珍右翼・高世仁に突っ込む(2022年4/18日分)

「代理戦争」論そして第三次世界大戦の懸念 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 ゼレンスキーを否定的に評価するにしてもさすがに、選挙で選ばれてる彼を「米国の傀儡」とはいえないでしょう。
 また仮に「傀儡」だと仮定しても、ロシアが侵攻して打倒しようとすることには何の道理もない。
 その時点で「代理戦争論」には無理がある。ましてやその「戦争の過程」でロシアは「民間人虐殺」などの戦争犯罪まで犯してるのだから論外です。
 なお過去の「代理戦争」云々と言われるケース(例:朝鮮戦争ベトナム戦争など)でも、米ソの支援を受けてるとは言え「完全な米国の傀儡VS完全なソ連の傀儡」なんてケースはほとんどないかと思います(代理戦争 - Wikipedia参照)。
 それにしても高世が「代理戦争論」を批判するのはいいとしても(というか俺も代理戦争論には批判的ですが)、よりによってトンデモ右翼の黒井文太郎を批判者として持ち出してきたのには呆れました。
 せめてそこは『軍事大国ロシア』(2016年、作品社)、『プーチンの国家戦略』(2016年、東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学』(2019年、東京堂出版)、『現代ロシアの軍事戦略』(2021年、ちくま新書)、『ロシア点描:まちかどから見るプーチン帝国の素顔』(2022年、PHP研究所)などの小泉悠(東大専任講師)とか世間にそれなりに評価されてる人間を持ち出したらどうなのか(小泉は例であって彼でなくても構いませんが)。
 なお、ロシアに厳しい小泉ですら

[B! ロシア] <シリーズ評論・ウクライナ侵攻⑪>自らの手を縛る軍事作戦 北海道侵攻、理由見当たらない 東大先端科学技術研究センター専任講師 小泉悠氏:北海道新聞 どうしん電子版
izsatoshi
「心配なのは、ウクライナで総動員令があまりにも長く続くと、ゼレンスキー氏が独裁化する可能性があることだ」
  英雄視もされたし、こういう危険性はあり得るということか。

ということで「ウクライナ戦争」が長期化することで「英雄化したゼレンスキー」が独裁化する危険性(勿論あくまで将来の警戒を呼びかけてるに過ぎませんが)を危惧していることを指摘しておきます。
 それにしても高世は、黒井と何かしがらみ、付き合いでもあるんですかね。黒井には『北朝鮮に備える軍事学』(2006年、講談社+α新書)という著書も過去にあるので「過去の北朝鮮がらみでの付き合い、しがらみ*1」か。

 「ロシア=悪玉」VS「ウクライナ=善玉」で日本(または世界)全体が一色になるのはファシズムみたいで不健全だという意見があるが、今のウクライナの人々の抵抗を見れば、そうなって当然ではないかと思う。

 ロシアの侵攻には大義がないので「悪」は当然ですが、だからといって「ウクライナが100%正しい」わけでもないでしょう(とはいえウクライナの落ち度をことさらに取り上げてロシア免罪などできませんが)。
 またロシアを非難すれば問題が解決するとも限らない。問題解決のためには「あえて妥協すること」もありうる。
 問題は「ロシア軍をどうやってウクライナから撤退させるか」であって「ロシアを非難すること」ではない。
 我々、日本人は拉致を理由に「北朝鮮を悪玉扱い」して、その結果「妥協(経済支援によるバーター取引や段階的帰国)を全否定」、2002年の小泉訪朝から20年に及ぶ「拉致敗戦」という愚かな経験を既にしています。高世にとっては未だに「全て北朝鮮が悪い」「妥協すべきだったというボーガスのような人間は間違ってる」で終わる話なのかもしれませんが。
 それにしても「第三次世界大戦」つうのは「どういう物を想定してる」んですかね。米国とロシアが「正規軍で激突」すればそれだけで「第三次大戦」なのか?。「ウクライナ軍とロシア軍の戦闘止まり」なら「第三次大戦」ではないのか。
 「ロシアがポーランドに侵攻する」「米軍がベラルーシ(ロシアの軍事行動を支援しているのではないかとされる)に侵攻する」など「戦線がウクライナ以外にも拡大すること(ないと思いますが)」を想定して「第三次大戦」といってるのか。
 話をする場合には「第三次大戦のきちんとした定義をしてくれ」と思います。ムードで話をされても混乱するだけです。
 高世は

田中優子
「他の国を巻き込みながら大きくなっていって、第三次世界大戦ということになりはしないか」
 田中氏の歴史家ならではの発想に考えさせられる。

などと言いますが正直「田中氏は何を言ってるんだ?」と俺は呆れるだけです。
 そもそも「歴史家」といっても彼女(田中優子 - Wikipediaによれば法政大学名誉教授。元法政大学社会学部長。元法政大学総長。元『週刊金曜日編集委員。現在、TBS『サンデーモーニング』コメンテーター)の著書は

◆『江戸の想像力:18世紀のメディアと表徴』(1992年、ちくま学芸文庫)
◆『江戸の恋』(2002年、集英社新書)
◆『江戸の懐古』(2006年、講談社学術文庫)
◆『江戸はネットワーク』(2008年、平凡社ライブラリー)
◆『未来のための江戸学』(2009年、小学館101新書)
◆『春画のからくり』(2009年、ちくま文庫)
◆『江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか?:落語でひもとくニッポンのしきたり』(2010年、小学館101新書)
◆『江戸百夢:近世図像学の楽しみ』(2010年、ちくま文庫)
◆『グローバリゼーションの中の江戸』(2012年、岩波ジュニア新書)
◆『張形と江戸女』(2013年、ちくま文庫)
◆『カムイ伝講義』(2014年、ちくま文庫)
◆『芸者と遊び:日本的サロン文化の盛衰』(2016年、角川ソフィア文庫)
◆『遊廓と日本人』(2021年、講談社現代新書)

という代物(江戸時代研究?)であって現代ロシア云々について物が言える御仁ではない。彼女の発言は「素人の思いつき」以上の物ではない。
 なお、ソ連健在時に危惧されていた「第三次大戦」とは「NATO(米国陣営)とワルシャワ条約機構ソ連陣営)」の全面激突ですね。

*1:高世にも『娘をかえせ息子をかえせ:北朝鮮拉致事件の真相』(1999年、旬報社)、『拉致:北朝鮮の国家犯罪』(2002年、講談社文庫)、『金正日「闇ドル帝国」の壊死』(2006年、光文社)といった北朝鮮関係著書がある。