【主張】露の歴史宣伝 日本政府は厳しく抗議を - 産経ニュース
ロシアのプーチン政権が、第二次大戦期のソ連の行動を正当化する目的で日本をおとしめる情報戦に出ている。
「日本は対ソ細菌戦を準備していた。ソ連は対日参戦によって世界を細菌戦から救った」というのがロシアの宣伝の骨子である。
むろん根拠に乏しい荒唐無稽な言い分
問題は産経の言う「荒唐無稽」とは何なのか、ですね。
「日本の敗北がほぼ確定した1945年8月の時点で、関東軍が対ソ細菌戦を計画していたとは思えない」「対日参戦は別に細菌戦阻止が目的ではあるまい」とは俺も思います(この考えについて「いや、関東軍は細菌戦を準備していた、対日参戦には細菌戦阻止の目的があった」というまともな根拠が提出されれば以上の記述は撤回しますが)。
ただし「731部隊が細菌戦部隊であったこと」は事実です。そこはきちんと認める必要がある。もし産経が「731部隊は細菌戦部隊ではない」「ハバロフスク裁判は信用できない」というのであればそれこそ「荒唐無稽なデマ」です。
どうも
関東軍将兵らの長期抑留自体が国際法(ジュネーブ条約)やポツダム宣言に違反するものだった。自由を奪われ、弁護人もなしに行われたソ連の取り調べ内容を真に受けることはできない。
という文章からはそうした「荒唐無稽なデマ=731部隊の戦争犯罪否定」を産経が愚劣にも「やる気らしい」ことがうかがえますが。
そもそも731部隊についてはハバロフスク裁判以外にも証拠はあるし、それらの証拠とつきあわせても「ハバロフスク裁判に重大な事実誤認はない」というのが通説的見解です。
これについては
731部隊(1) フェル・レポート
731部隊(2) ヒル・レポート、ダグウエィ文書
731部隊(3)部隊関係者の論文群
731部隊(4)高級軍幹部の証言
731部隊(6) 細菌戦、これだけの根拠 二つの公的資料−金子論文、井本日誌−
731部隊(11)三友一男『細菌戦の罪』 ハバロフスク軍事裁判の実相を紹介しておきます。
にもかかわらず
プーチン政権の与党「統一ロシア」は第1党の座を維持するのが確実な情勢だ。同党が、憲法改正が可能な3分の2に当たる300議席を確保できるかが焦点となっている。
中央選管によると、開票率30%の時点で、比例代表で統一ロシア(改選前334議席)は約45%の票を獲得。小選挙区でも大半の選挙区で勝利する見通しだ。
共産党(同43議席)*1が約22%で2位。以下、自由民主党(同40議席)の約8%▽公正ロシア(同23議席)の約7%▽2020年に設立された新党「新しい人々」の約6%-と続いた。
ということで「過半数キープ」だそうです。
「選挙不正」も噂されていますし「そういう要素」も大なり小なりあるかもしれない。
とはいえ、「それオンリー」ではないでしょう。
良かれ悪しかれ「プーチン政権は2000年(プーチンの大統領就任)から20年以上続いている」。そうなると「様々なしがらみや利権」が権力周辺に発生する。当然、そういう「しがらみや利権」に関わる人間はプーチンを支持するでしょう。
一方で「反プーチン派」が一枚岩かと言えばどうもそうではなさそうです。
プーチン政権は「国民の一定の支持を得ているから続く」と言う要素は否定できないでしょう。
なお「プーチン与党が第一党」とはいえ、
プーチン政権与党が第1党へ 議席は減少か―ロシア下院選:時事ドットコム
統一ロシアの得票率は圧勝した前回の約54%を下回っており、改選前の334議席から減らしそうだ。
という点にも注意する必要があるでしょう。産経は「(過半数キープであるために)勝利」と書きますが「前回が出来過ぎ」とはいえ、議席を減らしたという意味では「敗北」とも理解可能です。
【追記】
プーチン政権与党が第1党へ 議席は減少か―ロシア下院選:時事ドットコム
ロシア下院選(定数450、任期5年)で、タス通信は20日、プーチン政権与党「統一ロシア」が、下院で強力な権限を維持するために必要な3分の2以上の議席を確保する見通しだと伝えた。
改選前の334議席から減らすものの、与党幹部は最終的に315議席を獲得する見込みだと述べた。
19議席の議席減はプーチンにとって「ダメージゼロ」ではないでしょうが、「まだこの程度ではプーチン政権は崩壊しないこと」もまた事実でしょう。