「ノーベル賞女性受賞はわずか63人、日本人女性受賞者はゼロ」ほか(副題:ノーベル賞の雑学、うんちく)(追記あり)

ノーベル賞、女性受賞者はわずか63人 日本人女性はまだゼロ - 産経ニュース
 女性云々に触れるとは産経とは思えない記事です。

 公式ウェブサイトによると、千人近くになる受賞者のうち、女性は今年受賞が決まった人も含め63人で、わずか6%程度に過ぎない。日本人の受賞者に女性はまだいない。
 史上初の女性受賞者は、放射線の研究で1903年に物理学賞を受けたキュリー夫人だ。1911年に化学賞も受け、女性唯一の2度の受賞者となっている。

 近年では

◆夫人呼ばわりは女性差別
→同様の理由から「キング夫人」「コート夫人」も最近では「ビリー・ジーン・キング*1」「マーガレット・スミス・コート*2」と呼ばれる。
◆(前後の文脈でどちらを指すか分かるし、「初の女性ノーベル賞受賞者」である母の方が有名だが)キュリー夫人では娘(イレーヌ・ジョリオ=キュリー)と区別がつかない
→母はピエール・キュリー(妻マリーと共に1903年ノーベル物理学賞受賞)の妻、娘はフレデリック・ジョリオ=キュリー(妻イレーヌと共に1935年のノーベル物理学賞受賞)の妻

と言う指摘から「マリー・キュリー」と呼ばれることが多いです(例としては高木仁三郎*3マリー・キュリーが考えたこと』(1992年、岩波ジュニア新書))。ここで従来通り「キュリー夫人」と呼ぶ辺り、その点の認識が産経に弱いのでしょう。
 それにしても、イレーヌ・ジョリオ=キュリーノーベル物理学賞受賞)は「両親(ノーベル物理学賞受賞)とも天才科学者」という「遺伝と学習環境の影響」は大きいでしょう。
【追記】
イレーヌ・ジョリオ=キュリーノーベル物理学賞受賞)は「両親(ノーベル物理学賞受賞)とも天才科学者」という「遺伝と学習環境の影響」は大きいでしょう。
と言うコメントを情報(10月9日に、大映に所属していた女優・南美川洋子さんのトークショーがある) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)に投稿してid:Bill_McCrearyさんから頂いたコメントを紹介しておきます。

id:Bill_McCrearyさん
 湯川秀樹*4などは、(ボーガス注:湯川の兄である)貝塚茂樹*5、(ボーガス注:湯川の弟である)小川環樹*6らは文科系で優秀ですからね。なかなかすごい家系です。貝塚氏の息子さん*7は、財政学の日本の権威です。
 大内兵衛*8・力*9や、最高裁長官を親子二代でつとめた寺田親子*10など、たしかに世の中すごい才能のある親子というのはいますね。寺田逸郎氏*11など、おそらく大学の成績も司法試験の順位も司法修習所の成績もたぶん別格だったはずで、かなり早い段階で「将来の長官」とみなされていたでしょうから、すさまじい人もいるものです。

 なお、小生が今思いついたのでは

【父】
五百旗頭真治郎(経済学者、神戸大学名誉教授)
【兄】
・五百旗頭博治(神学者南山大学名誉教授)
【本人】
五百旗頭真政治学者、神戸大学名誉教授)
【息子】
・五百旗頭薫(政治学者、東大教授) 
五百旗頭真吾(経済学者、同志社大教授)

という五百旗頭真氏がいますね(五百籏頭眞 - Wikipedia参照)。
 「五百旗頭(いおきべ)」姓は珍しい上に「防衛大学校長」を務め、また文化功労者でもある真氏はそこそこ有名なので、当然「すぐに関係性が気づかれる」と言う辺りは息子さんは辛いかもしれない。「五百旗頭真吾氏」に至っては名前自体がもろに「五百旗頭真氏」を連想させますしね。
【追記終わり】
 なお「話が脱線しますが」親子でノーベル賞受賞、夫婦でノーベル賞受賞は「ピエール・マリー夫婦と娘イレーヌ」(親子)「妻マリーと夫ピエール」「妻イレーヌと夫ジョリオ」(夫婦)の他にも

【2023最新】親子2代!家族でノーベル賞を取った人物7組!【完全版】 | 発明・発見 年表参照
【全て最初が父】
◆ジョゼフ・ジョン・トムソン(1906年ノーベル物理学賞)とジョージ・パジェット・トムソン(1937年ノーベル物理学賞
◆ウィリアム・ブラッグとローレンス・ブラッグ*12(共に1915年ノーベル物理学賞
ニールス・ボーア(1922年ノーベル物理学賞)とオーゲ・N・ボーア(1975年ノーベル物理学賞
◆ハンス・フォン・オイラー・チェルピン(1929年ノーベル化学賞)とウルフ・フォン・オイラー(1970年ノーベル医学・生理学賞)
◆アーサー・コーンバーグ(1959年ノーベル医学・生理学賞)とロジャー ・D・コーンバーグ(2006年ノーベル化学賞
◆マンネ・シーグバーン(1924年ノーベル物理学賞)とカイ・シーグバーン(1981年ノーベル物理学賞

ノーベル賞 - Wikipedia
【全て最初が夫】
◆夫婦で共同受賞した組
・カール・コリとゲルティー・コリ(1947年生理学・医学賞)
エドバルド・モーセルとマイブリット・モーセル(2014年生理学・医学賞:但し2016年離婚)
・アビジット・V・バナジーエスター・デュフロ(2019年経済学賞)
◆夫婦で受賞した組(共同受賞除く)
・グンナー・ミュルダール(1974年ノーベル経済学賞)とアルバ・ライマル・ミュルダール(1982年ノーベル平和賞

があるとのこと。
 また、ノーベル賞を二度受賞したマリー・キュリーですが

ノーベル賞 - Wikipedia
ノーベル賞を2度受賞した人
・マリ・キュリー(1867~1934年:1903年に物理学賞、1911年に化学賞)
ライナス・ポーリング(1901~1994年:1954年に化学賞、1962年に平和賞)
・ジョン・バーディーン(1908~1991年:1956年と1972年に物理学賞)
フレデリック・サンガー(1918~2013年:1958年と1980年に化学賞)
・バリー・シャープレス(1941年生まれ:2001年と2022年に化学賞)
→シャープレス氏のみ存命なので形式論理上は3度目の受賞があり得る 

ノーベル賞2回受賞者、自然科学で4人目 最初はマリー・キュリー氏:朝日新聞デジタル
 自然科学の分野でノーベル賞を2回受賞するのは、バリー・シャープレス氏*13で4人目。21世紀になってからは初だ。シャープレス氏は2001年に「不斉合成の研究」で野依良治氏らとともに化学賞を受賞した。

ということで他にもそうした「二度受賞がいる」とのこと。「一度もらえるだけでも名誉な賞」なのに「天才&幸運の持ち主」はうらやましい限りです。

 部門別で最多の平和賞は今年、イランの女性人権活動家ナルゲス・モハンマディさんへの授賞決定で19人に。1979年のマザー・テレサ、91年にミャンマー民主化運動で受賞したアウンサンスーチーさん、2014年に史上最年少の17歳で受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんらが名を連ねる。

 「へえ、そうなんや」と思ったので以上、メモしておきます。
【日本人受賞者】

日本人のノーベル賞受賞者 - Wikipedia
湯川秀樹(1949年:物理学賞)
 日本人初の受賞者。中間子の存在の予想
朝永振一郎(1965年:物理学賞)
川端康成(1968年:文学賞
 日本人初のノーベル文学賞受賞者
江崎玲於奈(1973年:物理学賞)
佐藤栄作(1974年:平和賞)
 非核三原則の提唱
福井謙一(1981年:化学賞)
 日本人初のノーベル化学賞受賞者
大江健三郎(1994年:文学賞
白川英樹(1981年:化学賞)
利根川進(1987年:医学・生理学賞)
 日本人初のノーベル医学・生理学賞受賞者
小柴昌俊(2000年:物理学賞)
野依良治(2001年:化学賞)
田中耕一(2002年:化学賞)
下村脩(2008年:化学賞)
 緑色蛍光タンパク質 (GFP) の発見
小林誠益川敏英(2008年:物理学賞)
 小林・益川理論と「CP対称性の破れの起源」の発見
根岸英一鈴木章(2010年:化学賞)
山中伸弥(2012年:医学・生理学賞)
 iPS細胞の作製
◆赤﨑勇、天野浩(2014年:物理学賞)
 青色発光ダイオードの発明
大村智(2015年:医学・生理学賞)
 イベルメクチンの開発
梶田隆章(2015年:物理学賞)
 ニュートリノ振動の発見
大隅良典(2016年:医学・生理学賞)
本庶佑(2018年:医学・生理学賞)
◆吉野彰(2019年:化学賞)

【参考:女性受賞者】

女性のノーベル賞受賞者 - Wikipedia
◆マリ・キュリー(1903年:物理学賞、1911年:化学賞(ラジウム及びポロニウムの発見))
 女性初のノーベル賞ノーベル物理学賞)受賞、ノーベル化学賞受賞。
◆ベルタ・フォン・ズットナー(1905年:平和賞)
 女性初のノーベル平和賞受賞。国際平和ビューロー会長
◆セルマ・ラーゲルレーヴ(1909年:文学賞
 女性初のノーベル文学賞受賞。日本では『ニルスのふしぎな旅』の原作者として知られる。
グラツィア・デレッダ(1926年:文学賞
◆シグリ・ウンセット(1928年:文学賞
◆ジェーン・アダムズ(1931年:平和賞)
 婦人国際平和自由連盟初代会長
イレーヌ・ジョリオ=キュリー(1935年:化学賞)
 マリー・キュリーの娘。人工放射性元素の発見。現時点で最年少のノーベル化学賞受賞者(受賞当時35歳)
パール・バック(1938年:文学賞
◆ガブリエラ・ミストラル(1945年:文学賞
エミリー・グリーン・ボルチ(1946年:平和賞)
 婦人国際平和自由連盟二代会長
◆ゲルティー・コリ(1947年:医学・生理学賞)
 女性初のノーベル医学・生理学賞受賞
◆マリア・ゲッパート=メイヤー(1963年:物理学賞)
 死後、女性の物理学者に贈られるマリア・ゲッパート=メイヤー賞が米国物理学会によって創設された。
◆ドロシー・ホジキン(1964年:化学賞)
 1965年に女性として2人目のメリット勲章*14を英国女王エリザベス2世から叙勲された(一人目は1907年のフローレンス・ナイチンゲール
ネリー・ザックス(1966年:文学賞
◆ベティ・ウィリアムズ、マイレッド・コリガン・マグワイア(1976年:平和賞)
 北アイルランド平和運動への貢献
◆ロサリン・ヤロー(1977年:医学・生理学賞)
 ペプチドホルモンのラジオイムノアッセイ(放射免疫測定)法の開発
マザー・テレサ(1979年:平和賞)
 「神の愛の宣教者会」の創設者
◆アルバ・ライマル・ミュルダール(1982年:平和賞)
 ストックホルム国際平和研究所初代所長
バーバラ・マクリントック(1983年:医学・生理学賞)
 可動遺伝因子(トランスポゾン)の発見
◆リータ・レーヴィ=モンタルチーニ(1986年:医学・生理学賞)
 成長因子の発見
◆ガートルード・エリオン(1988年:医学・生理学賞)
◆ナディン・ゴーディマー(1991年:文学賞
アウン・サン・スー・チー(1991年:平和賞)
◆リゴベルタ・メンチュウ(1992年:平和賞)
 グアテマラ先住民族活動家
◆トニ・モリスン(1993年:文学賞
◆クリスティアーネ・ニュスライン=フォルハルト(1995年:医学・生理学賞)
ヴィスワヴァ・シンボルスカ(1996年:文学賞
ジョディ・ウィリアムズ(1997年:平和賞)
 地雷禁止国際キャンペーン初代コーディネーター
シーリーン・エバーディー(2003年:平和賞)
◆リンダ・バック(2004年:医学・生理学賞)
 嗅覚受容体及び嗅覚系組織の発見
エルフリーデ・イェリネク(2004年:文学賞
ワンガリ・マータイ(2004年:平和賞)
◆ドリス・レッシング(2007年、文学賞
 現時点で最年長のノーベル文学賞受賞者(受賞当時88歳)
◆フランソワーズ・バレ=シヌシ(2008年:医学・生理学賞)
 ヒト免疫不全ウイルスの発見
◆アダ・ヨナス(2009年:化学賞)
◆エリザベス・H・ブラックバーン、キャロル・W・グライダー(2009年:医学・生理学賞)
 テロメアとテロメラーゼ酵素が染色体を保護する機序の発見
◆エリノア・オストロム*15(2009年:経済学賞)
 女性初のノーベル経済学賞受賞
◆ヘルタ・ミュラー(2009年:文学賞
エレン・ジョンソン・サーリーフ*16レイマ・ボウィタワックル・カルマン(2011年、平和賞)
アリス・マンロー(2013年:文学賞
◆マイブリット・モーセル(2014年:医学・生理学賞)
 脳内の空間認知システムを構成する細胞の発見
◆マララ・ユスフザイ(2014年、平和賞)
 現時点で最年少のノーベル平和賞受賞者(受賞当時17歳)
◆屠呦呦(2015年:医学・生理学賞)
 抗マラリア薬アルテミシニンの発見
◆スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ(2015年:文学賞
◆フランシス・アーノルド(2018年:化学賞)
 酵素の指向性進化法の開発
◆ドナ・ストリックランド(2018年:物理学賞)
 超高出力・超短パルスレーザーの生成方法の開発
◆オルガ・トカルチュク(2018年:文学賞
◆ナーディーヤ・ムラード(2018年:平和賞)
エスター・デュフロ*17(2019年、経済学賞)
 現時点で最年少のノーベル経済学賞受賞者(受賞当時46歳)
◆エマニュエル・シャルパンティエ、ジェニファー・ダウドナ(2020年:化学賞)
 ゲノム編集手法の開発
アンドレア・ゲズ(2020年:物理学賞)
 銀河系の中心にある超大質量コンパクト天体の発見
◆ルイーズ・グリュック(2020年:文学賞
◆マリア・レッサ(2021年:平和賞)
◆キャロライン・ベルトッツィ(2022年:化学賞)
 クリックケミストリーと生体直交化学の開発
◆アニー・エルノー(2022年:文学賞
◆カリコー・カタリン(2023年:医学・生理学賞)
◆クラウディア・ゴールディン*18(2023年:経済学賞)
◆アンヌ・リュイリエ(2023年:物理学賞)
◆ナルゲス・モハンマディ(2023年:平和賞)
 20年前(2003年)の受賞者「シリン・エバディ」もイランの反体制活動家(女性)であり、ノーベル賞側の問題意識(イラン政府への強い批判意識)が窺えます。

 見て分かるのは「2000年以降は、それ以前と違い毎年のように何らかの部門で女性が受賞してること(特に2018年~今年(2023年)までの「6年間」は受賞分野が違うとは言え、最低でも1人女性受賞者がいる)」「また2000年以降は女性受賞者に文学賞、平和賞が多かったそれ以前と違い理系の賞(医学、化学、物理学賞)受賞者が増えていること」ですね。
 これは「女性の社会進出(特に理系分野への進出)が進んだ」と同時に「女性受賞者を増やしたい(ノーベル賞主催側)」ということではないか。

【2023.10.10追記】
ノーベル経済学賞に男女の賃金格差研究のゴールディン氏 - 産経ニュース
 受賞者が女性であることといい、受賞理由が「男女間賃金格差の研究」であることといい「ノーベル賞は女性に目配りしてる」アピールではあるのでしょう。

 ノーベル経済学賞で女性の受賞者は3人目となる。

女性のノーベル賞受賞者 - Wikipedia
によれば

◆エリノア・オストロム(2009年)
エスター・デュフロ(2019年)

とのこと。
 さて他にもゴールディン氏についての記事を紹介しておきます。まずはNHK記事。
ノーベル経済学賞に男女間の格差是正など研究のゴールディン氏 | NHK | ノーベル賞2023

◆男女賃金格差 日本はG7の中で最下位
 世界各国は、今も女性の賃金が男性に比べて低いという課題に直面しています。
 OECD経済協力開発機構は去年までの入手可能なデータをもとに男女間の賃金格差を比較しています。
 OECD加盟38か国*19の平均では男性の所得と女性の所得の差は11.9%だとしています。
 最も賃金格差が少ないのはベルギーで1.2%、次いでコスタリカが1.4%、コロンビアが1.9%、そしてノルウェーが4.5%*20となっています。
 一方、G7=主要7か国でも
▼ドイツが13.7%
▼イギリスが14.5%
アメリカが17.0%とOECD平均よりも格差が大きくなっています。
 日本は男女間の賃金格差が大きく、21.3%とG7の中で最下位となっています。
 日本よりも差が大きいのは3か国だけで
ラトビアが24.0%
イスラエルが25.4%
▼そして、最下位は韓国の31.2%となっています。
 ことしのノーベル経済学賞に男女の賃金格差の要因や労働市場における女性の役割などを研究した、アメリカのハーバード大学のゴールディン教授が選ばれたことについて慶應義塾大学の坂井豊貴*21教授に聞きました。
Q.
 受賞の受け止めは。
A.
 ものすごくタイムリーな受賞だと思った。
 労働市場の男女格差というのは非常に重要な問題として存在している。そうした男女格差を生んでいる本当の要因というのは何なのかということを、ゴールディン教授は分析した。
 近年、経済学の世界では現実の重要な問題を具体的に解明し、処方箋を示すような研究が高く評価されるようになってきているが、まさにゴールディン教授の研究は、そういう研究だ。
Q.
 研究の意義は。
A.
 私たちは何となく、時代が進むにつれて女性の労働市場への参加率は増えているというイメージを持ちがちだ。
 ところが、ゴールディン教授は200年以上のデータを分析して、そのようなことはないと指摘している*22。一体どのような世の中の変化があって、女性の労働市場への参加率が下がったり上がったりしてるのか。
 そのキードライバーとなる要因を見つけたことは意義深いだろう。
Q.
 今回の受賞は、社会にどのように影響を与えるだろうか。
A.
 近年のノーベル経済学賞の中でも、社会的インパクトという面では随一の研究だと思う。
 長時間働き、そして会社に誠意を見せるようなことが評価される文化は、まだ、日本の企業にも多く残っているところがあると思う。
 ただ、それは柔軟な働き方と逆行するものであり、男女の格差を不用意に拡大させるものでもあるということがゴールディン教授の研究から言うことができる。
 長時間労働はできるだけやめる、また、この時間は必ず働かなければならないというようなことはやめよう、柔軟に働けるようにしようという方向に世の中が動く1つの大きなきっかけとなるのではないかと思う。
Q.
 日本人の初受賞への期待もある中で、マクロ経済学の研究で世界的に知られるアメリカ・プリンストン大学教授の清滝信宏さんの名前が毎年聞かれるが。
A.
 清滝教授の研究についてもゴールディン教授と同じように個別具体的な問題を解明する、経済学の面白さを突き詰めたような研究だ。
 今後も清滝教授が受賞する可能性は十分にあると思っている。

 受賞理由(男女間賃金格差の研究)を考えれば、こういう取り上げ方(日本の男女間賃金格差の指摘)はある意味当然ではあります。
 なお、近年
経団連役員企業で深刻 男女の賃金格差 本紙集計/女性は男性の4~8割2023.8.2
男女賃金格差 問われる国の姿勢/省庁の6割 民間より大/本紙が集計2023.9.15
自治体での男女賃金/正規職員でも格差/本紙が集計2023.9.22
として男女間賃金格差問題を取り上げることに熱心な赤旗にとっては「我々の方向性は間違っていなかった」と意を強くしたところではないか。
 一方「こういう問題に全く興味関心がない、安保にしか興味がない安保バカ」松竹が世間に全く相手にされないのも「当然のこと」かと思います。
 イヤー、当初、この記事では「共産への応援(?)」「松竹への悪口」を書く気はなかったんですが、思いついたので書いておきます(苦笑)。
 なお、続いてNHK以外の経済学賞についての記事をいくつか紹介しておきます。

社説:賃金格差とノーベル賞 男女平等の実現急ぎたい | 毎日新聞
 明らかにしたのは、「チャイルドペナルティー」と呼ばれ、出産後に女性の賃金が減る現象だ。
 経済成長に伴い、男女が同じ教育を受けて同じ職業に就けるようになっても、子どもが生まれると賃金に差が生じる。女性は育児の責任を負わされてキャリアを積む機会が減る一方、長時間働ける男性は優遇される。

[社説]ノーベル経済学賞が提起した男女格差 - 日本経済新聞
 注目したいのは、今なお続いている賃金格差の要因を分析したことだ。男女の教育水準や職業が同じでも格差が生じており、主な要因は子どもの誕生だと指摘した。先進国で共通してみられる「チャイルドペナルティー」と呼ばれる現象だ。
 女性は男性より育児の責任を担うことが多く、キャリアアップや収入増が難しくなりがちだ。長時間いつでも働くことが優遇される職場でこの傾向は強くなる。

 無知なので、チャイルドペナルティーと言う言葉は今回初めて知りました。メモしておきます。

2023年ノーベル経済学賞はジェンダー格差の構造を経済史・経済学的アプローチしてきたゴールディン教授!|経済セミナー編集部
【参考図書・資料の紹介】
 ゴールディン教授の研究に関連する参考資料をいくつかご紹介します!
 「ジェンダー格差」に関する多様な実証研究をコンパクトにまとめた一冊があります。
◆牧野百恵*23(2023)『ジェンダー格差:実証経済学は何を語るか』中公新書
 日本におけるジェンダー格差に関する研究ももちろん行われていますが、読みやすいサーベイとしては以下の原ひろみ先生(明治大学教授)によるチャプターが参考になります。
◆原ひろみ(2017)「女性活躍が進まない原因」、川口大*24編『日本の労働市場:経済学者の視点』有斐閣
 また、川口章先生(同志社大学教授)は、長らく日本のジェンダー格差に関するご研究を積み重ねてこられました。
◆川口章(2008)『ジェンダー経済格差:なぜ格差が生まれるのか、克服の手がかりはどこにあるのか』勁草書房
◆川口章(2008)『日本のジェンダーを考える』有斐閣

 経済学には疎いので「ほぼほぼ」「2万%」読みませんがメモしておきます。

*1:女子プロテニス選手。シングルスで1966年全英優勝、1967年全英、全米優勝、1968年全英、全豪優勝、1971年全米優勝、1972年全英、全仏、全米優勝、1973年全英優勝、1974年全米優勝、1975年全英優勝(ビリー・ジーン・キング - Wikipedia参照)

*2:女子プロテニス選手。シングルスで1960年全豪優勝、1961年全豪優勝、1962年全豪、全仏、全米優勝、1963年全英、全豪優勝、1964年、全豪、全仏優勝、1965年全英、全豪、全米優勝、1966年全豪優勝、1969年全豪、全仏、全米優勝、1970年全英、全豪、全仏、全米優勝、1971年全豪優勝、1973年全豪、全仏、全米優勝(マーガレット・スミス・コート - Wikipedia参照)

*3:1938~2000年。原子力資料情報室代表。著書『プルトニウムの恐怖』(1981年、岩波新書)、『核時代を生きる:生活思想としての反核』(1983年、講談社現代新書)、『プルトニウムの未来』(1994年、岩波新書)、『市民科学者として生きる』(1999年、岩波新書)、『原発事故はなぜくりかえすのか』(2000年、岩波新書)、『原子力神話からの解放』(2011年、講談社+α文庫)、『市民の科学』(2014年、講談社学術文庫)等

*4:京都大学名誉教授。ノーベル物理学賞受賞者。文化勲章受章者。地質学者・小川琢治(京都帝大名誉教授)の三男として生まれる。のちに湯川スミに入婿し改姓

*5:京都大学名誉教授(中国古代史)。文化勲章受章者。地質学者・小川琢治(京都帝大名誉教授)の次男として生まれる。のちに貝塚家に入婿し改姓

*6:京都大学名誉教授(中国文学)。著書『中国小説史の研究』(1968年、岩波書店)等

*7:貝塚啓明東大名誉教授のこと

*8:法政大学名誉教授(マルクス経済学)

*9:兵衛の息子。東京大学名誉教授(マルクス経済学)

*10:寺田治郎(大津地裁所長、東京高裁判事、最高裁事務総長、名古屋高裁長官、東京高裁長官等を経て最高裁判事(その後、最高裁長官))と寺田逸郎のこと

*11:さいたま地裁所長、広島高裁長官等を経て最高裁判事(その後、最高裁長官)

*12:現時点で最年少のノーベル物理学賞受賞者(受賞当時25歳)

*13:2001年、2022年にノーベル化学賞を受賞

*14:定員が24名しかいない(死者が出ない限り、新たな受賞者が生まれない)ことから、メリット勲章は英国勲章の中で最も名誉なものと言われている。過去の受賞者には「ロイド・ジョージチャーチル、アトリー、マクミランサッチャー(英国首相)」「アイゼンハワー(米国大統領)」「マンデラ(南ア大統領)」「山縣有朋(元首相で元老の一人)」「大山巌陸軍大臣内大臣を歴任、元老の一人)」「東郷平八郎連合艦隊司令長官、海軍軍令部長を歴任)」「ジョゼフ・ジョン・トムソン(1906年ノーベル物理学賞受賞)」「アーネスト・ラザフォード(1908年ノーベル化学賞受賞)」「ヘンリー・ブラッグ(1915年ノーベル物理学賞受賞)」「フレデリック・ホプキンズ(1929年ノーベル医学・生理学賞受賞)」「エドガー・エイドリアン、チャールズ・シェリントン(1932年ノーベル医学・生理学賞受賞)」「ジョン・ゴールズワージー(1932年ノーベル文学賞受賞)」「ポール・ディラック(1933年ノーベル物理学賞受賞)」「ヘンリー・ハレット・デール(1936年ノーベル医学・生理学賞受賞)」「ハワード・フローリー(1945年ノーベル医学・生理学賞受賞)」「ロバート・ロビンソン(1947年ノーベル化学賞受賞)」「ジョン・コッククロフト(1951年ノーベル物理学賞受賞)」「アルベルト・シュヴァイツァー(1952年ノーベル平和賞受賞)」「シリル・ヒンシェルウッド(1956年ノーベル化学賞受賞)」「アレクサンダー・トッド(1957年ノーベル化学賞受賞)」「フランシス・クリック(1962年ノーベル医学・生理学賞受賞)」「マックス・ペルーツ(1962年ノーベル化学賞受賞)」「アラン・ロイド・ホジキン(1963年ノーベル医学・生理学賞受賞)」「ジョージ・ポーター(1967年ノーベル化学賞受賞)」「マザー・テレサ(1979年ノーベル平和賞受賞)」「アーロン・クルーグ(1982年ノーベル化学賞受賞)」「ポール・ナース(2001年ノーベル医学・生理学賞受賞)」「ヴェンカトラマン・ラマクリシュナン(2009年ノーベル化学賞受賞)」「ロジャー・ペンローズ(2020年ノーベル物理学賞受賞)」等がいる(メリット勲章 - Wikipedia参照)

*15:著書『コモンズのガバナンス:人びとの協働と制度の進化』(2022年、晃洋書房

*16:2006~2018年までリベリア大統領

*17:著書『貧困と闘う知:教育、医療、金融、ガバナンス』(2017年、みすず書房

*18:著書『なぜ男女の賃金に格差があるのか』(2023年、慶應義塾大学出版会)

*19:経済協力開発機構 - WikipediaによればG7(米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクスウェーデンデンマークノルウェーアイスランドアイルランド、スイス、オーストリアギリシャ、トルコ、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、 チェコスロバキアハンガリーポーランド、韓国、チリ、スロベニアイスラエルエストニアラトビアリトアニア、コロンビア、コスタリカ

*20:ジェンダーギャップ指数で上位独占の北欧(スウェーデンノルウェーフィンランド)がダントツ上位と思ってたので意外です。勿論ここに名前が挙がってるノルウェーは当然ですが、スウェーデンフィンランドOECD加盟国です。

*21:著書『マーケットデザイン:最先端の実用的な経済学』(2013年、ちくま新書)、『多数決を疑う:社会的選択理論とは何か』(2015年、岩波新書)、『ミクロ経済学入門の入門』(2017年、岩波新書)、『暗号通貨VS.国家:ビットコインは終わらない』(2019年、SB新書) 等

*22:NHK記事に寄れば『ゴールディン教授は、女性の労働市場への参加についてアメリカの200年以上にわたるデータを集め、男女間の格差の是正において何が重要なのか、そのカギとなる要因を分析しました。従来の研究では、女性の就業率は経済発展に伴って上昇すると考えられていました。しかし、ゴールディン教授は主要産業が農業から工業に移り変わることに伴って既婚女性が仕事と家庭を両立することが困難になることなどから女性の就業率が低下するとしました。そして経済のサービス化が進むことで就業率が増加するとして、(ボーガス注:「農業は女性就業が高い、工業は低い、サービス業は高い」という事実によって主要産業が「農業→工業→サービス業」と移行することで女性就業率の折れ線グラフが『女性農業労働者が多い』最初は高く、『女性農業労働者が減って女性工業労働者が増える』と徐々に低くなり、ある時点で底を打って『女性サービス労働者が増える』とまた高くなる)U字型のカーブを描く構造を初めて明らかにしました。現在では、アメリカだけでなく、ほかの多くの国でも当てはまる現象だと評価されています』とのこと

*23:日本貿易振興機構アジア経済研究所開発研究センター・経済モデル研究グループ長代理

*24:東大教授。著書『労働経済学』(2017年、有斐閣)等