「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2022年5/21日分:荒木和博の巻)

特定失踪者家族と総理が会わないのは北朝鮮との密約のせいなのか?(R4.5.21): 荒木和博BLOG
 6分55秒の動画です。荒木も本気ではないでしょうがタイトルだけで見る気が失せます。
 足立区女性教師殺人事件 - Wikipedia(特定失踪者認定された女性が国内で他殺体で発見された上、殺害犯人は北朝鮮と何の関係もなかった)なんて不祥事まで起こしながら良くも寝言が言えたもんです。
 なお、この事件、「荒木の不祥事」というだけでなく
1)遺体発見時には刑事訴追の時効が成立。犯人処罰ができないことに反発した遺族が「殺人の時効廃止」を強く主張し、実際、廃止の方向になった(廃止の是非はひとまず置きますが、そもそも時効が成立したからこそ「刑事処罰を恐れることなく」犯人が自首したという面がありますので一概に「時効廃止が良かった」とはいえません)
2)民事不法行為の損害賠償請求は「不法行為から20年の除斥期間(ややこしいですが、法律上は除斥期間消滅時効は別物です、俺にはとても説明は無理なので説明はしませんが)」で消滅するところ、「遺体発見時には殺人から20年が経過」。下級審は「20年の除斥期間で請求権消滅」で原告の損害賠償請求を認めなかったところ、最高裁は「この事件の場合は、除斥期間のカウントは遺体発見時から行うべき(遺体が発見されるまでは事実上、賠償請求ができないから)」として原告の請求を認めた
3)除斥期間は時効と違い「原則として、停止しない」ため「20年の期間を、原則として停止しない除斥期間ではなく、訴訟などによって停止が容易な消滅時効に改正して国民の権利を守るべき」という意見から現在では「民事不法行為の損害賠償請求権の権利消滅」については除斥期間ではなく消滅時効に改正されたが、そうなるについてはこの事件も勿論影響した
という意味でも有名な事件です。
 それはともかく、これ以外にも国内で多数の特定失踪者が発見されてる(その多くは自発的失踪で事件性なし)のに荒木も良くもデマが言えたもんです。最近も45年前に行方不明 拉致可能性の男性が国内で見つかる|NHK 新潟県のニュース(2022.5.12)です。
 勿論「密約」でググれば

【刊行年順(刊行年が同じ場合が著者名順)】
【日米密約】*1
澤地久枝*2密約:外務省機密漏洩事件』(1978年、中公文庫→2006年、岩波現代文庫)
◆新原昭治*3『あばかれた日米核密約』(1987年、新日本ブックレット)
不破哲三*4『日米核密約』(2000年、新日本出版社
外岡秀俊*5本田優*6、三浦俊章*7『日米同盟半世紀:安保と密約』(2001年、朝日新聞社
◆小泉親司*8『日米軍事同盟史研究:密約と虚構の五〇年』(2002年、新日本出版社
◆中馬清福*9密約外交』(2002年、文春新書)
西山太吉*10『沖縄密約』(2007年、岩波新書)
豊田祐基子*11『「共犯」の同盟史:日米密約自民党政権』(2009年、岩波書店
◆石井修*12『ゼロからわかる核密約』(2010年、柏書房
◆後藤乾一*13『「沖縄核密約」を背負って:若泉敬*14の生涯』(2010年、岩波書店
西山太吉『機密を開示せよ:裁かれる沖縄密約』(2010年、岩波書店
◆波多野澄雄*15『歴史としての日米安保条約:機密外交記録が明かす「密約」の虚実』(2010年、岩波書店
◆布施祐仁*16『日米密約:裁かれない米兵犯罪』(2010年、岩波書店)、『密約日米地位協定と米兵犯罪』(2010年、毎日新聞社
不破哲三『日米核密約:歴史と真実』(2010年、新日本出版社
◆諸永裕司*17『ふたつの嘘:沖縄密約』(2010年、講談社
◆太田昌克*18『日米「核密約」の全貌』(2011年、筑摩選書)
◆新原昭治『日米「密約」外交と人民のたたかい』(2011年、新日本出版社
軽部謙介*19『ドキュメント沖縄経済処分:密約とドル回収』(2012年、岩波書店
◆末浪靖司*20『対米従属の正体:9条「解釈改憲」から密約まで』(2012年、高文研)
◆信夫隆司*21若泉敬と日米密約沖縄返還と繊維交渉をめぐる密使外交』(2012年、日本評論社
◆河内孝*22『誰も語らなかった「日米核密約」の正体』(2014年、角川oneテーマ21)
◆新原昭治、末浪靖司、吉田敏浩*23『検証・法治国家崩壊:砂川裁判と日米密約交渉』(2014年、創元社
◆山本英政*24『米兵犯罪と日米密約:「ジラード事件」の隠された真実』(2015年、明石書店
◆沖縄密約情報公開訴訟原告団『沖縄密約をあばく : 記録「沖縄密約情報公開訴訟」』(2016年、日本評論社
◆末浪靖司『「日米指揮権密約」の研究』(2017年、創元社
◆真崎翔*25『核密約から沖縄問題へ:小笠原返還の政治史』(2017年、名古屋大学出版会)
◆信夫隆司『米軍基地権と日米密約』(2019年、岩波書店
◆新原昭治『密約の戦後史:日本は「アメリカの核戦争基地」である』(2021年、創元社
◆馬場錬成*26沖縄返還と密使・密約外交:宰相・佐藤栄作*27最後の一年』(2022年、日本評論社
【「日米密約」以外の「密約」】
NHK「ドキュメント昭和」取材班『皇帝の密約:埋もれた「満州国」最高機密』(1986年、角川書店
◆岡部伸*28『消えたヤルタ密約緊急電:情報士官・小野寺信の孤独な戦い』(2012年、新潮選書)

がヒットすることで分かるように実際に「密約」というケースはあります(見れば分かりますが、信夫隆司氏、新原昭治氏、末浪靖司氏、西山太吉氏が日米密約関係で複数の著書を出しています)。
 しかし荒木の主張が「荒木本人も信じていないデマ、言い逃れ、詭弁」であることは言うまでもないでしょう。北朝鮮との間に密約(特定失踪者家族とは首相は会わない?)があると見なす根拠は何もない。そもそも、「近々、首相の訪朝がある」とでもいうならともかく、「日朝間に何ら動きがない」のに何のための「密約」なのか。むしろ「何か密約的な物がある」としたら「拉致被害者家族を最優先しろ、だから首相は特定失踪者家族とは会うな(国内で多数発見された特定失踪者と、そうではない政府認定拉致被害者を同列に扱うな)」という「救う会、家族会との密約」でしょう。そんな密約もおそらくはないでしょうが。

*1:他にも歴史上、密約(例:当初は密約だった薩長同盟、対日参戦の見返りに北方領土侵攻を認めたヤルタ密約)はありますが「密約」でググると「日米密約関係の本」ばかりがヒットします。いずれにせよ、これらの著書で分かるようにもはや「日米密約(米兵犯罪不起訴密約など)」の存在は疑う余地がありません。にもかかわらずそれを容認している日本人多数派には「どこまで米国相手に腰抜けか」と怒りを禁じ得ません。

*2:著書『妻たちの二・二六事件』(1975年、中公文庫)、『暗い暦:二・二六事件以降と武藤章』(1982年、文春文庫)、『昭和史のおんな』(1984年、文春文庫)、『続・昭和史のおんな』、『もうひとつの満洲』(以上、1986年、文春文庫)、『火はわが胸中にあり:忘れられた近衛兵士の叛乱・竹橋事件』(1987年、文春文庫)、『私のシベリア物語』(1991年、新潮文庫)、『わたしが生きた「昭和」』(2000年、岩波現代文庫)、『家計簿の中の昭和』(2009年、文春文庫)、『昭和とわたし:澤地久枝のこころ旅』(2019年、文春新書)など

*3:著書『核戦争の基地日本:これが核持ち込みと安保条約の実態だ』(1981年、新日本出版社)、『アメリカの戦略は世界をどう描くか:「ならず者国家」論批判』(1997年、新日本出版社)、『「核兵器使用計画」を読み解く:アメリカ新核戦略と日本』(2002年、新日本出版社)、『「日米同盟」と戦争のにおい』(2007年、学習の友社)など

*4:日本共産党書記局長、委員長、議長を歴任。現在、党付属社会科学研究所長(常任幹部会委員兼務)。著書『講座「家族、私有財産および国家の起源」入門』(1983年、新日本出版社)、『自然の弁証法』(1986年、新日本出版社)、『レーニンカール・マルクス」を読む』(1988年、新日本出版社)、『私の宮本百合子論』(1991年、新日本出版社)、『史的唯物論研究』(1994年、新日本出版社)、『千島問題と平和条約』(1998年、新日本出版社)、『「首都移転」を考える』(2000年、新日本出版社)、『歴史教科書と日本の戦争』(2001年、小学館)、『北京の五日間』(2002年、新日本出版社)、『古典研究・マルクス未来社会論』、『チュニジアの七日間』(以上、2004年、新日本出版社)、『私の戦後六〇年:日本共産党議長の証言』(2005年、新潮社)、『憲法対決の全体像』(2007年、新日本出版社)、『小林多喜二・時代への挑戦』(2008年、新日本出版社)、『マルクスは生きている』(2009年、平凡社新書)、『マルクスエンゲルス革命論研究』(2010年、新日本出版社)、『不破哲三・時代の証言』(2011年、中央公論新社)、『私の南アルプス』(2011年、ヤマケイ文庫)、『「資本論」はどのようにして形成されたか』(2012年、新日本出版社)、『「科学の目」で日本の戦争を考える』(2015年、新日本出版社)、『「資本論」のなかの未来社会論』(2019年、新日本出版社)、『「資本論」完成の道程を探る』、『マルクス弁証法観の進化を探る』(以上、2020年、新日本出版社)など

*5:1953~2021年。朝日新聞ニューヨーク特派員、ロンドン特派員、論説委員、ヨーロッパ総局長、東京本社編集局長を歴任。著書『国連新時代』(1994年、ちくま新書)、『情報のさばき方:新聞記者の実戦ヒント』(2006年、朝日新書)、『震災と原発』(2012年、朝日新書)、『3・11複合被災』(2012年、岩波新書)、『リベラリズムの系譜でみる日本国憲法の価値』(2016年、朝日新書)、『おとなの作文教室:「伝わる文章」が書ける66のコツ』(2018年、朝日文庫)など(外岡秀俊 - Wikipedia参照)

*6:著書『日本に国家戦略はあるのか』(2007年、朝日新書

*7:朝日新聞ワシントン特派員、政治部次長、編集委員論説委員など歴任。著書『ブッシュのアメリカ』(2003年、岩波新書)(三浦俊章 - Wikipedia参照)

*8:参院議員。現在、日本共産党基地対策委員会責任者。著書『防衛問題の「常識」を斬る』(1987年、新日本ブックレット)、『核軍事同盟と自衛隊』(1988年、新日本新書)、『今日の「日米同盟」を問う』(2019年、学習の友社)

*9:1935~2014年。朝日新聞編集委員論説委員、論説主幹、信濃毎日新聞社主筆など歴任。著書『再軍備政治学』(1985年、知識社)、『軍事費を読む』(1986年、岩波ブックレット)、『新聞は生き残れるか』(2003年、岩波新書)、『日本の基本問題を考えてみよう』(2009年、岩波ジュニア新書)など(中馬清福 - Wikipedia参照)

*10:毎日新聞記者。著書『記者と国家:西山太吉の遺言』(2019年、岩波書店

*11:共同通信シンガポール支局長、ワシントン特派員、ロイター通信日本支局長など歴任。著書『日米安保事前協議制度』(2015年、吉川弘文館)(豊田祐基子 - Wikipedia参照)

*12:一橋大学名誉教授。『世界恐慌と日本の「経済外交」:1930-1936年』(1995年、勁草書房)、『国際政治史としての20世紀』(2000年、有信堂高文社

*13:早稲田大学名誉教授。著書『昭和期日本とインドネシア』(1986年、勁草書房)、『日本占領期インドネシア研究』(1989年、龍溪書舎)、『近代日本と東南アジア』(1995年、岩波書店)、『<東>ティモール国際関係史:1900~1945』(1999年、みすず書房)、『東南アジアから見た近現代日本』(2012年、岩波書店)、『近代日本の「南進」と沖縄』(2015年、岩波現代全書)、『「南進」する人びとの近現代史』(2019年、龍溪書舎)、『日本の南進と大東亜共栄圏』(2022年、めこん)など

*14:1930~1996年。沖縄返還交渉において、佐藤栄作首相の密使として重要な役割を果たした。1994年、著書『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』(文藝春秋)で密約交渉の内容を暴露し2年後に自殺(若泉敬 - Wikipedia参照)

*15:筑波大学名誉教授。著書『幕僚たちの真珠湾』(1991年、朝日選書)、『太平洋戦争とアジア外交』(1996年、東京大学出版会)、『国家と歴史:戦後日本の歴史問題』(2011年、中公新書)、『宰相・鈴木貫太郎の決断:「聖断」と戦後日本』(2015年、岩波現代全書)、『「徴用工」問題とは何か:朝鮮人労務動員の実態と日韓対立』(2020年、中公新書)など

*16:著書『ルポ・イチエフ:福島第一原発レベル7の現場』(2012年、岩波書店)、『経済的徴兵制』(2015年、集英社新書)、『自衛隊海外派遣:隠された「戦地」の現実』(2022年、集英社新書)、『日米同盟・最後のリスク:なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか』(2022年、創元社)など

*17:著書『葬られた夏:追跡・下山事件』(2006年、朝日文庫)、『消された水汚染:「永遠の化学物質」PFOS・PFOAの死角』(2022年、平凡社新書

*18:共同通信編集委員論説委員。著書『731免責の系譜:細菌戦部隊と秘蔵のファイル』(1999年、日本評論社)、『盟約の闇:「核の傘」と日米同盟』(2004年、日本評論社)、『アトミック・ゴースト』(2008年、講談社)、『秘録:核スクープの裏側』(2013年、講談社)、『日米〈核〉同盟:原爆、核の傘、フクシマ』(2014年、岩波新書)、『日本はなぜ核を手放せないのか』(2015年、岩波書店)、『偽装の被爆国:核を捨てられない日本』(2017年、岩波書店)、『核の大分岐:既存秩序の溶解か新規秩序の形成か』(2021年、かもがわ出版)、『日米中枢9人の3.11:核溶融7日間の残像』(2022年、かもがわ出版

*19:時事通信ワシントン支局長、ニューヨーク総局長、編集局次長、解説委員長などを経て帝京大学教授。著書『日米コメ交渉』(1997年、中公新書)、『ドキュメント機密公電:日米経済交渉の米側記録は何を語るか』(2001年、岩波書店)、『ドキュメント・ゼロ金利』(2004年、岩波書店)、『ドキュメント・アメリカの金権政治』(2009年、岩波新書)、『検証バブル失政』(2015年、岩波書店)、『官僚たちのアベノミクス』(2018年、岩波新書)、『ドキュメント強権の経済政策:官僚たちのアベノミクス2』(2020年、岩波新書) など

*20:著書『機密解禁文書にみる日米同盟』(2015年、高文研)

*21:日本大学教授。著書『日米安保条約事前協議制度』(2014年、弘文堂)、『米兵はなぜ裁かれないのか』(2021年、みすず書房

*22:毎日新聞常務。著書『新聞社:破綻したビジネスモデル』(2007年、新潮新書)、『血の政治:青嵐会という物語』(2009年、新潮新書)、『次に来るメディアは何か』(2010年、ちくま新書)、『自衛する老後:介護崩壊を防げるか』(2012年、新潮新書

*23:著書『民間人も「戦地」へ:テロ対策特別措置法の現実』(2003年、岩波ブックレット)、『ルポ・戦争協力拒否』(2005年、岩波新書)、『反空爆の思想』(2006年、NHKブックス)、『赤紙と徴兵』(2011年、彩流社)、『沖縄:日本で最も戦場に近い場所』(2012年、毎日新聞社)、『「日米合同委員会」の研究』(2016年、創元社)、『日米戦争同盟:従米構造の真実と「日米合同委員会」』(2019年、河出書房新社)、『横田空域:日米合同委員会でつくられた空の壁』(2019年、角川新書)、『日米安保と砂川判決の黒い霧:最高裁長官の情報漏洩を訴える国賠訴訟』(2020年、彩流社)、『追跡! 謎の日米合同委員会』(2021年、毎日新聞出版)など

*24:獨協大学教授。著書『ハワイの日本人移民』(2005年、明石書店

*25:名古屋外国語大学講師

*26:元読売新聞論説委員。著書『中国ニセモノ商品』(2004年、中公新書ラクレ)、『物理学校』(2006年、中公新書ラクレ)、『ノーベル賞の100年:自然科学三賞でたどる科学史 [増補版]』(2009年、中公新書)、『大村智』(2012年、中央公論新社)、『「スイカ」の原理を創った男:特許をめぐる松下昭の闘いの軌跡』(2014年、日本評論社)、『大村智ものがたり』(2015年、毎日新聞出版)など。個人サイトようこそ馬場錬成のブログ

*27:運輸次官から政界入り。吉田内閣郵政相、建設相、岸内閣蔵相、自民党総務会長(岸総裁時代)、池田内閣通産相科学技術庁長官などを経て首相

*28:産経新聞モスクワ支局長、社会部次長、ロンドン支局長など歴任。著書『「諜報の神様」と呼ばれた男:連合国が恐れた情報士官・小野寺信の流儀』(2014年、PHP研究所)、『イギリス解体、EU崩落、ロシア台頭:EU離脱の深層を読む』(2016年、PHP新書)、『イギリスの失敗:「合意なき離脱」のリスク』(2019年、PHP新書)、『第二次大戦、諜報戦秘史』(2021年、PHP新書) (岡部伸 - Wikipedia参照)