今日の産経ニュース(2020年7月25日分)(追記あり)

【追記】
 栗城史多という人の周囲についてどれだけ書けるかが問題だ - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でこの拙記事をご紹介頂きました。いつもありがとうございます。
【追記終わり】


開高健NF賞は河野啓さん - 産経ニュース
 開高には『ベトナム戦記』(1990年、朝日文庫)などノンフィクション的作品もあるとは言え、本業は小説家なので「開高健ノンフィクション賞」つうのには個人的には

『日本の黒い霧』、『昭和史発掘』(以上、文春文庫)などノンフィクション的作品もあることを理由に『松本清張ノンフィクション賞』を設立

するくらい違和感がありますがそれはさておき(なお、文春主催の松本清張賞 - Wikipediaがありますがこれは小説が対象でノンフィクションは対象ではありません)。

 第18回開高健ノンフィクション賞(集英社主催)は、河野啓さんの「デス・ゾーン 栗城史多(くりき・のぶかず)のエベレスト劇場」に決まった。賞金は300万円。河野さんは愛媛県出身。北海道放送に入社。ディレクターとしてドキュメンタリー番組などを制作してきた。

 既に出版された本に与えられる賞では無く、「開高賞」に応募し、受賞した作品が「集英社から刊行」なので現時点では、河野氏がどんな文章を書いたか(栗城氏を無批判に美化しているのかどうか)は分かりません。
 まあ、美化していなくても、結局、「彼について描くこと」は、何というか「無謀登山者をさらし者にしている」ようで、あまり好意が持てませんね。
 いくら「熱烈なファンが一部にいたから」といって、彼のやっていたことには社会的意義は認められないでしょう。むしろ「変人がバカやってる」として面白がってればいい物を無理に「社会的意義がある」としてしまったからこそ、彼も引くに引けず、死に至ったという面があるかと思います。
 まあ、彼について書くノンフィクションもあっていいのかもしれませんが賞まで与えるべき話なのか。俺なんかこう見えて真面目(?)な人間なので「ノンフィクション賞与えるのなら社会批判とか権力批判とか、そこまで行かなくてもせめて、社会的意義のある活動をネタにしたものに賞をやれよ」「民放の情報バラエティみたいなもんに賞をやるな」と思いますね。
 俺が選考委員*1なら絶対に受賞作には選ばないと思います。なお、栗城の無謀登山については「どうもなあ」と言わざるを得ない遭難死 - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)を紹介しておきます。

【追記】

「どうもなあ」と言わざるを得ない遭難死 - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
id:Bill_McCrearyさん
 コメントありがとうございます。明日(7/28)の記事で、この件で記事を発表します。
 栗城氏個人についていまさら彼の行動を批判してもあんまり意味がないと思いますので、彼にかかわった個人、組織についてどれだけ書いてあるかがポイントかと思います。

 なるほど「栗城の登山を美化するのは余りにも問題がある」「登山に限らず二度とああした『無茶な美化』はすべきで無い(また同様の悲劇が起きかねない)」という批判的ニュアンスで彼に関わった個人や組織について一定の批判を加えているのであれば「河野本にもそれなりの価値はあるかな」と思います。
 とはいえ、河野本がそうした物かどうかは現時点では分かりませんし、そう言う物だとしても俺だったら「賞まで与える気にはなりませんが」。


参考

栗城史多 - Wikipedia
【経歴】
 「元ニート」 「元引きこもり」 を自称しているが、これはあくまでキャラクター作りのための設定であり、実際にはそのどちらでもない。「元ニート」を名乗るようになったきっかけは、栗城の全国デビューとなる企画に、『電波少年』で知られる日本テレビプロデューサーの土屋敏男が「ニートアルピニスト、初めてのヒマラヤ」というタイトルをつけたためである。
【テレビ出演】
◆ザ・ノンフィクション『山のバカヤロー 〜登山家 栗城史多〜』(2009年2月22日、フジテレビ)
◆バース・デイ (2010年、TBSテレビ)
 日本人初!単独無酸素でエベレストへ命知らずの登山家に密着 (2010年1月25日)
 登山家 栗城史多 27歳 単独無酸素でのエベレスト登頂への挑戦 (2010年2月1日)
◆頂の彼方へ…栗城史多の挑戦 (2010年7月17日、BSジャパン(現・BSテレビ東京))
◆地球の頂きへ 栗城史多 エベレスト挑戦 (2010年10月24日、テレビ東京
◆地球の頂きへ 栗城史多 エベレスト挑戦〜完全版(2011年1月3日、テレビ東京
◆ザ・ノンフィクション『山のバカヤロー2』(2012年5月6日、フジテレビ)
◆No Limit 終わらない挑戦 (2012年12月23日、NHK総合テレビ
◆5度目のエベレストへ〜栗城史多 どん底からの挑戦〜(2016年1月4日、NHK総合テレビ

ということで「死に至る2018年」までテレビ局が散々彼を持ち上げてきたわけです。

登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪 (1/4) - ITmedia ビジネスオンライン
 生前の栗城さんは「冒険の共有」をテーマに全国でも講演活動を展開し、多くの若者から支持を集めていた。
 「日本人初となる世界七大陸最高峰の単独無酸素登頂に挑戦している」という言葉で自らのキャラクターをメディアに向けて発信していた。
 だが、この単独無酸素の言葉には有識者たちに以前から疑問を投げかけられている。テレビ番組で栗城さんのことを「マラソンに例えれば、彼はプロランナーではなく市民ランナー。3.5流のレベル」と言い切る著名な登山家もいた。
 しかも栗城さんは2012年のエベレスト登頂に失敗した際も、下山途中に深刻な凍傷を負って両手の指9本の第2関節から先を失ってしまっていた。「これでは岩もつかめず、ピッケルも使うのが困難」と有識者から指摘されるのも無理はない。普通に考えれば、こういうハンディキャップを背負いながらエベレストの南西壁という絶壁を登ることなど、わざわざ命を捨てに行くようなものだ。
 それでも、なぜ栗城さんは、あえて難攻不落の「単独無酸素・エベレスト南西壁ルート」に挑んだのか。おそらく、もう後へ引けない状況になってしまっていたのだろう。某民放局の有名プロデューサー*2はブレイクする前の栗城さんを自らの番組で取り上げ、全国的な有名人に仕立て上げるべく「ニートアルピニスト、初めてのヒマラヤ」として売り出した。実際はニートではなかったが、このキャッチフレーズはやがて一人歩きし、殻を打ち破れずに悩んでいる若者たちの共感を受けるようになった。
 2009年のダウラギリ登頂などインターネットでも登山の様子が中継されるようになってPV数を稼ぐようになるとスポンサーも集まり、やがては大手芸能事務所*3も彼の元へ飛び付いた。
 今回の死に至る悲運の結末を招いた「単独無酸素・エベレスト南西壁ルート」への挑戦も大手の某インターネットテレビ局*4で山頂アタックの瞬間が配信されることが決まっていた。だが、これまでも有名登山家から「市民ランナー」と称されていた人が自分の実力を測り切れていないうちに周囲から持ち上げられ続けて「大丈夫だから、君ならばやれるよ」と背中を押されれば、どうなるか。
 たとえ本人がハッと我に返って「いや、やっぱり難しい」と思っても決して口にすることはできず、これだけ周囲が莫大なカネを集めて壮大な企画を立てて動き始めてしまった以上、後戻りは許されない八方塞の状況になってしまっていたような気がしてならない。個人的には、やはり周囲が「栗城さん推し」を止め、ストップをかけるべきだったと思う。
 栗城さんは崖っぷちに立たされた挙句に最後は突き落とされてしまったような気がしてならない。


【昭和天皇の87年】永遠の天皇、穏やかに崩御 激動の時代の幕は下りた - 産経ニュース
【昭和天皇の87年】最終回 特攻隊が教えてくれた君民の絆 - 産経ニュース
 ということで長かった連載もこれで最終回です。当初は無料記事だったのが有料記事となり、産経に金など払いたくないので途中からは全然読めていませんが。
 それにしても「特攻隊が教えてくれた君民の絆」とは非常識にもほどがあります。あんな「人権無視の自殺作戦=特攻」は昭和天皇にとって「忘れ去りたい黒歴史」でしょうに産経はそうは思わないようです。

 2カ月ほど前、筆者は産経新聞那覇支局勤務を命ぜられて着任した。

 「昭和天皇は沖縄を捨て石になどしていない」と公言するデマ屋が那覇支局勤務だそうです。げんなりしますね。

 先の大戦を、日本が悪だと一方的に決めつけてしまえば、昭和という時代は理解できないだろう。

 日本から中国(満州事変など)や米国相手(太平洋戦争)に開戦したのに何を言ってるのかという話です。

 世界最強国と戦ってひるまず、戦後はどん底から奇跡の復興を遂げた。

 本多勝一氏も以前指摘していたと思いますが「ベトナム戦争」のようなケース(共産国北ベトナムを米国が打倒しようとしている)なら妥協の余地がないので「世界最強国(米国)と戦ってひるまず」といってもいいでしょう。太平洋戦争なんか「ハルノートを受諾すれば回避できた戦争」です。
 大体「米国と戦ってスゴイ、経済発展してスゴイ」つうなら「朝鮮戦争で米国と戦争し、現在は改革開放で経済大国」の中国もそれに該当するんですが(苦笑)。産経は「中国ってスゴイ」というのか。といったら言わないのでしょうが。


【主張】日露平和条約 領土の本質すり替えるな - 産経ニュース

 外務省のザハロワ報道官は最近の記者会見で、「日本との平和条約締結交渉は国境の画定と何ら関係ない」と述べた。交渉の目的は「友好や善隣、協力」をうたった合意文書を結ぶことだという。
 ラブロフ*5外相も、念頭に置いているのは善隣友好条約のようなものだと説明し、北方領土が「第二次大戦の結果」としてロシア領になったとの言説を繰り返した。
 露高官らは、日本との間に領土問題は存在しないと主張したいのだろう。

 ということでロシアに北方領土を返還する気が無いらしいことが「以前から明白だった」と思いますが「改めて明白」になったわけです。是非はともかく、安倍に「返還なしでの日露平和条約を締結する選択肢」はないでしょう。それは過去の「島の返還ゼロでの平和条約締結はあり得ない」という政府方針を変更することになりますが、そんなことが安倍に出来るとも思えない。
 一方でこうした「返還意思ゼロ」を変える策も安倍には無いでしょうから「平和条約締結など当面あり得ない」わけです。

*1:なお、開高健 ノンフィクション賞 集英社学芸部 - 学芸・ノンフィクションによれば現在の選考委員は姜尚中氏(東大名誉教授)、田中優子氏(法政大学総長)、藤沢周氏(作家)、茂木健一郎氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員)、森達也氏(ドキュメンタリー監督、ノンフィクション作家)。森氏には『悪役レスラーは笑う:「卑劣なジャップ」グレート東郷』(2005年、岩波新書)、『下山事件(シモヤマ・ケース)』(2006年、新潮文庫)、『クォン・デ:もう一人のラストエンペラー』(2007年、角川文庫)、『「A」:マスコミが報道しなかったオウムの素顔』、『職業欄はエスパー』(以上、2013年、角川文庫)などのノンフィクション作品がありますが他の選考委員はノンフィクションの専門家とは言いがたいでしょう。

*2:栗城史多 - Wikipediaによれば日本テレビ土屋敏男

*3:栗城史多 - Wikipediaによれば吉本興業

*4:栗城史多 - WikipediaによればAbemaTV

*5:外務次官、国連大使などを経て外相