今日の産経ニュース(8/28分)(追記・訂正あり)

■女性教育支援のODA、3年間で420億円 女性国際シンポで首相が表明
http://www.sankei.com/politics/news/150828/plt1508280041-n1.html
 慰安婦問題での「女性差別者・安倍」の悪評を「女性教育支援のODA、3年間で420億円」でごまかそうとする安倍です。ODAそれ自体は悪くないと思いますが動機があまりにも薄汚いので複雑な気持ちです。「山口組(反社会的組織・暴力団)の阪神大震災での炊き出しみたい」つうか何というか。
 皮肉なことに産経もはっきりと

慰安婦問題などで女性の人権問題に消極的とみられがちな首相に対する懸念*1を払拭する狙い*2があるとみられる。

と書いています。つうか産経がこういう事を平気で書ける神経がよく分かりません。「安倍批判派」が「ODAそれ自体はまともだが動機が下劣」「安倍がこのようなことをしてフェミニストぶろうが、我々は安倍が慰安婦に対して行った侮辱的行為を絶対に許さない。安倍の本性は女性差別者だ」などと批判するならわかります。
 でも、安倍支持者・産経にとっては建前の世界では「このODAはあくまでも、女性の社会進出を支援するためであって慰安婦がどうとかそういうことは全く関係ありません、繰り返しますが関係ないんです。我が国はそういう関係ない事で慰安婦問題をごまかそうとする下劣な国じゃないですから。慰安婦がどうとか言ってこじつけ批判するのはやめてほしい。慰安婦慰安婦、コレとは別問題です」って必死に否定しないといけないんじゃないですかね。

【追記】
他にも気付いたことを突っ込んでおきます。

 ノーベル平和賞を受賞したリベリアのサーリーフ大統領らが参加し、29日まで開催する。

・で「ノーベル平和賞受賞者」サーリーフさんは政府の賓客としてこういうイベントにお呼びするし、たぶん安倍も会談でもするんでしょうが「インド・ダラムサラ在住の某宗教家」という「ノーベル平和賞受賞者」が訪日しても「日中友好関係的な意味で」安倍は絶対に会わないと(毒)
 いや会わなくていいんですけどね、俺的には。
 ダライ一味「くやしいのうくやしいのう、同じノーベル平和賞受賞者なのに日本政府の扱いが違って悔しいのう」(「はだしのゲン」風に)
・で「ノーベル平和賞つながり」での連想ですが、失礼ながら「日本で有名なノーベル平和賞受賞女性」つうたらサーリーフさんより「アウンサンスーチーとかマララさんとか」だと思いますけどね。
 やっぱほとんどの日本人ってこういったら悪いけど「リベリア」なんて興味ないですから。
 「今度の海外旅行はリベリアに行こうか」とかまずない。リベリア駐在のビジネスマンだったらまた話は違いますけど。
 スーチーとかマララさんとか呼べばこのイベントの「注目度」ももっと大きかったんじゃないか。まあ、

大統領就任後は、アントアネット・サイエ財務大臣(後のIMFアフリカ局長)のような有能な女性閣僚も何人も起用した。(ウィキペ「サーリーフ」参照)

つうことなのでスーチーやマララさんでは「女性の活躍応援という会議の目的に合わなかった」んでしょうけどね。

 首相は演説で(中略)女性活躍に向けた「最大の壁」は「男性中心の長時間労働を是とする働き方文化だ」と指摘。その上で「男性自らがこれに気付き、行動しなければ、この悪習を断ち切ることはできない」と断言し、男性陣の“変化”を訴えた。

 「ホワイトカラーエグザンプション導入論者がふざけんな!」「『男性は気付け』じゃねえっての。気付くべきなのは経団連だろ。別に男性は働きたくて働いてるんじゃねえの。お前ががつんと財界首脳に『過労死をなくす気はないんですか!』とか言えよ」と思わずにはいられませんね。
 つうかさ、「男性は気付いて行動」って具体的に何よ。


■【主張】維新分裂 第三極の意義を問い直せ
http://www.sankei.com/column/news/150828/clm1508280002-n1.html
 維新がどうなろうと政党機関誌ではない「はず」の産経には関係ない「はず」ですが「第三極の意義・改憲を忘れるな」だそうです。大笑いです。いつから第三極の意義が改憲になったのか。つうか忘れようと忘れまいと産経には関係ないはずですが。


■【主張】「陛下の謝罪」要求 歴史戦への利用許されぬ
http://www.sankei.com/column/news/150828/clm1508280003-n1.html
 ばかばかしいですね。要求したら何か悪いのか。「天皇=日本の象徴」ですから「日本を代表してわびたらどうか」つう意見が出るのはむしろ自然でしょう。
 大体、この「謝罪すべし論」は「光明日報の記事を新華社が配信しただけ」で中国政府としての要求じゃないわけです。
 これで今上が「わかりました、わびます」なんてことになれば産経の面子丸つぶれで面白いですが、まあ、彼の個人的思いはともかく、自民党政権ではそういうことにはならないでしょう。

昭和天皇が戦争の発動を指揮した「張本人」と決めつけた

 決めつけるも何も事実そうじゃないですか。普通に考えて「クーデターが起こって名目だけのお飾りの君主になったわけでもない」のに国家元首昭和天皇を無視して戦争できるわけがないし、歴史学の研究も「天皇の裁可を得て戦争が進んでいったこと」を資料を基に証明してるわけです。

天皇は国政に関する権能を持たず、批判に反論することもできない。

やれやれです。別に天皇が反論する必要はないですよねえ。日本政府が反論すればいい。

占領下に連合国が行った極東国際軍事裁判東京裁判)でも、昭和天皇は訴追されていない。

 東京裁判を「無法な報復裁判」「政治的裁判」呼ばわりしてる癖に都合のいいときだけ持ち出すなって話です。
 訴追されなかったと言うなら「731部隊隊長の石井四郎」もいかなる形でも戦犯としては訴追されなかったんですけどね。もちろん米国は石井の犯行「細菌兵器の人体実験」について知っていた。「石井から細菌兵器実験の貴重な資料をもらう」バーターで訴追しなかったわけです。
 昭和天皇だって「何故か日本国民は軍部は恨んでいても、天皇は敬愛してるようだから生かして使った方が有益だ」という政治判断で訴追しなかったに過ぎません。「天皇無問責や証拠不十分」で法的に訴追できなかったわけでも何でもない。
 いや仮にいわゆる「天皇無問責」を理由に法的に昭和天皇を処罰できないとしても、それは「道義的、政治的責任」まで免除するもんじゃありません。

昭和天皇立憲君主として、内閣や統帥部の補佐を受け、形式的な政治行為を行った

形式的どころか実質的判断を行ってることは歴史学上、明らかですが。昭和天皇は内閣などの「米国相手の戦争はリスキーだが、やるしかない。何とか勝てる」などという進言を「自ら受入れて」開戦判断したわけです。
 「負けたら俺の代で天皇家が終わるかも知れないが、俺は形式的判断しかできないから首相や軍の主張に従わざるを得ない」なんて受動的な態度で開戦判断したわけじゃない。
 単に「天皇制を残すため」には「天皇は形式的判断しかしてない、悪いのは東条英機首相ら部下だ」というインチキ話をでっち上げるしかなかっただけです。

今の天皇陛下は92年の中国ご訪問の際に「わが国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」とお言葉を述べられた。

「悲しみを感じる」つうのはきついことを言えばわびじゃないですよねえ。まあ、「『我が国が与えた苦難』と言ってるから、事実上のわびだ、と拡大解釈する余地は一応あります」けど。

 89年の天安門事件で中国が国際社会から経済制裁を受け、孤立していた時期である。
 当時、中国外相だった銭其シン・元副首相は回想録で、「西側による対中制裁の打破に積極的効果があり、その意義は明らかに中日二国間関係の範囲を超えていた」と陛下のご訪中を政治利用し、成功を収めたことを誇った。

 誇ったんじゃなくてただの事実の指摘です。むしろ「訪中した天皇」と「天皇訪中に尽力した当時の政府関係者(宮沢*3首相、加藤*4官房長官、渡辺*5外相など)」への感謝の表明じゃないんですかね。
 大体、天皇訪中が「制裁打破のきっかけを作り、日本企業を中国に進出させる」という思惑があるなんてことは何も銭・元外相が回想録で認めるまでもなく「当時からわかりきったこと」です。
 で日本企業が進出すれば「欧米も制裁解除するんじゃないか」なんてのもわかりきったことです。
 だからこそ産経など反中国ウヨは天皇訪中に反対した。まあ、もちろん当時の宮沢内閣はそんな反対をガン無視するわけですが。
 なお、銭・元外相回顧録(邦訳、2006年、東洋書院)について書かれた、國廣道彦氏(鹿島平和研究所評議員、元中国大使)の書評に寄れば

http://www.kiip.or.jp/avc/html/KunihiroMichihiko/20070609.html
 天安門事件直後の、スコウクロフト*6大統領補佐官(国家安全保障担当)の隠密裏の訪中*7は今や広く知れ渡っているが、トウ小平*8の「問題は米国側にある」と切り出し、「鈴を外すのは鈴をつけた人でなければならない」と言い放った高飛車な応対は印象的である。スコウクロフトが年末に再度訪中した後、米中関係はトウ小平キッシンジャー*9に示した包括的解決案の方向で改善しそうになっていたが、ルーマニアチャウシェスク*10政権崩壊*11の後に米側に熱意がなくなってしまったという。しかし、前述のような湾岸戦争をめぐる米国の対中接近があり、91年11月にベーカー*12国務長官の訪米が行われて米中和解が実現した。

ですから何も「天皇訪中がなくても」かなり早い時点(天皇が訪中する以前)から米国ブッシュ政権は「中国に進出したい米国財界の要請でしょうが」制裁解除に前向きだったわけです。ただ米国内にはもちろん反中国の政治勢力もいるから「そのブッシュの思惑はすぐには形にならなかった」。まあ、天皇訪中はブッシュにとって「願ったりかなったり」でしょう(ただ天皇訪中(1992年)の前に既にベーカー国務長官訪中(1991年)がありますが)。おそらくヨーロッパ各国(英仏独伊など)にとっても「中国に進出したいヨーロッパ財界の要望」で事情は日米と同じだったわけです。

友好親善のためのご訪問を、自国の利益のためだけに、臆面もなく政治利用する。

 いやだから「制裁打破のきっかけを作り、日本企業を中国に進出させる」「その結果、欧米が制裁解除しても別に無問題」なんてのは日本側もそう言う思惑ですから。「日本は単に日中友好の観点から天皇訪中をしただけなのに『日本企業の中国進出』や『欧米の制裁解除』に利用された。不当な政治利用をされて困った」なんて話じゃない。
 つうか基本的に天皇の外国訪問て訪中に限らず「全て政治利用」ですよね(政治利用だから悪いという話をしてるのではなく単なる事実の指摘です)。政治的思惑があるから訪問するんだし、受入れる外国側も「政治的思惑がある」から受け入れる。一般人が外国行くのとは全然違う。
 つうか産経のこの文章の方がよほど「天皇をネタにした中国叩き」という「天皇の政治利用」でしょう。

日中関係の改善を望むなら、暴言といえる陛下への要求を直ちに撤回し、謝罪すべきである。

 別に暴言だと思いませんが、光明日報の記事がそう書いたに過ぎませんからね。
 「アレは政府見解ではないですよ、光明日報の記事に過ぎません」「あなた方が百田NHK経営委員の南京事件否定暴言を『政府見解じゃない、個人の見解に過ぎない』として百田委員更迭も政府としての謝罪もしなかったのと同じ事です」と中国政府に皮肉言われて終わりでしょう。

*1:懸念じゃなくて事実だろと小一時間(以下略)

*2:だったらこの間の安倍談話ではっきりと慰安婦にわびろよと小一時間(以下略)

*3:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*4:中曽根内閣防衛庁長官、宮沢内閣官房長官自民党政務調査会長(河野総裁時代)、幹事長(橋本総裁時代)を歴任

*5:福田内閣厚生相、大平内閣農水相、鈴木内閣蔵相、中曽根内閣通産相自民党政務調査会長(中曽根総裁時代)、宮沢内閣外相などを歴任

*6:フォード政権、父ブッシュ政権大統領補佐官(国家安全保障担当)

*7:何で「秘密裏」に訪中するかは言うまでもないでしょう。

*8:副首相、党副主席、人民解放軍参謀長などを経て国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*9:ニクソン、フォード政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)、国務長官ニクソン政権時にベトナム和平(これによりノーベル平和賞受賞)とニクソン訪中を実現。著書『外交(上)(下)』(1996年、日本経済新聞社)、『キッシンジャー回想録・中国(上)(下)』(2012年、岩波書店)など。

*10:ルーマニア大統領、共産党書記長。失脚後、妻と共に反対派によって銃殺された。

*11:チャウシェスク政権崩壊の方が天安門事件より先かと勘違いしてました。ちなみに天安門事件は1989年6月、チャウシェスク政権崩壊は1989年12月です。

*12:レーガン政権大統領首席補佐官、財務長官、父ブッシュ政権国務長官などを歴任