黒井文太郎に突っ込む(2019年12月31日分)

最初から非核化する気はなかった北朝鮮 米国に「年末まで」期限迫る(THE PAGE) - Yahoo!ニュース
 アンチ北朝鮮の黒井的には「そういうことにしたい」のでしょうが、俺は北朝鮮には「非核化の意思は一応ある」と思っています。
 ただし、非核化は北朝鮮にとって「無条件」ではない。
 そこでは「非核化するから米国は何かくれ」というバーター取引の要求があったわけです。というのも「経済・軍事小国」北朝鮮にとっては「非核化」以外に米国相手に切れるカードがなく、かつ「核保有」というカードを非核化で捨てた場合、「最悪の場合」、米軍侵攻による政権転覆すら危惧されるからです。
 北朝鮮にとって「もらえれば非核化してもいい条件」が何なのかはよく分かりません(なめられるのを恐れてか北朝鮮自身が曖昧にしている)。
 「在韓米軍の撤退」か、「経済制裁の解除」か、「朝鮮戦争の正式終戦」か、「米朝&南北国交樹立」か、「米国や韓国との間の相互不可侵条約」か。
 いずれにせよ大事なことはこうした北朝鮮の要求「非核化するから何かくれ」に対し「水面下交渉ではどうだか知りませんが」、少なくとも表に出てる話では米国から「わかった、ならばこういう条件ではどうだろう」という取引の話は一度も出たことがないと言うことです。
 少なくとも表に出てる話では米国は「無条件で非核化しろ」としかいってない。
 それでは北朝鮮が非核化しないのはある意味当たり前です。
 そしてその状況下では「北朝鮮には非核化する気が無い」などとはいえない。
 仮に
1)米国はバーター取引する気が無い
2)そして「米国はバーター取引する意思がない」と北朝鮮側も認識して核廃棄する気を失っている(ただし、米国から一方的に『北朝鮮には非核化の意思がない』と言われるのは国益に反するので『バーター取引なら非核化の意思があること』をアピールしている)
としても、それを「北朝鮮に非核化する気が無い」と評価するのは適切ではないでしょう。
 それは「米国の態度がけんもほろろなので、結果的に北朝鮮は非核化しないことに決めた」と言う話だからです。
 現時点では問題は「米国が全くバーター取引する気が無いこと」であって、米国がバーター取引の意思を示したのに、北朝鮮に「非核化の意思が全く認められない」という状況が出現しない限り「北朝鮮には非核化する気が無い」などとはいえません。
 まあ黒井は「米国にバーター取引する気が無いこと」を「反北朝鮮&親米」の立場から正当化したいが故に「北朝鮮には非核化する気が無い」と言いつのってるに過ぎないと思いますね。

 (ボーガス注:)非核化という目標に「朝鮮半島の」という文言を付け「朝鮮半島の非核化」という目標にしたのだ。「朝鮮半島の」としたことで、北朝鮮側からすれば「米軍の北朝鮮への核戦力」も含むと無理やり拡大解釈*1できる余地を残した。もちろん米国側からすれば「在韓米軍に核戦力は配備していないので、朝鮮半島の非核化とは北朝鮮の非核化だ」ということになるが、北朝鮮側の意図としては、とにかくそこを曖昧にしたいということだろう。

 「反北朝鮮&親米」黒井らしいですが「韓国に核戦力が配備されてない」としてもそれは「非核三原則」「核兵器禁止条約」などのような形で法的保障があるわけでは全くありません。
 「配備する必要眼がない」という米韓政府の政治判断により結果的にそうなってるに過ぎないだけであり、今後、「米韓政府の考えが変わって」配備される可能性はゼロではない。
 したがって北朝鮮が「韓国内に核配備をしないことを米朝韓三国(場合によってはそれプラス日中露)の条約で法的に確定せよ」と米韓に要求することは決しておかしな事ではありません。
 そして「韓国に核配備なんか絶対にしない」という考えならその要望には簡単に応じられるはずですが、「核配備の選択肢を無くしたくない」のか、はたまた「いかなる形でも北朝鮮に譲歩したくない」のか、その要望に応じないのが米国です。
 これで北朝鮮を非難するのは黒井の方がおかしいでしょう。


◆黒井のツイート

黒井文太郎
‏ 今回の北朝鮮の動きについて、メディアでは「非核化と引き換えに制裁解除と体制保証を得ることを狙ったが、米国が乗らなかったのでこうなった」との解説が出てくるかもしれませんが、そうではなくて「最初から非核化する気はなかった」というのが自分の分析です
正恩氏「新戦略兵器」と威嚇 核実験、ICBM発射示唆―党中央委総会で米に圧力:時事ドットコム
 朝鮮中央通信は1日、北朝鮮朝鮮労働党中央委員会総会が12月28~31日、平壌で開かれたと報じた。総会で金正恩党委員長は非核化交渉に関し、米国の軍事的脅威が続いており、「約束に一方的に縛られる根拠はなくなった」と述べ、核実験や大陸間弾道ミサイルICBM)発射の再開を示唆。「世界は近く新たな戦略兵器を目撃するだろう」と威嚇した。
 正恩氏はまた、「米国の敵視政策が撤回され、朝鮮半島に恒久的で強固な平和体制が構築されるまで戦略兵器開発を進めていく」と強調。「米国が敵視政策を最後まで追求するならば、朝鮮半島の非核化は永遠にない」と訴えた。

 アンチ北朝鮮・黒井らしいですが、俺は北朝鮮には「非核化の意思は一応ある」と思っています。
 それについては上に詳しく書いたので「改めて詳しくは書きませんが」。
 そもそも非核化する意思が全くないなら、「米国が敵視政策を最後まで追求するならば、朝鮮半島の非核化は永遠にない」などとはいわないでしょう。
 この北朝鮮の主張は「米国が敵視政策を撤回するならば」、つまり「北朝鮮の要望を受け入れて一定の見返りを提供するならば」非核化するという話だからです。
 本当に非核化の意思が全くないならこんなことは言わないでしょう。
 なお、時事通信記事が書くように「再開を示唆しただけ」ですので現時点では実際に再開するかは分かりません。
 米日韓中露の反応を見た上でその辺りは決まることになるのでしょう。

*1:無理矢理ではなく当然の解釈でしょう。北朝鮮は核配備するな、しかし韓国軍や在韓米軍は核配備できる、なんて北朝鮮に飲める話ではないでしょう。なお、「米国本土の核ミサイル」まで「朝鮮半島の非核化」に含める気は北朝鮮には無いでしょう。「在韓米軍の非核化」ならまだしも「米軍全ての非核化」を米国が飲む可能性は全くないし、そうした「飲む可能性がない主張」を米国相手に主張しても国際的賛同が得られるとも思えないからです。北朝鮮が米国本土の核ミサイルを仮に問題にするとしても、それは「核保有するな、全て廃棄しろ」ではなくせいぜい「北朝鮮へ先制核攻撃しないと約束しろ」でしょう。可能なら『北朝鮮を射程とする核ミサイルを保有するな』といいたいところでしょうがこれまた米国が飲む可能性がない(北朝鮮が射程から外れると中露も射程から外れるので)ので主張しないでしょう。