今日の朝鮮・韓国ニュース(2022年3月23日分)

朝鮮初級学校、4月に名古屋から豊明に移転 感謝デーで別れ惜しむ:朝日新聞デジタル

 名古屋市中村区の名古屋朝鮮初級学校が4月、愛知県豊明市の愛知朝鮮中高級学校の敷地に移転する。校舎が老朽化していた。21日、感謝デーがあり、大勢の保護者や卒業生らが別れを惜しんだ。

 大変だとは思いますが新天地で是非頑張って欲しい。そしてこうした記事を書いた朝日を勿論高く評価したい。


和歌山・朝鮮学校にエアコンをつけよう CFで資金つのる:朝日新聞デジタル

 和歌山朝鮮初中級学校(和歌山市)の教室にエアコンをつけようと、卒業生らがクラウドファンディング(CF)で資金を募っている。いきいき学びすくすく育つ子どもの権利を一緒に守ってほしいと支援を呼びかけている。
 共催の「朝鮮学校を支援する和歌山の会」の神谷憲次代表は「民族教育を保障しているかどうかは、その国の民主主義の成熟度をはかる指標。子どもの学ぶ権利を保障することは根本的には日本人の問題です」と指摘する。

 大いに共感しますがうまいコメントが思い浮かばないのでノーコメントで紹介しておきます。いずれにせよ、こうした記事を書いた朝日を勿論高く評価したい。


北朝鮮帰還事業訴訟、北に賠償認めずも 「総連と勧誘」認定 - 産経ニュース

 北朝鮮は未承認国のため、主権国家は他国の裁判権に服さないとする「主権免除」の原則に該当せず、日本の法律が適用できるとした。

 小生も国際法には全く疎いのですが、「日本が承認しているかどうかではなく国際社会に国家として認められてるかどうか(つまりは国連加盟の有無)」で主権免除を決める説も確かあるので、当然ながらその説なら「国連加盟国・北朝鮮」には主権免除が成立するでしょう。また、コメント欄でも指摘がありますが、国交がないとは言え「日朝平壌宣言」を考えれば「日本は北朝鮮を事実上国扱いしている」として主権免除を認めることも可能ではないか。
 一方で「韓国最高裁の徴用工判決」のように主権免除の成立を狭く捉える説もあるわけですが。
 救う会だと「除斥期間から認められなかったから国交がなくて良かった」とほざきそうですが「国交がないからこそ、勝訴したところで事実上取り立てられない」「国交があれば大使館に送付すればすむところ、国交がないからこそ大使館がなく、裁判所が訴訟書類を北朝鮮相手にどう送ったら良いのか悩ましい(今回は公示送達*1をして『送った扱いにする』というイレギュラーな方法だったらしい)」のであって「除斥期間から認められなかったから国交がなくて良かった」というのは認識としておかしい。
 しかし今回の裁判「主権免除に当たるか(判決は当たらないと判断)」「公示送達でよかったのか」「除斥期間の例外に当たるか(判決は当たらないと判断)」といった「法的トピックが沢山ある」ある意味面白い訴訟ではあります。

 損害賠償請求権は、20年間の除斥期間が経過しており、すでに消滅していると結論づけた。

 2018年提訴*2だそうですが、「事実上、提訴が無理だった」として特殊事情から除斥期間の成立を認めなかった

除斥期間 - Wikipedia
らい予防法違憲国家賠償訴訟 - Wikipedia熊本地裁2001年5月11日
 国(厚生省)が20年の除斥期間を主張したのに対し、地裁は、提訴の可能となった「らい予防法廃止時(平成8年4月1日)」を除斥期間の起算点とすべきだとし、除斥期間成立を否定。国が控訴を断念したため判決が確定。
足立区女性教師殺人事件 - Wikipedia最高裁2009年4月28日
 一審が殺害時から20年の除斥期間を認めて原告の損害賠償請求を認めずに敗訴させたのに対し、二審は「遺体が見つからない限り提訴は無理」として遺体発見時から20年がたってないとして除斥期間の成立を認めず原告が勝訴。最高裁も二審の判断を支持。なお、この殺人事件は「被害者が特定失踪者だった」、つまり荒木和博の特定失踪者認定がデタラメなことを示す事件としても有名です。

とは違い、「20年前(1998年)に訴訟を起こすことは無理だった→除斥期間は成立していない」とはおそらく言えないでしょう。消滅時効の場合でも「成立していない」といえるかどうか。
 ということで予想の範囲内ですが敗訴判決でした。まあ勝訴したところで事実上、金を取り立てることは無理でしょうが。
 おそらく「政治アピールが目的*3」だったのでしょうが、それについても「失敗した」といっていいでしょう。
 被告(北朝鮮)が応答しないで放置プレー*4だった(そのこともあって早期結審だった)上にコロナ禍やウクライナ問題などのためにこんな訴訟は全く話題になってはいません。そもそもこんな政治アピールをして何をどうしたいのかもよくわかりませんが。「北朝鮮は酷い国だ、だから国交正常化するな」アピールか?。
 しかし小生も「法学部卒なのに無知、不勉強でサーセン」ですが、民事訴訟では「被告が応答しないと原告の請求が認められる」のが原則ですが「被告(北朝鮮)が応答しなくても」除斥期間の成立は認められるんですね。
 「間違っている」の指摘があれば「お詫びして訂正しますが」そういえば「除斥期間消滅時効の違い」の一つは「被告が主張しなくても裁判所が認定できるのが除斥期間、被告が主張しないと認定できないのが消滅時効」だったような気がしてきました(他に大きな違いとしては確か「訴訟の提起などで消滅時効は停止させることができるが除斥期間は原則として停止しない」)。
 話が脱線しますが「除斥期間消滅時効の違い」がキチンと説明できるのなら、かなり法律について詳しいと言えるかと思います。
 なお、除斥期間の例外を認定 被害者救済の道広がる 強制不妊訴訟の大阪高裁判決 - 産経ニュースによれば、「令和2年の民法改正」で「20年の期間が消滅時効と明記された(原則として停止しない除斥期間に比べ、停止させることができる消滅時効の方が成立しづらいため。被害者保護が目的)*5」そうなので、今後は扱いも変わってくるでしょう。
 除斥期間については以下の記事も紹介しておきます。
「除斥期間」についての最高裁判決について - apesnotmonkeysの日記2009.4.28
赤旗民法改定案 被害者救済へ大きな一歩/藤野氏 「消滅時効」の規定で/衆院法務委2016.12.5
赤旗社会リポート/性被害救済 20年の壁/若年時の被害 「除斥期間」で請求権消滅2020.1.11
除斥期間の例外を認定 被害者救済の道広がる 強制不妊訴訟の大阪高裁判決 - 産経ニュース2022.2.22
赤旗強制不妊は違憲 判決受け談話2022.2.23
赤旗B型肝炎問題で弁護団集会/除斥期間の壁 おかしい2022.3.17
赤旗主張/強制不妊被害救済/尊厳回復へ謝罪・補償を直ちに2022.3.19

*1:相手方が誰か知ることができない場合や、相手方の住所・居所がわからない場合など相手方に送達をすることが難しい場合に、法的に送達したものとする手続きのこと(公示送達 - Wikipedia参照)。

*2:後で触れる民法改正は「提訴後」なのでこの訴訟には直接影響しないのでしょう。

*3:なお、俺個人は「政治的アピールのためにあえて勝算を度外視して訴訟を起こすこと」それ自体は否定はしません。

*4:負けても構わない、相手にして話題になるのは避けたいと思えばそうなるでしょう。

*5:ただし、除斥期間が「現行民法から全てなくなったのかどうか」までは不勉強なので知りません。