今日の産経ニュース(5/30分)(追記・訂正あり)

■「中国の代弁者」よ、足を引っ張るな AIIBに「反対」世論と乖離するメディアの論調
http://www.sankei.com/world/news/150530/wor1505300024-n1.html
 おいおいですね。純粋な経済問題について「読売の世論調査では反対が多い」といってなんの反論になってるんでしょうか。世論調査結果が「調査間違い」ではなく正しいとして、単に今の日本に反中国が多い、日本社会が排外主義化してるってだけじゃないですか。
 あげく「中国の代弁者」とAIIB参加賛成派を「中国の犬」呼ばわりですから呆れます。

 石川水穂・産経新聞客員論説委員の「マスコミ走査線」(正論6月号)を参照していただきたいが、日本経済新聞朝日新聞毎日新聞東京新聞が日本政府の姿勢を批判、疑問視する社説や論評記事を掲載している。

 財界機関紙日経が賛成してることを「日本財界は中国の代弁者」としか理解できないのが産経のようです。大体、石川水穂なんて
■【日曜に書く】『「(注:南京)大虐殺なかった」は正論だ』論説委員・石川水穂
http://www.sankei.com/life/news/140216/lif1402160015-n1.html
■【日曜に書く】『封じられた集団自決の真実』論説委員・石川水穂
http://www.sankei.com/life/news/130811/lif1308110021-n1.html
なんてデマ記事を書き、あの高橋史朗と『学校教育を変えよう』(2004年、自由国民社)なんて本を共著で出す極右記者であって「一応日経出身で、経済問題の著作もある産経記者・田村秀男*1」などとは違い、経済記者、経済専門家でも何でもありません。どうも石川の自己認識は「つくる会応援団の一員」「歴史教育正常化に立ち上がった歴史教育問題記者」のようですね。
 「南京事件も沖縄の集団自決もデマだ」なんて人間・石川がAIIBを批判しても説得力はゼロです。

 NHKも、「AIIB創設からみえてきたもの」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/216145.html)と題した5月8日(午前0時)放送の「時論公論」で、加藤青延*2解説委員が「世界銀行アジア開発銀行ADBは、最近、AIIBとは競うのではなく協力しあってゆく方針を示しました。もし日本が加わることで、その中身に深くかかわることができるのであれば、日本はアジアにおいて、ADBとAIIBという二枚のカードを手にすることになります」と参加の“利点”を説いた。

 繰り返しになりますが世論調査なんかAIIB参加賛成論への反論には全くなっていません。大体産経は自分に都合の悪い世論調査(例:安倍の安保法制について賛成派が少ない、脱原発派が近年増加傾向)は「メディアのネガキャンのせいだ」「素人の意見より専門家(原子力学者など)の意見を聞こう」というんだからご都合主義の極みです。
 さて産経が非難するNHKの加藤解説委員ですがなかなか面白いことを言ってますので紹介しましょう。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/216145.html
 今回の話が、とんとん拍子に決まったかというと決してそうではありませんでした。実は、大きなきっかけとなったのが、イギリスだったのです。
 中国はおととし秋、AIIBの設立を呼びかけました。そして一年後の去年秋の段階で、参加を表明したのは投資を呼び込みたい新興国や途上国など21カ国でした。
 ところが今年3月になって、突然、イギリスが西側先進国として初めて名乗りを上げました。
 すると、それまで躊躇していたヨーロッパの主要国が「我も我も」と次々に参加を表明、一気に57カ国にまで膨れ上がったのです。
 アメリカと親しいイギリスが、なぜアメリカ主導の経済体制に刃向かうようにも見えるアジアインフラ投資銀行に率先して参加を表明したのでしょうか。そして、イギリスが手をあげると、どうしてほかの国々も次々に手を挙げたのでしょうか。
(中略)
 私が注目するのは、真っ先に手を挙げたイギリスがアジアに保ち続けている歴史的な関与の深さです。
(中略)
 イギリスは、かつてアジアの広範囲に植民地*3を築き、それぞれの国が政治的に独立した後も、銀行や通信網を基盤としたネットワークを通じて、その影響力を残してきました。
 イギリスの銀行HSBC、つまり香港上海銀行がもつ支店網は、中国本土はもちろん、東南アジア、インドなど実に広範囲に及んでいます。そして、そのHSBCこそが、金融立国イギリスを支える巨大な基盤でもあるのです。イギリスのAIIB参加表明の後、HSBCは、かつて香港からロンドンに移した本社を再びアジアに回帰することも視野に検討する方針を明らかにしています。
(中略)
 私は、香港がイギリスから中国に返還された直後の1997年、それを狙い澄ましたかのようにアメリカのヘッジファンドが仕掛けて起きたアジアの通貨金融危機が、ひとつの教訓になったのではないかと思います。
 当時、東南アジアの多くの国の通貨が急落し、やがてその波が香港にも襲いかかったのです。その時、中国とイギリスは、IMF世界銀行などの支援を受けず、二か国がタッグを組む形で、香港ドルの防衛に成功しました。
 この時、イギリスは、香港に巨額の経済権益を保つ以上、中国とは金融面で、一蓮托生の関係にあると感じたのではないでしょうか。

 要するに加藤解説委員は「英国参加でAIIB成功はもう決まってしまった、勝負あっただ」「ADBや世銀だって協調融資の考えを表明してるじゃないか」と見てるわけです。そう言う意味では彼はおそらく手放しでAIIBを評価してるわけじゃない。全然「中国の代弁者」じゃない。「勝負が決まったのに外からワーワーいっても仕方ない、AIIBに影響を及ぼしたかったら中に入るしかない」てことですね。


■【編集日誌】論戦の質も注視
http://www.sankei.com/column/news/150530/clm1505300005-n1.html

 一部の野党が首相の答弁機会をなるべく少なくなるようにして、答弁が不得手な中谷元(げん)防衛相に質問を集中させるのは作戦とはいえ、あまり生産的ではありません。

 産経らしい珍文章ですね。安倍は論戦に強いのではなく「バカだからとんちんかんな事を言って話がかみ合わないだけ」「野党は呆れて、それなりにかみ合った話ができそうな中谷大臣に質問してるだけ」だと思いますがそれはさておき。
 産経の言い分を認めるとしても防衛相という担当閣僚がまともに答弁できないような法案がまともなわけないでしょう。誰も担当外の閣僚(例:農水相)に話を聞いてるんじゃない。
 もちろんそんな大臣を選んだ、そんな法案を提出した安倍も論外です。


■【外信コラム】ソウルからヨボセヨ 学者がもてない社会?
http://www.sankei.com/column/news/150530/clm1505300004-n1.html
 例の歴史学会「慰安婦問題」共同声明をろくに日本メディアが報じないことについて「産経のように安倍に媚び、河野談話を抹殺したいのか、それともそこまでは酷くないが、安倍の恫喝にびびって自粛してるのか」と呆れる韓国メディアに対して「声明は間違ってる、間違ってる声明を報じないで何が悪い」と居直る産経・黒田です。黒田が居直ったところで何がどうなるものでもないのですが。声明は間違ってないし当然韓国メディアの日本批判も正論の訳です。
 他にもいくつか古森に突っ込んでみます。

韓国では学者がよく首相や閣僚、秘書官などに起用され政治家になる。

日本だって
美濃部亮吉
 元東京教育大学教授、都知事
黒田了一
 元大阪市立大学教授、大阪府知事
有馬朗人
 元東大総長。小渕内閣文部大臣(科学技術庁長官を兼務)。
竹中平蔵
 慶應義塾大学教授。小泉内閣経済財政政策担当相、金融担当相、総務相を歴任
大田弘子
 政策研究大学院大学教授。第一次安倍、福田内閣経済財政政策担当相。
舛添要一
 元東大助教授。第一次安倍、福田、麻生内閣厚労相を経て、現在、都知事
など「学者出身政治家」なら一応いますが。まあ、韓国に比べたら少ないのかも知れませんし、それはもしかしたら「反知性主義の表れ」で恥ずべき事かも知れませんが。
 また「韓国以外の海外」にも小生が知ってる人間では
キッシンジャー
 ハーバード大学教授。ニクソン、フォード政権で国務長官
のような学者出身政治家はいるわけです。


■【産経抄】5月30日
http://www.sankei.com/column/news/150530/clm1505300003-n1.html

 自然災害に備えるのも有事に備えるのも基本的には同じである。噴火も地震も台風もないにこしたことはないが、「起きないように」と祈っていても忘れたころにやってくるのが災害である。
 ▼安全保障も同じで、「戦争が起きないように」と祈っているだけで、平和が保てるのならマヤもインカ帝国も滅亡しなかった。

・安倍が画策してる「集団的自衛権」てのは「ベトナム戦争への韓国軍参戦」「イラク戦争への英国軍参戦」のような「他国の戦争への介入」ですから「日本防衛」とは全く関係ありません。
 デマも大概にして欲しい。
 それとも産経の言う「平和の維持」とは「南沙問題で弱いベトナムやフィリピンを強い中国から守ってあげる世界の警察官に日本はなりたい」「世界の警察官として日本はイスラム国(IS)に鉄槌を下したい」「世界の警察官として自衛隊をどんどん海外に出したい」とでも言うことでしょうか?。まあ、その考えに俺はもちろん反対ですが。下手に日本が「南沙問題」「IS問題」に介入しても「自衛官が犬死にするだけ」でしょう。つうかISならまだしも「南沙問題」なんて戦争が始まったわけでもないのに。
・なお「自然災害と紛争」には大きな違いがあります。それは「自然災害は人間が何をしようと起こるときは起こる」が「紛争は人災なので人間の対応によって紛争を未然に阻止することもできれば助長することもある」てことです。
 自然災害対応では「堤防をつくろうと何しようと」それに自然が反応することはない。
 一方、紛争の場合「軍拡すれば相手がそれに対応して軍拡をしチキンレースが始まる」と言う危険性があります。

*1:著書『人民元、ドル、円』(2004年、岩波新書)、『消費増税の黒いシナリオ:デフレ脱却はなぜ挫折するのか』(2014年、幻冬舎ルネッサンス新書)など

*2:著書『NHK特派員は見た・中国仰天ボツネタ&マル秘ネタ』(2014年、日本僑報社

*3:英国がアジアに保有した植民地としては香港、インド、スリランカ、マレーシアなど