今日の産経ニュース(2021年4月30日分)

【正論】国民の“命の敵”となった憲法9条 作家・ジャーナリスト・門田隆将 - 産経ニュース
 政府見解では九条は専守防衛は否定していないし、現状において「外国(産経らウヨの想定は「北方領土問題」のロシア、「尖閣問題」の中国、「核開発」の北朝鮮など?)による日本侵攻」の可能性も皆無なのでデマも甚だしいですね。
 そもそも今の日本において「最大の脅威」は「外国の侵攻」ではなく「コロナの蔓延」でしょうに。


【憲法の限界 施行74年】(1)コロナがあぶり出した欠陥 - 産経ニュース
 コロナが露呈させたのは、「日本政府に感染症対応をする能力がない」という話にすぎず「憲法の欠陥」などという話では全くありません。改憲すれば「PCR検査不足」「ワクチン不足」「病床不足」などといった問題が解決するわけではない。


ジャニーズ退所の近藤真彦さん「ありがとうジャニーさん」 - 産経ニュース
退所相次ぐジャニーズアイドル SMAP、少年隊、TOKIO - 産経ニュース
 ジャニー喜多川の存在感はやはり大きかったのでしょうね。


【主張】「従軍慰安婦」不可 教科書の記述是正を急げ - 産経ニュース
 閣議決定の内容自体、適切とは思いませんが、そもそも「閣議決定に教科書執筆者が従う義務」などどこにもありません。

 「従軍慰安婦」という用語は不適切だとする政府の答弁書閣議決定された。根拠なく「従軍」を冠した戦後の造語がまかり通っていたことが問題である。
 答弁書では、朝日新聞が、慰安婦狩りをしたなどとする吉田清治氏の虚偽の証言に基づく報道を取り消した経緯に触れ、「従軍慰安婦」は「誤解を招くおそれがある」とした。「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切」と明記している。

 以前も指摘しましたが「はあ?」としか言いようがない閣議決定であり産経社説です。まず第一に「慰安婦」と「従軍慰安婦」に何の違いがあるのか。といったらおそらく「従軍」を除くことで「軍と関係ない民間業者の施設を軍人が私的に利用していたとの印象操作」を狙ってるのでしょう。「従軍」という言葉には「強制連行」なんて意味はもちろんない。
 つまり「吉田証言ガー」なんて全く関係が無い。吉田証言で問題になったのは彼の語った「強制連行」云々の部分であって「軍と慰安所の関係ではない」し、「慰安所」が「軍と関係ない民間施設」なんてことは全く言えないからです。
 慰安所が軍と密接な関係があることについて有名なのは中曽根*1元首相の逸話ですね(もちろん中曽根以外にもいくらでも関係者の証言はありますが、中曽根が「ウヨ業界の大御所」であるが故に「中曽根だって慰安所と軍の関係を認めてる」として紹介されるわけです)。

「慰安婦問題」真の元凶:FACTA ONLINE
 中曽根康弘元首相は戦時中、海軍主計中尉として南洋の島に「慰安所」を開設し、荒くれ兵たちから大いに感謝された過去を持つ。この体験は59歳で自民党総裁選に初めて出馬した頃、求めに応じて寄稿した「二十三歳で三千人の総指揮官」と題する小文に、自ら記していた。
「三千人からの大部隊だ。やがて、原住民の女を襲うものやバクチにふけるものも出てきた。そんなかれらのために、私は苦心して慰安所をつくってやったこともある」(松浦敬紀編著『終りなき海軍:若い世代へ伝えたい残したい』文化放送刊、1​9​7​8年)。
 本は、表紙裏に「戦後30余年を経て、今なお語られる海軍とは何か?。現代社会を動かす各界の指導者たちに海軍出身者が多いのはなぜか?」とある無邪気な海軍礼賛本である。寄稿者には、大手証券会社元社長や元警視総監ら名士が名を連ねている。執筆の動機は他愛ない昔の自慢話だった。

ということで慰安婦が問題視されてない1970年代に出した回想録で、中曽根が「海軍時代に慰安所をつくって兵隊に感謝された」と自慢話として書いていたことが1990年代になって発覚。問いただされた中曽根も、自分が書いたことを今更嘘とも言えず、とはいえ「慰安婦否定論」のウヨ仲間の手前、本当だとも言えず、「良く覚えてない」とすっとぼけて「恥知らずだ」と非難されたという話です(一方で産経らウヨ連中も中曽根を非難したくがないが故にこの回想録の件は「なかったこと」にする)。
 なお、以前も指摘しましたが

【刊行年順】
◆吉見義明『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(2010年、岩波ブックレット)
◆石川逸子『日本軍「慰安婦」にされた少女たち』(2013年、岩波ジュニア新書)
林博史『日本軍「慰安婦」問題の核心』(2015年、花伝社)
◆吉見義明『買春する帝国:日本軍「慰安婦」問題の基底』(2019年、岩波書店)

ということで近年の著書は「従軍慰安婦」と言う言葉を使用していません。これは「従軍記者、看護婦」が自由意志であることから「従軍慰安婦」では「慰安婦の自由意志で問題など無い」と誤解される恐れがあるという評価による物です。
 「日本軍」が付いているのは「従軍」がなくなることで「軍と関係ない民間施設を個々の軍人が私的に利用した」との誤解を避けるため(繰り返しますが、産経らウヨが従軍を除こうとするのはまさにこの誤解狙いでしょう)。
 慰安婦にカギ括弧が付いてるのは「本来、性奴隷とでも呼ぶ制度だが、慰安婦という言葉が一般に普及しているのでそれを使うが、あくまでもカギ括弧つきの「いわゆる慰安婦」と言う意味だ」と言う話です。
 第二に吉田証言は彼の証言が信用されていた時期ですら、彼が「慰安婦徴用」に従事したという韓国済州島限定で利用されていました。
 フィリピンやインドネシア、台湾などの慰安婦については最初から吉田証言なんか利用されていない。
 第三に「戦後の造語」で何が悪いのか。以前も指摘しましたが、それならば例えば「弥生土器」と呼ぶのは間違いなのか。弥生町で発見されたから「弥生土器」ですが当然ながら弥生時代には「弥生町」など存在しません。
 あるいは「鎖国」についても今日の産経ニュース(2021年1月19~21日分) - bogus-simotukareのブログで指摘しましたが、「鎖国開始当時の徳川家光政権」では鎖国などとは呼んでいません。

鎖国 - Wikipedia
 「鎖国」という語は、江戸時代の蘭学者である志筑忠雄(1760年〜1806年)が、1801年成立の『鎖国論』において初めて使用した

わけです。
 あるいは産経の主張だと一部の学者が主張する「鎌倉幕府以前の幕府(平清盛六波羅幕府*2、福原幕府*3)の存在」主張はどうなるのか。もちろんそうした「鎌倉幕府以前の幕府の存在」主張(高橋昌明・神戸大名誉教授、本郷和人・東大教授など)は未だ少数説ですが、とはいえ、「当時の人間は清盛の六波羅政権、福原政権を幕府と呼んでなかったから幕府でない、以上」で済む話でもない。というのも「後述しますが」鎌倉幕府室町幕府も当時は「幕府」とは呼んでいないからです。ここでは「幕府とは何か」という定義概念が問題になってきます(例えば武士政権であっても、一般に織田信長政権や豊臣秀吉政権は幕府とは呼ばない)。
 「話が脱線しますが」、鎌倉時代室町時代は幕府と呼んでおらず

幕府 - Wikipedia
 「幕府」という言葉が、武家政権を指すものとして用いられるようになるのは、江戸時代中期以降のことで、朱子学の普及に伴い、儒学者によって唱えられた。「鎌倉幕府」や「室町幕府」という言葉はこの時代以降に考案されたものである。

ということで「幕府」と言う呼び方はどうも江戸時代中期以降に定着したようです。この辺り小生も「大雑把な雑学本的知識」しかなので機会があったら、そして「平易でわかりやすい本」があったら何か読みたいところです。

 政府は、河野談話を継承するとしている。だが、同談話は、慰安婦の強制連行などを裏付ける証拠のないまま、韓国側に配慮した作文であることが分かっている。

 そんなことを河野氏*4は認めてないし、事実、作文などではない。明らかになっていることは、「当時の政府関係者」の中に「談話発表前に、内容を事前に韓国政府に説明し内諾を得た」と言う人間がいる*5だけの話です。それは「韓国側の言いなりに作文した」ということではない。
 なお、強制連行の部分(産経社説紹介は省略します)については俺が不勉強、無知のため「詳細なコメント」はしません(つうか、できません)。一言だけ言えば「国民徴用令に基づくから合法で問題ない(産経)」というなら「戦前米国の日系人強制収容」「香港国家安全維持法に基づく民主派逮捕」など*6も「法令に基づくから問題ない」ことになるでしょう。
 問題はまず第一にその法令が「合法、正当な物と言えるのか」と言う話であり、第二に仮に「合法、正当だとしても」、本当に「法令通りの運用がされていたのか」と言う話です。通説はこれらについて「否定的だから*7」強制連行と呼ぶのであり、産経のように「法令に基づいていた」といっても何の反論にもなりません。


【菅政権考】コロナ禍で「菅首相に菅官房長官がいない問題」が鮮明に - 産経ニュース
 有料記事なので途中までしか読めませんが、途中までの内容に寄れば

◆無能なことを自覚していた安倍は「多くのこと(特に自分の興味の無いこと)」は菅官房長官ら部下に丸投げしていたがそれが「結果オーライ」になることもあった。菅は「自分は有能だ」と勘違いしている上に何でも自分でやりたがるために本来「官房長官や大臣など部下のやるはずの仕事」まで口を出したがる。あげく事態を滅茶苦茶にした上にそれでも「俺が最後までやる」と固執するのでどうにもならなくなる。その典型がコロナ蔓延だ(俺の要約)

ということが「菅首相に菅官房長官がいない問題」だそうです。
 ここまで菅に悪口するのだから他の問題はともかく「菅のコロナ対応」についてはよほど不愉快なのでしょう。

*1:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*2:高橋昌明『平家と六波羅幕府』(2013年、東京大学出版会

*3:高橋昌明『平清盛 福原の夢』(2007年、講談社選書メチエ

*4:新自由クラブ代表、中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官自民党総裁、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長など歴任

*5:ただしウヨ連中の反発を危惧して河野氏自身はその点については明確な回答をしていない(事前連絡の事実を否定していないが肯定もしていない)。

*6:これらを産経は非難しますし、日系人強制収容については米国政府が後に謝罪しています。

*7:この辺りについて俺は無知なので詳細なコメントは出来ませんが