今日の産経ニュース(2020年1月16日分)

「憲法に自衛隊を明記しようではありませんか」 安倍首相発言詳報(1/4ページ) - 産経ニュース
 安倍のやりたいことはもちろんそう言うことではなく「専守防衛の枠を外し、海外で集団的自衛権を行使すること(つまり米軍と共同軍事作戦すること)」なので詐欺も甚だしいですね。とはいえ安倍が公然と「集団的自衛権が行使したいんです」と言えない点は護憲派にとってある程度有利な点とは言えるでしょう。

 安倍内閣は最大の課題、少子高齢化に真正面から挑戦していく。

 以前も似たようなことを安倍が言っていたので突っ込みましたが、今回もまるきり同じ突っ込みになります。
 まず第一に「最大の課題が少子高齢化(その次の課題が改憲?)」なんだそうです。なるほど、いつの間にか「拉致は最優先課題ではなくなった」ようです。しかしこれに対し家族会や巣くう会が「最大の課題が少子高齢化とはどういうことだ!」と怒ることはないのでしょう。
 それどころか、おそらく俺みたいな安倍批判「拉致が最優先課題じゃなかったの?」には「アンチ安倍の言いがかりだ!」「安倍総理は拉致がどうでもいいなんて一言も言ってない」などとむきになって安倍をかばう。
 第二に「今更かよ」ですね。何も少子高齢化なんてのは昨日今日問題になった話ではない。
 それは、たとえば、第一次安倍政権と柳沢*1厚労相が批判をあび、柳沢氏が事実上大臣を更迭*2された「産む機械」発言(今から約13年前の2007年1月)でも明白でしょう。柳沢発言は非常識*3ですが、いずれにせよあの発言は「当時既に少子化問題が深刻な問題として認識されていたこと」を示しています。
 また、いわゆる「アベノミクス新三本の矢*4(2015年9月)」で安倍は「新しい矢の一つ」として「出生率1.8を目指す」とぶち上げました(例えばアベノミクス「新3本の矢」を読み解く :日本経済新聞参照)。もちろん安倍が今回「1.8がついに達成できました!」と言わないことでわかるように新三本の矢の目標「出生率1.8」は現時点では達成できなかったわけです(例えば[社説]政府目標の出生率1.8は絵に描いた餅か :日本経済新聞出生率1.42 目標「1.8」遠く 育児支援策は不可欠 - 毎日新聞参照)。
 しかし自らが約4年前(2015年9月)にぶち上げた目標「出生率1.8」について達成できたのか、出来なかったのか、出来なかったのなら何故出来なかったのかなどの総括もせずに「少子高齢化に真正面から挑戦していく」と言い出すとは呆れたバカです。なかなか常人にはまねできない行為ではないか。マスコミもこういうときに「新三本の矢の目標であった出生率1.8については今どうお考えでしょうか」位聞いてほしいもんです。

 先の参議院選挙や世論調査の結果を見ても、国民の皆さまの声は、「憲法改正の議論を前に進めよ」ということだと思う。

 「改憲派2/3確保に失敗した選挙」のどこをどう理解すればそう言う話になるのか。世論調査だって回答はそのように理解できるものでは全くない。
 詭弁とこじつけにもほどがあります。それにしても安倍が「国民の声は改憲」とはいえず「国民の声は改憲の議論」としかいえない点が興味深い。


【正論】始まったアンチ反日の日韓連携 モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授・西岡力 - 産経ニュース
 麗澤大学というのはウヨ宗教「モラロジー*5」系列で、西岡以外では古森義久*6高橋史朗*7八木秀次*8が麗澤大教授です。
 麗澤以外では俺が知っているウヨ大学では皇學館、国士舘國學院、拓殖があります。

 全斗煥政権が82年、経済協力を得るために、第1次教科書事件で日本左派マスコミと中国共産党と組んで歴史問題を外交に持ち出すという禁じ手を使った。

 イヤーまさか産経が全斗煥政権に悪口するとは思ってもみませんでした。「全斗煥ですら植民地支配全面正当化なんか容認できない」つうだけの話でしょうよ。
 そもそも経済協力云々はデマも甚だしいですね。実際には教科書問題は「いわゆる宮沢官房長官談話」と「それにもとづく近隣諸国条項*9」で片がついたのであってカネで片がついたわけではありませんので。
 ちなみに全斗煥の抗議で、文相を中曽根*10首相によって罷免されたのが「韓国併合正当化発言」の藤尾正行*11です。

 ソ連崩壊で第1次冷戦*12が米国を中心とする自由陣営の勝利で終わった頃、日韓の保守がアジアでは中国共産党北朝鮮世襲独裁政権を倒すまで冷戦は続いているという現実から目をそらしている隙を突いて、日本の左派勢力が慰安婦問題を仕掛けてきた。

 全然違いますね。慰安婦問題が浮上した理由、それは「東アジアでもある意味では冷戦が終わったから」です。
 南北朝鮮関係は「韓国の経済的勝利」で「ある意味決着した」わけです。しかも北朝鮮を長いこと支援してきた「親分的存在・ソ連」も崩壊した。
 こうなると「慰安婦問題で日本批判をすると北朝鮮を利する」つう批判がまるきり説得力を持たなくなります。
 「韓国の方が北朝鮮より経済力がずっと上だし、北朝鮮を支援してきたソ連も崩壊したのに、そんなことあるわけねえだろ?」となる。かつ経済力がついてくれば当然、「いつまでも日本にへいこらする必要はない」という愛国心も高まってくる。しかも民主化で「韓国独裁政権による締め付け」もなくなった。
 となれば慰安婦問題が浮上するのは全く自然です。「日本の左派勢力が仕掛ける」とかそう言う話ではない。
 大体この物言い「当事者である慰安婦」をまるで「日本左派勢力のロボット扱い」で左派勢力にも慰安婦にも失礼なことこの上ない。
 さすが「ダライラマ一味」や「拉致被害者家族会」を「自分たちの政治的道具」として使って恥じない「日本の右派勢力」だけのことはあります。
 「俺たちウヨがダライや家族会を中国叩きや北朝鮮叩きに政治利用しているように、サヨも日本叩きに慰安婦を政治利用してるんだ」と思い込んでるようです。こういうのを「問うに落ちず語るに落ちる」と言います。まあ、前から分かってることですが産経や西岡らウヨは拉致問題のこともチベット問題のことも中国や北朝鮮を叩くためのネタとしか思ってない。
 それはともかく、そうした「韓国の状況変化(慰安婦問題の浮上)」をそれなりに理解していたのが、宮沢*13首相、河野*14官房長官などと言った自民党リベラルです。彼らは産経のようなウヨと違って「いつまでも戦前のことを居直っていたら韓国ビジネスに支障が出る。居直ることは道義的にも許されないが、それ以前に金儲けに支障が出る」と考えた。だからこその河野官房長官談話のわけです。宮沢氏、河野氏が「贖罪意識はない、カネのことしか考えてない」とは言いませんが、きれいごとだけで河野談話が出たわけではない。だからこそ自民党のウヨ議員連中も「渋々河野談話を認めた」わけです。


主張変更、判決延期に被害家族ら怒り「許せない」 大津園児死傷事故 - 産経ニュース
 遺族の気持ちは分からないでもないですが、被告人には自らを弁護する権利がありますのでねえ。正当な主張なら裁判所が認めるし、不当な主張なら認めないわけですから、その点は「許せない」などと声を荒げず、冷静な態度をとってほしいもんです。


ゴーン被告弁護団の弘中、高野弁護士が辞任 - 産経ニュース
 ゴーンの勝手な逃亡により信頼関係が失われた以上、弁護を続ける理由もないでしょう。


《独自》弘中弁護士に懲戒請求 ゴーン被告逃亡「故意か重過失」 - 産経ニュース
 まあ、弘中氏がゴーンの逃亡の共犯であるとか、保釈条件に違反していたとか言う事情でもない限り懲戒処分などないでしょう。
 そしておそらくそんな特殊事情はない。一部マスコミの弁護団批判に煽られた馬鹿者による請求でしょうが、それこそ弘中氏に逆に「名誉毀損業務妨害」で逆に民事提訴されかねません。

*1:小渕内閣国土庁長官、森、小泉内閣金融担当相、第一次安倍内閣厚労相など歴任

*2:建前では通常の内閣改造ですが

*3:とはいえ麻生の暴言(最近では単一民族発言)に比べればまだマシですが。

*4:もはや「新三本の矢」と言う言葉自体、安倍がほとんど使わなくなっている惨状ですが。俺も忘れかけてました。

*5:日本会議の構成団体の一つ

*6:産経新聞ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員

*7:元「新しい歴史教科書をつくる会つくる会)」副会長

*8:つくる会会長。日本教育再生機構理事長

*9:形式的には今も残ってはいるが、安倍が「社会科教科書に竹島尖閣問題を必ず書き込むよう教科書会社に指示したこと(歴代政権は近隣諸国条項に配慮しそうした指示はせず)」で「条項がかなり骨抜きになっている」と安倍が批判されている。

*10:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*11:鈴木内閣労働相、自民党政調会長(中曽根総裁時代)、中曽根内閣文相など歴任

*12:「第1次冷戦」とは奇妙な言葉です。ソ連崩壊で冷戦は終わったのであり、「中台対立」「南北朝鮮対立」は普通冷戦とは言わないでしょう。

*13:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*14:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長など歴任