日経の「反中国」に呆れる(2023年8月16日分)

 反中国も、こじらせるとここまで馬鹿になる - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)コメント欄に投稿しましたがこちらでも紹介しておきます。

日米友好国に中国の影 タイやメキシコ、牙城に揺らぎ - 日本経済新聞
 中国にある生産拠点の代替候補地を中国マネーが席巻している。日米は友好国にサプライチェーン(供給網)を移す「フレンドショアリング*1」を急ぐが、ベトナムやタイ、メキシコへの投資で機先を制されつつある。
「EVの製造、組み立てへの投資を拡大する」。
 5月、電気自動車(EV)世界大手となった中国・比亜迪(BYD)*2の王伝福会長はベトナムのチャン・ホン・ハー副首相を訪ねた。同国で米アップルの「iPad」の受託製造を手掛けるBYDが宣言したのはEVの生産だ。
 2023年1〜6月の中国(香港含む)の対ベトナム直接投資は27億ドル(約3900億円)で前年同期比37.2%増と、韓国(10億ドル)などを大きく上回った。
 ベトナム北部の工業団地。漢字の看板が目立つ一角に人だかりができていた。アップルからイヤホン製造を受託する中国企業の工場だ。若者らが次々とやってくる。面接に来たトゥさん(18)は「給料は高いし寮まである」と話した。中国勢は平均賃金の倍以上の好条件で囲い込む。従来の条件では人が集まらず、日本企業は生産拠点の確保も容易ではなくなりつつある。
 中国マネーは日米が脱中国の有力地とする東南アジアをのみ込みつつある。国際通貨基金IMF)によると東南アジア諸国連合ASEAN*3主要国への中国の直接投資残高は2021年に520億ドルと米国(512億ドル)を上回った。3年で2倍だ。
 「タイは(海外企業の)EV生産・輸出の拠点になる」。
 タイ投資委員会(BOI)のナリット長官は6月末、中国EVメーカー幹部と相次いで会談した。
 1〜6月のタイへの中国の直接投資(申請額ベース)は615億バーツ(約2500億円)と全体の2割強で首位となった。日本より7割多い。日本車のタイでのシェアは8割に達する。現地生産でシェアを高めてきたが、EVシフトをにらんだ中国勢の投資攻勢で牙城の足場が揺らぎつつある。
 東南アだけでなく、米国の近隣国すら安泰ではない。米テスラの誘致にこぎつけたメキシコ北部の州ではサスペンションなど中国系部品会社の工場建設が相次ぐ。中国企業の投資は2022年に18件と首位の米国に迫った。
 EVの電池に欠かせないニッケル。世界生産の半分を担うインドネシアでは製錬所の7割が中国資本だ。住友金属鉱山は2022年、製錬所建設を断念した。取って代わったのは中国勢だった。日米は中国企業の原料や部品の排除を狙うが、支配権を確立した中国勢が輸出先を絞れば日米のEV生産が揺らぎかねない。
 友好国の囲い込みで日米は中国に勝てるのか。日本総合研究所の野木森稔氏は「先端技術を現地で共同開発するぐらいでなければ東南アなどから相手にされなくなる*4」と警鐘を鳴らす。
関連記事【識者に聞く】日本総合研究所の野木森稔氏「ASEAN、脱中国に消極的」 - 日本経済新聞
 中国が東南アジア諸国連合ASEAN)への直接投資を急速に伸ばしている。対する米国は友好国で供給網を完結させる「フレンドショアリング」構想を模索する。
 米国はデリスク(脱リスク)という言葉を掲げたが、実態としては中国に対するデカップル(分離)に近い供給網の再編を狙っている。フレンドショアの相手と見なされているASEANはその意図についてはいけない。脱中国には消極的と言える。

 何で経済新聞がここまで中国を敵視するのかと呆れますね。
 なお、「中国の賃金」は「中国の経済大国化によって明らかに上昇している(昔ほど安くない)」ので「安い賃金を求めて中国から東南アジア等に日本企業が工場を移すこと」自体は一理ある考えです(日経のいう「脱中国」はもっと「反中国的な代物(産経など右翼的な代物)」とは思いますが)。

*1:同盟国、友好国など近い関係にある国に限定したサプライチェーンを構築すること。「ブロック経済」の一種でしょう。

*2:リチウムイオン電池の製造で世界第3位のメーカー。さらに電池事業のノウハウを生かして自動車事業に参入(比亜迪 - Wikipedia参照)

*3:加盟国はブルネイカンボジアインドネシアラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム

*4:「相手にされない=中国企業ばかりと付き合い日本企業が見捨てられる」ならその通りでしょうが「相手にされない=日米の中国封じ込めに協力してくれない」というなら「何があろうとそんな反中国の計画に東南アジアは協力しない」でしょう。