新刊紹介:「経済」2023年3月号(副題:今日も松竹伸幸に悪口する、ほか)

「経済」3月号を俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
【経済3月号の広告】
 岸本聡子*1杉並区長の著書『地域主権という希望』(2023年1月、大月書店)を紹介する広告が掲載され、「広告の一部」として岡野八代氏*2の推薦の言葉が掲載されていますね。小生も無知なもんで今回、岸本著書を初めて知りました。
 何が言いたいかと言えば「過大評価は禁物」ですが共産党野党共闘に奮闘しているということです(岸本氏は2022年6月の選挙で野党共闘(立民、共産、社民、れいわなど)により自公候補(現職)を破り初当選:例えば、赤旗共闘、自公系現職破る/東京・杉並区長選 岸本氏が初当選参照)
 経済は「前衛」と違い機関誌ではないものの「新日本出版社刊行」の比較的「共産に近い雑誌」ですのでね。それに載った広告はやはり「共産の意向の反映」と見なすべきでしょう。
 松竹のように「杉並区長選での岸本氏勝利」のような「地方での野党共闘を積み上げること」を軽視しているとしか思えない輩には心底呆れます。何せあの「安保バカ」は安保政策(国政)のことしか話をしませんからね。岸本氏のような水道、再び公営化とか地域主権とか松竹には何の興味も無いでしょう。
 地方政治(地域主権)や「生活に密着した問題(例えば水道民営化問題)」についてどれほど松竹は無関心なのか。


◆巻頭言「カジノはあかん」
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

カジノ止められる/大阪でつどい たつみ知事予定候補ら訴え2023.1.22
 勉強会では、関西大特別任命教授で、人と防災未来センター長の河田恵昭(かわたよしあき)氏*3がオンラインで講演。IR予定地の夢洲大阪市此花区)は、地盤沈下を起こす沖積層が大阪湾内で一番厚い場所だと推定されていると紹介。60年で10メートル沈下する推測もあるとした。
 また、府・市が行う高潮や津波の対策も想定が不十分だと批判した。
 その後、元大阪府副知事の小西禎一(ただかず)氏*4が、地盤沈下対策費用は、市がすでに公費での負担を決めている土壌対策費約790億円に入っていないことを解説。「大阪市の負担はさらに膨らむ恐れがある」と主張した。
 小西氏を含む主要なメンバーは、大阪維新の会に対抗して、大阪府知事選に大阪芸術大学客員准教授の谷口真由美氏、大阪市長選に自民党所属の大阪市議の北野妙子氏の擁立を決めた政治団体「アップデートおおさか」の呼びかけ人にも名を連ねている。

カジノ反対 選挙で問う/市民団体が全国交流集会2023.2.6
 「カジノに反対する大阪連絡会」の中山直和事務局次長は「カジノ反対を統一地方選の大争点にしていく」とのべました。
 「カジノいらない東京連絡会」の三上理弁護士は「統一地方選に向けIRについての候補者アンケートを検討している」とのべました。

 大阪について言えば、辰巳氏とは別途、「カジノ慎重論」を掲げて擁立された谷口真由美氏との関係をどうするか(一本化が望ましい)が問題ではあるでしょう。
 また、大阪の場合、上の記事に書いてあるように「一般的なカジノ反対論(ギャンブル依存症など)」とは別途「予定地の夢洲」は軟弱地盤で震災時に液状化が懸念される(一方で液状化を防止しようとすると、府の財政負担が膨大になる)という特殊問題もあります。


世界と日本
◆日米首脳会談で「戦争国家」公約(西村央)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
日米軍事同盟の侵略的大変質に断固反対する/日米共同声明について 志位委員長が談話2023.1.15
日米首脳会談/敵基地攻撃「運用で協力」/岸田首相“トマホーク導入”伝達2023.1.15
主張/日米首脳会談/国民より米国への約束が先か2023.1.15
大軍拡「米から支持」/岸田首相会見 国民負担改めて表明2023.1.16
主張/日米首脳会談/米国追随で果てしない軍拡か2023.1.23
空前の軍拡 首相表明/日米首脳会談 バイデン氏が歓迎2023.1.23


◆軍拡に踏み出す2023年度予算(村髙芳樹)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
戦後最悪の大軍拡予算に断固反対する 2023年度政府予算案について│声明・談話・発言│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会2022.12.23
主張/異常突出の軍事費/空前の大軍拡必ず阻止しよう2022.12.24


特集「日本の賃金、どうすれば上がるのか」
2023年春闘と賃上げの条件(野中郁江*5
(内容紹介)
 日本の労働分配率が「欧米諸国に比べ低いこと」「過去の日本と比べ、現在、低下傾向にあること」を指摘。内部留保を取り崩すことで、労働分配率を上げ賃上げすることは可能なはずと主張している。
主張/内部留保500兆円/ゆがみ是正し賃上げに活用を2022.12.5
知りたい聞きたい/内部留保課税で10兆円 根拠は?/増額分に5年間2%課税2023.2.4


求められる金融収益重視経営の転換(藤田宏)
(内容紹介)
 企業が内部留保財テク(金融収益)に使用することで「労働分配率」を低下させ賃金低下を助長していることを指摘。
 労働分配率を上げるためにも「金融課税を強化すべきではないか」としている。
主張/金融課税先送り/不公平たださず何の「分配」か2021.10.16
超富裕層に資産課税せよ/大門氏が導入求める/参院財金委2022.3.17


◆今こそ賃金の底上げのとき:最低賃金制度の大手術(黒田兼一*6
(内容紹介)
 「最低賃金の引き上げ」「全国一律の最低賃金」が主張されている。
主張/最低賃金引き上げ/普通に暮らせる水準を直ちに2022.7.18
最低賃金再改定迫る/宮本徹氏「物価高騰ふまえて」2022.11.18


◆客室乗務員の賃金とジェンダー問題(荒井広美、山澤泉)
(内容紹介)
 客室乗務員の賃金が低いことを「日本の客室乗務員の多くは女性であること(いわゆる男女間賃金格差の問題)」が影響していると指摘されている。
参考

低い処遇、人手不足に 世界に例ない「女性の職場」〈東京民報2023年2月5日号〉
 日本の航空各社における客室乗務員は9割以上が女性で世界的にも例をみない女性の職場。これはエールフランスが3人に1人が男性、オーストラリアのカンタス航空では男女が半々ということから見ても低く、ハイジャックや安全阻害行為の抑制効果にも影響を及ぼすのだといいます。ジェンダー法の専門家も警鐘を鳴らしています。
 新人客室乗務員の乗務手当は日本航空で1時間あたり700円、全日空で500円、若い客室乗務員は基本給も少なく、「ワーキングプアです。寮でも生活が苦しく、親に援助してもらっています」と嘆く人もいます。コロナ禍で乗務がほとんどない時は羽田空港近くで家賃を払うと数万円しか手元に残らない給与額になり、「任務と給与が見合わない」として退職を選ぶ客室乗務員も少なくありません。


◆雇用形態別賃金格差を問う(福島利夫*7
(内容紹介)
 「雇用形態別賃金格差(正規と非正規の賃金格差)」が指摘され、いわゆる「同一労働同一賃金」が主張されている。
主張/同一労働同一賃金/均等待遇実現へ職場から声を2020.3.31


◆賃金停滞と日本の労使関係の特徴(山垣真浩*8
(内容紹介)
 「日本の労使関係」の観点から賃金停滞が論じられている。
 まず第一に「労働組合組織率の低下」、「最大のナショナルセンター連合があまりにも企業寄りであること」によって「春闘」で賃金を上げるという従来システムが機能しなくなっていることが指摘される。
 第二に春闘は連合の構成員が「大企業の正社員」が主たる対象であることによって、そこでの賃上げは「中小企業労働者」や「非正規労働者」には波及しづらい(そもそも中小企業や非正規の労働者は労組組織率が低い)。
 第三に現行の「労基法36条」による36協定は「労組の了解さえ、得られればほぼ無限定で長時間残業が可能(しかも多くの労組は企業寄りであり、安易に36協定に同意している)」であるが、このことがそうした長時間残業のない非正規労働者との賃金格差を正当化し、賃金停滞を助長してきた。
 この点について
1)労組組織率の向上、特に中小企業や非正規労働者の組織率の向上を主張する一方で
2)1)の展望が必ずしも明るくないことを指摘し、同時並行で「労基法第36条の改正」など、法制度の改正が主張されている。


小特集『2023 地方経済・政治の焦点』
◆高すぎる国保の改善へ(寺内順子*9
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
高すぎる国民健康保険料(税)を引き下げ、住民と医療保険制度を守ります/2018年11月1日 日本共産党2018.11.2
高すぎる国保料「もう限界」 払える金額に減免を|全国商工新聞2019.9.2


公営住宅の「空家」の現状と利活用(坂庭国晴*10
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
公営住宅規模縮小問題で交流会ー住宅は福祉 - 日本共産党埼玉県議会議員団2022.5.19
都営の空き家開放を 国交省内 住まい連が記者会見 | 日本共産党 東京都委員会2022.12.15


◆IT巨人・GAFAM*11の解体的規制をめぐる攻防(山脇友宏)
(内容紹介)
 バイデン政権によるGAFAM規制について述べられていますが小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考

米大統領、巨大IT規制を議会に要請 独禁法改正は停滞: 日本経済新聞2023.1.24
民主党共和党が協力し、巨大テック企業に責任を果たさせるための超党派の法案を可決することを強く求める」。
 バイデン氏は1月中旬、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で与野党の議員に呼びかけた。
 21〜22年は大統領と上下院の多数派を民主党が占める「トリプルブルー」となり「規制強化の千載一遇のチャンス」との見方も出ていたが、肩すかしに終わったのが実情だ。
 企業側の巻き返しが奏功したとの声も多い。米連邦取引委員会(FTC*12)の委員長を務めた米ジョージ・ワシントン大学のウィリアム・コバシック教授は「企業側が精力的かつ効果的にロビー活動を展開し、法案が雇用に悪影響を与えるといった考え方を議会指導部に浸透させた」との見方を示す。


経済停滞の「日本化現象」(工藤昌宏*13
(内容紹介)
 内容的には「労働者の給与をカットし、内部留保を蓄積する大企業(勿論これが工藤氏の言う経済停滞の「日本化現象」)」への批判論文である

2023年春闘と賃上げの条件(野中郁江)
求められる金融収益重視経営の転換(藤田宏)

とかなり共通しており、「内部留保」を吐き出させ、「賃金上昇→消費意欲増大」を目指すことが「経済停滞の解決策」として指摘される。

*1:1974年生まれ。1996年4月、大学4年生のときに国際青年環境NGOA SEED JAPAN」の代表に就任。2003年、国際政策シンクタンクNGOトランスナショナル研究所」に就職。2022年4月、児童館統廃合やJR駅周辺の道路拡幅事業などの田中良杉並区長(当時)の区政運営に批判的な区民が結成した市民団体「住民思いの杉並区長をつくる会(以下、つくる会)」が岸本の擁立を決定。同じ4月には、区議会の最大会派「杉並区議会自由民主党」(15人)から、田中区政に批判的な9人が脱会し、新会派「自由民主党杉並区議団」を結成。つくる会メンバーで岸本陣営の選対本部長を務めた内田聖子NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表)は、この分裂が選挙の結果に大きな影響を与えたとのちに語っている。6月19日投票、20日開票の杉並区長選挙に、立憲民主党日本共産党、れいわ新選組社民党、杉並・生活者ネットワーク、緑の党グリーンズジャパン、新社会党などの推薦を受けて立候補。現職の田中は自民党公明党の支援と連合東京の推薦を受けた(ボーガス注:いつもながら自民党応援団の連合一味です、実に腹立たしい)。投開票の結果、岸本が田中を187票差の接戦の末破り、初当選を果たした(岸本聡子 - Wikipedia参照)。著書『水道、再び公営化! :欧州・水の闘いから日本が学ぶこと』(2020年、集英社新書)、『私がつかんだコモンと民主主義』(2022年、晶文社)など。公式サイト岸本さとこ公式サイト

*2:同志社大学教授。著書『法の政治学:法と正義とフェミニズム』(2002年、青土社)、『シティズンシップの政治学』(2003年、現代書館)、『フェミニズム政治学』(2012年、みすず書房)、『戦争に抗する:ケアの倫理と平和の構想』(2015年、岩波書店)。新春対談/同志社大学教授 岡野八代さん/日本共産党委員長 志位和夫さん(2021.1.1)で分かるように共産支持者のお一人。

*3:著書『日本水没』(2017年、朝日新書)など

*4:大阪府総務部長(橋下知事時代)、副知事(松井知事時代)を歴任するが松井知事1期目の任期満了となる2015年(平成27年)11月26日付で辞職。副知事時代には、維新の会の主張する大阪都構想の事務局となる(大阪府市)大都市局などを担当。2016年(平成28年)から社会福祉法人大阪府社会福祉協議会の会長を務めている。2019年(平成31年)4月7日投開票の大阪府知事選挙に自民党公明党府本部、連合大阪から推薦を受け、立憲民主党日本共産党からの自主支援を受けたが、大阪維新の会公認で元大阪市長の吉村洋文に敗れ、落選(小西禎一 - Wikipedia参照)

*5:明治大学名誉教授。著書『現代会計制度の構図』(2005年、大月書店)、『国有林会計論』(2006年、筑波書房)、『私立大学の財政分析ハンドブック』(2020年、大月書店)など

*6:明治大学名誉教授。著書『戦後日本の人事労務管理』(2018年、ミネルヴァ書房

*7:専修大学名誉教授。著書『格差社会の統計分析』(編著、2009年、北海道大学図書刊行会)など

*8:大阪経済法科大学教授

*9:大阪社会保障推進協議会事務局長。シンママ大阪応援団代表理事。著書『国保の危機は本当か?』(2011年、日本機関紙出版センター)、『検証! 国保都道府県単位化問題』(2016年、日本機関紙出版センター)など

*10:「国民の住まいを守る全国連絡会」代表幹事

*11:グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトのこと

*12:日本の公正取引委員会にあたる

*13:東京工科大学名誉教授。著書『日本海運業の展開と企業集団』(1991年、文眞堂