中台トップ会談が「アンチ中国」として不快らしいMukkeさん(追記あり)

http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/news/html/20151104/k10010293361000.html
 こないだ英国で官民挙げての歓迎を受け世界各国をめぐってる脂ののった主席と退任間近のレイムダック総統の会談を後者がセッティングするとか,穏やかな余生には興味がないということなんだろうか。

 やれやれですね。どうも馬総統のような「退任間近の政治家*1」が「大きな政治ゲーム」をやるとid:Mukkeさん的には「穏やかな余生に興味がない」んだそうです。随分と変な理屈です。
 まあ、「馬総統が穏やかな余生に興味がないかどうか知りません*2」がそんなことより「このトップ会談がもたらす政治的効果」でも論じたらどうなんですかね。俺は「中台関係の融和は大変いいこと」だと思いますけどね。
 たぶんアンチ中国で頭が腐ってるアホのMukkeさんは「未来永劫、中台が仲が悪い方が嬉しい」んでしょうけど。 
 Mukke*3の言ってることが産経新聞と同レベルなので鼻で笑います。つうかオバマについては「退任間近のレイムダック大統領*4」なんて言わないんだからいつもながら大変愉快な方です。
 それにしても馬総統を小馬鹿にしたいが故の文章でしょうが

こないだ英国で官民挙げての歓迎を受け世界各国をめぐってる脂ののった主席

とまで習主席を「好意的(?)」表現するのにはびっくりです。
 この方「病的なアンチ中国」「病的なダライ一味盲従分子」ですから、「英国、フランス、ドイツ」といった最近の欧州の中国歓迎には憤慨していたはずなんですけどね(苦笑)。なにせ「野党労働党(の中国批判)に期待したい」なんて言ってましたし。
 馬総統を「習主席より格下」と小馬鹿にするためにはそんなことどうでもいいようです。ダライなんか馬総統以上に「id:Mukkeさんのような一部ダライファンを除いて」世界から全然相手にされてない無能(たとえばノルウェー首脳ははっきり「会うとデメリットだからダライには会わない」と言ってる)の癖にid:Mukkeさんは何抜かしてるんでしょうか?
 つうか「英国、フランス、ドイツが歓迎するなら、台湾も歓迎してもおかしくないよな」と考える程度の脳みそもid:Mukke先生には頭にないようです。昔「森元首相を茶化す言葉」として、はやった言葉で言うなら「サメの脳みそ=id:Mukke」なんでしょう。いやサメの脳みそが実際どうなのか知りませんが。
 なお、小生は馬総統にはそれなりに好意を持っています。別に彼が台中友好に乗り気だからではなく
■今日の産経ニュース(7/6〜12分)(追記・訂正あり)
http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20150706/5632158908
で触れましたが

http://www.sankei.com/world/news/150708/wor1507080005-n1.html
 婦援会と馬との関係は、馬が法務部長(法相)に就任した93年に遡(さかのぼ)る。死刑制度を批判するなど「人権派」として知られた馬は、そのころ台湾でも活動が始まった慰安婦問題に高い関心を示した。総統就任後も、元慰安婦を訪ねたり総統府の食事会に招いたりした。(注:婦援会の)康によると馬は「一貫して阿媽の最大の支持者だった」という。
 今年5月20日の就任7周年の記念演説では貴賓席に元慰安婦の陳蓮花を招待。演説の冒頭、「蓮花おばあちゃん」と声をかけた。

からです(もちろんこの記事を書いた「河野談話否定派」産経の思惑は馬批判ですが)。
 こう見えて、小生、割と「お涙頂戴話に弱い」「ジブリ火垂るの墓』、テレ朝『帰ってきたドラえもん』とかで不覚にも泣きそうになる男」なので、馬総統にどんな政治的思惑があろう*5とも

慰安婦にこんな好意的な態度をとるなんて馬って何ていい奴なんだ!』
河野談話否定派の安倍晋三と会って恥じない鬼畜・ダライラマとは偉い違いだな。まあダライはオウム麻原から1億円もらったあげく日本国民に謝罪もしないようなクズだからな(毒)』
『俺的にはもう「馬総統>絶対に越えられない壁>ダライ」だな。つうかダライって何の役に立ってるの?。チベット人の自殺扇動してるだけの無能ジャン、ゲラゲラ(嘲笑)。あんなウスラバカを評価する輩の気が知れない』

と思わずにはいられません。
 ちなみにMukkeがブクマつけたNHK記事によれば

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151104/k10010293361000.html
 今回の発表についてアメリカ、ホワイトハウスのアーネスト報道官は、3日の記者会見で「中国と台湾による緊張緩和と関係改善に向けた取り組みを歓迎する」と述べました。

だそうです。まあ、どこまで本心かは分かりませんが米国が「少なくとも建前の世界では会談を歓迎してることの意味」はMukkeには「わからない」or「分からないふりをし続ける」んでしょうねえ。
 さすがに「歓迎なんかしやがって米国許さない!」とは言えないでしょうし(毒)。

【追記その1】
■産経『【中台首脳会談】潘基文国連事務総長、会談を歓迎 「実りある議論を」』
http://www.sankei.com/world/news/151105/wor1511050016-n1.html
 まあ、こういう反応こそがまともだと思います。

http://j.people.com.cn/n/2015/1106/c94474-8972672.html
■人民日報『両岸は昨年から「習近平馬英九会談」について協議』
 「習近平*6馬英九*7会談」に関する両岸の協議はいつ始まったのか?。
(中略)
 両岸の関係側は2014年から「習近平馬英九会談」について協議を始めていた。会談の実現には蕭万長氏*8、張志軍氏*9、王郁蒅氏*10、夏立言氏*11の4人が重要な役割を果たした。蕭氏はかつて台湾地区「行政院」院長、台湾地区「副総統」を努めた。2000年に「行政院長」を退任し、「台湾両岸共同市場基金会」名誉会長として活躍してきた。過去2年間に習総書記は蕭氏と数度面会した。
 2013年10月6日、習総書記はバリ島で蕭氏と会った際「双方の担当当局の責任者も会って意見交換することができる」と述べた。同日、国務院台湾事務弁公室の張志軍主任と大陸委員会の王郁蒅主任委員が短く挨拶を交わした。国務院台湾事務弁公室と「大陸委員会」の初の接触であり、5分間ではあったが、64年にも上る歴史を打ち破った。
 2014年2月に南京*12で張、王両氏は再会し、国務院台湾事務弁公室と大陸委員会は常態的意思疎通制度を構築した。王氏は張氏を台湾に招待した。2014年6月に張氏は訪台。その後、国務院台湾事務弁公室の責任者と大陸委員会主任委員は頻繁に働きかけ合いを行った。
 2015年5月、張氏と大陸委員会の夏立言主任委員が金門で面会。2015年11月には夏氏が大陸委員会主任委員として初めて大陸を訪問し、広州*13で張氏と面会し「現在の両岸関係の情勢および両岸関係の発展における問題について意見交換し、積極的な共通認識に達した」。張氏は記者会見で「双方は共に両岸指導者の会談が両岸関係の長期的発展にとって重要で積極的な意義を持つと考えている」と指摘した。

【追記その2】

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/11/post-4071.php
「政治家と軍事産業は何事もなかったかのようにエジプトの軍部と付き合っているが,シシの強権支配は相変わらずで,市民が抑圧される状況は改善されていない」
 習近平への扱いがアレなんで,推して知るべしかと。

 むしろ話はid:Mukkeさんが言ってるのと逆だと思うんですけどね。
「エジプトごとき小国すら」経済を理由に英国政府が人権を軽視するのなら、「大国中国」なんか到底「人権を理由に批判なんかできない」て話です。
 それにしても「経済を理由にエジプト軍事独裁政権に甘いのはフランスやドイツ、米国など他の欧米諸国も同じ(もちろん我が日本もそのエジプトに甘い「お仲間」ですが)」でしょうに英国「だけ」非難とはMukkeさんも変な御仁です。この記事が英国を問題にしてるのは単に記事の書き手が英国人だからに過ぎません。
 結局「AIIBに一番最初に参加表明したり、最近、大規模に李首相を歓待したりした英国が『中国嫌い』として憎たらしいから悪口言ってる」だけでしょうねえ、あの人(id:Mukkeさん)は。あの人に人権意識なんかあるとはとても思えません。なにせペマ・ギャルポの歴史捏造主義言動を容認して恥じないクズですから。
 id:Mukkeは正直に「俺はチベット盲従分子、ダライラマ盲従分子だから中国が大嫌いなんだ!」と叫べばいいと思うのですがね(毒)。


【追記その3】

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.afpbb.com/articles/-/3065811
「習国家主席は,『どんな力もわれわれを引き離すことはできない』と馬総統に語り掛けた。『われわれは1つの家族だ』」お,おう……/(ボーガス注:候補辞退に追い込まれた)洪秀柱*14の発言で負ったダメージのこと忘れてるんじゃ。

 結局そういう評価しかできないんだなあ、この人(苦笑)。さすがアンチ中国。まあある意味、論理一貫してるけどな。


【追記その4】
 Mukkeがブクマつけていたので気づいた福島香織の駄文に突っ込んでみます。
■『分断後初の中台首脳会談、意義見えず、名を残すために台湾を売る馬英九の愚』
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/111000021/#Message-complete
 どの辺りが国*15を売ってるのか、意義が見えないのかさっぱり分かりません。単に「意義が見えない」と公言する福島が自分の馬鹿さをさらしてるだけでしょう。さすが産経上がりと言うべきでしょうか。
 そもそも政治家たるもの、安倍のような低能でもない限り「自分なりの国益評価」がありそれにのっとって動いてるわけです。「とにかく歴史に名が残ればいい」と言う人は普通いない。単に「馬批判派(例:福島)の国益評価」と「馬総統の国益評価」にズレがあるだけの話です。それにしたって「国を売る」というのはもはや批判ではなく誹謗中傷でしょう。

個人的な印象を言えば、2005年に野党時代の国民党現役主席であった連戦*16が初訪中して総書記の胡錦濤*17と初会談したときの方が感慨は強かった。

 それ単に福島の個人的感想に過ぎないでしょう。「国民党現役主席の初訪中」だってインパクト強いでしょうが、野党であり、総統じゃないですからね。

 個人的な憶測を言えば、馬英九にとっては、負け試合終了間際のロスタイムに、少しでも見せ場をつくっておきたくて個人プレーに走った、というところではないか。蒋介石蒋経国李登輝陳水扁と歴代台湾の指導者は、いずれも何かしら偉業を成し遂げ、歴史に名を刻んだ。
 蒋介石は初代中華民国総統蒋経国戒厳令を解除し中華民国の台湾化を進めた。李登輝は台湾の民主化の立役者であり、陳水扁は最初の国民党以外の政権を台湾に樹立した。

 やれやれですね。福島の上げるもののうち「中華民国の台湾化(蒋経国)」「台湾民主化李登輝)」はまあ偉業と言っていいでしょう。
 「初代台湾総統蒋介石)」「初の非国民党政権(陳水扁)」というのは何が偉業なのか。「総統に就任したこと自体が偉業、だって初だから(福島)」というのなら馬総統の今回の行為だって「初の偉業」のわけです。
 結局、福島は
1)「馬英九以外は皆素晴らしい」と「反馬感情から言いたかった」が
2)蒋介石陳水扁については「蒋経国李登輝と違って」実は何の思い入れもないのでいい物が思い浮かばず、こういうバカを言っている
つうことでしょう。ちなみに陳水扁と言えば「退任後に犯罪関与が発覚し刑務所に行った男」です。
 福島が陳嫌いならば確実に下獄をネタに「元総統が下獄など前代未聞だ」「ニクソンウォーターゲートや田中ロッキードなみのスキャンダル」と罵倒してるでしょうが、まあ、「陳より馬が嫌い」だから陳批判はしないと言う事でしょう。

 馬英九のやったことは台湾の中国化であるが、それをポジティブに語る台湾人は少ない。
 早い話が馬英九の政治に歴史的意義のある評価はひとつもなかった。

 つうのは単に「アンチ中国」福島らしいとんちんかん評価に過ぎません。
 ■浅井基文ブログ『中台首脳会談』
 http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2015/743.html
を読めば馬時代に中台経済関係が着実に発展していることが分かります。それを「台湾の中国化」と福島が罵倒するのは彼女の勝手ですが、ではどうやって台湾は「飯を食っていくのか」「経済を回していくのか」。
 どうやって台湾は「中国との間で軍事的緊張が生じないような状況を作っていくのか」。
 それに対する一つの回答が馬政治のわけです。それに対し「俺は中国が嫌いだ!」と子どもじみたことを言っても馬鹿げてるだけです。


【追記その5】
 反中国のid:Mukkeさんと違い「中台トップ会談を歓迎している浅井基文氏」の文章を「少し長いですが」紹介してみます。大筋では俺も浅井氏に賛同し「中台首脳会談を高く評価」します。

■浅井基文ブログ『中台首脳会談』、より一部引用
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2015/743.html
 中台首脳会談の実現は、いわゆる「台湾有事」の危険性を遠ざけることを意味しているという点だけに着目しても、私たちにとっても極めて歓迎すべきことです。なぜならば、安保法制、すなわち戦争法を安倍政権が強行成立したいま、「台湾有事」となれば、米中軍事激突が不可避となり、日本は「集団的自衛権行使」としてアメリカに積極的に軍事協力することになるからです。それは取りも直さず(ボーガス注:戦前の日中戦争に続く)日中再戦ということになります。
 ところが、日本国内ではこういう視点がまったく欠落しています。
 例えば、8日付の朝日新聞は、1面トップで中台首脳会談を取り上げたことは当然として、中台首脳会談の持つ意味について、「解説 台湾統一に警戒感も」(1面)、「中台、同床異夢の握手」(2面)、「台湾野党・学生ら反発」(9面)などの見出しに明らかなように、極めて消極的さらには否定的な受けとめ方を押し出す報道を行っています。これは、国民の対中感情が極めて悪いことを踏まえた(ボーガス注:日本大衆に蔓延する反中国感情に媚びる、ジャーナリズムにあるまじき、歪んだ朝日の)報道姿勢であることは直ちに分かります。そこには、安保法制成立後の日中軍事関係の極めて危険な含意に対する問題意識がまったくありません。
 中台首脳会談の意義及び中国問題に対する私たちの認識を正すことは不可欠な作業だと思われます。
(中略)
 中台関係は、台湾政情(特に2000年から2008年にかけての台湾独立を標榜する民進党陳水扁政権)によって停滞しましたが、2008年に国民党の馬英九政権が成立してからは急速に進展しました。海協会(浅井注:中国側の対台湾関係を担当する窓口機関である「海峡両岸関係協会」の略称。1991年12月16日成立)と海基会(注:台湾側の対中国関係を担当する窓口機関である「海峡交流基金会」の略称。1990年11月21日成立)の間で23の協定(2010年に締結された両岸経済協力枠組協議は実質的な中台自由貿易協定)が結ばれ、貿易規模は1700億ドル以上(台湾の輸出額の約4割は香港を含む中国向け)に達し、中国に進出した台湾企業は10万社といわれます。人的交流もめざましく、800万人規模の観光交流、4万人以上の学生交流も実現しています。中国在住の台湾籍人は大都市を中心に100万人(台湾の人口は約2300万人)といわれます。
 例えば、JETRO*18の『世界貿易投資報告2014年版』によれば、台湾の2012年及び2013年の輸出総額はそれぞれ3012億ドル及び3054億ドルです。その内訳を見ると、日本に対する輸出額はそれぞれ190億ドル及び192億ドル(構成比6.3%)、アメリカはそれぞれ330億ドル及び326億ドル(構成比10.7%)、中国(香港を含む)はそれぞれ1186億ドル及び1212億ドル(構成比39.7%)です。また輸入総額はそれぞれ2705億ドル及び2700億ドルです。日本はそれぞれ476億ドル及び432億ドル(構成比16.0%)、アメリカはそれぞれ236億ドル及び252億ドル(構成比9.3%)、中国はそれぞれ435億ドル及び442億ドル(構成比16.4%)です。
 台湾の貿易、特に輸出にとっての中国の重要性は突出していることが分かります。しかも、台湾の貿易収支は、2012年が307億ドル、2013年が355億ドルの黒字です。対中国貿易収支がそれぞれ750億ドル及び769億ドルの黒字ですから、台湾の貿易の対中国依存度が圧倒的に大きいことも歴然としています。ちなみに、中国にとっては、台湾は貿易相手先としては第7位(2014年1月−10月)、輸入先としては第6位(同)の地位を占めています(張華「2014年両岸経貿関係年末評価」)。
 また、台湾の対外投資額に関しては、対日が2012年が1089(百万ドル)で2013年が170、対米は144及び416、中国以外の投資先(香港を含む)合計がそれぞれ8009及び5232です。これに対して、対中(香港を含まない)がそれぞれ12792及び9190です。対外投資先では、貿易以上に、中国が圧倒的な比重を占めていることが分かります。
 以上から分かるように、貿易立国の台湾経済にとって、中国大陸はいまや命綱であることは明らかです。しかも、中国の専門家も認めるように、この規模までの中台経済関係の長足の発展は馬英九政権になってから実現したものです。
 馬英九総統の支持率は、最初に総統当選を決めた2008年(6月17日)41%(不支持37%)を最高に、2009年(5月21日)41%(不支持40%)、2010年(6月19日)33%(不支持47%)、2011年(6月19日)36%(不支持49%)と下降線を辿ってきました。再選を決めた年である2012年(5月15日)20%(不支持64%)、2013年(5月15日)14%(不支持70%)、2014年(2月13日)14%(不支持65%)と、その後も一貫して低迷してきています。特に、海峡両岸のサービス貿易制限を解除し、市場を互いに開放することを目標とする海岸両岸サービス貿易協定(「海峡両岸服務貿易協議」)の締結交渉に対して、野党・民進党及び学生が(ボーガス注:安い中国産農産物で台湾農業が壊滅的打撃を受けるなどの理由で)反発し、2014年3月に学生が立法院を占拠する事件が起こってから、馬英九政権の求心力はさらに低下しました。その結果、2016年早々に予定されている次期総統選挙では、民進党蔡英文党首の当選が有力視される状況になっています。
 こうした状況を背景にして突然実現した中台首脳会談であったため、劣勢の国民党が形勢を挽回するためにとった行動であるとする見方があります。私もそういう可能性がゼロだとは思いません。しかし、基本的には、九二共識を基礎に安定した中台関係を構築することを目指してきた習近平政権と、2008年に総統就任して以来、一貫して中台関係の改善に注力し、実績を上げてきた馬英九政権の戦略的思惑が一致したことが首脳会談実現の最大の根拠であると素直に見ることがポイントだと思います。
 すなわち、習近平政権としては、「一つの中国」原則を重視してきた馬英九との間で九二共識を再確認しておくことは、次期政権に対する断固たるメッセージになると考えたとしても何ら不思議ではありません。
 馬英九との首脳会談で習近平は、「いかなる党派、団体であれ、またその過去の主張が何だったであろうとも、「九二共識」という歴史的事実を承認し、その核心的意味を承認するのであれば、我々はいかなる者とも交流を進めることを願っている。国家を分裂する行為に対しては、両岸の同胞は絶対にイエスとはいわない。国家主権と領土保全を守るという原則問題に関しては、我々の意思は巖のごとく堅く、態度は終始一貫している。」と明らかにしました。これは、蔡英文に対するメッセージであると同時に警告であることは明らかです。
 また、馬英九にとっては、任期の最後の段階で習近平との首脳会談を実現することは、彼が8年間にわたって進めてきた中台関係改善プロセスの集大成として、是非とも自分自身の手で成し遂げたかったに違いありません。中国の様々な論評が今回の首脳会談は「長く歴史に残る一大事件」と評価していますが、馬英九としては自らの名前が長く中国の歴史に刻み込まれることを考えるとしても、歴史の民である中国人の一人として、極めて当然の成り行きです。
中台首脳会談に対する台湾社会の受けとめ方に関しては、すでに冒頭で紹介した朝日新聞のような伝え方があります。私ももちろん関心があるので、台湾のメディアのWSを検索してみました。
 世論調査としては、11月9日付の台湾・聯合報の結果があります。それに依りますと、首脳会談の結果に対して満足と答えたものが37%、不満足と答えたものが34%でした。内訳では、40才−59才の中壮年では満足48%、不満足29%、40才以下の世代では不満足41%、満足29%、60才以上の世代では満足32%、不満足31%でした。また、国民党支持者は74%が満足、民進党支持者では不満足69%、満足13%で下。政党から中立の者では評価が分かれ、29%が満足、28%が不満足でした。
 ちなみにこの世論調査では、蔡英文が総統選で勝利した場合に、習近平と会見するべきかどうかをも質問しています。67%が会見することに賛成、賛成しない者はわずかに9%でした。民進党支持者でも71%が賛成と答え、反対派わずか14%で下。国民党支持者の79%及び無党派の59%も賛成と答えました。
 馬英九習近平の首脳会談に対する台湾世論の評価は、朝日新聞報道が与えるネガティヴな印象が事実に反することは以上の数字からはっきりと読み取ることができると思います。特に、馬英九に対する世論の支持率が(ボーガス注:世論調査に寄れば最近は)10%前半で低迷していることを考え合わせれば、台湾世論が今回の首脳会談を総じて肯定的ないし中立的に受けとめていることは確かでしょう。
(中略)
 (ボーガス注:野党・民主進歩党の総裁選候補である民主進歩党党首)蔡英文*19自身の中台首脳会談に対する反応については、そのブログで読むことができました。彼女は次のように述べています。
「総統は対外的に国家人民を代表するべきであり、体現しなければならないのは国民の共同意思でなければならない。しかし、昨日の馬総統の馬習会見における振る舞いは、多くの人を失望させ、さらには憤激させた。なぜならば、台湾人民に関して言えば、馬習会見が国際社会に残した「歴史的記録」は、馬総統の自己満足の握手だけであり、徹頭徹尾欠けていたのは台湾のデモクラシーであったし、中華民国の存在というものも見ることもできなかったからである。
 国家元首として、人民は馬総統のことを光栄には感じられなかったし、安心することもできず、逆にさらに多くの焦慮と違いをつくり出した。なぜならば、彼の口からはデモクラシーと自由、2300万人の選挙権というものがまったくなかったからだ。個人の政治的ポジションを満たすために、台湾の未来を一つの政治的枠組みの中に押さえ込もうとするのは、2300万人の自由な選択を剥奪するものだ。
 私が厳粛に指摘しなければならないのは、馬総統の言いぐさはすでに台湾の現状から逸脱しており、台湾の主流の民意を代表することはできないということだ。台湾の未来及び両岸関係の発展を決定することができるのは、明年1月16日の新しい民意のみである。(中略)
 台湾にデモクラシーがある限り、我々は自らの命運を掌握することができる。進歩的力が政権に復帰し、国会を掌握することによってのみ、人民は心配する必要がなくなる。私は、皆さんとともに、この局面を転換し、デモクラシーによって台湾を守ることができることを皆さんに保証する。」
 私は、蔡英文については何も知りませんし、正直興味もないのですが、以上のブログ発言を見る限り、中台首脳会談の実現という歴史的意義をまったく認識していないという一点だけでも、いわゆるステーツマンとして落第だと思います。また、真正面から九二共識を否定する発言はさすがに控えていますが、「個人の政治的ポジションを満たすために、台湾の未来を一つの政治的枠組みの中に押さえ込もうとする」という発言の中の「台湾の未来を一つの政治的枠組みの中に押さえ込もうとする」が九二共識に対する批判を込めていることは容易に看て取ることができます。中国大陸に圧倒的に依存する台湾経済の現実を蔡英文が正確に認識しているのかということも強く疑問に感じずにはおられません。

*1:失敬にもid:Mukkeのバカは馬総統を「レイムダック呼ばわり」してますが。レイムダックというなら「いつまで経っても明るい展望が見えないダライラマ一味(ダライが80の爺なので死亡が既に間近、ダライが死ねばダライ集団の内紛、崩壊の可能性大)の方がよほどレイムダック」でしょうがまあ、そう言う事を俺が言うと憤慨するんだろうな。

*2:まあ、「大統領退任後も北朝鮮訪問してるカーター」「首相退任後も訪中してる福田氏や村山氏」のような人はいますので「穏やかじゃない余生」でなくても何ら不思議でもないでしょうが。つうか「穏やかな余生」が「政治活動しないこと」を意味するならむしろそう言う政治家の方が少ないんじゃないですかね。

*3:途中から敬称「さん」がついたり、つかなかったりします。その辺りいい加減です。

*4:正直「大統領予備選でのクリントン人気」を考えればかなりオバマは「レイムダック化」してると見ていいんじゃないか。

*5:まあ、あるんだとは思いますが。

*6:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*7:連戦内閣法相、台北市長を経て台湾総統

*8:李登輝政権で行政院長(首相)、馬英九政権で副総統を歴任

*9:中国共産党中央対外連絡部副部長、外交部副部長(外務次官)などを経て、現在、国務院台湾事務弁公室主任

*10:台湾の行政院大陸委員会主任

*11:台湾の行政院大陸委員会主任

*12:江蘇省省都

*13:広東省省都

*14:立法院副院長(国会副議長)、国民党副主席を歴任

*15:台湾は「国際社会的には国じゃない」と言う問題はひとまずおきます。

*16:李登輝政権行政院長(首相)、副総統、国民党主席を経て現在、国民党名誉主席

*17:貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記、国家副主席などを経て国家主席、党総書記、党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*18:経産省所管の独立行政法人日本貿易振興機構

*19:陳水扁政権副首相を経て現在、民主進歩党主席。