珍右翼・高世仁に突っ込む(2023年5/26日分)

連載50周年を迎える「はだしのゲン」 - 高世仁のジャーナルな日々
 今回は高世記事には概ね「賛同」ですがいくつかコメントしておきます。

 先々週のことになるが、NHK『国際報道』の酒井美帆キャスターのフィンランド取材を特集していた。
 フィンランド幸福度ランキング*1で6年連続世界一。男女平等を示す指数*2で世界2位、女性の働きやすさ*3で世界3位*4
 2000年に女性ではじめて大統領になったハロネン氏*5(79)に女性活躍への歩みをインタビューしていたが、興味深かったのは、かつてはフィンランドでも、女性は家にいるべきで、子どもを外に預けるなんてとんでもないこととされていたこと。現在のような環境を作るまでには大変な努力があったという。

 なお、高世は以前も

フィンランド・ショック1 - 高世仁のジャーナルな日々2007.12.7
フィンランド・ショック2 - 高世仁のジャーナルな日々2007.12.8
フィンランド・ショック3 - 高世仁のジャーナルな日々2007.12.9
貧困家庭から首相になれるフィンランドは幸福度NO.1 - 高世仁のジャーナルな日々2020.1.1

フィンランドを好意的に紹介しています。
 また、フィンランドと言えば、ググると以下がヒットすることで分かるように以前から注目されています。「比較的入手容易な新書での刊行」という点が注目ですね。つまりは「それなりに売れる」のでしょう。

【著者名順】
◆岩竹美加子『フィンランドの教育はなぜ世界一なのか*6』(2019年、新潮新書)、『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』(2022年、幻冬舎新書)
◆堀内都喜子*7フィンランド・豊かさのメソッド』(2008年、集英社新書)、『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(2020年、ポプラ新書)、『フィンランド・幸せのメソッド』(2022年、集英社新書)
→勿論、「日本は定時(一般的には午後5時)で仕事が終わらないことが通常」と言う意味がポプラ新書のタイトルにあるわけです。
 なお、「話が脱線」しますが、昭和時代には「児童図書専門」だったポプラ社が「新書分野に参入」とは、見事に事業拡大に成功したもんです。
 一方で高世仁高世仁の経営する会社(ジン・ネット)が倒産したのは、高世の経営手腕の低さと制作した番組の評価が低いということに尽きるだろうに - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でありまさに「諸行無常」です。
 経営者に能力があったポプラ社は事業拡大し、能力がない高世は逆に会社を倒産させたわけです。
 「さらに話が脱線」しますが「昔はそんなことはなかった気がします」が、最近は著書タイトルに「何故ホニャララなのか?」という「疑問形文章の長いタイトル」が多い気がしますね。岩竹本(新潮新書幻冬舎新書)や堀内本(ポプラ新書)、後で紹介する斉加本『何が記者を殺すのか』がまさにそれです。
 また「これまた話が脱線します」が「フィンランドを好意的に紹介する堀内本」に限らず、集英社新書には
【著者名順】
◆岸本聡子『水道、再び公営化!欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』(2020年)
◆斉加尚代『何が記者を殺すのか:大阪発ドキュメンタリーの現場から』(2022年)
佐高信反戦川柳人・鶴彬の獄死』(2023年)
◆布施祐仁*8経済的徴兵制』(2015年)、『自衛隊海外派遣:隠された「戦地」の現実』(2022年)
三上智恵『証言・沖縄スパイ戦史』(2020年)
◆南彰、望月衣塑子『安倍政治・100のファクトチェック』(2018年)
など左派、リベラル的な著書が比較的に多い気がしますね(集英社新書 – 知の水先案内人参照)。

 なお、フィンランドにもいろいろ問題はあるでしょうが「社民主義的な福祉国家」と言う意味では「フィンランド>絶対に越えられない壁>新自由主義的、弱者切り捨て的な日本」でしょう。
 上記のような「フィンランド社民主義、福祉主義」を好意的に紹介する著書(但し、俺は未読ですが)が日本でもいくつか刊行されているところ、そうした方向に社会として向かわない日本(自民、維新、国民民主は勿論、泉立民も社民主義とは到底言えない)には何とも絶望します。
 「話が脱線します」が、あえて言えば「日本における最大の社民・リベラル的な政党=日本共産党」でしょう。そういう認識での「俺の共産支持」であり正直な話「志位委員長には失礼ながら」、俺は「共産主義支持」ではないので「それなりの党勢がある、まともな社民・リベラル政党」が共産党とは別にできれば「いつでも共産支持を辞める考え」ではあります。でもそんな物は今ないわけです。社民党やれいわはとてもそのようには高評価できないでしょう。そして当面できそうにもない。
 kojitakenが悪口するような「共産盲従」などでは俺は全くない。
 なお、女性ではじめて大統領になったという高世の文章は「フィンランドで初めて」ならその通りですが、「世界で初めて」なら間違いです(この点、高世の文章は「世界で初めて」と読めてしまう点で問題です)。
 世界で初めての女性大統領はアルゼンチンの「イザベル・ペロン(1974~1976年、政治的能力に欠けた為、軍部のクーデターで短命に終わった)」であり、「公選大統領(イザベルは夫フアン・ペロンからの禅譲であって公選ではない)」と言う条件をつけても「世界で初めて」はアイルランドの「ヴィグディス・フィンボガドゥティル(1980~1996年まで4期16年)」です(選出もしくは任命された女性の元首の一覧 - Wikipedia参照)。

 岸田首相のお膝元の広島市では、小中高校で使う平和教育の教材から漫画「はだしのゲン」を削除すると決定、大きな議論を呼んでいる。
 この漫画でもっとも衝撃的だったのは、ゲンの家族が生きたまま目の前で焼かれていくシーンだ。母親は気がふれそうになる。私の想像を絶する悲惨だが、これは作者の中沢啓治さんの実体験だという。
 こういう現実を知れば、核兵器はぜったいに使ってはならないと素直に思えるはずだ。

 ゲンは確かに「反核マンガ」ではありますがそれだけがこの作品のテーマではないこと、だからこそ右翼の攻撃を受けることについては
右派がこれほどまでに『はだしのゲン』を憎む理由 - 読む・考える・書く2023.3.4
『はだしのゲン』が嘘を書いている、という嘘 - 読む・考える・書く2023.4.17
『はだしのゲン』で描かれた「妊婦の腹を切りさいて中の赤ん坊を…」も嘘ではない - 読む・考える・書く2023.4.20
を紹介しておきます。
 なお、ゲンが連載開始された50年前(1973年)には以下の出来事がありました。

1973年 - Wikipedia1973年の日本 - Wikipedia
◆4月4日
 最高裁が初の違憲判断(尊属殺重罰規定違憲判決)
◆8月8日
 金大中事件
◆9月11日
 チリ・クーデター
◆9月18日
 国連総会で東西ドイツの国連加盟承認
◆10月6日
 第四次中東戦争
◆10月16日
 ベトナム和平への功績でキッシンジャー米国国務長官ベトナムのレ・ドク・トのノーベル平和賞受賞が決定(トは辞退)
◆10月23日
 江崎玲於奈ノーベル物理学賞受賞
◆11月1日
 巨人が日本シリーズ9連覇(V9)達成
◆11月29日
 熊本市の大洋デパートで火災(死者104人)

*1:国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が毎年、「国際幸福デー(3月20日)」に発表

*2:世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数のこと

*3:英国の経済誌エコノミストが毎年発表

*4:いずれも現時点での最新数値である「2022年の数値」

*5:社会・保健相、法相、外相、大統領を歴任

*6:OECD「生徒の学習到達度調査(PISA)」でフィンランドが1位(2000年『読解力』、2003年『読解力』『科学リテラシー』、2006年『科学リテラシー』)を獲得したことを意味する。但し2018年調査での1位は『北京、上海、江蘇、広東(中国国内の教育レベルの差が大きいためか、国ではなく都市で参加)』。PISA研究者の中には「一部の論者が、2000年調査で1位のフィンランドを『教育の自由度が学力向上にも貢献した』と高評価しながら、2018年調査で1位の中国(共産党独裁国家で教育の自由度が高いとは残念ながら言いがたい)を高評価しないのは矛盾している」「そもそもPISA調査は国際比較調査として信用できるのか?」と言った批判があるとのこと(OECD生徒の学習到達度調査 - Wikipedia参照)。あるいはPISA調査も「基本的に、理数系の学問振興と政治体制・民主主義の程度は関係ないと思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)の一例(PISA調査で測られる学力は、民主主義や教育の自由度とは関係ない)」なんでしょうか?

*7:堀内本は未読ですが、アマゾンの著者紹介に寄れば「駐日フィンランド大使館職員(広報担当)」だそうなのでその点は割り引く必要はあるでしょう。一般論として、不破哲三日本共産党委員長、議長を歴任)『日本共産党史を語る』(2006年、新日本出版社)等、「当事者の自己紹介、自己宣伝本」が「全てを鵜呑みにできない」のと同じ事です。

*8:著書『日米密約・裁かれない米兵犯罪』(2010年、岩波書店)等