今日の産経ニュース(6/11分)ほか(追記・訂正あり)

■人民日報『范長竜*1副主席の予定通りの訪米が伝える3つのメッセージ』
http://j.people.com.cn/n/2015/0611/c94474-8905460.html
 まあ「3つに分ける必要はない」と個人的に思います。要するに「米中双方とも、南沙問題でガチバトルする気なんかない」てことです。だからこういう形で「国家中央軍事委員会副主席、党中央軍事委員会副主席」という中国軍大幹部が訪米し「カーター*2国防長官」というこれまた米軍大幹部と対話するわけです。そしてそれを人民日報も「米中対話を喜びたい」として報じる。
 産経の期待するような「米中激突」という異常事態は起きないでしょう。まあ起きても困りますが。


■【正論】日本に浸透する中国の世論戦 東京国際大学教授・村井友秀
http://www.sankei.com/column/news/150611/clm1506110001-n1.html
 最後まで読んでも「浸透する中国の主張」とは何なのか意味不明です。まあ、故意にぼかしてるんでしょうけど。
 「AIIB参加論」か。「南京事件否定論批判や首相靖国参拝批判」か。「政府の安保法案批判」か。
 おそらくその全てが「中国と同意見」として「浸透する中国の主張」になるのでしょうが。
 しかし当然ながら「結果的に中国の意見と一緒」なのは「中国の主張が浸透している」と言う話では勿論ないわけです。財界人にAIIB参加論を支持する人間がいるのは当然だし「安保法制を批判してる小林節氏は中国シンパではもちろんない」し。南京事件否定論なんてまともな歴史学者は支持しないし、安倍の靖国参拝だって「キリスト教徒など戦前靖国に酷い目にあわされた各種宗教団体」が反発するのは全く当然です。
 見え透いたくだらないレッテル貼り「中国の走狗」には本当にうんざりしますね。

 共産党の目標は世界の労働者を結集して世界革命を達成することであったはずだが、現在の中国共産党の目標は世界革命ではなく、「中華民族の偉大な復興」を実現することである。

 だって世界革命なんて現実的じゃねえし。そんなん叫んでる共産党なんて今どこにもないでしょ。つうか中国について言えば少なくとも「トウ小平*3が改革開放すすめてから」はそんなん全然ないでしょ(まあ『世界を良くするために連帯して頑張ろう』つうのはあるんでしょうし、それも広い意味では世界革命でしょうが今時、旧ソ連型の「世界各地に革命輸出目指す」なんてないですよ)。つうか「中国に世界革命を叫んで欲しいわけでもない」のに何でこういう事書きますかね。

ソ連が崩壊し共産主義の正当性が地に堕(お)ちた後、階級闘争史観から抜けられない日本の左派は新しい階級闘争を創り出した。古典的な労働者階級による階級闘争とは異なる形態の、階級に準(なぞら)えた「リベラルな市民」が「反動的な政府」と闘うという疑似階級闘争である。

 「はあ?」ですね。冷戦時代から左派は「自民党政権を反動と見なして批判してきた」し、冷戦時代から「マルクス・レーニン主義からは距離を置いたリベラル主義、市民主義」の立場からの自民党批判なんていくらでもありますけど。左派が右派の政府を批判したら「疑似階級闘争」なのか。
 ぶっちゃけ「冷戦以前と以降」とこの人が言うような違いはないでしょう。つうか仮にあったとしても何が問題なんだかよく分かりませんが。

 戦後の日本の左派にとって自らの生存に最も深刻な脅威を与える敵は軍国主義的な日本の復活である。従って、戦後の日本の左派にとって第一の敵は日本の軍国主義であり、中国の軍国主義ではなかった。

 前半は異論ないですが後半は異論大あり。冷戦期において日本にとって最も脅威だった外国は保守にとっても「中国ではなくてソ連」でしょうに。イデオロギー的な理由ではなくて単に「軍事力、政治力、経済力いずれもソ連が中国を上回っていたから」ですが。


■【北朝鮮拉致】昭和40年代の北海道に何が? 14〜20歳の女性5人が次々に失踪 家出などの動機なく…
http://www.sankei.com/premium/news/150611/prm1506110007-n1.html

 名取さんを含め、昭和42年から46年までのわずか5年間に6人もの若い女性が消えた北海道。調査会によると、ほかの地域では同様の例はあまりないといい、偶然とするには無理があるとみている。
 この時期に北海道では一体何があったのか。調査会の荒木和博代表は「『若い女の子を連れてこい』というような指示に基づいて、それぞれの土地にいる工作員が動いたのではないか」と“拉致指令”のようなものがあった可能性もあると話す。

 毎回毎回根拠レスで与太かっ飛ばすのも大概にして欲しいですね。俺は「単なる偶然」で十分説明可能だと思いますが仮に「偶然じゃない」としてもそこから「北朝鮮拉致認定」するのはあまりにも論理飛躍がある。

 北海道から昭和40年代前半に行方不明になった若い女性のうち、城崎さんをめぐってはもう一つ気になる点がある。城崎さんが岩内町の寺院の境内にあった洋裁教室に通っていたことだ。
 昭和52年10月に鳥取県米子市から北朝鮮に連れ去られた政府認定の拉致被害者松本京子さん(66)=拉致当時(29)=も編み物教室に通っており、自宅から教室に向かう途中で拉致された。

 「布地を切って服を作る」洋裁と「毛糸を編んでセーターやマフラーを作る」編み物て、「衣料品関係の趣味」とはいえ大分違うと思いますけど。
たとえば
1)「日本茶教室(城崎さん)と紅茶教室(松本さん)」:どっちもお茶
2)「テニス教室(城崎さん)とスカッシュ教室(松本さん)」どっちもラケットを用いた球技
3)「バイオリン教室(城崎さん)とチェロ教室(松本さん)」:どっちもクラシック音楽で使う弦楽器
なんかを「共通点がある」つうくらい無茶苦茶でしょう。
 まあ、「どちらも洋裁」「どちらも編み物」でも
1)北海道と鳥取と遠く離れてる
2)女性が洋裁や編み物をやることは全然珍しくない
つうことで「共通点があった」とか騒ぐことでは全然ないですが。たとえばこれが「お料理教室」「ヤマハピアノ教室」なんかでも「共通点があった」と騒ぐ事じゃないわけです。全然珍しい趣味じゃないですから。これが横山ホットブラザーズのネタで知られる「ミュージックソー」みたいなすげえマニアックな趣味なら話も別かも知れませんが。


■【主張】憲法と安保法制 「戦争抑止」へ本質論じよ
http://www.sankei.com/column/news/150611/clm1506110004-n1.html
 「長谷部教授が違憲と言ったことなんか法案の本質じゃない」「憲法学者の意見で国が守れるか*4」と言う暴論です。「違憲かどうか」が本質じゃないと公言できる神経というのもすさまじいものがあります。こんなんでいいなら「日米友好のためにイラクへの自衛隊派兵が必要だ」「犯罪捜査のために電話盗聴が必要だ」「合憲か違憲かなどぐちゃぐちゃ言うな」と言うとんでもない話になってしまいます。
 あるいは「フセイン政権が倒れて良かった、大量破壊兵器の有無などどうでもいい」とか(ああ、でもそれ産経が言ってたことでしたっけ?)。「結果が良ければ*5プロセスはどうでもいい、法的手続きはどうでもいい」てのはまともな法治国家とは言えないですけど。
 その理屈なら「裁判なんか抜きで凶悪犯は必殺仕事人みたいにその場でぶっ殺せ」つう話にもなりますし。
 とにかくこんな暴論を吐くのなら産経は今後「外国人参政権違憲*6」とか言わないで欲しいもんです。

*1:国家中央軍事委員会副主席、党中央軍事委員会副主席

*2:クリントン政権国防次官補、オバマ政権国防次官、国防副長官を経て現在国防長官

*3:副首相、党副主席、人民解放軍総参謀長などを経て国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*4:集団的自衛とは専守防衛ではないので「国が守れるか」と言う主張自体デマですが。

*5:良いかどうか疑問ですが

*6:嘘八百ですが