今日の産経ニュースほか(2022年8/1分)(副題:安倍暗殺続報)

山上容疑者、安倍氏が首相在任中から殺意か…殺害示唆する投稿でアカウント凍結 : 読売新聞オンライン
 ならば「何故安倍の首相在任中、あるいは退任直後に暗殺しなかったのか?」「本当にそれは山上のアカウントなのか?」「(本当に山上のアカウントだとして)単にあの奈良の演説以外では暗殺のチャンスがなかっただけの話なのか?」などの疑問を感じますがその辺りは今後明らかになるのでしょう。


維新・松井代表「自民はおごっている」 安倍氏国葬巡り説明要求 - 産経ニュース
 世論調査国葬反対多数と分かるや、「国葬賛成だったはず」が、「説明がない」と言い出す辺り、維新らしい詐欺師ぶりです。
 とはいえ、共産、社民、れいわなどと違い「安倍批判派もいるのに安倍美化はおかしい」「国葬吉田茂以外、戦後は前例がない」ではない辺りが、維新らしいですが。


【産経抄】8月1日 - 産経ニュース

安倍晋三元首相が、テロリストの凶弾に倒れたのはもう先月のことになった。母親が常軌を逸した献金を続けた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の信用を失墜させようという政治的目的で元首相を暗殺した容疑者は、れっきとしたテロリストである。

 「統一教会への恨みによる犯行」が「政治的目的」ねえ?。そして産経が「暗殺犯」「銃撃犯」でもいいところ「テロリスト」を連呼するのが滑稽です。産経にとって「テロリスト」呼ばわりは「暗殺犯」「銃撃犯」などよりも「格上の罵倒」のようですが、テロリストの元々の意味はそういうものではないでしょうに。まあ、定義の問題なので俺個人は山上をテロリストと呼ぶかどうかには興味はありません。
 「暗殺犯なら全てテロリスト」と定義すれば山上だけでなく、「オウムの村井秀夫暗殺犯」「餃子の王将社長殺害犯(未解決のため犯行動機は不明)」などもテロリストだし「政治的暗殺のみがテロリスト」「統一教会やオウムへの恨みは政治的暗殺と言えない。例えば統一教会やオウムのシンパ芸能人暗殺は政治的暗殺と言えるのか?」と考えれば山上や村井殺害犯は「テロリストではない」。
 どっちにしろ「テロリスト」呼ばわりを「最大級の罵倒」と勘違いしてるらしい産経はアホです。

 テレビのワイドショーやネット民の一部は、旧統一教会に深い恨みをもつ容疑者に同情的だが、90年前にも同じような現象が起きた。海軍士官らが犬養毅首相を暗殺した「五・一五事件」を裁いた法廷で、被告の弁明を朝日新聞*1は、「被告らの純真さと愛国の情」などと極めて好意的に報道したのである。全国で減刑嘆願運動が盛り上がり、被告は極刑を免れた。テロをも容認した「造反有理」の空気は、4年後さらに大規模な「二・二六事件」を引き起こす。

 「死刑廃止論」や「山上の不幸な境遇への同情」などによる「山上の極刑(死刑や無期)反対」「通常の一人殺人と同程度の処罰にすべき」ならともかく誰も「山上は軽い罰(執行猶予など)でいい」とは言ってないでしょう。そして山上は単独犯なのでどんな判決であれ「515事件→226事件」のような危険性もまずない。
 また、「犬養首相には非はない」でしょうが、安倍には「大いに非があります」。統一教会と癒着し首相在任中(2015年)に「統一教会の改名許可までしたこと」が「問題ではない」と産経は強弁する気なのか。
 なお、226事件について言えば「515事件の軽い罰」の影響だけでなく「未遂に終わった統制派の226事件」「もう一つの226事件」と評価される「三月事件」「十月事件」にも注目する必要があります(俺もある程度226について知るようになってから、知った事件なので知らない人も多いのでしょうが)。未遂に終わったとは言え「三月事件」「十月事件」が

三月事件 - Wikipedia
 浜口内閣を打倒して宇垣一成*2内閣樹立を目指したが、最終的には宇垣の同意が得られず未遂に終わった。首謀者である「桜会橋本欣五郎*3」の手記に寄れば参謀本部第2部長・建川美次*4陸軍少将を通じて参謀次長・二宮治重*5陸軍中将、陸軍次官・杉山元*6陸軍少将、軍務局長・小磯國昭*7陸軍少将ら宇垣に近い陸軍将官の賛同を得、計画実行のために作戦課長・山脇正隆*8陸軍大佐、新聞班長・根本博*9陸軍中佐、鈴木貞一*10陸軍中佐ら佐官クラスの将校を交えて協議を重ねた。

十月事件 - Wikipedia
 第二次若槻内閣を打倒して荒木貞夫*11内閣樹立を目指したが、憲兵隊に摘発され、未遂に終わった。橋本欣五郎陸軍中佐を内相に、建川美次陸軍少将を外相に、長勇*12陸軍少佐を警視総監に、小林省三郎*13海軍少将を海相にそれぞれ就任させ、軍事政権を樹立する、という流れが計画の骨子となる。

というかなり大規模なクーデタ計画であるにもかかわらず、首謀者・橋本が予備役編入された程度で大した罰を関係者は受けませんでした。そして「陸軍に箝口令が敷かれ事件の隠蔽が図られた」とはいえ、三月事件、十月事件の存在は陸軍内部では公然の秘密であり、「226青年将校」も当然その存在を知っていました。
 「未遂に終わったとは言えクーデタ計画(三月事件、十月事件)が処罰されなければ」、226を助長したことは間違いないでしょう。

 メディアが、事件を機に霊感商法などを指弾された旧統一教会と政界の関係を追及するのは当然だが、関連団体に電報を送ったり、選挙を手伝ってもらった*14りしただけの政治家まで重罪人扱いするのは、魔女狩りだろう。第二の山上徹也容疑者を野に放ってはならぬ。

 呆れて二の句が継げませんね。反社会カルト「統一教会」と付き合っても何の問題もないとは何の冗談なのか。
 しかもそうした批判を「第二の山上を生む気か」と誹謗。
 いくら「安倍万歳」の自民党機関紙とはいえ、完全に常識を逸脱しています。
 むしろそうした批判で【1】統一教会と政界の癒着をなくし、かつ【2】統一教会の宗教法人格を剥奪する、詐欺で刑事訴追するなどで統一教会を撲滅することこそが「第二の山上」を生まないために必要なことでしょう。

*1:朝日以外も好意的だったところわざわざ「朝日の名前だけ出す辺り」が産経らしい。

*2:清浦、加藤高明、第一次若槻、濱口内閣陸軍大臣朝鮮総督、第一次近衛内閣外相など歴任

*3:大佐止まりの橋本が戦後、東京裁判で裁かれた理由がこの三月事件、十月事件への関与です。

*4:参謀本部第二部長、第一部長、第10師団長、第4師団長など歴任

*5:満州拓殖公社総裁、小磯内閣文相など歴任

*6:林、第一次近衛、小磯内閣陸軍大臣参謀総長など歴任

*7:朝鮮軍司令官平沼、米内内閣拓務相、朝鮮総督、首相など歴任。戦後、終身刑で服役中に病死。後に靖国に合祀

*8:駐蒙軍司令官、ボルネオ守備軍司令官など歴任

*9:第21軍参謀長、南支那方面軍参謀長、第24師団長、第3軍司令官、駐蒙軍司令官、北支那方面軍司令官など歴任

*10:第2次近衛、第3次近衛、東條内閣企画院総裁、大日本産業報国会会長を歴任。戦後、終身刑判決を受けるが後に仮釈放

*11:犬養内閣陸軍大臣、第1次近衛、平沼内閣文相を歴任。戦後、終身刑判決を受けるが後に仮釈放

*12:第26師団参謀長、印度支那派遣軍参謀長、第25軍参謀副長、第32軍参謀長など歴任

*13:血盟団事件井上日召、515事件の橘孝三郎、藤井斉らと親交があり、陸軍皇道派ともつながりがあった。そのため226事件後、ついに予備役編入となった。

*14:岸防衛相が選挙協力を受けたことを認めた