新刊紹介:「経済」8月号

「経済」8月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
世界と日本
◆中国全人代でコロナ禍対策(平井潤一)
(内容紹介)
 今年の5月22~28日に行われた全人代においてコロナ対策(感染予防、治療、コロナ不況の阻止)が重要なテーマだったことが触れられています。
 なお、「可決は6月末で、原稿に反映させることが、時間的に間に合わなかったこと」から平井論文では取り上げられていませんが、全人代と言えば、6月末に全人代常務委員会が香港国家安全維持法を可決したこともここで一応指摘しておきます。
 なお、5月の全人代においては香港問題について、

中国、国家安全法制定方針を採択 全人代閉幕 香港へ統制強化(写真=AP) :日本経済新聞
 北京で開いた全国人民代表大会全人代、国会に相当)は(ボーガス注:5月)28日、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針を採択して閉幕した。中国が国家安全に関する機関を香港に設置して直接取り締まりができるようになる。香港で言論の自由が中国本土並みに制限され、高度な自治を認める「一国二制度」が形骸化するとして、米国や香港の民主派は反発を強めている。

全人代2020:閉幕 中国「国家安全法制」可決 香港の民意、無力化 - 毎日新聞
 香港の統制を強化する「国家安全法制」の新設(ボーガス注:方針)が(ボーガス注:5月)28日に決まった。中国の全国人民代表大会全人代=国会)は「国家の主権と統一」を守るために不可欠な措置だと正当化。一方、香港では「1国2制度の死に等しい」と、抗議活動が再燃する。
 28日午後3時10分(日本時間同4時10分)過ぎ。北京の人民大会堂で香港の「国家安全法制」の新設(ボーガス注:方針)が圧倒的多数で可決されると、マスク姿の全人代代表約3000人が、30秒を超える長い拍手で支持を表明した。

香港に国家安全法を導入 中国全人代が閉幕:東京新聞 TOKYO Web
 北京で開かれていた第十三期全国人民代表大会全人代=国会に相当)第三回会議は(ボーガス注:五月)二十八日、反政府活動を禁止する国家安全法を香港に導入する方針を採択して閉幕した。採決で賛成票は99・7%に達した。李克強(りこくきょう)首相は閉幕後の記者会見で、「香港の安定した繁栄を守るための措置であり、一国二制度は守っていく」と同法導入を正当化した。
 国家安全法は、共産党政権の転覆や中国分裂活動などを禁じる。さらに「外国勢力が香港に干渉することに断固反対する」とも規定。香港に新設される出先の治安機関を通じて、中国政府が香港で法執行を直接行う可能性もある。高度な自治を保障した「一国二制度」が破壊されるとして、香港では反発の声が上がっている。
 採決では賛成が二千八百七十八人、反対が一人、棄権は六人だった。来月以降、全人代常務委員会が立法作業を進め、九月に行われる香港立法会(議会)選挙までに施行される見通しだ。

中国全人代、香港への国家安全法制導入を採択し閉幕 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト
 中国の第13期全国人民代表大会全人代)第3回会議は28日午後、審議されていた「香港が国家安全を守るための法制度と執行メカニズムに関する決定」を採択して閉幕した。国家政権転覆行為などを禁じた「国家安全法」を香港に導入するためのもので、今後は全人代常務委員会が実際の法律を制定する。8月中にも施行されるとの見通しが伝えられており、香港の民主派は高度な自治を認めた「一国二制度」の崩壊につながると強く反発している。

新型コロナ:中国、香港に「国家安全法」導入方針決定 全人代閉幕 (写真=ロイター) :日本経済新聞
・北京で開いた全国人民代表大会全人代、国会に相当)は(ボーガス注:5月)28日、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針を採択して閉幕した。
・北京の人民大会堂習近平*1(シー・ジンピン)国家主席らが出席して採決し、賛成2878、反対1、棄権6で可決した。方針には「外国勢力が香港に干渉することに断固反対し、必要な措置をとって反撃する」と明記。中国の分裂や共産党政権の転覆、組織的なテロ活動、外部勢力による内政干渉を禁止する。「中央政府の機関が香港政府に組織を設置し、国家安全に関連する職責を果たす」とした。
李克強*2(リー・クォーチャン)首相は全人代後の記者会見で「決定は一国二制度を確保して香港の長期繁栄を守るものだ」と述べた。
・6月にも全人代常務委を開き、立法作業を進める。9月に香港立法会(議会)の選挙を予定しており、夏までに成立させるとの見方が強い
・2019年には香港に逃げた容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」を巡り香港でデモ活動が長期間続いた。このため習指導部は香港政府が自力で国家安全に関する立法措置を進めるのは難しいと判断し、自ら制定に乗り出した。
 習指導部は香港基本法の例外規定を使い、中国本土の法律を直接適用する立法措置をとる。国家安全法の施行で、香港の抗議活動への締めつけがさらに厳しくなるのは確実とみられる。

として具体的な方針までは示されていませんが、香港デモに対して早急な法的対抗措置が必要とはされました。
 法可決前に執筆されたとみられる平井論文も全人代5/28決定について「全人代5/28決定がどのように具体化されるのか(あるいは香港や欧米の反発を危惧して具体化されないのか)、今後の動向が注目される」としています。可決の動きがあまりにも速かったため「動向が注目される」とする平井論文の論調は論文発表時には「法が可決された」現実とずれてしまいましたが。
 平井論文の論調(今後の動向に注目)からも分かりますが、5/28の決定(早急に香港デモ対応立法を制定して、香港デモ派を政治的に圧倒する)があったからと言っても、6月末の法可決は香港民主派にとって予想以上の「中国側の早い対応だった」といえるでしょう。とはいえ、5月28日の全人代決定を考えれば、香港民主派がなすすべも無く「6月末の法可決」を許したのはやはり「習近平指導部の決意を甘く考えていた重大な失策」と言うべきでしょう。

参考

全人代開幕 中国、成長率目標見送り/コロナ対策で特別国債発行/会期を短縮
 中国の国会に相当する全国人民代表大会全人代)の第13期第3回会議が22日、北京の人民大会堂で開幕しました。李克強首相は政府活動報告の冒頭、新型コロナウイルスへの対応について「感染症対策は大きな戦略的成果を収めている」と強調。今年の経済成長率目標については「世界の感染状況と経済・貿易情勢の不確実性」を理由に発表を見送りました。
 新型コロナ対策では「公衆衛生緊急対応管理などの面で多くの脆弱(ぜいじゃく)部分が表面化し、大衆の一部の意見と提案を重視すべきだ」とも表明。初動対応の遅れなどへの批判を一定受け入れる姿勢を見せました。感染症対策として1兆元(約15兆円)の特別国債の発行を表明しました。
 経済成長をめぐっては、都市部での新規就業者数を900万人以上とすると約束。874万に達する大学新卒者に対し雇用を促し、大学と地元政府に対しては、持続的な就業サービスの提供を求めました。
 李首相は「貧困脱却は『小康(ややゆとりある)社会』の全面的建設のために必ずやり遂げなければならない任務だ」と強調。貧困救済措置の実施強化や再貧困化した人に対するモニタリング・救済メカニズムの完備と実行を掲げました。
 同日全人代に提出された予算案によると今年の国防予算は前年比6・6%増の1兆2680億500万元(約19兆円)となりました。
 1998年以降、毎年3月5日に開幕していた全人代は新型コロナの感染拡大の影響を受け、約2カ月半遅れでの開催となりました。全人代の会期は例年の10日前後から1週間に短縮され、28日に閉幕します。


◆ワクチン開発と米中覇権:新型コロナウイルス予防をめぐって(山脇友宏)
(内容紹介)
 新型コロナのウイルス開発をめぐって米中が対立していることに触れた上で、コロナ予防のため、米中の協調が求められるとしています。

参考

中国シノバック、ブラジルでコロナワクチン治験 :日本経済新聞
 中国製薬会社の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック北京市)は開発中の新型コロナウイルス向けワクチンについて、最終の第3期臨床試験(治験)をブラジルで始めると発表した。7月に作業に着手する。世界で開発競争が激化するなか、中国は先駆けて実用化を狙う。
 世界保健機関(WHO)によると、同ワクチンで第3期の試験まで進んだのは英アストラゼネカと、シノバックのみ。同社は7月3日、ブラジル衛生当局から第3期試験の承認を得た。同国の研究所と組んで6州にある12の研究所で行う。約9千人の被験者を募る。

 まあ実際どうなるかはわかりませんが「中国の科学技術も立派になったもんだ」とある種の感慨を禁じ得ません。

新型コロナ:米イノビオの新型コロナワクチン、中間解析で好結果 (写真=AP) :日本経済新聞
 バイオ製薬の米イノビオ・ファーマシューティカルズは、新型コロナウイルス感染症のDNAワクチンを健常なヒトに投与した第1相臨床試験の中間解析で好結果が得られたと、6月30日に発表した。


特集『大統領選挙とアメリカ資本主義』
◆コロナ危機・人種差別抗議で揺れるアメリカ:トランプ大統領は勝てるのか(萩原伸次郎*3
(内容紹介)
 「初期対応のまずさによるコロナの蔓延」「黒人差別問題での全国的なデモ」によりトランプの再選が当初考えられていたより難しくなっていること、しかし残念ながら「バイデンが勝利できる」とは言い切れないこと、トランプの再選は「コロナ対応が今のまま酷い状況になる」「人種対立が激化する」等の点で米国に甚大なダメージを与えるであろう事が指摘されています。


◆腐敗と格差:現代アメリカにおけるポピュリズムの課題(大橋陽*4
(内容紹介)
 筆者は米国には右派ポピュリズムと左派ポピュリズムの2つのポピュリズムが存在するとする。
 右派ポピュリズムの典型がトランプであり、左派ポピュリズムの典型が民主党大統領予備選で健闘、善戦したサンダース上院議員バーモント州選出)やウォーレン上院議員マサチューセッツ州選出)である。
 左派と右派のポピュリズムの違いは「腐敗と格差」についての認識によってわけられる。
 左派は「大企業によるロビイング」と「それによって成立する大企業寄りの法制度」が「政治腐敗と格差拡大を産んでいる」として大企業のロビイング規制や大企業に対する経済規制を主張するのに対し、右派はそれに反対する。
 そして左派ポピュリズムが「未だに人種・民族差別は深刻であり、黒人やアジア系など非白人、有色人種は経済格差に苦しんでいる」とするのに対し、右派は「そのような理由でプアホワイトが有色人種から搾取されている」として人種、民族間格差を否定しようとしている(実際には統計データからも人種、民族間格差が認められる。ただし一方でリッチホワイトとプアホワイトの格差拡大が進んでいること、それに対する誤った認識からプアホワイトの一部が有色人種に差別的なこともまた事実である)。
 サンダースやウォーレンが大統領候補になれなかったことは彼らの限界ではあるが、一方で善戦したことは左派ポピュリズム民主党内部において無視し出来ない力を持ちつつあることを示している。


◆トランプ政権と軍需産業:宇宙軍創設と中国脅威論(西川純子*5
(内容紹介)
 トランプ政権の軍事予算増大と宇宙軍創設、及びそうした行為の背景にある中国脅威論が「危険な企て」として批判され、トランプの再選阻止が急務とされる。しかし、民主党内にもトランプのような軍拡派、宇宙軍支持者、中国脅威論者がいることも指摘され、トランプ落選が「当然に」トランプの軍事路線の変更をもたらすわけではないとされる。


社会保障をめぐる攻防:医療保険をめぐって(長谷川千春*6
(内容紹介)
 トランプが「米国版国民皆保険制度」ともいえるオバマケアを廃止しようと画策していることが批判的に紹介される。
 オバマケアの維持あるいは発展を目指し、廃絶を阻止するためにもトランプ再選阻止の重要性が指摘される。
 なお、トランプの「新型コロナ対応のまずさ」からオバマケアについては「支持が増加」し、最近の調査では「オバマケア支持51%、不支持41%」となっている。


◆新型コロナ禍にみるアメリカ(薄井雅子*7
(内容紹介)
 新型コロナによってダメージを受けているのは貧困層であること、貧困層の多くは黒人やヒスパニックであり、今も人種差別が深刻なことが指摘されている。


特集「新型コロナ危機:実態と対策」
社会疫学・予防医療の視点が必要な新型コロナ対策(近藤克則*8
(内容紹介)
 新型コロナにおいては「コロナの感染それ自体による健康被害」が注目されがちだが、それだけではなくいわゆる「運動不足によるコロナ肥満とそれによる疾病(糖尿病など)」「失業、収入の低下、外出できない事など、精神的苦痛による疾病(うつ病アルコール依存症など)」といった問題への目配りの重要性が指摘されている。
 こうした認識から最近ではいわゆる「ソーシャルディスタンス(社会的な距離)」「ソーシャルディスタンシング」について「フィジカルディスタンス(身体的な距離)」「フィジカルディスタンシング」と言いかえる動きが起こっている。
 「うつ病アルコール依存症の予防」には「社会とのつながり」が大事であり、「ソーシャルディスタンス概念」は「社会とのつながり」を勿論否定しているわけでは無いからである。

参考

「ディスタンス」と「ディスタンシング」、意味は違う? [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
◆Q
 人と一定の間隔を保つ「ソーシャル・ディスタンシング」(Social distancing)という言葉がすっかり定着しました。一方で、「ソーシャル・ディスタンス」(Social distance)という言葉も頻繁に耳にします。両者に違いはあるのでしょうか。
◆A
 ソーシャル・ディスタンシングは感染予防に特化した言葉で「感染拡大を防ぐために物理的な距離をとる」との定義がされています。日本語訳としては「人的接触距離の確保」がわかりやすいと思います。報道などでは「社会的距離」との訳もよく見かけます。
 一方、ソーシャル・ディスタンスは、人間の心理的な距離を示して使う言葉として1940年代以降、子どもの社会性に関する研究などで使われるようになりました。黒人やエイズウイルス(HIV)感染患者への偏見から、社会的、心理的に彼らとの接触を回避する現象を表す言葉として使われたこともあります。
 二つの言葉は学術的には大きく違いますが、新型コロナの流行の中では混同して使われ、ソーシャル・ディスタンスが人との物理的距離の意味で使われることが日本でも多いようです。世界保健機関(WHO)は意味を明確にするため「フィジカル・ディスタンシング」(Physical distancing)に言い換えました。

<新型コロナ>「ソーシャル・ディスタンシング」→「フィジカル・ディスタンシング」 人との距離、言い換える動き:東京新聞 TOKYO Web
 感染抑止では、人と人の間に十分な距離を保つ「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)」が重要とされますが、最近これを「フィジカル・ディスタンシング(身体的距離の確保)」と言い換える動きが出てきました。
◆Q
 だれが言い換えを始めたのですか。
◆A
 世界保健機関(WHO)が最近「フィジカル・ディスタンシング」という言い方に改めました。フィジカルは「物理的」という意味。社会的距離という表現だと「愛する人や家族との関係を社会的に断たなければならない」と誤解されかねず、あくまで物理的な距離を置くだけだと伝える狙いです。WHOの専門家は「人と人とのつながりは保ってほしいと願うからだ」と解説しています。
◆Q
 日本政府はどんな言葉を使っていますか。
◆A
 主に「社会的距離」という表現を使ってきました。一方、政府の専門家会議は二十二日、接触を減らすための提言で「身体的距離の確保」という言葉を使いました。菅義偉(すが・よしひで)官房長官も二十四日の記者会見で、「身体的距離」という表現について「社会的に孤立してはいけないという思いが込められている」と理解を示しましたが、現時点で、「社会的距離」を別の表現に置き換えていくことは「特別考えていない」とも話しました。 

ソーシャルではなく“フィジカル”ディスタンス 新型コロナ対応の学術知見発信、放送大学 | 株式会社共同通信社
 放送大学千葉市)はこのほど、新型コロナウイルス禍との向き合い方を学術的知見に基づき同大教員が語る全10回シリーズの動画「新型コロナウイルス流行の中で~放送大学教員からのメッセージ~」の公開を始めた。
 「社会的な距離をとるということ」と題した森津太子*9教授の動画では、日本でよく使われている、2メートル以上の対人距離を呼びかける「ソーシャル・ディスタンス」(社会的距離)という言葉は、「人とのつながりの減少により社会的孤立が生じる」恐れがあることから、世界保健機関(WHO)では「身体的、物理的距離」を意味する「フィジカル・ディスタンス」に言い換えるよう推奨している点を紹介。


◆コロナ危機下の三月期決算をどう見るか(小栗崇資*10
(内容紹介)
 三月期決算からはコロナの影響で企業の収益が悪化していることが読み取れる。政府による景気対策の取り組みが求められる。

参考
主張/経済の冷え込み/暮らしの支援を急がなければ


◆コロナ禍での非正規労働者の苦境:休業保障制度の改善点と課題(脇田滋*11
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

非正規労働者支援充実を/超党派議連が厚労相に申し入れ


◆自粛と補償は一体で!:中小業者の経営を守る(藤田信好*12
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
持続化給付金 審査基準の徹底を/清水氏「政府が責任持って」
持続化給付金 一刻も早く/笠井氏追及 “癒着・不備で支給遅れ”/閉会中審査
限定自粛要請は補償とセットで/東京感染拡大 国と都が早急に協議を/BS番組「報道1930」 小池書記局長が出演


接触確認アプリ:デジタル監視の問題点(高野嘉史)
(内容紹介)
 月刊経済記事は『デジタル監視の問題点』という副題からも想像がつくように、「個人情報の流出などのプライバシー問題」「コロナ監視を口実にした監視社会化の恐れ」が主として論じられている。

参考

新型コロナ:接触アプリでまた不具合 厚労省、陽性登録時にエラー :日本経済新聞
 厚生労働省は(ボーガス注:7月)10日、新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性がある場合に通知するスマートフォン向けアプリ「COCOA」に不具合が生じ、陽性登録できない場合があると発表した。11日から陽性登録に必要な番号の発行を一時的に停止するという。
 アプリは6月19日の公開直後にも不具合が発生し、番号の発行を一時停止。その後修正版を配布し、7月3日に番号発行を再開したばかりだった。


プーチン*13ロシアの20年(上):経済の現状と課題(岡田進*14
(内容紹介)
 プーチンエリツィン時代の「ズタボロな経済」を立て直すことによって、一定の支持を国民から得た。
 しかし、ロシアの外貨獲得源は現在、もっぱら「石油や天然ガス」といった資源輸出であり、ソ連時代に崩壊した工業生産力を立て直すことにはプーチン政権も成功していない(この点はスマホメーカーのファーウェイや家電のハイアール、パソコンのレノボなど工業生産力を発展させている中国との違いである)。
 そのため、「コロナの影響(原油需要の減少)」「米国によるシェールオイル増産」で資源価格が低迷するとロシアの経済成長にはブレーキがかかっている。
 その結果としてプーチン政権支持率も一時に比べ低迷している(もちろん20年に及ぶ長期政権による「飽き」もありますが)。
 また、ロシアの経済成長低迷という意味では「クリミア侵攻後の欧米の対ロシア経済制裁」と言う要素も重要である。工業生産力立て直しのためにロシアは鄧小平時代・中国の改革開放的な「外資導入」をもくろんでいたが、それは大きく挫折せざるを得なくなった。
 ロシアは欧米に変わる外資導入先として日本、中国、韓国、インドなどをもくろんでいるが、今のところ目立った成果は出ていない。
 なお、こうしたプーチンの思惑(日本資本導入のための対日接近)もあって一時「日露平和条約締結論」「二島先行返還論」が安倍政権から提示されたが「島を返還した場合に、米軍を置かないと事前に確約せよ」というプーチンの要望に安倍政権が対応できなかったこともあり、現在では事実上挫折している。


◆空洞化と属国化の克服と新たな資本主義の模索を(下)(坂本雅子*15
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」7月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した『空洞化と属国化の克服と新たな資本主義の模索を(上)』の続き。
 前回は「米国の属国化&産業空洞化」という問題点が指摘されるにとどまったが、今回はそれに対する解決案を提示されているが小生の無能のため、具体論の紹介については省略します。
 
【参考:属国化】

イラクの現実から見た戦争法案の危険/米国への追従極まる 主体性かけらもなし
 集団的自衛権行使に反対する著名な憲法学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」。6月24日の会見で、戦争法案の撤回を求める声明を発表しました。
 そこでは法案が、今年4月に日米両政府が合意した「日米防衛協力のための指針」(日米ガイドライン)にそったものであり、背景には米国の対日要求があると指摘。「このような対米追随ともとれる姿勢は、集団的自衛権行使に関して日本が自主的に判断できるとの政府の主張の信ぴょう性を疑わせる」と強調しました。
 同会のメンバー、国際基督教大学の千葉眞*16教授(政治学)は「安倍政権の積極的戦争容認主義は“ネギを背負ったカモ”のようなものです。軍事と財政の両面でアメリカのカモにされ、属国化を強めていくだけではないか」と述べ、こう力説しました。

「根源は日米安保条約」/小池書記局長 日本の“自立”議論/TOKYOMX
 日本共産党小池晃書記局長は、22日のTOKYOMXのテレビ番組「激論! サンデーCROSS」に出演し、「日本に“自立”は可能か」をテーマに、小林節慶応義塾大学名誉教授、白井聡*17京都精華大専任講師らと議論しました。
 司会の堀潤アナウンサーから「日本はアメリカに対して自立した国か」と問われた小池氏は、「自立していない。アメリカの従属国だ」と主張しました。
 小池氏は「対等平等の関係ではない。憲法と相反する日米安保条約が結ばれていることに、全ての根源がある」と指摘しました。
 「小池さんの言うとおりだ」と応じた白井氏は「日本の特徴は、自立した国であろうという意志がない。第三者的に見れば属国以外の何者でもないが、そのことにまったく無自覚で恥ずかしい状況だ」と批判しました。
 小池氏は、日本がアメリカからの貿易自由化という圧力に応じてきたために、日本の食料自給率は38%となり、食料主権が危うくなっていると指摘。さらに今、アメリカは、2国間交渉での自由貿易協定(FTA)によって、アメリカ式ルールを押し付けようとしていると説明し「(FTAに応じることは)カモがネギしょって煮えたぎったなべに突っ込んでいくようなもの。このまま乗っかれば大変なことになる」と批判しました。
 さらに小池氏は、「対米従属的な姿勢を転換することなしに、いくら交渉しても、圧されっぱなしになることは間違いない」と述べた上で、「自民党ですらいままで守ってきた国民皆保険制度や、労働法制の基本的な部分まで壊していくことになる」と指摘。「日米安全保障条約をやめて日米友好条約にする」ことを提案しました。

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委委員会主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席、党中央軍事委委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*2:共青団共産主義青年団)中央書記処第一書記、河南省長、党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員兼務)

*3:横浜国立大学名誉教授。著書『アメリカ経済政策史:戦後「ケインズ連合」の興亡』(1996年、有斐閣)、『通商産業政策』(2003年、日本経済評論社)、『世界経済と企業行動:現代アメリカ経済分析序説』(2005年、大月書店)、『米国はいかにして世界経済を支配したか』(2008年、青灯社)、『日本の構造「改革」とTPP』(2011年、新日本出版社)、『TPP:アメリカ発、第3の構造改革』(2013年、かもがわ出版)、『オバマの経済政策とアベノミクス』(2015年、学習の友社)、『新自由主義と金融覇権:現代アメリカ経済政策史』(2016年、大月書店)、『トランプ政権とアメリカ経済:危機に瀕する「中間層重視の経済政策」』(2017年、学習の友社)、『世界経済危機と「資本論」』(2018年、新日本出版社)、『金融グローバリズムの経済学』(2019年、かもがわ出版)など

*4:金城学院大学教授。著書『ウォール・ストリート支配の政治経済学』(編著、2020年、文眞堂

*5:獨協大学名誉教授。著書『冷戦後のアメリ軍需産業』(編著、1997年、日本経済評論社)、『アメリカ航空宇宙産業』(2008年、日本経済評論社

*6:立命館大学准教授。著書『アメリカの医療保障』(2010年、昭和堂

*7:著書『戦争熱症候群:傷つくアメリカ社会』(2008年、新日本出版社

*8:千葉大学教授。著書『「健康格差社会」を生き抜く』(2010年、朝日新書)、『長生きできる町』(2018年、角川新書)など(近藤克則 - Wikipedia参照)

*9:著書『対人認知における文脈効果』(2000年、風間書房)、『現代社会心理学特論』(2011年、放送大学教育振興会)など(森津太子 - Wikipedia参照)

*10:著書『アメリ連結会計生成史論』(2002年、日本経済評論社)、『株式会社会計の基本構造』(2014年、中央経済社)など

*11:龍谷大学教授。著書『労働法の規制緩和と公正雇用保障』(1995年、法律文化社)、『派遣・契約社員 働き方のルール』(2002年、旬報社)、『労働法を考える』(2007年、新日本出版社)、『ワークルール・エグゼンプション』(2011年、学習の友社)など。個人サイトS.Wakita's Home Page

*12:全国商工団体連合会事務局長

*13:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相などを経て大統領

*14:東京外国語大学名誉教授。著書『ロシアの体制転換』(2005年、日本経済評論社)、『新ロシア経済図説』(2010年、東洋書店ユーラシア・ブックレット)、『ロシアでの討論:ソ連論と未来社会論をめぐって』(2015年、ロゴス)など

*15:名古屋経済大学名誉教授。著書『財閥と帝国主義三井物産と中国』(2003年、ミネルヴァ日本史ライブラリー)、『空洞化と属国化:日本経済グローバル化の顚末』(2017年、新日本出版社

*16:著書『ラディカル・デモクラシーの地平』(1995年、新評論)、『アーレントと現代』(1996年、岩波書店)、『デモクラシー』(2000年、岩波書店)、『「未完の革命」としての平和憲法』(2009年、岩波書店)、『連邦主義とコスモポリタニズム』(2014年、風行社)など

*17:著書『永続敗戦論:戦後日本の核心』(2016年、講談社+α文庫)、『国体論:菊と星条旗』(2018年、集英社新書)など