今日のMSN産経ニュース(5/21分)(追記・訂正あり)

■【歴史戦 第2部 慰安婦問題の原点(2)後半】「吉田証言」重用でウソ拡散、いつの間にか内容を否定していた朝日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140521/plc14052114070012-n1.htm

「そもそも朝日新聞誤報と、吉田清治という詐欺師のような男がつくった本(『私の戦争犯罪朝鮮人強制連行』*1)が、まるで事実のように日本中に伝わっていったことで、この問題がどんどん大きくなった」
 第2次安倍政権発足の約1カ月前にあたる平成24年11月30日。日本記者クラブ主催の党首討論会で、自民党総裁安倍晋三慰安婦問題について問われてこう指摘した。

 安倍晋三という男のバカぶり、デタラメぶりがよくわかる話です。衆院選挙戦突入後*2党首討論で「慰安婦なんか朝日のデマ、吉田のデマ」と公言してたというのだから、呆れて二の句が継げません。
 そもそも吉田氏の体験は「韓国済州島でのもの」なので彼の証言が歴史学者やジャーナリストに使われていたときも「韓国済州島限定」でしか使われていません。もちろん慰安婦済州島以外にもいました。そして秦郁彦*3が「吉田証言には問題がある」といってからは、それに対して吉田氏がきちんと反論していないこともあってまともな人間は吉田証言など別に使用していません。使用しなくてもいくらでも慰安婦の違法性を示す証拠がある。
 なので今頃「吉田清治がどうこう」言うのは無知か嘘つきかどっちにしろ話になりません。
 いずれにせよ、ということは安倍は、首相就任の暁には本気で河野談話を撤回する気だったんでしょうか。
 何で自民党はこんなバカを総裁にしたのか。そして今だに安倍を支持するという輩は全く何を考えてるのか。本当に腹立たしい。
 そしてこういう記事を今書いた産経の気持ちがよくわかります。
 「衆院選挙戦の党首討論慰安婦は朝日のデマ、吉田のデマとお前言ったろうが。何オバマや朴クネの抗議にびびってるんだよ!、安倍!。約束通りとっとと撤回しろ」という産経の安倍への不満の表れです。しかし今こういう事を朝日が書いたら安倍は恫喝するでしょうが、産経だと「こんな記事書かれても迷惑だ」と思っても、おそらく何も言えないでしょう。そして産経は安倍を応援してるつもりでしょうが、この記事を米国や韓国、中国の「大使館員や新聞記者」当たりが読めば「ああ、やはり安倍首相ってそういう男なのか、そしてこんな暴言を褒め称える産経が日本の全国紙なのか。日本は本当に危ない右翼国家だ」という思いを強めるでしょう。産経の主観はともかく客観的にはこの記事は「安倍と自民党、そして日本の国際的イメージダウン」しかもたらしてないわけです。

平成9年3月31日付朝刊の慰安婦問題特集記事では、吉田についてこう書くに至った。
 「朝日新聞などいくつかのメディアに登場したが、間もなく、この証言を疑問視する声が上がった。(吉田が奴隷狩りを行ったと証言した韓国の)済州島の人たちからも、氏の著述を裏付ける証言は出ておらず*4、真偽は確認できない。吉田氏は『自分の体験をそのまま書いた』と話すが、『反論するつもりはない』として、関係者の氏名などのデータの提供を拒んでいる」
 結局、吉田証言を何度も紹介したことの非は認めず、「真偽は確認できない」とするにとどまり、訂正はしていない。

 「真偽は確認できない」というのは事実上の訂正でしょうよ。まさか「真偽は確認できない」イコール「虚偽」だ、朝日は虚偽報道したと認めろ、などとは思ってないでしょうね?
 そしてまあ、吉田氏の証言を報じたことは問題と言えば問題でしょうが、当時としては研究も進んでなかったし同情の余地はあるでしょう。
 少なくとも2013年時点で産経抄などで「南京には20万人しかいないから30万人虐殺はあり得ない」とデマる産経よりはマシです(実際には20万人以上いたと見られる)。この「20万人」云々がデマであることは2013年時点では「知ってなかったら南京事件について語る資格は全くない」といっていいほど有名なデマです。そして吉田氏の証言は済州島の話なのだから彼の証言が採用されていたときもあくまでも「済州島限定」ですし、済州島以外については当然吉田証言以外の証拠で話がされていたわけです。
 しかし「吉田証言に根拠があるのか(産経)」ってそんなこというなら「産経が宣伝する特定失踪者」のほうがよほど根拠レスですけどね。つうかほぼ100パー、デマだと思いますけど。 


■【産経抄】崩れたアリバイ 5月21日
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140521/crm14052103220002-n1.htm

この事件で警察は、4人の男性を誤認逮捕する大失態を演じた。公判では、物的証拠がなく、片山被告が自作自演のアリバイづくりで墓穴を掘らなければ、判決の行方はわからなかっただろう。サイバー犯罪捜査について、重い教訓が残った。

 太字部分は小生の強調ですがやれやれですね。
サイバー犯罪だから「4人の男性が誤認逮捕された」のか。全然違うでしょう。一般犯罪だって誤認逮捕、冤罪はあるわけです。たとえば村木事件やゴビンダ事件(東電OL殺害事件)、足利事件袴田事件はサイバー犯罪なのか?
 もちろん「権力の走狗・産経」としては「サイバー犯罪という新しい犯罪だから誤認逮捕」ということにしたいでしょう。
 そういうことにして「捜査の可視化」問題をごまかしたいことはよくわかりますが、それ単に詭弁、デマですから。
 太字部分以外も何だかなあですね。
 たとえば

公判では、物的証拠がなく、片山被告が自作自演のアリバイづくりで墓穴を掘らなければ、判決の行方はわからなかっただろう。

と産経は言いますがこれおかしいですよね。
 本当に「自作自演のアリバイづくりで墓穴を掘らなければ、判決の行方はわからなかった」かどうか「裁判をウオッチしていたわけではない俺」は知りませんが、仮に産経の言うとおりだとしてその程度の証拠で逮捕、起訴していいのか。産経は自分の書いてることをきちんと理解してるんでしょうか?。「狡猾な片山被告」「捜査が困難なサイバー犯罪」と言うイメージを強調したかったんでしょうがかえって「そんなんで逮捕起訴したの?」と産経が自爆している気がします。
 またこの「自作自演のアリバイ」、まあ、怪しい行為ではありますが「だから犯人だ」とは即言えない。
 犯人ではないが、「警察の捜査に耐えかねて、とにかく早く自由になりたかった、弁護士さんには悪いがそういう気持ちだった」という可能性だってまあ、あるからです。

保釈中の片山被告が前日、荒川の河川敷で取った不審な行動の一部始終は、警視庁の捜査員に確認されていた。

既にはてなブックマークで指摘がありますが「その場で職務質問を何でしなかったんだ?」と思いますね。いや別に陰謀論を唱えたいわけではなく素朴な疑問ですが。彼が犯人であるならそこで職務質問をすれば片がついたんじゃないかと思うので。

*1:1983年、三一書房

*2:野田首相による衆院解散は11/16

*3:慰安婦問題の著書として、『慰安婦と戦場の性』(1999年、新潮選書)

*4:ただし吉見義明氏なども指摘するように「証言はない」=「事実ではない」ではないでしょう。吉見氏は「秦批判に吉田氏が反論しない以上、証拠として使えない」としながらも「慰安婦の徴発があったということは名誉なことではないから『吉田氏の言うような奴隷狩り的徴発が行われたかどうかはともかく』徴発の事実について語らないことは不思議ではないのではないか」とし「証言がない」を「事実でない」に安易につなげることには慎重であるべきだとしています。