「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2019年7/4分:高世仁の巻)

周庭「暴徒はいません。あるのは暴政だけです」 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 本文読まなくてもタイトルだけで内容は察しがつくでしょう。香港議会に暴力的にデモ隊の一部が突入した例の事件の事です。
 高世記事を一部引用すれば

 香港の逃亡犯条例改正案をめぐる問題で、1日、デモ隊の一部が立法会庁舎のガラスを割ってなだれ込み、約3時間にわたり占拠。設備を壊すなどした他、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の辞任や、改正案の撤回を要求する落書きなどもしたという。
 これに対して日本では一斉に批判の声が上がった。いくらなんでも暴力はいけない、市民の支持を失い運動が先細りする、当局による弾圧や中国の介入の口実を与える*1などと。

ですね。
 正直

・周庭(アグネス・チョウ)
「(ボーガス注:香港のデモ隊に)暴徒はいません。あるのは(ボーガス注:香港当局や中国の)暴政だけです」

なんて物言いは俺としては「そういう居直りは勘弁してほしい」ですね。もちろん「彼女一人が運動のリーダーではない」でしょう。彼女と違いあの事件に批判的な人間も運動のリーダーにはいるでしょう。何せ「突入したのはデモ隊の一部」で全部じゃないですから。しかし彼女がこんなことを言えば彼女は「デモ隊の単なる一参加者じゃない」「リーダーの一人扱いされてる」のだから「デモ隊へのネガティブな見方が強まる」など、一定の悪影響は避けられないでしょう。
 それにしても「あのデモのリーダー格の一人(少なくともそのように世間から扱われてる一人)」がここまで平然と居直ったあげく、それを高世が容認して「記事タイトルにまで堂々とする」とはねえ。少しは「申し訳ありません(アグネス・チョウ)」「中国を擁護はしないが突入はよくなかった(高世)」かと思ってたんですがね。
 さすがに「タイトルはこれでも本文では高世も少しは批判的なことを書くかな?」と思ったら「積極的に支持はさすがにしない」ものの、何一つ批判しないのでびっくりです。
 まあ高世にとって「香港デモでのアグネス・チョウ」は「拉致問題での横田奥さん」みたいなもんでしょう。つまり「そうする理由が何か(アグネスについて言えば日本マスコミで彼女の評判がなぜかいいとか、高世が彼女で番組を作ることを考えてるとか?)」はともかく「盲目的に支持する」つう結論が最初から決まってる。たぶんアグネスが「この突入はすべきでなかった」といえば高世も「突入すべきでなかった」と言ってるでしょう。いつもながら高世も本当にデタラメな男です。
 今回の事件を機に

重大な違法行為の香港特区政府による徹底的追及を断固支持--人民網日本語版--人民日報
・一部の極端な過激分子*2が特区政府の条例改正への反対を口実に、立法会ビルに暴力的に突入するという事件を起こした。これは香港の法治を深刻に踏みにじるものであり、香港社会の秩序を極めて大きく破壊するものであり、「一国二制度」の譲れぬ一線に公然と挑戦するものだ。
・鉄の棒、鉄のカートを使って立法会ビルのガラスと外壁を破壊し、有毒性のある粉末で警察を攻撃し、立法会ビルへの乱入を強行し、厳粛な議事堂と特区区章を毀損した。こうした法律をものともしない暴力行為に人々は非常に驚愕し、心を痛め、憤怒した。どの国も、どの社会も絶対にこれを容認しない。中央は林鄭月娥行政長官と特区政府の法に基づく施政を断固支持し、香港警察当局が厳正に取締り、違法行為を徹底的に追及し、社会秩序と市民の安全を保障することを断固支持する。

などとし「デモ隊への批判、攻撃」を強める香港当局や中国への反発は分かります。しかしこういう完全な居直り発言はいかなる意味でもすべきではないでしょう。
 せいぜいすべきことは、
1)今回の件をまず謝罪(当事者の場合)、あるいは批判(応援団の場合)。当事者の場合は「再発防止策」など今後の対応も早急に検討する
 直接の実行犯であれば謝罪は当然ですが、そうでない場合でも「デモに参加」など反対運動に関わってる場合は「一部の人間の行為とは言え、こんな事態を防げず申し訳ない」とわびるべきでしょう。高世のような「単に外から応援」の場合は謝罪する必要はありませんがせめて「こうした事態は中国の無法な態度を割り引いても問題だ。私は支持できない」などと批判はすべきでしょう
2)その上で「ただし中国の態度を全く無視して一方的にデモ隊の暴力を問題にされることには納得がいかない」と「中国側の非も指摘する」
 ただしそれが「居直りと誤解されない注意」は必要です。なお、

周庭(アグネス・チョウ)
「暴徒はいません。あるのは暴政だけです(ボーガス注:この通りの発言をアグネス・チョウはしています)」
「中国の暴政に比べたら、今回の事件など『山口組と非行少年グループ』『俺俺詐欺グループと寸借詐欺』『伊藤博文独立運動弾圧と安重根の伊藤暗殺』位の違いがある。たいした話じゃない(ボーガス注:こちらは俺の要約です)」
「ガラスを割って突入(器物損壊)し、警官隊と激突もしたけど、突入以上のことはほとんどしていない。(ボーガス注:殺人や放火、略奪など)そんなに暴力的なことはしていない*3。突入しても一定の節度と統制がとれていた(ボーガス注:こちらは俺の要約です)」

なんてのは完全な居直りでしかないでしょう。そしてこんな居直りを「さすがに積極的に支持はしないものの」、批判もしないで容認する高世も無責任の極みです。
 そのうち高世もこの件に限らず「中国が悪いからチベットウイグルで暴動が起こっても仕方がない」「焼身自殺で成果がないならもはや暴動しかない」「(ボーガス注:チベットウイグルに)暴徒はいません。あるのは(ボーガス注:中国の)暴政だけです」などと言い出すかもしれません。
 それはともかく、言うべきは「(香港議会に突入した)暴徒はいました。心からお詫びします。しかしだからといって中国が善政というわけではない」「暴徒を理由に(香港当局や中国の)暴政を全面容認しないでほしい」ということでしょうね。全面的な居直りは「道徳的是非」だけでなく「政治的意味(運動を有利に展開していくという観点)」でもすべきではない。
 なぜこんな居直りはすべきではないか。まあ「当たり前だろ」「高世だって中国以外ではこの種の事件で、こんな全面支持をしねえだろ」「高世って本当にバカだな、前から知ってたけど」つう方が多いでしょうが一応俺の考えを書いておきます。
 まず第一に果たしてこうした暴力路線を国際社会や香港社会は支持するのか。支持しないでしょうねえ。それどころか今までデモに参加していた人間も「いや俺、そういう暴力的な方向は支持しないから」といって参加をやめ、デモ参加者が減る恐れがあることは容易に想像がつきます。
 第二に「こうやって例の件を完全擁護している(あるいは完全擁護してるとしか思えない発言をする)」輩(例:高世の紹介する周庭(アグネス・チョウ))は「今後の運動をどう考えてるのか」ということです。こういう居直りをすればするほど「デモ隊の暴力的方向」が「一部の過激派」にとどまらず、どんどん進展していく危険がある。
 そうなったら香港当局や中国としても取り締まりしやすいし、国際社会も支持しづらくなるわけです。そうなってから慌てて「暴力路線を何とかしよう」としてもなんともならないんじゃないか。
 「自らの非を認めたくない」なんて感情論は捨ててほしいもんです。

香港デモ、体制に対する暴力の行き着く先 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
地政学的な未来予測をするゲオポリティカル・フューチャーズの分析部門を率いるジェイコブ・シャピロは改正案の審議無期限延期で、反対派は前に進むのが難しくなったと本誌に語った。
「今回のような破壊活動は、数千人規模とはいっても、全体に比べるとはるかに小さなグループの仕業だ。自分たちの過激な意見を通すためにある程度の暴力は容認しているグループだ」と、彼は言う。
 彼はまた、破壊行為に走った抗議者たちは「みずからの大義を非合法なものにしてしまった」と主張する。

【社説】香港デモ隊の暴徒化、中国政府の口実に | The Wall Street Journal発 | ダイヤモンド・オンライン
 香港市民700万人は今、自由を求める戦いの前線に立っている。そこではわずかのミスも許されない。だからこそ、一部のデモ参加者が立法会の建物に乱入し、破壊行為に及んだのは残念だった。デモ隊は中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例改正案に抵抗するため、できるだけ多くの支持を集めることが必要だ。

[FT]危険な岐路に立つ香港(社説) (写真=ロイター) :日本経済新聞(2019年7月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 暴力に走ったグループは今のところごく一部だ。立法会を警備していた警官隊が撤収し、彼らをわなにかけたのかもしれない。だが、いずれにせよ突入は失策だ。
■失われたデモの道義的優位性
 具体的な成果が何も得られないばかりか、香港市民の4人に1人が参加したデモ隊の側にあった道義的な優位性が損なわれてしまった。香港政府に、全てのデモ参加者を頭に血が上った無法者として糾弾*4する攻撃材料を与えてしまった。香港警察による一斉逮捕だけでなく、中国政府の命令によるひどい弾圧の口実にも使われかねない。
 とはいえ、事態をエスカレートさせた責任は対応を誤った香港の指導者たちにもある。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、市民100万人が反対のデモ行進をしても、香港で拘束した容疑者の中国本土への移送を可能にする条例改正案の審議をやめなかった。審議延期を発表したのは、数日後にデモ隊が警察と衝突した後のこと。その衝突は今週の衝突よりもはるかに小規模だった。この経緯から、一部の若者は、結果を生むには力を行使するしかないと考えた。
 全てのデモ参加者が純粋に平和的な手段に立ち戻る必要がある。さもなければ、デモ隊は道義的な力を取り戻せず、香港の保守層を離反させ、当局に検挙の法的口実を与えてしまう。

という批判こそが正しいでしょうし、高世もそのくらいの批判はしたらどうなのか。


梁啓智:あれは突撃じゃない。彼らは死ぬ気だった。|ふるまいよしこ|note
 死ぬ気などおそらくなかったと思いますがそれはさておき。
 「死ぬ覚悟だから純真だ」みたいな「226事件青年将校を賛美するウヨ」「神風特攻隊を賛美するウヨ」みたいな変な褒め方はやめるべきですよね。まあ、本文読めば分かりますが、この記事の「メインの内容」は「死ぬ覚悟なんてやめろ」つう話ではなく突入派を褒め称え、突入批判派に「中国を擁護するのか」「死を覚悟した純真な人々の思いが分からないのか」と因縁付けるつうトンチキ極まりない記事です。
 つうか、「チベット焼身抗議」「焼身は究極の非暴力」とか一部の中国批判派は何でためらいなく自殺を美化するのか。
 とはいえこのトンチキ記事にも勉強になる部分はあります。

 この7月1日もいつものようにデモ行進が予定され、集合場所のコーズウェイベイ・ビクトリア公園をアドミラルティにある政府庁舎に向けて午後2時半に出発することになっていた。しかし、それよりも早く1時半に政府庁舎そばの立法会ビルに若者グループが突撃を始めたのである。
 騒然となった現場からの連絡と警察の指示を受けて、ビクトリア公園からのデモ主催者は、そのルートをアドミラルティ地区をそのまま通り過ぎた先にあるセントラル地区へと変更し、予定通り出発し、行進した。
 つまり、今回突然起こった立法会ビル突入事件は、予定されていた恒例のデモとはまったく別のグループが仕掛けたものだった。
 日本のメディアはこの点をあいまいなままで報道し、まるで55万人参加のデモが突然暴力事件になったかのようなイメージを植え付けているが、ビクトリア公園から出発したデモ隊はいつものようにシュプレヒコールを叫びながら、平和的にセントラルに到着した後解散している。
デモ行進の参加者は大会発表で55万人。立法会ビルに突入した人はどう見ても数百人だった(ビル自体がそこまで大きくないので千人を超える人がいたとは考えられない)。
 つまり、突撃グループと平和的デモ行進をした人たちはまったく別のグループであった

 つまりは「突撃をどう評価するにせよ」それは「デモ多数派ではなかった」ということです。
 高世のように無邪気に「突入派は暴徒でない」といえる話じゃない。デモ多数派はそんな突入に参加せず賛同しなかったわけですから。
 人民日報記事重大な違法行為の香港特区政府による徹底的追及を断固支持--人民網日本語版--人民日報が「一部の極端な過激分子」と表現するのも、この事件を理由にデモ隊全体を「暴力集団扱いすること」には無理があると理解しているからでしょう。

・ネットに二つの意見が出現した。一つは、彼らはアホじゃないか、突入するにしてもこのタイミングを選ぶのは、明らかにムダに政府が批判する暴徒になりにいくようなもので、今回の抗議活動が持っている前向きなイメージを激しく阻害する、というもの。もう一つは、彼らはスパイだ、親中派陣営の意図を受けたヤクザ者で、今回の抗議活動を破壊するためだ、というもの。
・突撃者がケガをしたり、刑事罰に問われるのを心配した民主派の議員が次々に突撃現場に姿を現し、突撃者と警察の真ん中に立ち、自分の身体で突撃を遮ろうとした。
 だが、ほかの抗議者によって議員は引きずり出され、突入は続けられた。その後再び議員が戻ってきて壁を作って遮ろうとした。そして、また引きずり出された。
 その押したり引いたりの場面で、こんなやりとりが漏れてきたのだ。
毛孟静議員
「飛び込んだら、これは暴動だとみなされ、10年の実刑判決を食らうことになるわ! 中ではもう銃を手にあなたたちを待ち構えているのよ!」
返答者
「逮捕の心の準備は出来てる。ぼくらを引き渡せばいい!」

 香港のデモ支持者からも
1)あいつらはバカだ、迷惑だ
2)そもそもあいつらは中国の工作員じゃねえの?(昔の共産党極左過激派を「エセ左翼」だの「警察の手先じゃないか」だの言ってた様な話)
つう意見が出てきたことや民主派議員の中から「突入阻止の動きがあったこと」は興味深い。やはり高世のように無邪気に「突入派は暴徒でない」といえる話じゃないわけです。
 まあ返答者の言葉を素直に理解すれば「さすがに死ぬ気はない」「勿論中国の工作員でもない」でしょうが「終わりの見えない長引く闘争に疲れ果てて、自暴自棄」ですね。どう見てもまともな計算をしてるようには見えません。
 しかしここからこの記事は突入派を「死ぬ覚悟があるのだろう」として褒め称え、突入批判派に「中国を擁護するのか」「死を覚悟した純真な人々の思いが分からないのか」と因縁付けるのだから「はあ?」ですね。
 まあそれはともかく、高世だってここで俺が指摘したこと「香港デモ支持者の中にすら突入派への批判がある」なんてことは知ってるでしょうに、それには触れずにただただ突入派万歳ですからね。呆れたバカです。

*1:まあ普通に考えて中国批判派でもそう言うでしょう。後述するように高世はそうは思わないらしいですが。

*2:人民日報ですら「一部の極端な過激分子」としていることに注意しましょう。「過激分子のみ攻撃すること」で過激分子を孤立化させた方が中国にとって得策という判断もあるでしょうが、実際「一部の過激分子の行為」でしょうし、中国の思惑に関係なくこうした「過激分子擁護」が正しいとは俺は思いません。むしろ厳しく批判すべきでしょう。

*3:そこまで暴徒化したら誰も擁護しませんよ。全く何を馬鹿なことを言ってるのか。

*4:重大な違法行為の香港特区政府による徹底的追及を断固支持--人民網日本語版--人民日報を読めば分かるように現時点では中国や香港当局はそうした立場ではなく「一部の過激派の行為」としています。まあ今後、デモ隊関係者がこの件をろくに批判しなければ「批判しないのだから他の連中も同罪」として中国がデモ隊への批判を強める可能性はあるでしょうが。