的事実。現状及び共産党の力量が革命行動を起こす時期ではないから破壊活動をやっていないわけ。

 安倍の例の反共暴言「共産党は暴力革命を未だ目指してる(根拠として破防法公安調査庁だの敵の出方論だのを持ち出す)」なんか島田洋一櫻井よしこですらツイートで擁護してないのに黒坂と類友には心底呆れます。
 「徳田書記長時代に火焔瓶闘争したから破防法公安調査庁が出来た」といったところで、その後の「宮本→不破→志位(現在)」委員長時代には火焔瓶闘争などしてないし、破防法の適用もされてない*2のだから言いがかりでしかない。
 こんな物言いが許されるのなら「日本は昔、中国や韓国、東南アジアを侵略した。安倍や『安倍を支持する右翼層(日本会議など)』はそうした過去の侵略の事実を謝罪することに否定的だ。だからまた日本はアジア侵略するかもしれない」ということもOKになるでしょう(俺も安倍の『戦前日本の侵略に対する無反省さ』には呆れますがさすがに安倍政権下においてアジア侵略はしないと思っています)。
 個人的には公安警察やウヨなどのこうした言いがかりをなくすためにも「敵の出方論は事実上死文化してるし、もはや公式に削除してはどうか」と思いますが、いずれにせよ、今時、事実上死文化*3している「敵の出方論」で安倍の暴言を正当化しようなど出来る話ではない。「敵の出方論を公式に削除しない限り、安倍首相は正しい」などデマカセにもほどがあります。
 そもそも公安調査庁なんて「オウム事件がなければ廃止されていた」「公安警察、公安検察より下に見られてる(公安調査庁なんかなくても公安警察と公安検察で用が足りる)」「法務省内部でも検察、法務局、入管、刑務所など他部門より下に見られてる(公安調査庁以外の部署は必要だが、公安調査庁なんか不要)」三流官庁なんですが。
 「現状及び共産党の力量ガー」つうのも無茶苦茶な詭弁です。
 第一に(主張内容の是非はともかく)「敵の出方論」は「敵(保守政権)が非合法な手段(暗殺部隊による共産党員虐殺など)で我々を攻撃したら、我々だって合法的手段にとどまらないで武力も用いて反撃する。それは自衛権の正当な発動だ」つう論理であり、たとえるなら「香港警察が暴力を振るうから、我々だって反撃のために暴力を振るう(香港の暴力デモ)」つう話です。
 「暴力を振るうことが都合が良ければ暴力を振るう*4」「敵が暴力を振るわなくても、こちらから先制攻撃で暴力を振るうこともあり得る」と言う話ではそもそもない。
 第二に「現状及び共産党の力量ガー」とは意味不明です。共産党の力量が国政において単独政権を樹立できるほどの力があるなら、当然選挙で勝利すればいいだけであり、暴力革命なんかする必要がない。
 一方で共産党の力量が弱い*5として、そこで「党員や後援会員など支持者を増やして力量を強めよう」ならともかく「暴力革命しよう」なんて誰が思うのか。
 むしろ「徳田時代の暴力路線が支持を減らし力を弱めた」というのが今の共産党の公式見解でしょうに。
 大体、「一応、民主主義国家」の日本で「暴力革命が現実的な情勢」なんて今後あり得るわけがないでしょう。日本で「ユーゴ、シリアやリビア、イエメンなどでの内戦」のような事態が起こるわけもない。終戦直後の「火焔瓶闘争」を俺は擁護しませんが、あれにしたって「日本敗戦→GHQの占領」や「ソ連の命令(日本に限らず、当時、世界各国の共産党においてはソ連には絶大な権威が会った)」という異常事態、非常事態によって生じた現象です。
 「日本国内や国際社会で何も変化がない」のにいきなり火焔瓶闘争が始まったわけではない。「米ソ対立が背景」と言う意味では「中国での国共内戦」「朝鮮半島分裂」「東欧のソ連化」に似た現象と言っていいでしょう。
 話が脱線しますが、「吉田茂*6」「岸信介*7」「池田勇人*8」「佐藤栄作*9」「田中角栄*10」(以上の人物のウチ、実業家の田中以外は、戦前から全て官僚として政治に関わってきたとはいえ政治家となったのは戦後のことです)などが戦後、政界に進出したのも「日本敗戦→GHQの占領」という異常事態、非常事態によって「戦前政治家が政治力を失ったこと(例えば戦後の幣原*11内閣が短命で終わったこと)」で生じた現象です(鳩山一郎*12三木武夫*13など戦前から活躍し、戦後も活躍した政治家もいますが)。
 いずれにせよ本気でこんなことを言ってるにせよ、詭弁にせよ「共産が暴力革命」などバカとしか言い様がない。
 第三にこの物言いはどう言い訳しようとも「1955年のいわゆる六全協」による「共産党の統一回復以降」、共産党が暴力手段に打って出たことはないことを事実上認めてるわけです。 

*1:著書『亡命者が語る政治弾圧:中国を追われたウイグル人』(2007年、文春新書)など

*2:一方、右翼が三無事件(1961年)で、極左過激派がいわゆる渋谷暴動事件(1971年)で適用されています。

*3:実際問題、共産党内部で「敵の出方」に備えた党員の軍事訓練なんかしてないでしょうし。

*4:まあ現実問題として暴力を振るうことが都合が良い情勢などあり得ませんが。

*5:まあ、現状では、単独政権を樹立できるほど強くはないが、国会に議員を送り出せる程度には強いと言ったところですね

*6:戦前は天津総領事、奉天総領事、駐スウェーデン公使、外務次官、駐伊大使、駐英大使など歴任。戦後は東久邇宮、幣原内閣外相を経て首相

*7:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党自民党幹事長(鳩山総裁)、石橋内閣外相を経て首相

*8:大蔵次官から政界入り。自由党政調会長(吉田総裁時代)、吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*9:運輸次官から政界入り。自由党幹事長(吉田総裁時代)、吉田内閣郵政相、建設相、岸内閣蔵相、自民党総務会長(岸総裁時代)、池田内閣通産相科学技術庁長官などを経て首相

*10:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)などを経て首相

*11:戦前、外務次官、駐米大使。加藤高明、第1次若槻、濱口、第2次若槻内閣外相など歴任。戦後、首相、吉田内閣副総理、日本進歩党総裁、衆院議長を歴任

*12:戦前、田中内閣書記官長、犬養、斎藤内閣文相など歴任。戦後、日本自由党総裁、日本民主党総裁、自民党総裁、首相を歴任

*13:国民協同党委員長、片山内閣逓信相、国民民主党幹事長(委員長・苫米地義三)、改進党幹事長(委員長・重光葵)、鳩山一郎内閣運輸相、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼務)、池田内閣科学技術庁長官、自民党政調会長、幹事長(池田総裁時代)、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣副総理・環境庁長官などを経て首相