物語の冒頭、帽子のように見えるけれど、じつはゾウをのみ込んだウワバミという絵が出てきます。最近、この絵は隣国を次々とのみ込んでいったナチスドイツを示している、という解釈を知りました
『星の王子さま』のウワバミは獲物をのみ込んだ後、半年間、腹ごなしのために眠ります。ナチスの侵略も1938年3月のオーストリア併合から、ほぼ半年ごとに進んでいったのです。9月、チェコのズデーテン地方併合、翌年3月、チェコのボヘミア・モラビア占領、9月ポーランド侵攻、翌年4月デンマークとノルウェーに侵入。
ほかにも、放置すれば星を覆いつくしてしまう3本のバオバブの木は、日独伊の枢軸国を指している。
「バオバブを描いた時は、ぐずぐずしてはいられないと、一生懸命になっていた」(内藤濯〈あろう〉*1訳)という語り手の言葉には、ファシズムへの作者の危機感が。
サンテグジュペリが『星の王子さま』を書いたのは第2次大戦中の1943年。今日、没後80周年。
「うわばみ(蛇)って剣呑(危険)だ」ってそういう意味だったんですかね?。
なお、「うわばみ、ナチスドイツ」「バオバブ、日独伊三国同盟」等でググってヒットした記事
あの名作童話は大戦下の構図を表していた!? |BEST TiMES(ベストタイムズ)2016.05.28
フランス文学者、塚崎幹夫の『星の王子さまの世界』(中央公論新社刊)によると、最初に登場するゾウを飲みこんだウワバミの絵は、当時の弱肉強食思想の象徴で、強を代表するウワバミはドイツの軍事行動、弱であるゾウは、侵略された側のチェコ、ポーランドに違いないと言いきっている。根拠として軍事行動がほぼ六カ月ごとに起きている年表を挙げ、ウワバミが腹のなかでゾウをこなすのにかかる年月と一致していることまで調べている。
春秋 - 日本経済新聞2017.1.9
夏の朝、1機の偵察機が消息を絶った。撃墜されたようだ。操縦士は仏作家サン・テグジュペリ。ナチスドイツに脅かされている祖国のために、志願して高射砲弾をくぐり飛び続けていた。
▼その2年前、米国滞在中に「星の王子さま」を書いた。飛行士が不時着した砂漠で、小さな王子に出会う童話だ。ゾウをぺろりとのみ込むウワバミの恐ろしさが語られる。バオバブの木は、芽のうちにつまないと、いつのまにか巨大になって、小さな星を破壊してしまう。子供が気づく危うさに大人はちっとも気づかない。
▼大蛇もバオバブもナチスやファシズムを表すとの見方がある。
「大人って本当に変だ」。
童話の登場人物は、政治家も実業家も危機が見えない。どっちつかずで、打算的だ。そうした大人が戦争の厄災を招いた。作家自身も責任を感じ、反省と罪滅ぼしの気持ちをこめているという(塚崎幹夫著「星の王子さまの世界」)。
によると、塚崎幹夫*2『星の王子さまの世界』(2006年、中公文庫)の指摘のようです。しかしそうなると単純な子ども向け童話とはとても言えません。
こうした解釈の是非はともかく、「男女関係の隠喩」としか思えない「王子様とバラの関係」や「恥ずかしいことを忘れたいから酒飲んでる(飲み助)→何が恥ずかしいの?(王子様)→朝から酒飲むことが恥ずかしいんだよ!(飲み助:どう見ても子どもに理解できるとは思えないが大人になるとよく分かる:例えば拙記事「星の王子様」(酒飲みの星・その他) - bogus-simotukareのブログ(2014.1.24)、アルコール依存症で人生つぶした人間多し - bogus-simotukareのブログ(2020.6.29)参照)」はとても「子ども向け」とは思えないと俺は「以前から思っていましたが」。
<産経抄>『星の王子さま』を届けてくれた名訳 - 産経ニュース
サンテグジュペリ作『星の王子さま』である。わが国で最も読まれているのは、(ボーガス注:長く独占翻訳権を保有した岩波書店の)「内藤濯訳」だろう。原題は『ル・プチ・プランス(小さな王子)』という。邦題を『星の―』に変えて読者に届けたのは、内藤氏の発案だった。
「肝心なことは、目には見えない」
「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」。
大事なものを忘れた大人たちの胸に、王子の台詞は時代を超えて突き刺さるのだ。それは王子の言葉であり、内藤氏の言葉でもあるのだろう。
今では数多くの日本語訳が出版され、作品の魅力もさまざまに語られる。
飛行士でもあった作家は第二次大戦中の1944年7月31日、地中海上空を偵察飛行中に消息を絶ち、機体の残骸が数十年の後に海中で見つかった。物語の「王子」をなぞるように姿を消してから今日で80年。内藤氏の訳が世に出てからもすでに71年がたつ。
最近は
星の王子さま - Wikipedia
◆みすず書房『小さな王子さま』
訳者:山崎庸一郎*3(2005年)
◆光文社古典新訳文庫『ちいさな王子』
訳者:野崎歓*4(2006年)
ということで「小さな王子さま」等の「直訳」タイトルもあるようですが、もう俺は「星の王子さま」で慣れ親しんでますね。
*1:1883~1977年。著書『星の王子とわたし』(1976年、文春文庫→2006年、丸善)等(内藤濯 - Wikipedia参照)
*3:1929~2013年。学習院大学名誉教授(山崎庸一郎 - Wikipedia参照)
*4:東京大学名誉教授(野崎歓 - Wikipedia参照)