今日の中国ニュース(2019年10月30日分)

【正論】中国共産党「帝国」がたどる道は 東洋学園大学教授・櫻田淳 - 産経ニュース

・筆者が解釈する限りは、現下、習*1主席が率いる中国共産党「帝国*2」の様相は、その対外姿勢においてますます、昭和前期の帝国・日本のものと近似しつつある。
・習主席が展開する「一帯一路」構想にしても、その射程は、「大東亜共栄圏」構想、日独伊三国同盟と日ソ中立条約を含んだ往時の日本の対外戦略構想の射程と重なり合っている。
・(ボーガス注:「台湾、朝鮮などの植民地を失い、天皇が主権者の地位から転落した」大日本帝国の崩壊という)帝国・日本の末路が今後、中国共産党「帝国」では再現されないと断言できるのであろうか。
・帝国・日本への抵抗を建国神話の基底に据えているはずの中国共産党「帝国」が、日本と同じ道をたどろうとしているならば、それは、一つの「歴史の皮肉」である。

 いろいろな意味で「はあ?」ですね(そもそも中国専門家でもないただの右翼活動家でしかない桜田*3にこんな文章を書かせること自体が愚劣ですが)。
 まず第一に相手は「アンチ中国」の産経文化人・桜田です。ここでの「今の中国の外交は戦前日本に似ている」「一帯一路は大東亜共栄圏に似ている*4」はもちろん、褒め言葉ではありません。「帝国日本の末路」云々と言う言葉からもそれは明白でしょう。
 しかし常日頃、戦前日本のやらかした戦争について「自存自衛」「アジア解放の聖戦」などと美化、正当化し、批判を「反日自虐」と罵倒していたのが産経ではなかったのか?。いくら「外部筆者の桜田」とはいえこんな文が良くも掲載できたもんです。常日頃の産経の戦前日本美化、正当化は「やはり嘘八百」だったのか。「問うに落ちず語るに落ちる」というべきでしょう。
 第二に「中国の対外政策」をどう評価するにせよ、それは「むき出しの暴力で侵略を行った戦前日本」と同一視できるもんではないでしょう。一帯一路をどう評価するにせよそれは大東亜共栄圏ほど無法で野蛮ではない。大体「一帯一路」がそこまで無茶苦茶なら一帯一路への参加を表明した国々(日本含む)を産経はどう評価するのか、と言う話です。


中国人女性と日本人の初老男性はホテルの客室階に消えていった | 楊海英 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 今年1月16日午後1時。私は東京・国会議事堂に近いある高級ホテルのカフェにいた。他人の会話を盗み聞きする気はなかったが、隣の席から中国人特有のイントネーションでまくし立てる日本語が聞こえてきた。中国人女性と日本人の初老男性が、コーヒーとケーキを前にして真剣な表情でやりとりしている。
「とにかく自民党の有力な議員たちに働き掛けていただきたいです」と、女性は満面の笑みで迫る。
「わしはもう引退しているので、そんな力はないよ」と、男は応じる。
「ぜひ、習主席を新しい時代の最初の国賓として呼んでほしいです」
「それは難しいだろう。日本はもうトランプさんを呼ぶと決まっているし」
「主席の訪日に向けて、良い雰囲気を日本国内でつくってほしいです」
(中略)
 二流スパイ小説さながらのシーンが眼前に展開されているのを見て、私は茫然とした。
 これが「スパイ天国」の東京の現実だ。
 女性はある引退した政治家*5に接近し、彼を通じて習近平(シー・チンピン)国家主席がトランプ米大統領よりも先に日本へ国賓訪問できるよう政界工作をしていたようだ。1人の女性スパイの暗躍でどれほどの政治的効果が生じたか不明だが、これが東京を舞台とした国際政治のワンシーンであることは間違いない。

 楊海英*6も「中国憎悪のあまり」ここまで酷いデマ屋に落ちぶれたのか、「本家アメリカのニューズウイークはともかく」ニューズウィーク日本版とはここまでくだらないネトウヨ雑誌なのか、とうんざりですね。
 デマ屋の楊ではこんなシーンが本当にあったのかさえ疑問です。何せ楊の紹介する発言には何ら「具体的な特徴がなく」、楊がでっち上げたとしてもおかしくない代物です。
 そもそも「国会議事堂に近いある高級ホテルのカフェ(どこのホテルよ?)」「中国人女性と日本人の初老男性(身元が分からない訳ね?)」では裏のとりようがない話ですが、仮に事実だとしてどこが「スパイ天国」「スパイ小説」なのか。
 ただのロビー活動じゃないですか。そもそもスパイ活動なんか「不特定多数(楊もその一人)が利用するカフェ」でやる人間がいるわけもない。

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*2:そもそも桜田の「帝国」定義は何なのか、と言う話ですね。

*3:著書『国家への意志』(2000年、中公叢書)、『国家の役割とは何か』(2004年、ちくま新書)、『「常識」としての保守主義』(2012年、新潮新書)など

*4:どこが似ているのかさっぱり分かりませんが。

*5:楊の引用を読む限り、この人物が「引退した政治家」がどうかはわかりませんね。「読売ナベツネのような政界に一定の影響力を持つマスコミ人」かもしれないし「元経団連会長」「元外務事務次官」のような「政界に一定の影響力を持つ財界人や官僚」かもしれない。

*6:著書『草原と馬とモンゴル人』(2001年、NHKブックス)、『モンゴル草原の文人たち:手写本が語る民族誌』(2005年、平凡社)、『ユーラシア草原からのメッセージ:遊牧研究の最前線』(共著、2005年、平凡社)、『チンギス・ハーン祭祀』(2005年、風響社)『墓標なき草原(上)(下):内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(2009年、岩波書店→後に2018年、岩波現代文庫)、『続・墓標なき草原:内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』(2011年、岩波書店)、『中国とモンゴルのはざまで:ウラーンフーの実らなかった民族自決の夢』(2013年、岩波現代全書)、『植民地としてのモンゴル:中国の官制ナショナリズムと革命思想』(2013年、勉誠出版)、『ジェノサイドと文化大革命内モンゴルの民族問題』(2014年、勉誠出版)、『モンゴルとイスラーム的中国』(2014年、文春学藝ライブラリー)、『チベットに舞う日本刀:モンゴル騎兵の現代史』(2014年、文藝春秋)、『狂暴国家中国の正体』(2014年、扶桑社新書)、『日本陸軍とモンゴル:興安軍官学校の知られざる戦い』(2015年、中公新書)、『モンゴル人の民族自決と「対日協力」:いまなお続く中国文化大革命』(2016年、集広舎)、『フロンティアと国際社会の中国文化大革命: いまなお中国と世界を呪縛する50年前の歴史』(共著、2016年、集広舎)、『「中国」という神話:習近平「偉大なる中華民族」のウソ』(2018年、文春新書)、『「知識青年」の1968年:中国の辺境と文化大革命』(2018年、岩波書店)、『最後の馬賊:「帝国」の将軍・李守信』(2018年、講談社)、『モンゴル人の中国革命』(2018年、ちくま新書)、『独裁の中国現代史:毛沢東から習近平まで』(2019年、文春新書)、『逆転の大中国史』(2019年、文春文庫) 、『中国が世界を動かした「1968」』(共著、2019年、藤原書店)など