今日の産経ニュース(2021年10/30日分)

【産経抄】10月30日 - 産経ニュース

「功遂げ身退(しりぞ)くは、天の道なり」。
 二千数百年前の中国の思想家、老子が言う通り、一応の仕事を成し終えたら、身を引いて後進を見守るのが古来理想的だろう。とはいえ、その分野に一家言もつだけに、なかなか口出しせずにはいられない。政治家は特にそういう手合いが目立つ。

 「そういう手合い」の典型例は「首相辞任(1987年)」「議員引退(2003年)」以降も「改憲派の重鎮」として

◆『日本人に言っておきたいこと』(1998年、PHP研究所
◆『日本の総理学』(2004年、PHP新書)
◆『保守の遺言』(2012年、角川oneテーマ21)
◆『自省録』(2017年、新潮文庫)

など意見発表をしてきた中曽根*1元首相(2019年死去)でしょうが、勿論、産経は「ウヨ仲間の中曽根」に対して批判などしません。

自民党山崎拓*2元副総裁は27日、立憲民主党前職*3大阪府の選挙区に赴き、応援演説を行い投票を呼びかけた。立民前職はユーチューブに山崎氏との対談動画も投稿しており、山崎氏は広告塔の役割を果たした。同区には自民前職もいるのに、理解に苦しむ言動である。
自民党大阪府連は早速、28日に山崎氏の除名処分を求める上申書を党本部に提出した。
▼かと思うと福田康夫*4元首相は27日の講演で、岸田文雄*5首相が検討を表明した敵基地攻撃能力保有に文句を垂れた。
「言葉自身が(敵をつくらない)道に反する」。
 持論を展開するのは自由だが、衆院選終盤に後輩の足を引っ張りどうしたいのか。

 「自民候補がいるのに立民の辻元氏*6を応援した山崎氏」への批判は「一定の正当性」がある。
 しかし「産経の福田批判」には何の正当性もない。
 「自民党員はいかなる場合も総裁を批判してはいけない」という立場に産経は立ってないからです。
 「無役の安倍」が谷垣総裁(当時)を無視して好き勝手やっても「総裁を軽視するにも程がある」とは批判しなかったのが産経です。
 「郵政選挙での離党組(民営化方針反対派)」についても、離党組に「平沼赳夫*7」「古屋圭司*8」という「産経好みの極右」がいたこともあって「離党組は小泉*9首相の郵政民営化方針に従え」「分裂選挙は野党を利する」とは産経は言いませんでした。
 単に「敵基地攻撃論万歳」の産経が福田発言を「中国にこびている」と敵視し、福田氏に悪口しているに過ぎません。
 そもそも岸田発言は「本音はともかく」建前では「検討」にすぎません。敵基地攻撃論が「党、政府の方針」として決まったわけではない。
 それに対して「私個人は検討すること自体が、不適切で問題だと思う(福田)」と批判することの何が問題なのか。
 これが、例えば「女帝(女性天皇)導入を検討したい(岸田総裁)」「そうした検討には反対だ(福田氏)」なら「福田は選挙中に足を引っ張るな」どころか「党内で意見が割れてることを進めようとする岸田が悪い」と逆に岸田に悪口雑言でしょうし。
 しかし「加藤紘一*10河野洋平*11などリベラル派の集まりだったはず」の宏池会の岸田が「安倍や清和会(細田派)へのこび」かもしれませんが、「敵基地攻撃論」を主張し、「改憲派岸信介*12の岸派」がルーツで「岸の孫・安倍晋三*13も在籍した清和会」の福田氏が「それに反対する」(なお、安倍は敵基地攻撃論の支持者です)。何とも奇妙な現象です。

参考

福田元首相、コロナ中国起源説は「風評」 - 産経ニュース2021.10.27
 福田康夫元首相は27日、東京都内のホテルで開かれた「篠原文也*14の直撃!ニッポン塾*15」の会合で講演し、防衛費を国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に増額するという自民党衆院選公約について、中国などを念頭に「周りの国が敵であれば、いくら頑張っても(日本を)守り切れない。敵を作らないことが必要だ」と疑問視した。
 岸田文雄首相が敵基地攻撃能力の保有も含め検討するとしていることに関しては「敵基地を攻撃するという言葉自身が、(敵を作らないという)道に反することだと思う。日本と他国との関係をよくすれば、そうした議論はしなくて済む」と語った。対中関係については「新たな信頼関係を構築することが必要だ」として、日中首脳会談を開催するよう主張した。
 親中派として知られる福田氏は、日本、米国、中国について「相互依存関係にある」とした上で、米中の軍事衝突の懸念について「あり得ない。具体例を言えば、台湾海峡で戦争は起こり得ない」と述べた。日中関係の悪化については、日米とオーストラリア、インドの4カ国(クアッド)の枠組みを例示し「外務省か官邸の秘書官なのか知らないが中国包囲網という注釈がよくない。中国国民が『けしからん』となる」との見解を示した。

*1:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*2:宇野内閣防衛庁長官、宮沢内閣建設相、自民党国対委員長(河野総裁時代)、政調会長(橋本総裁時代)、幹事長、副総裁(小泉総裁時代)などを歴任

*3:辻元氏のこと。なお、解散時点で議員を失職するので現在「現職」は一人もおらず、岸田首相、枝野立民党代表、志位共産党委員長、玉木国民民主党代表なども「すべて前職」です。

*4:森、小泉内閣官房長官を経て首相

*5:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相、自民党政調会長(第二次安倍総裁時代)などを経て首相

*6:社民党政策審議会長、国対委員長鳩山内閣国交副大臣菅内閣首相補佐官(災害ボランティア担当)、民主党政調副会長、民進党幹事長代行、立憲民主党政調会長国対委員長などを経て副代表

*7:村山内閣運輸相、森内閣通産相小泉内閣経産相たちあがれ日本代表、日本維新の会代表代行、次世代の党党首など歴任

*8:第二次安倍内閣国家公安委員長自民党選対委員長(第二次安倍総裁時代)など歴任

*9:宇野内閣厚生相、宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相を経て首相

*10:中曽根内閣防衛庁長官、宮沢内閣官房長官自民党政調会長(河野総裁時代)、幹事長(橋本総裁時代)など歴任

*11:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官自民党総裁、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長など歴任

*12:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*13:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*14:政治評論家。日本経済新聞政治部次長、テレビ東京解説委員など歴任。また、文部科学省中央教育審議会委員、内閣府再就職等監視委員会委員、経済産業省産業構造審議会産業金融部会委員など政府の要職を歴任(篠原文也 - Wikipedia参照)

*15:「日経の元記者、政府審議会員を歴任」という篠原氏の経歴からしてこの福田講演会の参加者は「自民党支持層」を対象にしていることは明らかです。そこで福田氏がこうした発言をしたと言うことは「自民支持層でも穏健保守には受け入れられる発言」と認識していると言うことです。