今日の産経ニュース(2020年1月6日分)(追記あり)

【正論】年頭にあたり 今春の国家的な難問題について 東京大学名誉教授・小堀桂一郎 - 産経ニュース

 気になるのは4月に予定されてゐる日中首脳会談の開催である。それが日本国内で行はれる以上、中国の国家主席たる習近平*1を我が国は国賓として招聘(しょうへい)する事になるといふ。その国賓といふ待遇に向けての草莽(そうもう)の衆庶からの疑惑の声は極めて早い段階で発せられ、与党である自民党の国会議員の中にも「日本の尊厳と国益を護る会」に結集してゐる両院の議員達を中心に強い反対の声が挙(あが)り、且(か)つ次第に高まりつつある。
 習氏国賓待遇の報に接した時、筆者が反射的に想起したのは平成4年の1月早々から国論を二分する議論の的となつた天皇御訪中問題である。
 あれは’89年6月4日の天安門での苛酷な弾圧に世界の自由主義諸国が憤激した、その悲痛な記憶がまだほとぼりのさめてゐない時期の事だつた。そんな時に日本の国家元首*2が親善の証(あかし)として中国を訪問するといふ事は、日本が国家として、天安門事件に於(お)ける共産党政府の蛮行を容認する姿勢を示す事になる、それは自由主義諸国が共有する人権意識への無残なる裏切りである、といふのが御訪中反対論の核をなしてゐた。
 現在の国際関係といふ環境に於ける中国の位置は、28年前のあの時と比べて少しも向上してゐるわけではない。天安門弾圧事件に相当する罪禍として香港市民の自由護持行動を敵視する暴力的介入があり、ウイグル人の人権侵害・集団強制収容所送りの犯罪がある。

 ということで
1)今日も「習主席国賓訪問」に不平を述べた上、
2)宮沢内閣の天皇訪中にも悪口する産経です。まあ、安倍ないし「ポスト安倍(幸いにして訪中までに安倍が辞任した場合)」もこんなんは無視するでしょうし、ポスト安倍はともかく、安倍相手には結局何も言えないのが産経でしょうが。

 違つた所と言へば、平成改元当時の海部、宮沢といつた首相の卑小さとは対照的に、現政権の安倍晋三総理が米合衆国大統領と比べて遜色なきほどに、国際政治の表舞台で毅然として物を言ふ姿勢を見せてゐるといふ事だけである。

 今日も歯の浮くような安倍への世辞を言う産経です。それにしても「中国へのODAを再開した親中派、リベラル派の海部氏」「天皇訪中を実行したリベラル派の宮沢氏」を嫌ってるとは言え、「安倍さんは彼らよりずっと立派だ」とは呆れて二の句が継げませんね。
 安倍だって「一昨年5月の李*3首相訪中」では「李首相の北海道訪問に異例の同行をしている」のですが。安倍以外がやれば「こびへつらい」と批判してるでしょうにねえ。
 海部氏は「福田*4、中曽根*5内閣文相」を、宮沢氏は「池田*6内閣経済企画庁長官、佐藤*7内閣通産相、三木*8内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木*9内閣官房長官、中曽根、竹下*10内閣蔵相」を歴任していますが、安倍など「自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官」以外にはろくな役職をやっていません。安倍と海部、宮沢氏のどちらが有能か考えるまでもない話です。
 なお、海部内閣においては「安倍晋太郎*11派の中山太郎氏」が、宮沢内閣においては「中曽根派の渡辺ミッチー氏*12」が外相を務めています。
 つまりは、自民党タカ派安倍晋太郎派、中曽根派)も、「海部、宮沢内閣の中国外交」を容認していたわけです(もちろん中山氏の親分である安倍晋太郎、渡辺ミッチー氏の親分である中曽根も容認していたとみるべきでしょう)。そして、海部、宮沢内閣の中国外交について、海部、宮沢氏に悪口する産経も、「中山氏や渡辺氏(あるいは彼らの親分である安倍晋太郎や中曽根)は批判しない」のだから全くデタラメです。

 国賓として来日した習氏が今上陛下に拝謁して、もし又しても天皇の御訪中を懇請でもしたら政府はどう対応するつもりか。

 「はい、わかりました」と歓迎するんじゃないですかね?

 今上天皇の御訪中が万一実現でもしたら、その事だけで既に、共産主義勢力の覇権的強大化を恐れるアジアの周辺諸国や地域、台湾、香港、チベットウイグル、モンゴル*13等の民衆の大きな失望を買ひ、日本国の国際秩序維持能力への信頼感は大きな傷を負ふ事になるであらう。

 いや、むしろ「信頼感の破壊」というなら「南京事件否定論」「河野談話否定論」のほうがよほど深刻でしょう。


ジョンソン英首相「ソレイマニ司令官の死を嘆かない」と声明 - 産経ニュース
 俺も人間として評価してない奴、たとえば「中川昭一*14の死を嘆かない*15」ので、嘆かないのはジョンソン*16の勝手ですが、問題はそういうことではないわけです。
 問題は
1)米軍のスレイマニ暗殺は違法ではないのか
2)スレイマニ暗殺は中東の緊張を高める政治的愚行ではないのか
と言う話の訳です。


【相模原殺傷事件初公判】大半が匿名審理に傍聴席に遮蔽板の異例の措置 8日初公判(1/2ページ) - 産経ニュース
 被害者側が匿名を希望するのであれば、これは「前例のない異例な措置」ではあっても「不当な措置ではない」と声を大にして言いたいですね。


【相模原殺傷事件初公判】県警も匿名発表 被害者の思い「なぜ苦しめられなければならないのか」 - 産経ニュース

 匿名での発表への疑問の声が一部では上がった。
「(遺族らは)障害を隠したいのではないか」。

 仮にそうだとしても「実名で発表する義務もない」「実名で発表するメリットもない」以上、批判するのは筋違いです。

 名前を出して取材に応じてきた、重傷を負った尾野一矢さん(46)の父、剛志(たかし)さん(76)

 勿論出したい人間は出せばいい。それだけの話です。


首相が伊勢神宮を参拝 午後会見、新春恒例 - 産経ニュース
 枝野*17が参拝した事によって、安倍も安心して参拝できるわけです。
 「政教分離原則上の問題なんか無い!。枝野だって参拝してるじゃないか!」と言われると「野党共闘をぶち壊すわけにも行かない」ので「枝野も間違ってるからそんなの言い訳にはならない」と安倍を批判しづらいのは確かです(いや、実際、俺のような参拝批判派にとって枝野は間違ってるわけですが)。
 かつ「安倍が参拝してる」以上、枝野が参拝しようとも、安倍支持層にとって伊勢神宮参拝など枝野を支持する理由にはなり得ない。一方、「俺のような安倍批判派」にとっては「枝野を支持したくない理由(神社に対する態度が安倍と同じじゃん?→神社以外も本当は安倍と変わらないんじゃねえの?。党利党略で安倍批判してるだけなんじゃねえの?)」「枝野立民を含む野党共闘支持に躊躇する理由」がまた一つ増えたわけです。
 枝野と「奴を担いで恥じない立民支持者」の馬鹿さには心底怒りを禁じ得ません。


「甘い対応」志位氏がゴーン被告保釈認めた裁判所を批判 - 産経ニュース
 志位氏が本当に裁判所の保釈決定を批判してるのだとしたら「共産支持者ではありますが」、それには賛同できません。既に何度か書いていますが、今回の件で裁判所にも弁護団にも落ち度はなかったと俺は思っています。
 ゴーンのような無茶苦茶なことをやる人間のことは誰も想定してなかったでしょう。
 「結果的に逃亡したから保釈が間違い」というのは後智恵でしかないし、そんなことを言ったら保釈は全く出来なくなります。
 そもそも保釈を全く認めない「いわゆる人質司法」を批判してきたのが共産党ではなかったのか。失礼ながらこの志位発言は「悪しきポピュリズム」ではないのか。浅井基文氏も指摘していますが「ホワイト国除外批判」など「悪しきポピュリズム(ホワイト国除外支持など)」に対し、「あるべき建前論」を訴えることが「共産党の魅力、本分」ではないのか。
 支持者ですが、あえて苦言を呈しておきます。
 「重大犯罪の被告」とする志位氏ですが「推定無罪」であるのにゴーンを有罪と決めつけるような発言はいかがなものなのか(勿論「遅くとも」、ゴーンがこのような無様な逃亡をした時点で俺は奴が「無罪だとはかけらも思ってません」が。真に無実なら、一審判決も出てない時点でああいう無様な逃亡はしないでしょう。ただし「無罪を訴える被告人」を有罪扱いするのはまずすぎるでしょう)。
 一方で産経が

「検察、法務省、政府の責任はたいへん重い」と述べ、法務当局の対応を批判した。

と本文に書きながらタイトルは「裁判所ガー」というのは詐欺的タイトルも甚だしいでしょう。

【追記】
【野党ウオッチ】ゴーン事件で共産・志位委員長が発言撤回、いったい何が(1/3ページ) - 産経ニュース
 反共・産経らしい、志位氏を小馬鹿にした記事ですがそれはさておき。
 「裁判所の保釈決定に問題は無いと考える。もし志位氏が本当に裁判所を批判してるのなら、支持者としてこういうことは言いたくないが批判せざるを得ない」と指摘した小生的には「同様の指摘が共産党に相次ぎ、志位氏が発言を撤回したこと」は「喜び半分、つらさ半分」ですね。
 少なくとも産経の言うような「共産党にとっては踏んだり蹴ったりの数日間」という「単に不愉快な話」ではない。
 「つらさ半分」というのは言うまでも無いでしょう。共産党委員長の発言が内外の批判をあび、撤回を余儀なくされるというのは共産支持者として愉快なことではありません。「志位氏がそもそもこうした発言をしなければよかった」と言う思いは禁じ得ません。
 「喜び半分」というのは「発言が社会に注目されてること」&「批判を受けて志位氏が発言を撤回したこと」ですね。
 発言してもそれが「批判も賛同もされず、注目されないこと」ほどつらいこともありません。
 そして「発言に対し、共産党に諫言の必要があるとの思いから批判をする方」がいて、「共産党側が内心どう考えてるかはともかく」、その批判を受け入れて発言を撤回したことは「党内外に単に共産党を何でもかんでも万歳するのでもなく、また、黒坂真のような批判を口実にした低レベルな言いがかりを付けるのでもなく」、「基本的には共産支持の立場だが、諫言をするときに諫言しなければならないという考えの方が複数居て」、その結果「共産党の自浄作用が働いた(無視したり頭ごなしに反発したりするのではなく適切に対応した)」というのだからやはり「喜ぶべき事」でしょう。
 「モリカケ桜を見る会疑惑ですら安倍擁護する自民支持者」や「その批判は当たらないという詭弁で居直る菅官房長官」に比べたら、今回の「共産支持者の諫言とそれに対する共産党の対応」はむしろ「適切な支持者と党の関係」といえるのではないか。
 本当の意味での支持とは「間違ったことには諫言すること」であって何でも万歳することではないでしょう。

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*2:天皇を「国家元首」と見なすことは決して当然の価値観ではありません。日本の国家元首については「首相(世界各国において行政府の長を国家元首とする例が多いことから)」「衆院議長(憲法41条で国会が国権の最高機関とされていること、憲法上、首相の指名などで衆院の議決が参院より優越していること、国会議長を国家元首とする外国の例も多いことから)」とする説もあります。

*3:共青団中央書記処第一書記、河南省長、党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員兼務)

*4:大蔵省主計局長から政界入り。岸内閣農林相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣蔵相、外相、田中内閣行政管理庁長官、蔵相、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相

*5:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*6:大蔵次官から政界入り。自由党政調会長(吉田総裁時代)、吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*7:運輸次官から政界入り。自由党幹事長(吉田総裁時代)、吉田内閣郵政相、建設相、岸内閣蔵相、自民党総務会長(岸総裁時代)、池田内閣通産相科学技術庁長官などを経て首相

*8:片山内閣逓信相、鳩山内閣運輸相、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼務)、池田内閣科学技術庁長官、自民党政調会長、幹事長(池田総裁時代)、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣副総理・環境庁長官などを経て首相

*9:池田内閣郵政相、官房長官、佐藤内閣厚生相、福田内閣農林相、自民党総務会長(大平総裁時代)などを経て首相

*10:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相

*11:三木内閣農林相、福田内閣官房長官自民党政調会長(大平総裁時代)、鈴木内閣通産相、中曽根内閣外相、自民党幹事長(竹下総裁時代)など歴任

*12:福田内閣厚生相、大平内閣農水相、鈴木内閣蔵相、中曽根内閣通産相自民党政調会長(中曽根、竹下総裁時代)、宮沢内閣副総理・外相など歴任

*13:正確には「内モンゴル」でしょうか?

*14:小渕内閣農水相小泉内閣経産相麻生内閣財務相など歴任

*15:さすがに喜びはしませんが。

*16:ロンドン市長、メイ内閣外相を経て首相

*17:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)などを経て立憲民主党代表