珍右翼・高世仁に突っ込む(2022年12/23日分)(副題:イランの女性大学進学率の高さに驚く)

タリバンが女性の大学通学も禁止 - 高世仁のジャーナルな日々
 「女性の人権」という観点は勿論、1)有能な女性を活用できないのはかえって不利益、2)国内の女性の反発、3)タリバンへの経済制裁など欧米の反発、を考えれば実利面で考えても愚劣です。
 そして「イスラム、女性、大学進学」でググればヒットする記事(後で紹介します)で分かるように、「女性の大学進学を認めるイスラム国」が存在するので「イスラムなら当然に女性の大学進学否定」ではない。

【参考:イラン】

(キッズ外務省)世界の学校を見てみよう!:イラン・イスラム共和国|外務省
 大学生の比率は女性60パーセント,男性40パーセントと,女性の大学進学が進んでおり,理系に女子学生が比較的多いこともイランの特徴です。

イランの女子大生」桜井啓子*1早稲田大学国際学術院教授(2016.8.29)
 ヴェール着用や性別空間分離は、1979年の革命後に導入されたもので、西洋的な価値観に親しんでいた人たちの反発を買ったが、共学や異性の教員に抵抗を感じていた保守層からは歓迎され、この政策のお蔭で小学校から高校までの女子就学率は、先進国の水準にまで上昇した。興味深いことにほとんどが共学の大学でも、女性進学率が上昇し続け、1999年には全国統一国立大学入学試験における女性合格者数が初めて男性を超え、2002年からは女性の高等教育総就学率が男性を上回るようになった。
 男女ともに高等教育総就学率は伸び続け、すでに日本の水準を遥かに超えている。(グラフ1)

イラン女性の高学歴化進む! 「朝ドラのような女性活躍が原点」と横浜市大・山﨑和美准教授 - ganas – 途上国・国際協力に特化したNPOメディア2016.11.25
記者
 イスラム法学者が国家権力の中枢を担っているため、イラン女性の教育事情に、「抑圧」をイメージする日本人は多いと思います。
山﨑
「実際は、教育における男女格差は、ほとんどありません。大学合格者に占める女性の割合は、今ではほぼ6割です。この点だけ見れば日本を上回ります。多くの女性が医学や工学など理系にも進学し、数学オリンピックロボコンなどの入賞も目立ちます。工学部以外の全学部で、女性の方が男性よりも多いです。
 確かに1979年のイラン革命後、女性はヒジャーブ(ヴェール)着用を義務付けられました。その一方で、貧困層や地方に多い保守的な親たちも、娘が着用していれば安心なので、学校に出しやすくなりました。
 学校や病院など公共の場での男女隔離政策も、教員や医療従事者など、専門職に就く女性の増加につながり、女性の就学率や社会進出が上昇しました。イラン革命の意図しなかった結果とも言えます」
記者
 イラン革命が女性教育の拡大につながったのは意外です。
山﨑
イラン革命以前から、国として拡大の機運があったのも事実です。パフラヴィー朝時代に(ボーガス注:初代皇帝)レザー・シャー(在位:1925~1941年)が進めた西洋化と近代化が、女性教育拡大の契機と言われています。
 しかし私は、20世紀初頭のイラン立憲革命(1905~1911年)前後に起こった、草の根的な女性たちの活動と声の検証が欠かせないと考えています。彼女たちの尽力は、国の指導者たちが女性教育の重要性を理解する前提条件になったからです。それがなければ、今の高学歴化につながらなかったかもしれません」
記者
 当時、どのような女性がいましたか。
山﨑
「女性教育拡大という観点から重要な2人の女性知識人がいます。2人とも、イラン版『あさが来た*2』や『とと姉ちゃん*3』の主人公のような女性です。
 1人目はビービー・アスタラーバーディー(1858~1921年)。1907年にテヘランに女子校を設立しました。孤児やお金のない少女たちにペルシャ伝統の絨毯などを織る技術も教えました。彼女の功績によって、女子校の設立増加につながりました。
 2人目はセディーゲ・ドウラターバーディー(1882~1961年)。女子校を設立しただけでなく、1919年に『女性の声』という婦人雑誌を創刊し、女性の権利を主張しました。」

イスラム圏への複眼的視点 – 早稲田ウィークリー桜井啓子(2016.12.9)
 高等教育進学率も急速に上昇しており、すでに日本の水準に達しています。日本との違いは、ほとんどの学部で男性よりも女性比率が高いことです。工学部や医学部でも女性比率が男性を超えていることが多々あります。

 赤字部分は驚きですね。
 勿論、一方で拙記事珍右翼・高世仁に悪口する(2022年10/15日分) - bogus-simotukareのブログで取り上げた「女性へのヒジャブ着用強制」等を考えれば、単純に「女性の大学進学率が高くてイランの女性は恵まれてる、素晴らしい」とばかりも言えませんが。
 なお「具体的根拠があるわけでなく思いつき」ですが、イランの女性大学進学率の高さについて思いついたことを書いておきます。

女性の政府トップ、日米ゼロ 国会議員比率ルワンダ首位: 日本経済新聞2021.7.13
 列国議会同盟(IPU)は数年に1度、世界各国の政府トップに占める女性の割合を公表してきた。首位はアフリカのルワンダで61.3%だ。

独立60年迎えるルワンダ ジェノサイド乗り越え、国会議員の女性比率は61%で世界トップ そのわけは…:東京新聞 TOKYO Web2022.5.22
 現在、61%の国会議員が女性でこれは世界で最も高い割合です。

ということでルワンダの女性国会議員比率は高いですが、これはルワンダ虐殺 - Wikipedia(1994年)で多数の男性が殺害されたことが皮肉にも影響したとされます。
 イランにおいても「1979年のイラン革命後の海外への亡命者(ホメイニのイスラム体制に否定的な人間)」「イラン・イラク戦争(1980~1988年)」という混乱の中で「女性の力を借りざるを得なかった」と言う「実利的な」面がありはしないか。

*1:著書『革命イランの教科書メディア』(1999年、岩波書店)、『現代イラン』(2001年、岩波新書)、『日本のムスリム社会』(2003年、ちくま新書)、『シーア派』(2006年、中公新書)、『イランの宗教教育戦略』(2014年、山川出版社)、『イスラーム圏で働く』(編著、2015年、岩波新書

*2:2015年下期放送。大同生命の創業者で、 日本女子大学の創立にも関わった広岡浅子(1849~1919年)がモデル

*3:2016年上期放送。暮しの手帖社の創業者・大橋鎭子(1920~2013年)がモデル