9/15発売号のヤングキングBULL(9/17日記載)(副題:飲み屋紹介漫画『すたんどあっぷ』第9話ほか)

 読まないと理解できない感想が多いですがご容赦ください。
 まずは7/21発売号のヤングキングBULL(7/24日記載)(副題:立ち飲み屋紹介漫画『すたんどあっぷ』第8話) - bogus-simotukareのブログで紹介した8話の続きで9話です(1~7話については立ち飲み屋紹介漫画、伊藤静『すたんどあっぷ』第1巻(追記あり) - bogus-simotukareのブログ参照)。
 この雑誌は毎月「第1月曜、第3月曜」発売なので、月2回刊行ですが、残念ながら、『すたんどあっぷ』は毎号連載ではなく、前回から1月半がたったわけです。
 一応「売れることを目指す、売れない若手漫画家(主人公)」の奮闘劇を描いてはいますが、メインはやはり「飲み屋紹介」といっていいでしょう(以前、「立ち飲み屋紹介」と書きましたが、今回は着席してるので「飲み屋紹介」に訂正しました。但し、過去の記事はそのままにしておきます)。
 7/21発売号のヤングキングBULL(7/24日記載)(副題:立ち飲み屋紹介漫画『すたんどあっぷ』第8話) - bogus-simotukareのブログでも書きましたが

BS-TBS
◆『おんな酒場放浪記』
◆『吉田類*1の酒場放浪記』
◆『夕焼け酒場*2

等が好きな俺としては今後も記事にする予定です。
 今回は北千住駅近くの「もつ焼き*3やまぴー」なる店が紹介されています。
 「ノンアルコール*4と未成年者お断り」なる表示が店内でされてる点で、完全に「酒飲みに特化している点」が好き嫌いは分かれるでしょう。
 「焼きトンが安くてボリュームがある」と言う点は魅力的ですが。
 主人公たちはカシラ(豚のこめかみから頬にかけての肉)、レバー、タンを注文。飲み物は主人公が米国ビール(パブストブルーリボン)、友人がレモンハイ。
 ちなみに、前も書きましたが埼玉県東松山市周辺だと、「焼きトン」のことを「やきとり」と言いますね。
 なお、主人公達が注文するのは焼きトンだけのようですが、マンガ内で描かれたメニュー表(もつ焼き やまぴー@北千住 - 揺蕩う酒粕などネット上の店紹介記事でもメニュー表が確認できる)では他にも「梅水晶(細切りにしたサメの軟骨を梅肉で和えたもの)」「ガツ刺し(ガツは豚の胃袋。刺身と言っても当然、生では食中毒になるのでゆでている)」「キムチ」「氷下魚(こまい)の焼き物」「塩らっきょう」「蛸わさび」「馬刺し」「ホタルイカの沖漬け(醤油漬け)」「冷やしトマト」「冷や奴」「ポテトサラダ」「モツ煮込み」等があり、メインが焼きトンであるものの、他にも料理があることが分かります。
 また、『すたんどあっぷ』を連載している伊藤静氏の読み切りマンガ『焼肉温泉』が今回、掲載されています。
 紹介されてるのは、宿泊も可能な温泉施設『駿河健康ランド』(静岡市清水区交通・アクセス | 静岡市のホテル併設 温泉宿泊施設|サウナ・岩盤浴完備|駿河健康ランド【公式】によれば最寄り駅は興津駅だが歩いて行ける距離ではなく、施設の送迎バスが出ている)併設のレストラン『海鮮焼肉・海峰』。

 プロレス地獄変:うそつき魔王〈画〉宮谷一彦*5〈作〉梶原一騎

梶原一騎 - Wikipedia
◆『タイガーマスク』(画:辻なおき
 1968年から1971年まで週刊少年マガジンなど講談社マンガ雑誌に掲載
◆『ジャイアント台風』(画:辻なおき
 『週刊少年キング*6に1968年から1971年まで連載。ジャイアント馬場が主人公。
◆『プロレススーパースター列伝』(画:原田久仁信
 『週刊少年サンデー』(小学館)に1980年から1983年まで連載。
 スタン・ハンセン、アブドーラ・ザ・ブッチャーアンドレ・ザ・ジャイアントタイガー・ジェット・シンハルク・ホーガンなど当時の人気プロレスラーが描かれた。

などのプロレスマンガで知られる梶原の「プロレスをネタにした過去作品(1973年に週刊「劇画ゲンダイ」(講談社)に連載)」の再掲載。
 今回1話のみでなく、しばらく連載が続きます(今回はグレート東郷をモデルとした日系人ヒールレスラーのデビューまでが描かれる。次回以降が彼の活躍でしょう)。
 「戦後の米国で活躍する日系人ヒール(悪役)レスラー」という主人公は明らかに森達也*7『悪役レスラーは笑う:「卑劣なジャップ」グレート東郷』(2005年、岩波新書→増補版、2022年、岩波現代文庫)が取り上げたグレート東郷ですが、勿論、梶原原作なので、事実そのままではないでしょう。

参考

グレート東郷 - Wikipedia
 当初は、敵国日本の象徴だった東條英機*8元首相にあやかったリングネーム「グレート・トージョー」を名乗ったが、太平洋戦争の終結から10年も経っていない1950年代当時のアメリカで「東條」の名を使うのは刺激が強すぎると判断(実際に観客からナイフで切りつけられるなど、身の危険に晒されていた)。そのため、日露戦争で著名な連合艦隊司令長官東郷平八郎*9にちなんで「グレート・トーゴー」と改名、このリングネームを晩年まで用いた。
 卑劣な反則技、薄ら笑いと慇懃なお辞儀、和風コスチューム(法被や浴衣、下駄)、塩をまく儀式などのギミックは、アメリカにおける日系ヒールレスラーの雛形となった。全盛時代の東郷は、試合の度に観客の憎悪を浴びて襲われたという。また、日系アメリカ人協会から抗議されたこともあった。

★ 森達也 『悪役レスラーは笑う』 岩波新書(新刊) | 書評日記 パペッティア通信 - 楽天ブログ
 アメリカ・プロレス界における、「世紀の大ヒール」グレート東郷
 高下駄を履き、「神風」と書かれた日の丸の鉢巻きと、「南無妙法蓮華経」と書かれた白地の法被をまとう。リングには塩と米をまき、盛り塩をおこなう。お辞儀を繰り返して、相手の油断をさそい、目つぶしの塩をなすりつけ、下駄でレスラーを殴り倒す。流血のラフ・ファイトは、全米を震撼させた。
 倒れたレスラーに向かい「バンザーイ!パールハーバー!」
 フォールされる寸前になると、「天皇陛下、バンザーイ!」
 戦争の記憶も覚めやらぬ時代。それはもう、アメリカ中の憎しみを買い、試合は常に超満員だった。観客から襲撃されることもザラ。絵に描いたような<卑劣なジャップ>。日本人からは、「国賊」「売国奴」「日本人の恥さらし」とよばれた男。
 ヒール(悪役)は、「実はいい奴」というのが通り相場である。ところが、プロレス関係者のほとんどが、「最悪な男」「金に汚すぎる」「約束を平気で破る」と、蛇蝎のごとく忌み嫌ったのだ。ただし、「東郷さん」と呼び慕い、義兄弟のような契りを結んだ力道山をのぞいて。
 大ヒールゆえ(プロレスでは、大ヒールはスーパーヒーローよりギャラが高い)リングの外で圧倒的な政治力・経済力を持っていたためなのか?。それとも、アメリカに人脈を持たない力道山にとって、欠くことのできない、貴重なブッキング・エージェント(マッチ・メイクをおこなう人)だったからなのか?

日系レスラーの不敵な笑み 『悪役レスラーは笑う』森達也著を読む
 リンダ・タムラ『フッドリバーの一世たち』(1996年、メイナード出版)によると、グレート東郷オレゴンの片田舎フッドリバーで、日系移民1世の子ジョージ・カズオ・オカムラとして生まれた。
 「神風」と書かれた日の丸鉢巻に派手な着物衣装、時には凶器として用いる高下駄姿でリングに登場する。戦うスタイルは、相手にお辞儀や命乞いをして油断をさせて反則技をくりだす、とても卑怯なヒール役。戦後のデリケートな時代に、このパフォーマンスは日系アメリカ人からも反発をかったらしい。
 しかしながら、彼の登場する興行は大ヒットの連続。卑劣なジャップ役として集客力は抜群であり、そのおかげもあって彼は稼ぎまくった。金のためとは言え、アメリカ人からも日本人同胞からも憎まれる立ち位置に自らを投じたグレート東郷の心境は如何なるものだったのだろうか。
 白人レスラーたちは、この憎きジャップをリング上ではとことん叩きのめした。しかし、リング外ではこぞってグレート東郷と契約を結びたがり、東郷からの依頼には”Yes, sir!”と直立不動で応じていたと言う。一方、観客からは本当に憎まれたらしく、駐車場の車は傷つけられ、時には銃で襲われたりと命がけの仕事でもあった。
 こうして成功者となったグレート東郷は日本のプロレスにも大きく貢献する。力道山のパートナーとして、日本に多くの外国人レスラーを紹介し、その橋渡し役にもなり、リングに立つこともあった。
 しかし、力道山が亡くなり、グレート東郷は日本でのプロモーター業が立ちゆかなくなる。いざこざが絶えず、その結果日本のプロレスから彼は放逐されてしまう。この時の日本のプロレス業界からのグレート東郷への評価や噂が払拭されず、彼には未だに悪いイメージがつきまとっている。
 「守銭奴、情けのない人間、売国奴」、とにかく金に汚く狡猾との悪評だらけである。

「悪役レスラーは笑う 『卑劣なジャップ』グレート東郷」森達也 成功者ながら謎が多い - てっちレビュー
 本書は、日系レスラーのグレート東郷ことジョージ・カズオ・オカムラの実像に迫ろうと試みる。
 グレート東郷には、大山倍達の半生を描いた漫画「空手バカ一代」でのイメージくらいしかない。
 「空手バカ一代」では、「卑劣でケチな悪人だけど、根はいい人間」として描かれており、そのような内実がひもとかれるのかと思って本書を手に取ったが、結論から言うと、結局、東郷の実像はよく分からない。
 ただ、大成功した人物でありながら、謎の多い人物だということは分かり、興味がわいた。
 来日したフレッド・ブラッシーのかみつき攻撃、流血試合をテレビで見たお年寄りがショック死した事件はよく知られていると思うが、その試合の相手が東郷だったことはあまり知られていないのではないか。
 本書によると、お年寄りに衝撃を与えたのは、ブラッシーのかみつきというよりも、かみつかれて血まみれになりながらニタニタ笑う東郷の不気味な姿だったという。
 日系人からは蛇蝎のように嫌われ、白人からは嘲笑されるグレート東郷はしかし、リングを下りると、それはもう大変な実力者だった。
 白人レスラーは競うようにしてグレート東郷との試合を望んだ。

*1:著書『酒場歳時記』(2004年、NHK生活人新書)、『酒場詩人の流儀』(2014年、中公新書)、『酒は人の上に人を造らず』(2018年、中公新書)等

*2:2014年4月12日からBS-TBSで放送。放送時間は毎週土曜日の18:00から30分間。宝酒造(「タカラ焼酎ハイボール」名義)の一社提供。きたろう、武藤十夢(以前は西島まどか)が各地(訪問地は東京都中心)の大衆酒場を訪問する(夕焼け酒場 - Wikipedia参照)

*3:モツとは「内蔵」であり、レバー(肝臓)やハツ(心臓)はともかくカシラ(豚のこめかみから頬にかけての肉)はモツではない気がします(焼きトンの方が適切な呼び方の気がしますが)が。

*4:つまり飲み物は酒しか出さないと言うこと。

*5:1945~2022年。1970年代が主な活動時期で、1980年代以降はほとんど作品を発表していない(宮谷一彦 - Wikipedia参照)

*6:少年画報社から刊行されていたが、『週刊少年ジャンプ』(集英社)、『週刊少年マガジン』(講談社)、『週刊少年サンデー』(小学館)、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)といったライバル雑誌との競争に敗れ現在は休刊

*7:著書『「A」:マスコミが報道しなかったオウムの素顔』、『職業欄はエスパー』(以上、2002年、角川文庫)、『悪役レスラーは笑う:「卑劣なジャップ」グレート東郷』(2005年、岩波新書→増補版、2022年、岩波現代文庫)、『世界が完全に思考停止する前に』(2005年、角川文庫)、『下山事件(シモヤマ・ケース)』(2006年、新潮文庫)、『クォン・デ:もう一人のラストエンペラー』(2007年、角川文庫)、『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』(2007年、集英社新書)、『視点をずらす思考術』(2008年、講談社現代新書)、『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(2008年、ちくま文庫)、『ぼくの歌、みんなの歌』(2012年、講談社文庫)、『死刑』、『それでもドキュメンタリーは嘘をつく』(以上、2013年、角川文庫)、『いのちの食べかた』(2014年、角川文庫)、『たったひとつの「真実」なんてない:メディアは何を伝えているのか?』(2014年、ちくまプリマー新書)、『「テロに屈するな!」に屈するな』(2015年、岩波ブックレット)、『オカルト』(2016年、角川文庫)、『ニュースの深き欲望』(2018年、朝日新書)、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(2018年、講談社文庫)、『すべての戦争は自衛から始まる』(2019年、講談社文庫)、『FAKEな日本』(2020年、角川文庫)、『U:相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(2020年、講談社現代新書)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか:生粋の文系が模索するサイエンスの最先端』(2020年、ちくま文庫)、『桃太郎は鬼ヶ島をもう一度襲撃することにした』(2021年、ワニブックスPLUS新書) 、『集団に流されず個人として生きるには』(2023年、ちくまプリマー新書)、『虐殺のスイッチ』(2023年、ちくま文庫)、『極私的映画論』(2025年、論創社)等

*8:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、陸軍航空総監、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相等を歴任。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀

*9:佐世保鎮守府司令長官、舞鶴鎮守府司令長官、連合艦隊司令長官、海軍軍令部長等を歴任