「珍右翼が巣くう会」メンバー・黒坂真に突っ込む(2020年12月27日分)

◆黒坂のツイート

黒坂真
 朝鮮学校も日本の学校だと言いたいなら、教員は日本の教員免許を取得せねばなりません

 もちろんそんな法的義務はどこにもありません。おそらく「朝鮮学校に限らず」多くの外国人学校民族学校の教師は「日本の教員免許」など必ずしも取得してないでしょう。

黒坂真リツイート
 中野顕さん。日本共産党は廃娼運動に参加しなかった。なぜでしょうね。昔の日本共産党にはハウスキーパー制度があったのですから、廃娼運動など関心がなかったのかもしれません*1
◆中野顕
ジェンダーの日本史】千葉県佐倉市国立歴史民俗博物館で開催された「ジェンダーの日本史」展を見てきました。とても勉強になりました。
 推古天皇の頃は、天皇は男女半々でした。昔は、今よりずっとジェンダー平等だったんですね。
 これが変わるのは律令体制になって「男は兵役、女は農業」という分業が生まれてから。それでもこの頃はまだ、清少納言紫式部などが活躍していますが。封建時代は、武装した男集団(武士階級)が社会を支配する時代です。直系男子が私有地を相続する家父長制が強まりました。女性は政略結婚を強いられ、軍事同盟の道具となり、戦で夫が死ぬと尼になって財産を相続し「家を守る」役目を担わされました。(ボーガス注:源頼朝の妻)北条政子や(ボーガス注:豊臣秀吉の側室)淀君、江戸時代の大奥が権力を握ったのもそのためです。
 (ボーガス注:江戸時代は)参勤交代のために、大量の「単身赴任」の男が江戸に住むようになり、(ボーガス注:吉原に)幕府公認の売春宿がつくられました。その利潤は三井などの大商人を通じて幕府に上納されました。奉行所の収入の2割を支えていたというのですから、すごい話です。おぞましい性奴隷制です。アメリカ大陸での黒人奴隷制と似ているかもしれません。
 明治維新で大奥は解体され、(ボーガス注:13代将軍・徳川家定正室篤姫を最後に、女性は政治から排除されます。明治憲法は「天皇は男」と決め、議員も官吏も男に独占されました。女性はまたもや下働きです。選挙権すら与えられませんでした。
 公娼制度は海外から批判され廃止されましたが「自由意思ならいいだろう」と売買春はいっそう増大。これを韓国、中国、アジアに輸出したのが、従軍慰安婦です。
 戦後、GHQの指導により、女性に参政権が認められ、憲法にも「両性の平等」を明記されました。労働省も職場での女性の地位向上のポスターをつくって意識変革をすすめました。売春防止法も制定されました。
 歴史を振り返ると、女性はいつも社会的労働に携わっていました。(ボーガス注:「あゝ野麦峠」の製糸女工などで分かるように)日本資本主義の誕生も女性労働によって担われていました。「男は仕事、女は家庭」なる観念は、高度経済成長期に復活した武士階級の思想でしかありません。男尊女卑の考えは、軍事中心の時代につくられたもの。その最悪の産物が性奴隷制度です。
 ジェンダーの視点をすえると、見えなかったことが見えてきます。
 元厚生労働省事務次官村木厚子さんのメッセージがよかった。
「若い人は目の前の現実に自分を合わせてしまうけど、その現実は実は変えられる。それを知るには変わってきた歴史を知るのが一番いい。変えるためには、一人一人がアクションを」
 (ボーガス注:戦前に女性参政権を求めて運動した) 青踏社や平塚らいてふ*2など、近代の女性解放のたたかいにほとんど触れていなかったのは残念ですが、国立の博物館でこうした企画ができたことを喜びたいと思います。

 黒坂のアホさには呆れて二の句が継げませんね。
 黒坂のリツイートは、1)中野氏のツイート、2)中野氏が紹介する「ジェンダーの日本史」展の展示内容、3)中野氏が紹介する『村木氏発言』とはまるきりかみ合っていません。

【参考:性差(ジェンダー)の日本史展】

中世の遊女は「個人経営者」であり自立していた 15世紀後半から16世紀に変化し男性が経営する「遊廓」が誕生 (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)2020年11月28日
 国立歴史民俗博物館で開催中の「性差(ジェンダー)の日本史」展が話題だ。AERA 2020年11月30日号では、「性の売買と社会」を軸に同展覧会を紹介する。
 多面的な展示の中から「6章 性の売買と社会」に絞って紹介すべく、展示代表の国立歴史民俗博物館研究部・横山百合子*3教授に話を聞いた。
◆横山
「近年の研究によると、古代社会では男女の結びつきが緩やかで、職業としての売春が生まれたのは9世紀後半ごろだとわかってきました。『売春は最古の職業』ではないわけです。彼女たちの前身は遊行女婦(ゆうこうじょふ)などと呼ばれる専門歌人で、地方の役所などで催される宴会で和歌を詠み、時に男性貴族と性的な交渉を持っていました。一夫一婦制が強化される中で、婚姻と区別される売買春の概念が生まれると、彼女たちは『遊女』と呼ばれるようになったのです」
 中世の遊女たちは芸能者として自立し、売春に限らず、宿泊業者の側面を持つなどいろいろな生業を複合的に営んでいた。個人経営者として「遊女の家」を女系で継承しつつ、遊女の集団を形成していった。
◆横山
「中世の遊女たちは社会の一員として、差別を受けることなく、様々な階層の人びとと関係を結びながら生活していました。例えば鎌倉時代中期、駿河国の傀儡子(くぐつ・遊女の一種)たちが生活を守るために、地域の人びととともに荘園の預所(あずかりどころ・荘官)の非法行為を幕府に訴え、全面勝訴した事例はよく知られています」
 こうした自立的な遊女のありかたは、15世紀後半から16世紀にかけて変化する。「遊女の家」の経営権を次第に失い、遊女の身体を男性たちが売買する動きが強まっていったのだ。
◆横山
「戦国時代を経て、統一政権が誕生し、城下町ができる中で男性が経営する遊女屋が遊女たちを抱えて売春させる『遊廓』が生まれました。遊女は自営業者ではなくなり、多くが人身売買で連れてこられ、経営者に奴隷的な従属を強いられたのです」
 江戸時代には各地に売買春の場が生まれ、「売春社会」というべき状況が現れた。
 遊女屋経営には資金が必要だ。遊女を調達するための身代金、遊廓でのイベント料、多発する火事への備えも欠かせない。資金調達のために庶民向け金融の一つ「寺社名目金貸付(じしゃみょうもくきんかしつけ)」などが利用されていた。
 新吉原の遊女屋たちが利用していたものに京都・浄土真宗本山佛光寺による名目金貸付がある。この貸付に、幕末になると北信濃豪農たちが積極的に「差加(さしくわえ)金」として出資したことを示す史料が残っている。
 遊廓を公認するという幕府の政策が、近世社会を構成する寺社や豪農たちによる広域金融ネットワークを作り出した。そして遊女の性を収奪した利益に有力寺院、公家、豪農までが群がる構造を生み出すに至った。
◆横山
「1872年に維新政府は芸娼妓(げいしょうぎ)解放令を出し、新吉原のような性売買の独占といった特権を持つ町は解体されます。19世紀半ばに起こった世界的な人権擁護の高まりもあり、近代国家として人身売買と売春の強要を容認するわけにはいかなかったのでしょう」
 とはいえ、芸娼妓解放令の後も政府は「公娼制度」を維持する道を選ぶ。警察が管理していた記録によると、1910、20年代は都市部を中心に「大衆買春社会」とでも呼ぶべき状況が到来。30年代に入ると農村男性にも遊廓で女性を買う習慣が広がった。
◆横山
「江戸時代の遊女たちは同情される存在でしたが、近代公娼制度では家の都合で身売りを強要された女性たちでも、娼妓たちは『自由意思で売春をする淫乱な女』と見られるようになりました。こうした見方は、現在にも続いていると思います」
 最後に元厚生労働省事務次官村木厚子さん*4が寄せた言葉を紹介しておこう。
「最近、『<悪い>と<良い>は両立する』という言葉が気に入っています。日本はジェンダー(ボーガス注:の平等)については世界*5の劣等生ですが、ここ何十年かを振り返ると制度はどんどん良くなっています。今回の展覧会のように歴史を勉強すると、絶対的なものはなく、時代や制度を作ることによって物事が変わっていくのがよくわかる。公的な制度は現場の後押しをする形で生まれることが多いので、気づいた人からアクションを始めることが大切だと思います」

 
 ググったところ

<悪い>と<良い>は両立する

とは、ハンス・ロスリング他『ファクトフルネス』(2019年、日経BP社)に出てくる言葉のようですね。
 確かに

<悪い>と<良い>は両立する

とは、「言葉遊び的ではありますが」、歴史とは通常、「悪化の一途」や「進歩の一途」ではなく「一進一退(例:初の黒人大統領オバマ登場→白人優越主義極右トランプ登場→トランプ批判の高まりによるトランプ退陣、バイデン次期大統領登場)」ですので、そう言う意味では

<悪い>と<良い>は両立する

といえるでしょう。まあ、例は「オバマ→トランプ→バイデン」でなくても何でも良いですが。

展覧会が問う「性」 ジェンダー歴史、LGBTQ描く映像|NIKKEI STYLE2020年12月1日
 驚くのは古代において女性首長は決して珍しくなかったことだ。地域によって異なるが、前方後円墳に埋葬される首長の3~5割は女性だった。鏡や玉など副葬品を見ても男性首長と遜色ない。
 女性首長は古墳時代中期(4世紀後半~5世紀)になると急減し、律令国家の成立とともに男女の区分が強まる。それでも重要な儀式や公的な場には女性が参加しているのが当然で、席次の決め方にも男女に大きな差はなかったという。
 平安時代に入ると、身分の高い女性たちは「御簾(みす)の向こう」に隔てられ、公的空間では見えにくい存在になる。だが、貴族社会では女性の宮仕えは男性が官人として出世するのと同様に家格を左右する重大事であったし、武家では夫の死後に女性が家長として政治的に大きな力を持っていた。
 鎌倉時代には、庶民でも女性は財産権を持ち、相続した土地を売却する権限も持っていた。当時の土地の売券を見ると、女性が自らの財産で土地を購入することも一般的だったという。宗教との関わりでは、民間信仰のあり方を示す仏像内への納入品が興味深い。14世紀の仏像でも納入品は男女でほぼ同じだ。仏教は平安末期から貴族の間に「女性罪業観」を定着させたが、そうした思想が庶民に広がるのは戦国時代以降だったためだという。
 展示を見ていると、古代から公の場で女性が男性同様に存在感を持ち続けてきたことに気づかされる。改めて「男性が外で働き、女性が家を守る」というような家族像は、明治時代以降に確立した近代的な価値観であることを認識する。

古墳時代の方が…:東京新聞 TOKYO Web(早川由紀美)2020年12月2日
 もしかして女は古墳時代の方が生きやすかったんだろうか。国立歴史民俗博物館で開催中の「性差(ジェンダー)の日本史展」(六日まで)を見に行き、濃密な内容に刺激を受けつつ、切なさもこみあげた。
 展示や図録によると、弥生時代後期(一世紀後半)から古墳時代前期(四世紀)にかけて、女性首長は一般的に存在していた。前方後円墳に埋葬される女性首長の割合は三割から五割。男性の場合は鉄のやじりか甲冑(かっちゅう)が一緒に埋葬されているため、性別がおおよそ判別できるのだという。
 三割は、政府が二十一世紀になって「指導的地位に占める女性の割合」の目標としている数字だ。今年までに達成することを目指していたが、できずに延期した。
 男性優位・父系原理の国家体制を決定付けたのは、七世紀末に始まった、中国の法体系(律令(りつりょう))の導入。明治維新後に作られた法体系も女性を排除する方向に働いた。
 いい意味で心がへとへとになった展示の最後、元厚生労働省事務次官村木厚子さんのインタビュー動画に少しだけ励まされた。
「制度で排除されてきたものを、制度でまた取り込んでいくことができるんじゃないか」
 来館者には若い女性グループやカップルもいた。彼女ら、彼らが生きやすい社会にするためにも、分厚い岩盤に穴を開けなければ。 

驚きの連続「性差の日本史」展 歴博、売買春にも切り込む | 47NEWS2020年12月4日
 展示を見ていくと、古代から中世、近世、近代へと、男女の「区別」が「分離」になり、「排除」へと変わっていくことがくっきりと浮かび上がる。
 卑弥呼に象徴されるように、古代の王は男女どちらもいた。考古学による埋葬例の分析からは、弥生時代末期の女性首長は全体の3割から5割いたと推定されている。政治的集会の場にも男女が区別なく参加した。だが古墳時代中期以降、女性首長の数は減っていく。律令国家が形成される中で、男女の区分は制度化されていく。
 近代に入ると、女性は政治の場から閉め出される。明治政府は女性天皇を否定し、男系による皇位継承を定める。女性の政治参加(参政権)も認めなかった。「奥」や「大奥」として政治に関与していた近世に比べても、女性排斥の度合いは高く、政治的存在としてはほぼ全否定された。
 圧巻は売買春に焦点を絞りこんだ研究だろう。ジェンダーに関わる政治や労働の展示とは別に、「性の売買と社会」と題したテーマ展示として歴史を通観した。博物館の展示としては、これまで例がないのではないか。
 日本で職業としての売春が生まれたのは9世紀後半。「遊女」と呼ばれるようになっていくこの女性たちが“解放”されるのは、1872(明治5)年の「芸娼妓解放令」によってである。
 図録には、「買う男」(遊客)の数の推移が詳細に記されている。1920年代(大正から昭和初期)、1年間に遊廓で女性を買う男は延べ2200万人前後だったが、30年代後半には3千万人を突破する。また1929年の調査では、朝鮮における遊客の8割は日本人男性だった。日本は買春大国だったのだ。
 近代から現代にかけての展示では、工場や炭鉱で働く女性の姿が登場する。1946~49年、GHQ/SCAP(連合国軍最高司令官総司令部)に勤務したミード・スミス・カラスの業績にも触れていて、興味深い。戦後に新設された労働省の婦人少年局の業務を推進し、労働基準法の初期の理念としての「同一賃金同一労働」や組合活動の女性参加など、労働環境の改善に尽くした人物である。
 そして、最後に登場するのが、元厚生労働事務次官村木厚子さんだ。動画でこの企画展について語る。

きょうの潮流 2020年12月6日(日)2020年12月6日
 国立歴史民俗博物館の企画展「性差(ジェンダー)の日本史」。終了目前でしたが、見学できました。熱心にメモを取る若い人。性の売買の歴史に、ここまで切り込んだ展示は、かつてなかったのでは
▼「これって今も一緒だよね」。若い女性のささやき声が聞こえてきました。近代公娼(こうしょう)制度のもと、娼妓(しょうぎ)は「自由意思」で性を売るものとされた、との解説を指しているようです。今なら「自己責任」か
▼そこに“自由”がないことは、言わずもがなでしょう。身売りの代金(前借金)は親が受け取り、娼妓となった娘が自分の性を売ることで返済する。しかし借金は、経費や親への仕送りで増えることも。楼主から娘たちが受けた仕打ちは、胸がつぶれるような残酷さです
▼これは過去形か。先日、見た番組がよみがえります。今、ひそかに広がっているといわれる“パパ活”です。名前はソフトでも、内実は“個人売春”。コロナ禍で仕事を失い、追い詰められた女性たちが、やむを得ず“パパ活”を始め、性暴力にさらされる。その一方で、あっせん事業で月100万円稼ぐ男性も。男性曰(いわ)く「嫌ならやめればいい」
▼スタジオゲストの白波瀬佐和子*6東京大学大学院教授は「今まであった構造的問題が表面化した」と。内閣府に設置された研究会*7の座長として、政府に支援を求める緊急提言*8を出しています
▼4月9日、グテレス*9国連事務総長は、コロナ対策において女性・女の子を中核に据えるよう声明を発表。菅義偉*10首相は、それでも“自助”を説くのでしょうか。

 「コロナ禍でのパパ活」については例えば

“パパ活”の闇 コロナ禍で追い詰められる女性たち - NHK クローズアップ現代+
 コロナ禍で、経済的に困窮する女性たちが深刻な危機に陥っている。なかでも心配されるのが、いわゆる“パパ活”に足を踏み入れる女性たち。男性と一緒に食事などをすることで、金を提供してもらうものだが、トラブルの温床といわれ、“個人売春”につながるケースも少なくない。番組では、家族の暮らしを守るためパパ活という選択をせざるを得ない女性たちや、パパ活を斡旋し毎月100万円以上稼ぐ人物などに密着。“パパ活”の実態に迫るとともに、コロナ禍で追い詰められる女性たちの苦悩を伝える。

を紹介しておきます。
 小生、「パパ活」という言葉を最初聞いたときは冗談ではなくマジで「パパ(父親)の活動」、つまりは「男性(父親)の育児参加のこと?」と勘違いしていたのですが、もちろん“パパ活”の闇 コロナ禍で追い詰められる女性たち - NHK クローズアップ現代+にも書いてあるように、そうではありません。

編集後記:1308号|週刊金曜日公式サイト2020年12月11日
 国立歴史民俗博物館の企画展、ジェンダーの視点で古代から現代までの歴史を展示する「性差(ジェンダー)の日本史」は先週終了したが、最終週は連日予約で埋まる人気ぶり。圧巻の資料を観て、評判になった理由がわかった。
 展示をたどれば、有名な「卑弥呼」だけでなく女性首長が多く存在し男女共に能力を発揮していた古代から、時代を経るごとに男女が区別され、女性が地位ある立場から追われていく様が明らかになる。女性は職を奪われ公式記録に残されなくなるが、時折、国の都合で増産のための「女性活躍」を押し付けられる。生理用品の普及も女性を休ませずに長く働かせるためだった。その上育児・家事も女性に負わせる構図は今も続く。
 だが展示の最後に流れる映像で村木厚子元厚生労働事務次官は語る。
 「制度ができる前の女性の能力や男女の役割は、もっと多様で豊かだった。制度で排除されてきたものを制度でまた取り込んでいくことができる」と。そして、「歴史を勉強すれば絶対的なものはないことがわかる、現状は変えられる」、と話す。そう、夫婦同氏の強制も天皇の男系男子継承論も古代にはない。制度とは絶対ではなく変えられるものだ。

小島慶子「『性差の日本史展』で考えた 『搾取の構造』は明治も令和も続いている」〈AERA〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース2020年12月12日
 12月6日まで開催されていた国立歴史民俗博物館の「性差(ジェンダー)の日本史」展は大盛況で、図録のオンライン注文が殺到とか。私も見てきました。
 同展は「政治空間」「仕事とくらし」「性の売買」の切り口で、日本の男女の役割の変化をたどるもの。女性首長も珍しくなかった古代から時代が降るにつれて、男性の主流化が進みます。江戸に入るとメディア(絵画)で女性が鑑賞物として描かれるようになり、人身売買による幕府公認の売春(遊郭)に群がる、巨大な金融ネットワークが誕生。性搾取ビジネスは、幕府の財政や江戸経済にとって不可欠の存在に。呉服屋などの大店は、住み込みで働く大勢の男性労働者の性を管理し、使い込みを防ぐために特定の遊郭と契約を結び、売春ビジネスを支えました。男性は労働力として店主に管理され、その男性に買われる女性は性的な商品として楼主に搾取される構図です。明治以降も人身売買で借金を負わされた女性が過酷な性搾取に苦しむ構造は変わらず、1910~20年代には累積で当時の男性人口の9割に相当する男たちが買春する大衆買春時代に。男たちは妻子に貞操を説きながら、日常的に買春していたのです。
 令和の世はどうでしょうか。経済的に困窮した女性たちが決して安全とは言えない労働環境に追い込まれ、男性がモノを買うように日常的に性を買い、そこで働く女性が貶められる構造は変わりません。行き場のない若い女性がネットで出会った男性による性暴力や性搾取の被害に遭っても「自己責任」と言われ、男性は責められない。「男の性欲は制御できないから買春は当然」という通説を信じている人も多いですが、歴史の流れを見れば、構造的に作り出された搾取の仕組みだと分かります。
 莫大(ばくだい)なお金を回すために、女性も男性もモノのように扱われ自己責任にされる社会は、今も変わらないのです。

*1:もちろんそういうことではなく「いわゆる廃娼運動の中心人物たちと、考えが違ったので共闘しなかった」だけでしょうし、そんなことは黒坂も分かった上での言いがかりでしょうが。

*2:戦前、女性運動団体である青鞜社新婦人協会の活動に参加。戦後も日本婦人団体連合会婦団連)会長、世界平和アピール七人委員会委員など歴任(平塚らいてう - Wikipedia参照)

*3:著書『明治維新と近世身分制の解体』(2005年、山川歴史モノグラフ)、『江戸東京の明治維新』(2018年、岩波新書)など

*4:著書『私は負けない:「郵便不正事件」はこうして作られた』(2013年、中央公論新社)、『あきらめない:働く女性に贈る愛と勇気のメッセージ』(2014年、日経ビジネス人文庫)、『日本型組織の病を考える』(2018年、角川新書)、『公務員という仕事』(2020年、ちくまプリマー新書

*5:世界の劣等生がどうかはともかく1)G7の劣等生であり、2)アジアにおいても「民主化が進む韓国や台湾」との比較では劣等生ではあるでしょう。

*6:著書『少子高齢社会のみえない格差』(2005年、東京大学出版会)、『日本の不平等を考える:少子高齢社会の国際比較』(2009年、東京大学出版会)、『生き方の不平等』(2010年、岩波新書) など

*7:コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会 | 内閣府男女共同参画局のこと

*8:https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/covid-19/siryo/pdf/teigen.pdfのこと

*9:ポルトガル首相、国際連合難民高等弁務官などを経て国連事務総長

*10:第一次安倍内閣総務相、第二~四次安倍内閣官房長官などを経て首相