「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2020年8月2日分:荒木和博の巻)

拉致被害者の気持ちについて(8月2日のショートメッセージです): 荒木和博BLOG

 令和2年8月2日日曜日のショートメッセージ(Vol.119)です。北朝鮮にいる拉致被害者の皆さんの気持ちはどうなっているだろうということについてお話ししました。もちろん私のお話も推測でしかありませんが、「もう帰りたくないだろう」と推測する*1のは危険です。その点をお考えいただければ幸いです。

 6分程度の動画です。
 「拉致被害者北朝鮮にいるとして日本に帰国したいと思ってるかどうか」なんて分かるわけが無いでしょう。
 そんなもん議論しても意味が無い。当人に会って確認する以外に手はないわけです。で、今、拉致被害者に会って意思確認どころか、拉致被害者の存在自体がわからない(そもそも北朝鮮には生存してる拉致被害者はもはやいないかもしれない)のだから荒木のような勝手な推測「拉致被害者は皆帰りたいに違いない」をするのは馬鹿げている。
 まあ「拉致被害者では無い*2」ですが、寺越武志 - Wikipediaさんは「帰国の意思はない」としてるわけです。
 まあ、彼が拉致被害者だとしても「帰国する意思はない」と彼が言ってる以上、「彼の意思に従うほかは無い」という結論は変わらないのですが「帰る気は無い」と言う人間・武志さんについて勝手に「帰りたいに違いない」「北朝鮮に恫喝されて、ああ言わされてるに違いない」と決めつけ、あげくのはては荒木ら巣くう会のように「寺越母子に頼まれても居ない」のに「政府は武志さんを拉致認定しろ」などというのははた迷惑で、論外でしか無い。


政治を根本から変革しなければ日本には中国・ロシアに侵略支配される未来しかない | 新・大森勝久評論集
 無能な安倍が「有能な中露指導者(プーチン大統領や習主席)に手玉にとられた」あげく「安倍は中露に手玉にとられて国益を毀損した」という「世論の批判を恐れて」、そうした事実を安倍が認めないことで「日本の国益を阻害すること」はありえても大森氏の言うような「安倍=中露の工作員」なんてことはあり得る話では無く、くだらない陰謀論です。

 荒木氏は言う。
「実際に戦後70年の大部分の期間、日本国内で工作員が跋扈し、頻繁に上陸脱出が行われ、多数の日本国民が拉致されていたことは、文字通り『戦争』でした。戦争で連れ去られた国民を少なくとも全員話し合いで取り戻すのは不可能です。武力を使うという前提があってその上で可能な限りは交渉によって取り返すのでなければならない。もちろん、交渉も棍棒を振り上げながらのものでなければなりません。北朝鮮という『山賊国家』に行動を起こさせるには恐怖を与えるしかない」
(『北朝鮮拉致と「特定失踪者」:救出できない日本に「国家の正義」はあるのか』286頁、展転社平成27年10月20日刊)

 いつもながら荒木といい「荒木に媚びへつらってるだけなのか、本心なのかはともかく」大森氏といい、「拉致被害者救出に自衛隊を活用せよ」とは言ってることが無茶苦茶です。
 拉致被害者の居場所が分からないのにどこに自衛隊を投入するのか。
 「自衛隊を投入しないから安倍*3は弱腰だ」とは呆れて二の句が継げません。

 拉致被害者家族会も「救う会」も国民も自己批判して、反日の安倍首相を徹底的に糾弾し決別しなければならないのである。彼の(ボーガス注:首相)辞任を要求しなくてはならない。
 拉致被害者を取り戻すには、日本は北朝鮮に脅威を与えられる軍事強国にならねばならない

 荒木や大森氏の言う「安倍は弱腰だ、自衛隊北朝鮮に投入しろ」「自衛隊を投入しない北朝鮮に甘い安倍は反日だ」等というのとは別の意味で、つまり「拉致を解決する気の全くないとしか思えない安倍の態度」を救う会や家族会は「糾弾し決別し」、「彼の首相辞任を要求しなくてはならない」でしょう。まあ、それを「安倍応援団」の救う会と家族会ができるとは全く思っていませんが。
 しかしこんな大森氏の文章を「私は彼の意見を全面的に支持してるわけではありませんが」等と言い訳しながらも紹介している荒木が「安倍」や「安倍を持ち上げる救う会や家族会」にかなりの不満を感じてることは間違いないでしょう。

 安倍首相は2013年12月に閣議決定した日本初の「国家安全保障戦略」で、日本侵略支配を国家目標にしている中国とロシアを「日本の戦略的パートナー」と規定したのである。敵国を「戦略的パートナー」とするのであるから、これはまさしく「反・国家安全保障戦略」である。日本を中国とロシアに侵略させ分割支配させようとするものであり、「反日戦略」だ。
 同戦略は述べる。
「大局的かつ中長期見地から、政治・経済・金融・安全保障・文化・人的交流等あらゆる分野において日中の『戦略的互恵関係』を構築し、それを強化できるように取り組んでいく」。ロシアについても「安全保障及びエネルギー分野を始めあらゆる分野でロシアとの協力を進め、日露関係を全体として高めていくことは我が国の安全保障を確保する上で極めて重要である。このような認識の下、アジア太平洋地域の平和と安全に向けて連帯していく」と述べている。
 安倍氏が保守と正反対の反日共産主義者であり、中国・ロシアの尖兵思想工作員であることがよくわかるではないか。

 安倍の対中国、対ロシア外交をどう評価するにせよ「安倍は中露の手先だ」などというのは馬鹿げた陰謀論でしかありません。なお、中国にせよロシアにせよ日本侵略の意図などないでしょう(そもそも能力があるかも疑問符がつくでしょうが)。

 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長は国際海洋裁判所所長で元外務次官の柳井俊二氏)は、2014年5月15日に「報告書」を安倍首相に提出して、「閣議決定で従来の憲法第9条2項の解釈を変えて、芦田修正の憲法第9条2項を確立すべきだ」と提言*4した。しかし安倍氏は当日に「芦田修正論は採用しない!」と拒否してきたのであった。

 拒否したと言うより「芦田*5修正論の採用」による「集団的自衛権行使の正当化」など政治的に無理だと安倍が判断したにすぎません。
 そもそも「芦田修正論を採用しない」というのは吉田*6首相以来の自民党政権の「伝統的方針」であり、安倍の祖父・岸信介*7首相もその立場でした。「芦田修正論を採用しないから反日だ」というなら安倍だけでなく、吉田や岸も反日になるでしょう。まあ、荒木や大森氏だとためらいなく「その通りだ。吉田も岸も反日だ」と言い出しかねませんが、そんなことを言ったところで世間は「吉田や岸が反日?」と呆れるだけです。

*1:そんな推測をしてる人間がいるか知りませんが、まあ「今更、帰国したいと思ってない」という拉致被害者がいたとしても不思議では無いでしょう。どっちにしろそんなことは当人に会って意思確認する以外に手のない話です。荒木のように「皆帰国したがってるに違いない」と決めつけるなど馬鹿げています。

*2:荒木など救う会拉致被害者扱いしますが、ここでは彼の証言「拉致では無い」を事実と前提します。

*3:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*4:この提言が1)芦田修正論による集団的自衛権行使を安倍が画策し、柳井に提言させたものの、国内外の批判を恐れて、結局安倍が芦田修正論の採用を断念したのか(つまり検察庁法改定を断念したのと同じパターン)、2)芦田修正採用という最も「極右的な案」を出させた上で「よりマイルドな案」を出すことで国民を丸め込み、だまそうとしたのか(つまり最初から安倍には芦田修正論を採用する気は無かったのか)、は今のところ不明です。まあ、2)だとしても野党は安倍の思惑に関係なく安倍批判を強めたので、安倍の思惑は完全に外れましたが。

*5:幣原内閣厚生相、片山内閣副総理・外相、首相など歴任

*6:戦前、天津総領事、奉天総領事、駐スウェーデン公使、外務次官、駐伊大使、駐英大使など歴任。戦後、東久邇宮、幣原内閣外相を経て首相

*7:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相