今日の中国ニュース(2020年8月18日分)(追記あり)

台湾、ソマリランドに代表機関を開設 新たな外交模索:朝日新聞デジタル
ソマリランドに代表機関 開所式で互いに「国旗」掲揚―台湾:時事ドットコム
【矢板明夫の中国点描】世界注目、2020年は台湾の年 - 産経ニュース

台湾、ソマリランドに代表機関を開設 新たな外交模索:朝日新聞デジタル
 台湾の外交部(外務省)は17日、アフリカ東部にあるソマリランドに代表機関を開設したと発表した。ソマリランドは1991年にソマリアから分離独立を宣言した地域。台湾は外交関係が次々と断交され、国際機関から排除されており、新たな外交関係の樹立を模索している。

ソマリランドに代表機関 開所式で互いに「国旗」掲揚―台湾:時事ドットコム
 アフリカのソマリア北部で半独立状態*1を続けている「ソマリランド共和国」の「首都」ハルゲイサで17日、台湾の代表機関が開設された。開所式で台湾代表は「互いの利益と友情を確信している」と強調した。
 中国は台湾の蔡英文総統の弱体化を図るため、台湾と外交関係を持つ国々の切り崩しを進めているが、小さな反撃となった。

【矢板明夫の中国点描】世界注目、2020年は台湾の年 - 産経ニュース
 アフリカ大陸の東端にある半独立状態の「ソマリランド共和国」の「首都」ハルゲイサで17日、台湾が称する「中華民国」の「青天白日満地紅旗」が高らかに掲揚された。
 国際社会からは承認されていないが、1991年にソマリアから分離独立を宣言し、実質的に国家として機能するソマリランドが7月、台湾と代表機構の相互設置で合意した。双方は医療、技術、教育などの分野で協力を深めるという。

 上で紹介した記事にも簡単に書いてありますし、ソマリランド - Wikipediaを見れば分かりますが「1991年に分離独立を宣言したがソマリアはそれを認めておらず、ほとんどの国(日本、欧米、中国、アフリカ諸国など)はソマリアに配慮して国家承認しておらず、もちろん国連にも加盟してない」なんてのがソマリランドです。
 つまり「中国=ソマリア」「台湾=ソマリランド」みたいな状況です。中国が「台湾は不可分の領土だ」というようにソマリアも「ソマリランドは不可分の領土だ」と言っている。
 中国からすれば「ソマリランドと国交を結びたいなら勝手にしろよ。うちはソマリランドは国と認めてねえから」「大体ソマリランドを国と認めてる方が少ねえだろ」で終わってしまう話でしょう。
 こんな「国交結んでどれほど意味があるのか」なんてもんにまで手を出すなんて「どんだけ台湾は中国に追い込まれてるんだよ」て話です。 
 結局、習政権になってから断交されたアフリカの国々「サントメ・プリンシペ」「ブルキナファソ」(勿論国連加盟国)を「中国から奪い返すこと」は蔡英文にはできないわけです。結局、ソマリランド(国連非加盟の自称独立国)以外では台湾が国交がある国は「国連加盟国」エスワティニ(旧称:スワジランド)だけです。
 まあ、これでも蔡英文信者は「大きな外交成果だ!」と称えてくれるのかもしれませんが。信者ってそういうもんですから。でも客観的に見れば「結局サントメ・プリンシペブルキナファソは取り戻せないんじゃん。中国の仕掛けた断交ドミノに対抗できないんじゃん。ソマリランドなんか最初から中国と国交がないし、外交的に中国に負けてんじゃん」て話でしか無いですが。
 ちなみにソマリランドについては高野秀行*2『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』(2017年、集英社文庫)なんて本がありますね。
 プントランド - Wikipediaを見れば分かりますが、高野本が取り上げる『プントランド』も『ソマリランド』同様に「1998年に分離独立を宣言したがソマリアはそれを認めておらず、ほとんどの国(日本、欧米、中国、アフリカ諸国など)はソマリアに配慮して国家承認しておらず、もちろん国連にも加盟してない」なんて代物です。

【参考:アフリカでの断交ドミノ】

台湾と西アフリカ島国が断交 サントメ・プリンシペ 中国は歓迎、蔡英文政権へ外交圧力(1/2ページ) - 産経ニュース
 台湾の外交部(外務省に相当)は21日、外交関係があった西アフリカの島国サントメ・プリンシペと断交したと発表した。5月に民主進歩党蔡英文政権が発足して以降、台湾と断交する国は初めて。「一つの中国」原則を認めない蔡政権に対し、中国は外交圧力を強めており、中台関係の冷却化がさらに進みそうだ。
 台湾の李大維外交部長(外相)は21日、記者会見し、サントメ・プリンシペ政府から巨額の支援要請があり、拒否したことを明らかにした。同国は21日未明、台湾側に断交を通知。李氏は中台双方の支援額を比較する同国の姿勢は「軽率で非友好的だ」として「遺憾と非難」の意を表明した。これにより台湾と外交関係がある国は21カ国となった。
 台湾の立法委員(国会議員)によると、サントメ・プリンシペは2億1000万ドル(約250億円)の支援を要求。李氏は、同国の人口約19万人からみて「天文学的な数字」だと批判した。同国は1975年にポルトガルから独立後、中国と国交があったが、97年に台湾と外交関係を樹立し、中国と断交。だが、2013年には中国と貿易推進で合意していた。
 中国外務省の華春瑩報道官は21日、サントメ・プリンシペが「『一つの中国』原則の正しい軌道の上に戻ってきたことを歓迎する」と述べた。これに対し台湾の総統府は声明で「中国大陸政府が(サントメ・プリンシペの)財政難に乗じて『一つの中国』原則を操作した」と批判した。
 台湾の馬英九前政権は「一つの中国」を前提とする「1992年コンセンサス(合意)」に基づき中台関係を改善。馬政権の8年間で台湾と断交したのはガンビアのみだった。

台湾また断交 今度はブルキナファソ - 産経ニュース
 台湾の呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(外相に相当)は24日夜、緊急記者会見し、西アフリカのブルキナファソから外交関係の断絶を通告されたと発表した。今月1日にはカリブ海ドミニカ共和国が台湾と断交し、中国と国交を樹立したばかり。台湾と外交関係を有する国は、過去最少を更新し18カ国となった。
 呉氏は中国が「金銭外交」で「友好国を奪った」と批判。中国が500億ドル(約5兆4500億円)の経済援助を提案したとの報道が昨年あったことを強調した。蔡英文総統も総統府で談話を発表し、「中国政府に告ぐ」と強い調子で「台湾社会の限界に挑戦するものだ」と非難した。
 蔡氏は4月、アフリカのスワジランドエスワティニ)を訪問した際、ブルキナファソへの訪問も打診したが、「大統領の国際会議出席」(呉氏)を理由に実現しなかった。同国は1973年にも台湾と断交し中国と国交を樹立。94年に台湾と復交した経緯がある。
 台湾が1カ月以内に2カ国と断交するのは李登輝政権下の98年1月以来で、蔡政権は「断交ドミノ」状態に陥りつつある。

西アフリカのブルキナファソが台湾と断交 :日本経済新聞
 台湾の外交部(外務省)は24日、西アフリカのブルキナファソから通告を受け、同日付で断交したと発表した。背景には中国の働きかけがあったとみられる。ブルキナファソは中国と国交を結ぶ見通しだ。これで台湾と外交関係がある国は18カ国に減り、アフリカでは1カ国だけ。国際社会で台湾を孤立させたい中国の包囲網が一段と狭まった。
 24日に台北市内で記者会見を開いた呉●(かねへんにりっとう)燮・外交部長(外相)は「中国が唯一の原因だ」と述べ、ブルキナファソとの断交の背後に中国の意思があると非難した。呉氏は「(中国からの)圧力に屈服することは絶対にない」とも強調した。
 一方、中国外務省の陸慷報道局長は24日、ブルキナファソの決定を「称賛する」と述べた。
 2016年5月に台湾で蔡英文総統の政権が成立した後、台湾と断交したのはブルキナファソが4カ国目。中国は、中国と台湾が一つの国に属するという「一つの中国」原則を掲げるが、蔡総統はこれを認めていない。
 ブルキナファソとの断交を受け、24日に台北で声明を発表した蔡総統は「(断交は)中国の不安と自信のなさを浮き彫りにしている」と指摘。「(台湾は)米国など理念を共有する国々と経済や安全保障で実質的な関係を強めている」と述べた。
 ブルキナファソとの断交で、台湾が外交関係を持つアフリカの国はエスワティニ(旧スワジランド)だけになった。蔡総統は4月の外遊で同国を訪れた。ブルキナファソ訪問を打診したが、同国政府は日程が合わないという理由で断った。

 ということでブルキナファソとの断交の時は「台湾と国交のある国が18カ国」でしたが、この後も中国の攻勢が止まりません。

キリバスも台湾と断交 外交関係、残り15カ国:東京新聞 TOKYO Web
 台湾の呉〓燮(ごしょうしょう)外交部長(外相)は二十日、世界で一番早く日付が変わる国として知られる太平洋の島国キリバスと断交したと発表した。キリバスは中国と国交を樹立する見通し。
 台湾は十六日にソロモン諸島と断交したばかりで、台湾と外交関係を持つ国は十五カ国となった。蔡英文(さいえいぶん)総統は「非常に遺憾で、キリバスの決定は大きな間違いだ」と述べた。
 外交部によると、ソロモン諸島の断交の時と同様、キリバスは台湾に不当な金銭要求をしており、断交の背景には中国の金銭外交があるとしている。
 中国の圧力によって、台湾が友好国との国交を失う「断交ドミノ」が加速している。
 中国外務省の耿爽(こうそう)副報道局長は二十日の定例記者会見で、キリバスが台湾との断交を決めたことを「高く称賛する」と評価。
 太平洋の島国で台湾と外交関係を保つのは四カ国に減った。

 ということで最終的には「15カ国」にまで減ってしまったわけです。支持者受けだけで「馬前総統は間違ってる、中国に媚びすぎていた」などと反中国放言をした蔡英文の「外交失策」であり自業自得と言うべきでしょう。これでも蔡信者は「中国が悪い」と蔡をかばい、蔡が総統に再選されるのだからがっくりしますが。

【追記】
台湾当局とソマリランドの「代表機関」相互開設に外交部「断固反対」--人民網日本語版--人民日報

 台湾当局ソマリランドが「代表機関」を相互開設したことについて、中国外交部(外務省)の趙立堅報道官は18日の定例記者会見で「台湾地区とソマリランドによる公的機関の相互設立、またはいかなる形態の公的交流にも中国側は断固として反対する」と述べた。
 趙報道官は「世界に中国は一つしかない。台湾地区は中国の不可分の一部だ。『一つの中国』原則は広く認められた国際関係の準則であり、国際社会の普遍的な共通認識だ。台湾地区とソマリランドによる公的機関の相互設立、またはいかなる形態の公的交流にも中国側は断固として反対する。国際舞台で分離独立活動を行う民進党当局の企ては、絶対に思い通りにならない」と述べた。

 ソマリランドは国連加盟国では無く、国際的に「国扱いされてない」ので無視するのかと思っていたので少し意外です。

*1:「半独立状態」というよりは「ソマリアから事実上独立しているが、ソマリアも国際社会もそれを認めてない」ですね。

*2:著書『幻獣ムベンベを追え』、『ワセダ三畳青春記』(以上、2003年、集英社文庫)、『異国トーキョー漂流記』(2005年、集英社文庫)、『ミャンマーの柳生一族』(2006年、集英社文庫)、『アヘン王国潜入記』、『怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道』(以上、2007年、集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』(2009年、講談社文庫)、『アジア新聞屋台村』(2009年、集英社文庫)、『アジア未知動物紀行:ベトナム奄美アフガニスタン』(2013年、講談社文庫)、『イスラム飲酒紀行』(2014年、講談社文庫)、『移民の宴:日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活』(2015年、講談社文庫)、『未来国家ブータン』(2016年、集英社文庫)、『恋するソマリア』(2018年、集英社文庫)、『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉』(2020年、新潮文庫