黒井文太郎に突っ込む(2019年3月6日分)

黒井文太郎がリツイート
・Kazuto Suzuki
 首脳会談は始まる前から破談が決まっていた。なぜならトランプは一方的な核放棄を求め、北朝鮮はそれを絶対にのまないからだ

 それが事実なら*1誰が考えても「北朝鮮がのむわけがない」一方的な核廃棄(一方的と言うからにはたいしたお土産はないのでしょう)など求めたトランプが全面的に間違ってると思いますが、そうは黒井と類友が思ってないらしいのには改めて呆れます。

黒井文太郎
 本日テレビで米朝問題を解説する機会をいただき、「今後は?」との質問に「しばらく膠着*2」とお答えしたのですが、後で思うと、それよりまず「北は非核化する気ない」という見方がまだテレビ言説では少数派ぽい*3ので、少ない発言機会ではそれメインに根拠解説していきたいなと思い至りました

 どこの番組か知りませんが「結論ありきのアンチ北朝鮮活動家・黒井なんか呼ぶな」「そもそも黒井って専門家っていえるのかよ?」ですね。それにしても黒井が番組名や放送予定日*4などを言わない理由は何でしょうか?。公言できないようなトンデモウヨ番組なのか?。はたまた逆に「黒井以外のコメンテーター」の方(米朝交渉支持派?)が黒井よりも説得力ある主張をしていたからか?。
 それはともかく、黒井の場合「非核化する意思ない→交渉しなくていい、制裁続行」つう救う会レベルの暴論です。そして、そう主張するために「非核化する意思ない」が不動の前提の訳ですから。客観的認識を述べてるわけでは全くない(客観的認識だともちろん黒井は強弁しますが)。
 なお、仮に北朝鮮に非核化する意思がないとしても「だから交渉しない」というのは賢明ではないでしょう。
 「非核化しないまでもこれ以上の核武装エスカレートはやめさせる」つうことには一定の合理性があります。「非核化しないなら制裁だ」で緊張を高めることにメリットはない。もちろん「非核化できないなら緊張が高まってもいい」つう価値観(黒井や救う会?)なら「話は別」ですが俺はそう言う価値観ではありません。
 かつ、そんなに緊張を高めたらどう考えても拉致解決がほとんど不可能になるでしょう。拉致は小泉訪朝のような日朝交渉以外では現実的に解決しないのに、そこまで緊張を高めたら交渉が極めて困難になります。もちろん「非核化できないなら拉致が解決しなくてもいい」だの「交渉しなくても拉致は解決する(武力奪還?)」つう価値観(黒井や救う会?)なら「話は別」ですが俺はそう言う価値観ではありません。
 大体、北朝鮮も自己の核武装を正当化する際に主張してることですが「NPT非加盟の核武装国」なら、北朝鮮以外にもインドやパキスタンがあります(またイスラエル保有を否定しているが、状況証拠からイスラエルの核保有が疑われている)。
 「明らかに北朝鮮よりも軍事力や経済力、政治力でまさる」それらを危険視しない、核廃棄を求めないくせに北朝鮮だけ脅威視するというのは不合理です。
 先日もインドとパキスタンでは「小競り合いに過ぎない」とはいえカシミールを巡って軍事衝突が起こっています。
 「形式的可能性」でいえば「インドやパキスタンが核使用する可能性はある」し、そこまで暴走しなくても「核をバックにお互い軍事衝突をエスカレートさせる可能性もある」わけです。
 正直「米国がああまで北朝鮮の核保有に神経をとがらせる理由」が俺には理解できません。
 「インドやパキスタンは親米だが、北朝鮮は反米だ?」
 いやまあ確かにそうでしょうが、それは「今はそうだ」ということにすぎません。インドやパキスタンが今後、反米化する可能性はゼロではない。
 一方で「反米なら核保有認めない、親米ならOK」というのはあまりにも党利党略であり妥当な態度ではないでしょう。何度も書きますが客観的な脅威という意味ならよほどインドやパキスタンの方が北朝鮮より脅威です。
 なお、俺は「条件付きでだが、北朝鮮には非核化意思はある」と見ています。なぜなら北朝鮮は「条件(米国による北朝鮮体制保障:パナマ・ノリエガ政権、アフガン・タリバン政権、イラクフセイン政権のように軍事侵攻で政権転覆しない保証)付きでなら非核化してもいい」と公言しているからです。この点は「島を返す」とは一度も公言してないロシアとの大きな違いです。実際、「北朝鮮の言う条件が仮に満たされる」のであれば「経済制裁など様々なデメリットを甘受してまで」核保有するメリットもないでしょう。少なくともそう認識した上で「北朝鮮の条件(終戦協定なのか、米朝国交樹立なのか、一体どのレベルなら北朝鮮が非核化してもいい体制保障だと考えてるかは俺には分かりませんが)」を叶えた上で非核化を目指すという今のトランプ政権や文在寅政権の方向性には一定の合理性があり、一方黒井のように「交渉による非核化」を「将来はともかく*5」現時点で全否定するのは不合理だと思っています。
 いずれにせよ、「条件付きでなら非核化する意思がある」と俺も含め多くの人は見ていますが、それは裏返せば「米国が北朝鮮が希望する条件を満たさなければ非核化しない」つうことでもあります。
 ここで俺などは「北朝鮮と米国が双方譲歩して、お互い納得する条件をなんとか見つけてほしい。そのための仲介役を可能なら日本、韓国、中国、ロシア、国連などにやってほしい(まあ、俺個人には何も出来ませんが)」と思います。
 一方、「アンチ北朝鮮」黒井は

1)条件が満たされなきゃ非核化しないんだから、『そもそも非核化意思がない』と宣伝して、条件を見つけようとする米国、韓国などの努力を俺なりに少しでも妨害しよう。俺の妨害活動が成功すれば御の字。成功しなくても条件が満たされて非核化する可能性は『必ずしも高くない*6』んだから結局非核化交渉が挫折するかもしれない。そのときは「俺が正しかった」とどや顔しよう
2)仮に非核化交渉が妥結しても「北朝鮮が核を隠し持ってるに違いない」といえばいい。北朝鮮IAEAの査察を無条件で全面的に受け入れない限りそういうことは可能だろう。そして北朝鮮IAEA査察を無条件で全面的に受け入れる可能性も決して高くない*7

と思うわけです。

*1:事実かどうかは分かりませんが。

*2:アンチ北朝鮮・黒井ですら「米国、北朝鮮とも交渉打ち切りなど宣言してない」のでこう言わざるを得ないわけです。なお、俺も「今後交渉がサクサク進む」とは思っていませんが、「アンチ北朝鮮」黒井の場合「膠着」とは「可能な限りのネガキャン」にすぎません。客観的認識を述べてるわけではない。

*3:後述しますが「少数派」なのはむしろ当たり前です。従って黒井の発言機会が少ないのもむしろ当然です。まあ黒井の場合発言機会が少ないのは「結論ありきのただのアンチ北朝鮮=黒井」「そもそもあいつ専門家なのかよ?」と評価されてるからかもしれません。

*4:まあ録画でなく生放送(ツイート時点で放送済み)なら「放送予定日」ではなく「放送日」ですが。

*5:将来的には「何があろうと北朝鮮に非核化意思はない」と判断せざるを得ない可能性は残念ながら「一応ある(全くないとまでは言えない)」とは俺は思っています。ただし現時点で黒井のように「現時点でも非核化意思なしと断言できる」と認識することは妥当ではないし、黒井の場合そもそも「アンチ北朝鮮の立場でのポジショントークで結論ありき、客観性皆無」つうのが俺の評価です。

*6:この点は俺も含め「非常に高い」と思ってる人間はむしろ少ないんじゃないか?

*7:まあ、俺も「必ずしも高くはない」だろうし、その結果「隠し持つ可能性もゼロではない」だろうと思います。それでも非核化を北朝鮮が表明し、そのように振る舞うならそれには一定の意味があると俺は思います。そうした態度を北朝鮮がとり続ける限り、緊張関係が緩和され、戦争の危険が遠のきますので(以上の記述で分かるように俺は「どう振る舞えば合理的に日本の国益が増進できるか」を考えており、「例のN原氏などが曲解するのとは違い」別に北朝鮮シンパではありません。この点は「建前(トランプや文氏は時に金正恩へのリップサービスをします)はともかく」本音ではトランプや文在寅氏も同じでしょう)。なお、仮に北朝鮮が「IAEA査察を無条件で全面的に受け入れても」黒井は「隠し持ってる疑いがある」というでしょう。「自称フリーライター」黒井にとって大事なのは事実ではなくアンチ北朝鮮活動家としての「北朝鮮に対するネガキャン」にすぎないからです。