高世仁に突っ込む(2024年10/22日分)(追記あり)

ウクライナ戦争に北朝鮮が参戦 - 高世仁のジャーナルな日々

 ウクライナとの戦闘に参加する予定の北朝鮮兵士が、ロシア軍の施設で訓練を受けている動画をウクライナ政府が18日公開した。
 北朝鮮兵にはロシアの軍服や武器が支給され、ロシアの少数民族*1に偽装するためとみられる、偽の証明書も発給されたという。

 今日のロシアニュース(2024年10月17日分)(追記あり) - bogus-simotukareのブログでも触れましたが韓国政府も同様の発表をした一方で、米国やNATOは「未確認」としています。当然ながら「北朝鮮と対立する韓国」「ロシアと対立するウクライナ」が怪しい情報なのにネガキャンのためにあえて発表した可能性はあります。
 勿論、事実なのに政治的思惑(ロシアがこうした計画を実際に発動しないなら、韓国、ウクライナ発表を否定まではしないが『我々NATOや米国は未確認』として有耶無耶に済ませてやるというある種のかばい手)から米国やNATOが「未確認」としている可能性もあります(勿論「ウクライナや韓国が、米国やNATOに提供した情報」は怪しい情報で「本当に未確認」の可能性もあります)。
 いずれにせよ、今後「確認できた」とウクライナ、韓国の発表を、米国やNATOが追認する可能性もありますが、将来はともかく現時点では事実扱いはできないでしょう。

 これらウクライナ、韓国両国の情報機関からの発信はおそらく事実だろう。

 という高世の決めつけには「何が根拠だ」と言いたい(そもそも高世は現時点ではNATOも米国もそうした派兵の事実を否定していないが「未確認」として肯定もしていないことに触れないから酷いもんです)。
 また仮に事実としても、「公然と北朝鮮の派兵を認める形」ではなく「偽装」云々の「動機」が
1)小国・北朝鮮から派兵を受けてることを「大国の面子に関わる」と考える、あるいは「安保理決議の北朝鮮制裁に反する」と批判されたくないと考えるロシアが明らかにしたくないのか、
2)米国の反発から「在韓米軍が北朝鮮に侵攻する」など不測の事態を避けたい北朝鮮が明らかにしたくないのか
(勿論ロシア、北朝鮮共に明らかにしたくない可能性もある)
何なのかはともかく「偽装計画」云々が事実であり、「まだ実施前」なら「計画撤回」も当然あり得るでしょう。
【10/22追記】
北朝鮮派兵に懸念相次ぐ 安保理、ロシア「デマだ」 - 日本経済新聞
 ということで報道を否定するロシアです。
 一方

北朝鮮のロシア派兵、事実なら危険かつ憂慮すべき=米国連代理大使|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 米国のウッド国連代理大使は21日の国連安全保障理事会で、北朝鮮が対ウクライナの戦闘に加勢するためロシアに兵士を派遣しているとの情報について、事実であれば「北朝鮮とロシアの軍事関係が深化しているのは明白だ」と警戒感を示した。
 英国のウッドワード国連大使は、北朝鮮が部隊を送っている「可能性は非常に高い」と発言。

として「派兵を事実と断定するウクライナや韓国」と違い「可能性が高い(英国)」「事実なら非難する(米国)」として現時点では「断定はしていない」点が気になるところです。
【10/23追記】
北朝鮮兵がロシアにいる証拠ある=米国防長官 | ロイター
 ということで当初「未確認」としていた米国が「断定(北朝鮮兵がロシアにいる)」に変わったので、ひとまず紹介しておきます。但しそれでも「ロシアに北朝鮮兵がいる目的が何か、は現時点では不明」としており、ウクライナウクライナ戦争への参戦目的と断定)とは温度差があります。
【追記終わり】

 韓国国防研究院(KIDA)のトゥ・ジンホ国際戦略研究室長は20日ハンギョレとの電話インタビューで、「北朝鮮ベトナム派兵*2」を通じて北朝鮮が経済・軍事的に相当な利益を得られるだけでなく、長期的に「有事の際、ロシアの朝鮮半島介入」を確約され、ロシアと協力した北朝鮮の未来を描いていると分析した。

 勿論これはジンホ氏の個人的見解にすぎませんが、彼の見解を肯定するにしても「有事の際、ロシアの朝鮮半島介入」で想定されてるのは「在韓米軍、韓国軍が北進した場合に、北朝鮮側をロシアが軍事支援すること」でしょう(その軍事支援のレベルが「ロシア軍が米軍、韓国軍と直接戦闘する」レベルか、「ウクライナ戦争でのNATO」のように武器支援や技術支援に留まるのかはともかく)。
 まさか「北朝鮮が南進する際にロシアが支援する」という「朝鮮戦争開戦パターン」ではないでしょう。
 その意味では「有事の際、ロシアの朝鮮半島介入」というのは「在韓米軍、韓国軍が北進」しない限り問題にならないので、恐れる必要はないでしょう。
 日本にとっての問題はむしろ「こうしてロシアと経済的つながりを深める北朝鮮は、日本の経済制裁など何とも思ってない→制裁しても拉致解決につながらない」と言う話です(なお、ウクライナ戦争以前からロシアは北朝鮮を経済支援していたし、だからこそ制裁開始当初から和田春樹氏などは「制裁の効果」に否定的でした)。勿論ロシアとは別に中国も北朝鮮を経済支援している。

 ウクライナ戦争で結びつきを強めるロシアと北朝鮮だが、ウクライナ戦争に外国*3の正規軍が参戦するという、きわめて危険な事態が到来している。

 派兵云々は今の所「未確認(かつ事実としてもウクライナ情報ですら、参戦準備であって実際にはまだ参戦していない*4)」ですが、正直「参戦していい」とは言いませんが仮に事実として「小国・北朝鮮の参戦」がきわめて危険な事態なのかどうかは疑問に思います。戦争の情勢に大きく影響するとも思えませんし。
 「米国、英国、フランス、ドイツなどNATO加盟国の大国(ウクライナ側:現時点ではNATOは武器等の間接支援に留まる)」「中東の大国イラン(ロシア側:現時点ではイランは武器等の間接支援に留まる)」が直接参戦すればきわめて危険な事態でしょうが。
 なお、以上の指摘は、「事実認識の表明」であって、「NATOは軍事支援に留め、直接参戦すべきでない」という「価値観の表明」ではありません。
 そうした認識のもとにNATOも現時点で直接参戦はしないのでしょう。

*1:高麗人 - Wikipediaのことか?

*2:米国の経済支援を受ける目的で、当時の韓国は軍をベトナム戦争に派兵している。

*3:勿論北朝鮮のこと

*4:ここでの高世の言う参戦は「派兵(そして直接の戦闘参加)」のことでしょう。なお「派兵(そして直接の戦闘参加)」はしていないものの、「武器提供」など軍事支援レベルなら既に「NATOウクライナ側:NATO側も勿論公式に認めている)」「イランや北朝鮮(ロシア側:但しマスコミ報道やNATO側発表にすぎず、イラン等はその事実を否定)」が「参戦」しています。