今日の中国ニュース(2022年8月29日分)

「中国はまだ台湾を攻撃する自信も余裕もない」 現地の市民が軍事演習を脅威と感じない理由(1/3)〈dot.〉 | AERA dot. (アエラドット)野嶋剛*1

 北京(習近平政府)はきっと誤算だったはずだ。本当ならば台湾社会はパニックを起こし、株価は下落し、人々は海外に逃れ、フェイクニュースが乱れ飛んで。実際に、1996年の「台湾海峡危機」では4発のミサイルで、株価は暴落、海外逃亡や移民申請が急増し、台湾社会はパニックに陥りかけた。

 「反中国の台湾ロビー」らしい与太ですが、そんな誤算は特にないのではないか。中国としては「ペロシ訪台」に対し「独立する気なら容赦はしない」と蔡英文やバイデンを牽制したに過ぎないでしょう。そもそも野嶋も本気でこんなことを言ってるかどうか。
 「独立宣言しない限り侵攻しない」と公約してる以上、「ペロシ訪台は独立への下準備」と疑って、不快には感じても独立宣言そのものではないので侵攻する正当理由にならない。その状況で「欧米の経済制裁」を受け、蔡英文民進党に比べれば、中国に融和的な国民党を完全に敵に回して*2まで侵攻するわけがない(この点、無茶な理由でウクライナ侵攻に踏み切ったプーチンロシアに比べ中国は至って常識的です)。そうした台湾人の認識から「パニックが起きなかった」にすぎないのであってそんなことは中国もある程度予想してるでしょう。むしろパニックが起こったら「中国の国際公約(独立しない限り侵攻しない)が台湾人に信用されてないのか」と中国は逆に不快に思ったかもしれない。


中国軍事演習中も観光客途絶えず 台湾・金門群島:時事ドットコム

 金門では飛行機の便が通常通り運航。ツアー客や観光バスが観光スポットに押し寄せ、空港で土産物を買い込む客の姿が見られる。
 金門島は、1970年代後半までたびたび中国に砲撃されていた。観光客に開放されたのは1993年のことだ。戦時中の遺物や記念碑は観光の目玉となっている。

 つまりは「中国の軍事演習は政治的牽制に過ぎず台湾が独立宣言しない限り、侵攻はない」と多くの人間が思ってるという話です。
 中国が「いつ侵攻するか分からない」と思ってるようなら観光客が来るわけがない。


【世界を解く-細谷雄一】日中国交50年 狭まる日本の自律性 - 産経ニュース

 日本が自律的な対中政策をとる余地は大幅に縮小した。

 有料記事で途中までしか読めませんが、【1】中国が経済大国になったので日本が中国相手に高飛車な態度が取りにくくなったということか、はたまた【2】米国の反中国姿勢に拘束されると言うことか。
 【1】はともかく、【2】については何も「米国に唯々諾々と従うばかりが能ではない」でしょう。まあ、「米国ポチ&反共・反中国のウヨ」細谷*3にとって「米国と中国の間でうまくバランスを取ろうとする」という選択肢は最初からないのでしょうが。とはいえ、現実問題として「重要な貿易相手国で隣国」の中国を敵視するなどと言う選択肢は日本にはありません。
 

「習1強」の行方:「共同富裕」このまま看板倒れか 中国の格差、今や米国並み | 毎日新聞*4
 「反中国」の日本マスゴミの一つ「毎日新聞」らしいですが「共同富裕=格差是正」は「長期計画」であって「今すぐ成果が出る物」ではないでしょう。現時点で「看板倒れ」云々と悪口雑言は早すぎるのではないか。
 むしろ「看板倒れ」というなら「新しい資本主義」と言いながら「何の具体策も提示できない(する気があるかすら疑問)」の岸田政権ではないのか。

*1:朝日新聞シンガポール支局長、台北支局長などを経て大東文化大学特任教授。『ふたつの故宮博物院』(2011年、新潮選書)、『認識・TAIWAN・電影:映画で知る台湾』(2015年、明石書店)、『台湾とは何か』(2016年、ちくま新書)、『なぜ台湾は新型コロナウィルスを防げたのか』(2020年、扶桑社新書)、『香港とは何か』(2020年、ちくま新書)、『蒋介石を救った帝国軍人:台湾軍事顧問団・白団の真相』(2021年、ちくま文庫) 、『新中国論:台湾・香港と習近平体制』(2022年、平凡社新書)など中国、台湾関係の著書多数。

*2:野嶋記事の「余裕」云々が「欧米の経済制裁」「国民党が完全に敵に回ること」を「どうでもいいこととして侵攻する余裕は中国にはない」と言う意味なら全くその通りです。

*3:慶應義塾大学教授。著書『戦後国際秩序とイギリス外交』(2001年、創文社)、『外交による平和:アンソニー・イーデンと20世紀の国際政治』(2005年、有斐閣)、『大英帝国の外交官』(2005年、筑摩書房)、『倫理的な戦争:トニー・ブレアの栄光と挫折』(2009年、慶應義塾大学出版会)、『国際秩序』(2012年、中公新書)、『安保論争』(2016年、ちくま新書)、『迷走するイギリス:EU離脱と欧州の危機』(2016年、慶應義塾大学出版会)など

*4:党、行政、軍のトップ(総書記、国家主席、国家中央軍事委員会主席)の習氏がそれなりに権力を保有していることは当然ですが、そうした現状を「習1強(安倍1強、自民1強からの連想でしょうが)」と呼べるかどうか自体、争いがあるかと思います。