高世仁に突っ込む(2020年6/8日分)

横田滋さんの逝去によせて3 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 高世仁に突っ込む(2020年6/7日分)(注:藤子・F・不二雄作品『コロリころげた木の根っ子』『老雄大いに語る』のネタばらしがあります) - bogus-simotukareのブログで取り上げた高世記事横田滋さんの逝去によせて2 - 高世仁の「諸悪莫作」日記の続きです。

 失踪後の経緯について、滋さんが1999年初頭に書いた文章がある。
・これまで学校帰りに寄り道をしたことは一度もなかったので、私は、事件に巻き込まれたと直感し、その日のうちに警察に捜索願を出しました。
・めぐみがいなくなってから、妻は「私の育てかたが悪かったので家を飛び出したのだろうか」と何度も言いました。私は「そんなことはない、事件に巻き込まれたのだろう」とその都度答えましたが、事件に巻き込まれたのなら生命が危ないわけで、どちらの答えにしても良いものではありません。
・私たちは、家出であって欲しいと願っていました。
(以上の引用文章は、拙著『娘をかえせ息子をかえせ―北朝鮮拉致事件の真相』旬報社より)

 「奥さんの発言は、本当なのかよ?」ですね。今まで家出するそぶりなどなかった子どもが突然謎の失踪をすれば誰しも考えるのは滋氏同様に「事故や犯罪に巻き込まれたこと」でしょう。さすがに北朝鮮拉致なんか誰も予想しませんが。
 大体家出する場合だって「友達など知人の家に行く(ドラえもんでの『のび太の家出』がこのパターンです)」のが普通であって「どこに行ったかさっぱり分からない」なんてありえない。
 「性犯罪者に誘拐されレイプされた上殺されたんじゃないか」とか「飲酒運転でひき逃げされて死亡した上、証拠隠滅のために山にでも埋められたんじゃないか」とか。
 いずれにせよ「安寿と厨子王の時代」ならまだしも、「日本国内でアレ日本国外でアレ」、生かしたまま誘拐して利用することは「考えづらい」*1ため、どうしても「殺されたんじゃ」つう不安はよぎります。
 しかもあの奥さんて「どうみても無駄に自分に自信がある」。「私の子育てのせいで家出したんじゃ」と思う人間とは信じられません。失礼ながら作り話じゃないか。

 このつらさを滋さんたち拉致被害者の家族たちは、へびの生殺しのようだという。死んだと分かれば、悲しみのあとに諦めもつくが、滋さんたちは、もっていき場のない苦しみが延々と続くのである。

 まあ、これは拉致被害者家族に限りません。失踪者のご家族は皆同じでしょう。
 失踪が自発的失踪か、犯罪や事故に巻き込まれたか、生きてるか死んでるか分からないわけですから。死んだと明確には分からない場合でも「東日本大震災で行方が分からなくなった」「太平洋戦争で出征したが(以下略)」「東京大空襲で(以下略)」という「遺体は見つからないがたぶん天災や戦争で死んだのだろう」と「死亡の事実とその理由」が予想できるケースとは全然違う。
 当人が生きたまま発見されて自発的失踪と分かるか、あるいは遺体が発見されて事故死や自殺、他殺と分かるかしないと。
 そして発見されてけりがついても「自発的失踪した家族と今後どう付き合うか悩ましい」「他殺犯人がつかまらないとつらい」といった別の苦しみがまた続くことが多いわけです。

 石高氏*2は韓国に亡命した北朝鮮工作員の証言を、韓国情報部の幹部から伝え聞いている。画期的な証言ではあるが、これはあくまで「又聞き」の情報である。
 これに対して、2月4日の元北朝鮮工作員安明進氏のインタビューは、本人が語った直接の目撃証言である。このインパクトはきわめて大きかった。

 と書く高世ですが実は安の証言も「自分が拉致した」ではなく「拉致したと工作員仲間の実行犯から聞いた」という又聞き情報であり、その点では信頼性に難があります。
 疑えば「そんな実行犯はいない。安の捏造」という可能性もあるし、疑問点を安に問いただしても「直接の実行犯じゃないから分からない」「あなたのような疑問は感じなかったのでその時、私は問いたださなかった」で終わってしまうからです。

石高リポートの情報の出元になった、亡命した「北朝鮮工作員」と安明進氏は同一人物なのだろうか。
(つづく)

 まあ、これは重要なポイントでしょうね。
 「同じ」なら「ああ、そうですか」で終わる話です。
 「違う」のならパターンとしては次の2パターンが考えられるでしょう。
1)北朝鮮での工作員時代に『実行犯から聞いた』という安発言は事実。その実行犯が石高レポートの『亡命した北朝鮮工作員
2)安発言は嘘。石高レポートを仕掛けた韓国公安は「世間の反応の弱さ」に「顔出しで誰かに証言させないと駄目だ」と思ったが『亡命した北朝鮮工作員(実行犯?)』は顔出しでの証言を拒否した。そこで「顔出しOK」の安に顔出し証言させることにしたが、安は実行犯でないので『実行犯から聞いた』というストーリーが捏造された
 2)であるのならば、安の証言に多々疑問点が生じ、『本当に証言は事実なのか?』という疑問が指摘されたのはある意味当然でしょう。
 まあ、とりあえず「つづく」待ちですが。「同じ」なら「ああ、そうですか」で終わる話ですので。

*1:幸いなことにめぐみさんの場合は国外に生きたまま連れ出されたわけですが。また、1990年に発生し2000年に犯人が逮捕された新潟少女監禁事件 - Wikipediaや 数年前に起こった朝霞少女誘拐事件など「生きたまま誘拐(そして監禁)」と言うケースもレアケースながらありますが

*2:著書『金正日の拉致指令』(1998年、朝日文庫)、『これでもシラを切るのか北朝鮮』(2003年、幻冬舎文庫)など