金正恩と条件をつけずに向き合っても仕方ないのではないかという話(R03.10.4): 荒木和博BLOG
6分20秒の動画です。動画タイトルと
今日の話は金正恩が現在リーダーシップを発揮できる状態にないのではないかということについてです。この情報はしおかぜへの妨害電波の中断なども傍証と言えます。そんなときに金正恩と向き合うとか言ってもどうなのか、というお話しです。
という説明文だけで見る気が失せます。実際見る価値はないですが。
まず第一に「金正恩が現在リーダーシップを発揮できる状態にない(重病説?)」と見なすまともな根拠がない。
「妨害電波の中止」は「出そうと思えば出せるが政治的思惑からあえて出さない(その政治的思惑が何かはともかく)」「電力不足で出したくても出せない」等の解釈も可能です。
荒木の場合、妨害電波を出さないと、このように「金正恩重病説」を放言。逆に出したら「しおかぜ放送が北朝鮮にとって脅威である証明」と言い出すのだから「完全に結論ありき」で、北朝鮮が何をしようと「救う会が成果を上げてる」「北朝鮮が苦しんでる」という結論に持って行くのだから馬鹿馬鹿しい。
なお、荒木は動画では「妨害電波」云々以外にも「リーダーシップを発揮できない」と見なす理由を出していますが、それについても突っ込んでおきます。
【荒木の主張1】
北朝鮮のメディア報道を見る限り、金正恩の地方視察が減っている。
【反論1】
地方視察が実際に減少したとしても、「コロナ感染予防のため、外出を控えてる」「『その方が権威確立にプラス』という政治的思惑から『重要な地方視察のみ金正恩が行う』形に切り替えた」など病気説ではない他の説明も可能。
【荒木の主張2】
最近、米国批判など外交声明は金与正*1名義で発表されることが増えてる。また、ミサイル発射実験では朴正天*2が「功労者」として報道された。トップである「金日成」「金正日」を神聖化するため、「部下の顕彰」をあまりしてこなかった北朝鮮の伝統的政治手法とは異なる。病気による金正恩の政治力の衰退の表れではないか。
【反論2】
『「外交」については金与正、「ミサイル開発」については朴正天などという役割分担をしている』『「すべてをトップが取り仕切る」形よりも「ある程度部下に任せる」形の方がむしろ自らの権威確立にプラス、と金正恩が考えてる』など病気説ではない他の説明も可能。
第二に「仮に荒木の主張(金正恩重病説)が正しい」としましょう。しかしそれでも「外交交渉以外に現実的な解決方法がない」のだから「北朝鮮トップ(現時点では金正恩)」と向き合う以外に手がない。勿論「金正恩が実際に病気で死去すれば」、後継者と外交するだけの話です(まあ、金正恩はおそらく健康で当分死なないでしょうが)。
第三に「金正恩と向き合う」という「政府の主張が問題」なのは、荒木の言うようなことではない。
「向き合う」と舌先三寸で言うだけで「本気で向き合う気が見られない」からです。
例えば「条件をつけずに会う」とは具体的にどういう意味か。「首脳会談後に、拉致被害者帰国がスムーズに進んだ」小泉訪朝と違い、「首脳会談後に誰一人拉致被害者が出てこなくても」あえて会うと言う意味なのか。
「『条件をつけずに会う用意がある』といって北朝鮮相手に譲歩した。北朝鮮は日本の譲歩に対して首脳会談で応じるべきだ」的な「安倍や菅、岸田」といった歴代首相の物言いでは一見「そんな風にも聞こえます」がおそらくそうではないでしょう。
そんなことをしたら「小泉訪朝」ですら「たった5人の帰国か」と小泉氏を罵倒した家族会、救う会は「安倍や菅、岸田」に「成果ゼロか」「小泉訪朝より酷い」と悪口でしょう。そうした悪口を覚悟して訪朝して首脳会談する度胸など安倍らにはない。
そもそも「首脳会談後に誰一人拉致被害者が出てこなくてもあえて会う」のかどうか、「誰も出てこないのなら会わない」のなら「条件をつけずに会う」とはどういう意味なのか、安倍らがまともに説明したことは一度もありません。
つまり「条件をつけずに会う」とは「何を意味するか解らない」わけです。そんなんで北朝鮮が相手をするわけもない。
また、「向き合う」というなら「小泉訪朝」のようなバーター取引以外に手はないでしょう。バーター取引以外に会談が成り立つ方法があるとも思えない。
しかし「バーター取引はしない」というのだから、交渉は成立しない。当然、拉致が解決するわけがない。もちろんそうした「バーター取引」をするには様々なパイプを用いて「水面下交渉」も必要でしょう。
水面下交渉もしないで一方的に「会う用意がある」と叫んでも北朝鮮は「首脳会談が成り立たないのは北朝鮮が悪いと責任転嫁したいだけか?。本気で首脳会談がしたいなら事務方で水面下交渉しよう。何故、水面下交渉しない?」としか思わないでしょう。
しかし今やそうした『水面下交渉のルート』が存在するのかどうか自体が怪しい。「長き(小泉訪朝から19年)にわたる経済制裁」で「パイプが消えた」可能性もある。パイプがなければ交渉しようが無い。
さて荒木はこの動画で「何故、首相が特定失踪者に会えないのか、今日、官房長官(拉致担当相兼務)にお聞きする」と言っています。
こんなことは「国内で40人以上も発見され、ほとんどが自発的失踪という特定失踪者のどこが拉致被害者だ。バカを言うな」と政府が言えば終わる話なのですが「荒木ら救う会」「荒木ら救う会言いなりの家族会」に怯える政府はそうは言えないのでしょう(呆)。とはいえさすがに特定失踪者は拉致認定しないのでしょうし、首相も特定失踪者家族に面会しないのでしょうが。そんなんは小泉首相時代から菅義偉首相に至るまでそうですから。岸田首相になったら対応が変わると言うことはないでしょう。
それにしても拉致被害者家族会が「国内で40人も発見された特定失踪者のどこが拉致被害者だ」「そんなインチキ拉致を持ち出すな。俺たちの家族(本物の拉致被害者)の帰国が遅れる!」と言わない理由は全くわかりませんね。
まさか本気で拉致被害者家族会が「特定失踪者は北朝鮮拉致」と信じてるとは思えないのですが。「救う会を敵に回すこと」がそんなに怖いのか。
特定失踪者家族が官房長官と面会「このままでは共倒れ」 - 産経ニュース
青森県弘前市の特定失踪者、今井裕さん(70)=失踪当時(18)=の兄で、家族会会長の今井英輝さん(78)らが、これまで実現していない家族会と首相との面会実現を盛り込んだ要望書を提出。
裕さんは昭和44年3月、自宅から出かけたまま行方不明になった。失踪から約50年が過ぎた平成31年2月、家に残っていた生徒手帳に手書きの地図が挟まれているのを、英輝さんが発見*3。自宅から80キロも離れた同県深浦町沿岸の道路や駅などが書き込まれていた。
筆致から、裕さんが書いたものではなく、調査会は「何者かが裕さんをおびき出し、連れ去るために渡したのではないか」とみる。同町沿岸では当時、北朝鮮の工作船とみられる不審船が目撃されていたという。
もちろんこの失踪が「自発的失踪でない」という保証もない。拉致だとしても「北朝鮮工作員の犯行だ」という根拠もない。「生徒手帳に挟まれた地図は失踪に関係がある」という仮定も「まともな根拠がある」とは思えない。そもそも、その地図が失踪に関係があるのならむしろ「失踪当時、所持する」のが自然であり、自宅にある方が不自然です。全く馬鹿げた話です。