今日の中国ニュース(2019年5月17日分)

海峡両岸論 第102号 2019.05.15発行 - 米社会で進行する「チャイナ狩り」 孔子学院が閉鎖、留学生を監視 - | ちきゅう座

 トランプ米政権が、中国政府の中国語教育普及を目指した「孔子学院」を「スパイ活動の拠点」とみなし排除している。この一年半の間に、米政府の資金提供を受けられなくなった全米15大学が、孔子学院を閉鎖した。
 ここ数年、同学院は「中国政府の意向が働き、学問の自由が保障されていない」などの批判が議会やメディアでくすぶっていた。
 そんな「疑惑」に追い打ちをかけたのが、米連邦捜査局(FBI)のレイ*1長官の18年2月の議会証言。孔子学院の一部が親中派の育成やスパイ活動に利用されている疑いがあるとして「捜査対象になった」と発言。それ以来パージの動きが次々に表面化してきた。
 FBI長官証言を受け、ルビオ上院議員共和党)ら対中強硬派の3議員は18年3月、「孔子学院」を「外国代理人登録法」によって登録を義務付け、監視強化する法案を提出した。
 米ウォールストリート・ジャーナルによると、米司法省は18年9月、中国国営新華社通信と中国環球電視網(CGTN)に対し、同法への登録を義務付けると通知した。孔子学院はまだ対象外である。
 「外国代理人登録法」とは何か。1938年ナチス・ドイツの利益を代表するロビイスト活動を封じ込めるために制定された。かつてはナチスを、今回は中国が標的になったと聞けば、今の米国社会で、中国に対する警戒感がいかに高いか想像できるだろう。中国以外では、大統領選への介入疑惑に関連し、ロシアの複数メディアにも登録が義務付けられている。
 米政府主導の排除を鮮明にしたのが、2019年会計年度の国防権限法(18年8月)。国防総省に対し、孔子学院を設立する大学への資金支援の停止を求める条項を盛り込んでいる。
 「ニューズウィーク」(写真中国は想像以上に危険と警告するギングリッチ氏」5月10日号)は、「米国防総省が、孔子学院設置の米大学への語学資金支援を停止へ」と題する記事で(電子版4月30日)注1 は、インディアナ大学ミネソタ大学など、少なくとも全米15大学が孔子学院を一年半の間に閉鎖したと伝えた。
 15大学のひとつ、オレゴン大学の閉鎖声明は、16,17教育年度に国防総省から計380万㌦(約4億1800万円)の中国語教育支援資金を提供されたが、新たに申請した交換留学生資金を含む「340万㌦の支援申請が全て拒否されたため」と説明している。
 同誌は、国防総省報道官のコメントとして「資金提供は国益にならないと判断した」「(孔子学院を設立している大学は)今後、語学支援資金を米国政府から受け取るか、それとも中国から受け取るかの判断を迫られる」と書く。近く新たに3校が閉鎖するという。
 朱建栄*2東洋学園大教授は「孔子学院排除はこれまでは、メディアなど民間での話でした。米政府はむしろ抑えてきたが、ここにきて政府主導に変わったのが特徴。中国側も貿易摩擦だけでなく当面、チャイナ・バッシングが続くとみており、長期戦の構えです」と話す。

 トランプやルビオら共和党連中の反中国は異常としか言い様がないですね。それにしても安倍がどう動くかが気になるところです。岡田氏は「トランプに言われるがままに安倍が私立大への補助金カットの脅しで孔子学院潰しに出てくる可能性はゼロではない」「安倍の支持基盤である反中国右翼が孔子学院を敵視し、『米国を見習って孔子学院を潰せ』と産経などウヨメディアで放言してることも無視できない」と見ていますが、果たしてどうなるか。
 さすがにそこまで無茶苦茶なことは出来ないか。
 まあ、ペマ・ギャルポはもちろん例のI濱女史なんざ、それで「早稲田の孔子学院」が閉鎖されれば大喜びなんでしょう。
 I濱にとっては「反中国>学問の自由」でしょう。
 下手したら「反中国」Mukkeや阿部治平もそうかもしれません。

 孔子学院に警告を発する日本の研究者もいる。佐橋亮*3東京大学東洋文化研究所准教授は次のように書く。
 「リベラルな価値や民主主義にロシア、中国はひそかな挑戦を強めている。~中略~中国も他国の政治家への資金提供やメディア買収、投資、孔子学院設置などを通じて民主主義社会に入り込みつつあり、その振る舞いに国際社会の懸念が強まっている」(共同通信18年6月11日配信「普遍的価値で連携急務」)。

 もちろんこの佐橋某氏、反中国ウヨでしょう。岡田氏も批判していますが、孔子学院をここまで敵視するとは正気じゃないですね。岡田氏は「こうした親トランプ、反中国の学者や評論家などが安倍政権に影響を与える危険性が否定できない」としています。しかし、共同通信もよくもまあこんなあほな文章を掲載するもんです。

・「アメリカ人は危険な外敵に直面していると気づいた時には団結する。そしてみよ!(外敵が)現れた。中国だ。米国と世界秩序にとって経済的、技術的、知的に中国が重大な脅威であることがますます鮮明になってきた」。
 こう書くのは、ニューヨークタイムズのコラムニスト、デイビッド・ブルックス。(「The Newyork Times」電子版19年2月15日)
 米国は伝統的に「敵」がないと生きられないメンタリティを持つ国家・社会である。古くは西部劇における「インディアン」(先住民)。旧ソ連初の人工衛星スプートニク1号」成功で受けたショック後の反ソ・キャンペーン。1980年代の日本バッシング(叩き)に「9-11」後のイスラム過激派。
 「敵」を挙げればきりはない。そして今は中国を「敵」とみなす空気が、米社会の隅々に浸透している。
・「チャイナ狩り」一色に染まっているように見えるアメリカだが、すべて「右へ倣え」ではない。「権力監視」と「自己再生」を政権に促す役割を維持しているメディア、識者は健在だ。先に紹介したNYタイムズブルックスは、含蓄のある提言でコラムを括っている。「もし中国がわれわれに対して『他者』だとするなら、その『われわれ』とは何者なのか? 中国がリベラルな国際秩序に対する脅威であるなら、われわれが自分たちのシステムを改善して、挑戦に立ち向かう能力はあるだろうか」
 異質と思われる他者と向き合うときは、「自分の足元の秩序の正当性」を問い返すべきだと言っているのだ。至極まっとうな主張だと思う。米中対立が激しさを増し「米国か中国か」の二択論にはまりがちなメディアが多いが、自分のポジションを相対的に見つめるメディアと識者がきちんと発言するところに、米社会の健全さがある。

 岡田氏の言うように、良識派の批判によって、マッカーシー赤狩り終結したように「良識派の批判で、現在の米国での異常な反中国が終わる日が来る」、そう思いたいところです。


リベラル21 競馬から社会変化に至るまで、近未来予測は当たらない

 私はまもなく80歳になるが、今までの人生をふりかえって、もっとも強烈なショックを受けたのは、1989年の東欧の動揺から91年のソ連崩壊までの社会主義世界体制の消滅である。これは全く思いもよらないできごとであった。

 「思いも寄らぬ」つうのが一体いつの時点のことなのかが気になるところです。まあゴルバチョフ登場前だったら「思いも寄らぬ」でしょうが、彼の登場後なら「予想の範囲内」ではないか。

 社会主義諸国の一般大衆と痛みを共にするという観点で、一連の分析を行ったのは『短い20世紀の総括—「討論」回転した世界史を読む』(教育史料出版会1992年)であった(以下『討論』という)。私はこれに敬意を表した。
 『討論』に参加したのは、田口富久治(1931~)・山川暁夫(1927~2000・2)・加藤哲郎(1947~)・稲子恒夫(1927~ 2011・8)の4氏で、まとめ役は有田芳生*4(1952~)であった。いずれも政治学*5・ジャーナリズム*6歴史学*7・法学*8マルクス主義理論家で、そこでは参加者がおのおのの理論を引っさげて、1917年10月革命から91年夏のソ連崩壊に至るまでの「短い20世紀」を厳密に分析し、社会主義体制崩壊の必然性を解明しようとしていた。
 ところが、体制崩壊後の「新しい世界の枠組み」、つまりソ連圏なき世界の近未来はどんなものになるかを論じる段になると、『討論』からは理論家の印象は消え、競馬や株価の予想屋とあまり違わないレベルになった。
『討論』の「21世紀がどうなるか」という項をみると、社会主義体制崩壊後の世界の近未来に関して、参加者の一人が当時世上に現れた以下四つの想定を紹介している。
1、アメリカの一人勝ち=パックス・アメリカーナが継続する。
2、米・日・EC(現在のEU)の三極体制、あるいは軍事的にはアメリカ一極で、経済的には三極となる。
3、日米を基軸としたジャパメリカ体制。
4、ECの強化拡大を基軸とした体制。
 おわかりのように、この4項目はどれもほぼ「はずれ」である。以下の議論は「あと知恵だ」といわれそうだが、あえて言う。
さきの予測からは、いずれも中国の存在と日本のバブル経済崩壊がすっぽり抜け落ちている。これが検討されなかったのは、『討論』の時期から見て無理からぬことのように思われるが、そうではない。

 阿部が名前を挙げてるメンツは

■田口富久治(1931~)
 名古屋大学名誉教授(政治学)。
 著書『解放と自己実現政治学』(1995年、近代文芸社)、『戦後日本政治学史』(2001年、東京大学出版会)、『丸山眞男マルクスのはざまで』(2005年、日本経済評論社)など。
■山川暁夫(1927~2000・2)
 政治評論家(別名義として「川端治」)。いわゆる新日和見主義事件で日本共産党を離党。 1975年に、月2回の雑誌「インサイダー」を創刊し、編集長に就任するが、1980年2月には、編集長の地位は、高野孟*9が引き継ぐこととなる。
 著書『国権と民権』(2001年、緑風出版)など。
加藤哲郎(1947~)
 一橋大学名誉教授(政治学)。
 著書『国境を越えるユートピア国民国家のエルゴロジー』(2002年、平凡社ライブラリー)、『象徴天皇制の起源:アメリカの心理戦「日本計画」』(2005年、平凡社新書)、『情報戦と現代史』、『情報戦の時代』(以上、2007年、花伝社)、『ワイマール期ベルリンの日本人』(2008年、岩波書店)、『日本の社会主義:原爆反対・原発推進の論理』(2013年、岩波現代全書)、『ゾルゲ事件』(2014年、平凡社新書)、『「飽食した悪魔」の戦後:七三一部隊と二木秀雄『政界ジープ』』(2017年、花伝社)、『731部隊と戦後日本』(2018年、花伝社)など。
■稲子恒夫(1927~ 2011・8)
 名古屋大学名誉教授(法学)。元名古屋大学法学部長。
 著書『ソビエト法入門』(共著、1965年、法律文化社)、『ロシア革命』(1981年、教育社歴史新書)、『ロシアの20世紀』(編著、2007年、東洋書店)など。

です(ウィキペディア参照)。
 なぜ、阿部が「外れ」というかといえば、阿部も指摘していますが「中国が世界の大国として登場した」からです。しかし1992年時点でそれを予測したらそれこそ「神か超能力者の世界」でしょう。中国の大国化が検討されなかったのは「無理からぬことではない(当時においても検討すべきだった)」どころか「無理からぬこと」です(まあ対談のメンツに経済学者や中国専門家がいないというのも大きいのでしょうが)。
 「1980年代から改革開放をトウ小平はすすめ、1990年代に一定の成果があった。2000年代以降の大国化を1992年時点で認識すべき(阿部)」て言いがかりも甚だしいでしょう。

 中国が1990年代から2010年まで急成長を遂げ、その間に経済力では日本を追い越し、人工頭脳などの分野で世界に抜きんでることなど想像もつかなかった

 「お前が想像つかないのに有田芳生氏らには『なぜ中国について論じない』て因縁つけるのかよ!。お前、本当に馬鹿でくずだな!。お前の駄文を喜んで掲載するリベラル21も本当にバカで(以下略)」ですね。
 それにしても「人工頭脳などの分野で世界に抜きんでる中国」て阿部は現在基本的に、理数系の学問振興と政治体制・民主主義の程度は関係ないと思う - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)という立場なのか。どうもこのあたり「中国の科学技術力をどう評価するか」阿部も言ってることが混乱してる気がします。年をとってもうろくしてるのか、阿部の「反中国」が発言を支離滅裂にするのか。

 理論家やジャーナリストは過去をいかようにでも解釈する。だが、われわれ同様、先のことなどわからない、なるようにしかならない存在である。

 「はあ?」ですね。こんなぼやきが「私たちは護憲・軍縮・共生を掲げてネット上に市民のメディア、リベラル21を創った」と何の関係があるのか。
 阿部が自ブログに書くなら分かりますがこんな駄文を恭しく掲載するリベラル21の脳みそが理解できません。

*1:ブッシュ父政権司法次官補などを経て現在FBI長官

*2:著書『江沢民の中国』(1994年、中公新書)、『朱鎔基の中国改革』(1998年、PHP新書)、『毛沢東ベトナム戦争』(2001年、東京大学出版会)、『毛沢東朝鮮戦争』(2004年、岩波現代文庫)、『胡錦濤 日本戦略の本音』(2005年、角川学芸出版)、『中国外交:苦難と超克の100年』(2012年、PHP研究所)など

*3:著書『共存の模索:アメリカと「二つの中国」の冷戦史』(2015年、勁草書房)など

*4:現在、参院議員(立民党)。著書『歌屋 都はるみ』(1997年、文春文庫)、『テレサ・テン十年目の真実:私の家は山の向こう』(2007年、文春文庫)、『何が来たって驚かねえ!:大震災の現場を歩く』(2012年、駿河台出版社)、『ヘイトスピーチとたたかう!:日本版排外主義批判』(2013年、岩波書店)、『50分でわかる!立憲民主』(編著、2019年、弓立社新書)など

*5:おそらく田口氏のこと

*6:おそらく山川氏のこと

*7:おそらく加藤氏のことでしょうが、彼は「歴史研究」にウェイトがかかってるとは言え、田口氏と同じ「政治学」でしょう。

*8:おそらく稲子氏のこと。

*9:著書『最新・世界地図の読み方』(1999年、講談社現代新書)、『滅びゆくアメリカ帝国』(2006年、にんげん出版)、『原発ゼロ社会への道程』(2012年、書肆パンセ)、『沖縄に海兵隊はいらない!』(2012年、モナド新書)など