新刊紹介:「経済」2023年12月号

「経済」12月号を俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
世界と日本
◆欧州を目指す命がけの移民(佐々木優*1
(内容紹介)
 何故、命がけで移民を目指すのかと言えば「自国では食えない」からですね(政治亡命が無いとは言いませんがやはり大きいのは経済的要因です)。日本の「満州移民」「南米移民」と変わらない。日本でも「国内で食えるようになれば」移民は減った。
 結局「食えるようにすること」しかないわけです。
【参考:欧州移民】

アフリカ移民 欧州に大挙…マリ出身の若者は言った。「地元は危険だらけで仕事もない」 [世界深層] : 読売新聞2023.7.10
 2007年生まれだというコートジボワール出身のムサさんは昨年初め、友人と一緒にトラックで地元を出た。
 「フランスに行けば収入の良い仕事もあるし、勉強もできる」。
 そう期待してアルジェリアチュニジアで欧州へ渡るタイミングを待った。
 今年4月、ボートでチュニジアからイタリア南部のランペドゥーザ島に渡った。ボートは欧州を目指す人たちですし詰め状態だった。一緒にコートジボワールを出た友人は別の船で渡航を試みたが、船が沈没して亡くなった。
 たどり着いたイタリアで野宿をしたり、北部トリノの移民キャンプで過ごしたりしながらフランスに入る機会を見計らった。6月にフランスとの国境の町ベンティミリアから越境しようとしたが、国境警備隊に見つかった。
 その後も4回、フランスへの入国を試みたが、毎回、仏当局に見つかり、イタリア側に戻された。「フランスに行かないと何もできない」と語るムサさんはまた越境を計画しているという。

【参考:満州移民、南米移民】

「東京満蒙開拓団」書評 大陸へ移住した江戸っ子たち|好書好日2012.10.28
 満蒙開拓団とは旧満州農業移民であるから、長野県や山梨県など農村部の人たちで組織された、と思っていた。事実、そうなのだが、初めての開拓団は東京から送られたのである。これは、知らなかった。
 昭和初めの世界恐慌の不況で失業者が増大、農村は冷害による凶作である。人々は都会を頼って流入する。当時は屋外居住者と呼んだホームレスのために、深川の埋め立て地に無料宿泊所が設けられた。農民として更生させる目的で、軍の協力を得て収容者を満州に送り込んだのが昭和七年、これがのちに国策となる満蒙開拓団の最初である。
 新聞は、「ルンペン美談」と大きく取り上げる。彼らは地方の次男坊以下がほとんどで(原籍東京は一割未満)、しかし東京発の農業移民ということで注目された。
 国策で転業開拓が推奨されると、配給制で商売が立ちゆかなくなった商店街の人たちが、「江戸っ子開拓団」とはやされて満州移住を決意する。
 満蒙開拓団や青少年義勇軍は、昭和二十年五月までに、全国からおよそ三十二万人が送りだされた。このうち東京からは一万一千人である。これは県別にみると九位の人数である。最後の開拓団も東京で、内実は大空襲による疎開だ。

日本史のミッシングリンク「移民」・ 沖縄県系人の多さの理由とは ~ その1 - ディスカバー・ニッケイ2015.8.18
 沖縄県(140万人)の人口は日本のわずか1%強なのに、世界の日系社会(350万人)全体の10%(35万人)を占める。ブラジル日系社会(160万人)においても、やはり1割(17万人)と言われ、ペルーやアルゼンチンにおいては9割以上が沖縄県系といわれる。つまり、新大陸では人口比が変わる。
 なぜ、そんなに沖縄県系人が多いかと言えば、近代日本の歴史的なヒズミが、この島に集中していたことの裏返しに他ならない。
 沖縄県の側から見ると、県人口140万人に対して在外県系人は35万人もいる。母県人口の25%にあたる人が、外国に住んでいる「移民大県」だ。そんな県はほかにない。
 どうして、そんな移民大県になったのか。
 移住の押し出し圧力としては「社会の平等化を求める気持ち」「母県の経済的苦境」「沖縄戦」だろう。
 重税を課されてソテツ以外に食べる物が無いような明治期の「ソテツ地獄」の時代において、移住する事は「権利を獲得すること」、社会の平等化を求める運動だった。
 戦後の多さの主たる理由は沖縄戦だ。

裕福な生活に憧れて 貧しさ抜け出せず帰沖 屋宜ふみ子さん<埋もれた沖縄移民史 ボリビアの大地で>2 - 琉球新報デジタル2022.10.21
「土地がもらえて裕福に暮らせる」。
 1961年、屋宜ふみ子さん(90)=恩納村=は、琉球政府の移民訓練センターで職員からの言葉に心躍らせた。一家族当たり50ヘクタールの土地が配分されることになっていた。米国と琉球政府を挙げて進められた計画移民。屋宜さんも、苦しい生活を抜け出せると思っていた。しかし待ち受けていたのは、自力での過酷な開墾と厳しい暮らしだった。
 貧しい暮らしの始まりは沖縄戦。母や弟、妹たちと避難した山に食料はなく、ソテツで飢えをしのいだ。父は防衛隊で戦死した。戦後、母は豚やミカンを買い付けて売り、子どもたちを育てた。結婚後は夫婦で軍作業に行き、小さな畑で食べる野菜を育てた。日々をつなぐ暮らし。50ヘクタールの土地がもらえるボリビア移住は「憧れだった」。
 戦争や米軍の占領で貧困に突き落とされた沖縄の人々は“移民ブーム”に沸いた。一方、米国にとっては、沖縄の占領統治にかける支出を減らし、ボリビア共産主義化を防ぐための国策であった。
 屋宜さんは61年4月、第12次移民団として第2コロニアに入った。もらったのはわずかなお金とジャングルの土地。現地の人を雇うお金はなかった。開墾は手作業。夫婦2人で大木を切り倒し、焼いた。居住環境も悪く、ヤシの葉の家は雨漏りし、「想像以上に住みにくい所だった」。きれいな飲み水はなく、沼にたまった濁り水を飲む生活が7、8年続いた。
 切り開いた畑でパパイアやユカ(キャッサバ芋)などを育て、卵や鶏を売る自給自足の生活が続いた。
 「元々お金がある人は裕福、ない人は本当に貧乏のまま」。
 屋宜さんが貧しさから抜け出すことは難しかった。男の子2人を出産したが、1人は難産で、産気づいてから10キロ以上離れた診療所に馬車で向かった時の怖さは今も消えない。
 1973年に沖縄から親がボリビアまで生活ぶりを見に来た。
 「こんな生活だったら駄目」。
 そう促され、15年間の生活にピリオドを打ち、1976年に沖縄に戻った。ホテルの厨房で働いた後、今は穏やかに長男の盛弘さん(62)家族と暮らす。憧れが一転、苦汁をなめたが、それも前向きに捉える。
 「(琉球政府が)良いことばっかり言うから、だまされて行ったようなものだ」としつつ、「後悔していないですよ。良い勉強になったと思っている」。そう言い切る。


◆韓国、ある労働者の過労自殺(洪相鉉)
(内容紹介)
 日本同様に深刻な韓国の過労死が論じられていますが小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


特集「未来を拓くエネルギー政策へ」
◆エネルギー政策の真の変革へ(大島堅一*2
原発回帰と排出*3産業保護のGX(満田夏花)
◆石炭火力発電をゼロに(桃井貴子)
◆地域から脱炭素、再エネルギー100%の日本へ(吉田明子)
(内容紹介)
 架空問答形式で書いてみます。
Q:
 まず民主党政権から岸田政権までの流れについて説明してください。
A:
 福島原発事故を受けて民主党政権は「2030年代に原発ゼロ」を打ち出しました。これについては「遅すぎる」「具体性に欠ける」等の批判もありましたが、「原発ゼロ」が初めて打ち出された点は評価できます。しかしこうした方針は民主党下野後の安倍政権では事実上廃棄されます。
 それでも安倍、菅政権時代には世論の批判を恐れて原発の新増設が表明されることはなかった。
 しかし岸田政権がグリーン・トランスフォーメーション(GX)、つまりCO2削減を口実に原発の新増設を正当化する路線に突入しました。
Q:
 岸田政権のGXの問題点は何でしょうか?
A:
 まず第一に既に述べましたが「CO2削減」「(ウクライナ戦争などによる)原油価格高騰」を口実に原発の新増設を正当化しています。
 第二に火力発電を温存しようとしています。むしろドイツなど先進国を参考に「原発ゼロ、火力ゼロ」「再生エネルギー(太陽光、風力等)推進」の方向に動くべきです。
 勿論再エネに何の問題もないわけではない。「無茶苦茶なメガソーラー開発による土砂崩れ(太陽光)」「騒音やバードストライク風力発電)」等の問題はあるので、別途そうした問題にも目配りしていく必要はあります(とはいえ産経のようにそれらを誇大に騒ぎ立て原発を正当化するのは論外ですが)。


原発の運転延長は何故許されないか:GX電源法を考える(松久保肇)
(内容紹介)
 勿論「経年劣化(経年劣化は原発に限りませんが)による事故の危険性があるから」です。にもかかわらず延長されるのは「原発をこれからも続けていきたい」が福島事故後の反原発世論のために「既存の炉を廃炉にした場合、新増設ができず、事実上の脱原発になりかねないから」です。「新増設が容易にできる」のなら「既存原発の運転期限を既存の長さより延長する」という手を使う必要もない。既存の炉を廃炉にして新増設すればいいだけです。
 しかし自民党支持層ですら「私の住む町に原発新増設ウエルカム」は少ないでしょう。
 とはいえ松久保氏も書くようにそうした無茶(運転期間の延長)がいつまで続けられるかと言ったところでしょう。最悪の場合事故るし、そこまで酷くなくても「稼働しようがない状態→電力の逼迫」に追い込まれる危険性はあります。
参考
赤旗
主張/原発「60年超」容認/規制委の政権迎合 許されない2023.2.18

主張/原発推進法成立/教訓踏みにじる暴挙許されぬ2023.6.3
 原発の運転期間を原則40年、延長しても60年と定めた規定を、原子力規制委員会(規制委)所管の原子炉等規制法から電気事業法に移すことは重大です。運転期間の延長は、原発利用政策の観点から経済産業大臣が認可することになります。しかも、規制委の審査などで止まっていた期間を運転期間から除くことができるとされ、実際には70年を超えて運転できる制度です。
 運転期間上限は、経年劣化による「リスクを低減するため」と説明されてきました。それが原発を推進する経済産業省の所管となれば、制度の性格が百八十度変わってしまいます。


◆政治の責任で「失われた30年」を打開する:日本共産党の経済再生プラン(田村智子*4
(内容紹介)
 「日本共産党の経済再生プラン」が紹介されていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考
日本共産党の経済再生プラン 30年におよぶ経済停滞・暮らしの困難を打開するために 三つの改革で暮らしに希望を│くらし・社会保障・経済│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会
日本共産党の経済再生プラン 全文│政策・提言全文│ダウンロード│日本共産党中央委員会
「失われた30年」を打開し暮らしに希望を/日本共産党の経済再生プラン/志位委員長が発表2023.9.29

主張/経済再生プラン/30年の停滞を打ち破るために2023.10.2
 改革の第1の柱は、物価上昇を上回る賃上げと待遇改善を政治の責任で行うことです。
 経済再生プランは非正規ワーカー待遇改善法の制定を提案しています。欧州連合(EU)や国際労働機関(ILO)条約の基準も踏まえてルールを確立する必要があります。
 第2の柱は、消費税減税、社会保障の充実、教育費の負担軽減など暮らしを支え、格差を正す税財政改革です。
 第3の柱として、気候危機の打開、エネルギー・食料自給率の向上を掲げました。持続可能な経済社会を築く改革です。
 省エネ・再エネの推進、脱炭素・原発ゼロの実現は世界5位の二酸化炭素排出国である日本の責任です。食料自給率の向上は世界的な食料危機を解決するために欠かせません。地域の循環型経済を発展させる上でも重要です。


小池都政の検証と要求実現のための財源の試算(野中郁江*5
(内容紹介)
 都の決算書を元に小池都政において「建設費(五輪競技場の建設など)を増やす」一方で「教育費、社会保障費を減らしている」ことを批判。
 過大な建設費を減らすことで教育費、社会保障費を捻出すべきだし、捻出できるのではないかとしている。


◆年金積立金はなぜ外資の餌食になったのか(上)(佐々木憲昭*6
(内容紹介)
 ネット記事の紹介で代替。年金基金―外貨の食い物に㊤、㊥、㊦(「赤旗」) - メディアから - 消費税をなくす全国の会と筆者は同じなので内容はかなり重複します。

GPIF 破綻米2銀行に550億円/公的資金をリスク資産に投資/問われる自公政権の責任2023.3.16
 日本の厚生年金や国民年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、経営破綻した米シリコンバレー銀行(SVB)と米シグネチャー銀行の関連株式と債券を、2022年3月末時点(時価総額)で約550億円保有していることがわかりました。
 第2次安倍晋三政権が運用比率を見直すまでは、国内株式(11%)、外国株式(9%)合わせて20%でした。外国債券の運用比率は8%にすぎませんでした。
 ところが安倍政権は大幅な見直しを進めました。2014年、国内株式(25%)、外国株式(25%)と合計50%に運用比率を拡大しました。外国債券は15%に広げました。20年には外国債券の比率を25%にまで引き上げました。
 公的資金を危険にさらしてきた自公政権の責任が問われます。

年金基金―外貨の食い物に㊤、㊥、㊦(「赤旗」) - メディアから - 消費税をなくす全国の会日本共産党衆院議員・佐々木憲昭
 株式投資など、年金積立金の「市場運用」を本格的に始めたのは、年金資金運用基金を設立した2001年4月からです(2006年4月からはGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人)。しかし、その運用方式は「丸こと市場運用」ともいうべきものでした。
 政府は、アメリカ、カナダ、オランダ、ノルウェースウェーデンでもやっていると説明してきましたが、実態はまったく違います。
 米国の世界最大の年金基金(OASDI=老齢・遺族・障害年金)は、すべて非市場性の米国債で運用しており、株式で運用することを禁止しています。ですから、運用で赤字が出たことはありません。
◆他国は一部運用
 米国カリフォルニアの州職員を対象とした年金基金カルパース)の場合は、全国民を対象とした基礎的年金に上乗せする部分の運用だけです。オランダの公務員年金(ABP)も同様です。
カナダの年金制度投資委員会(cPPIB)は、基礎的な年金に上乗せする部分のみの運用、スウェーデン公的年金基金(AP 基金)も基礎的な年金の給付水準に直接、影響を与えない運用が行われています。
 日本のように、年金の積立金を、丸こと市場運用している国は見当たりません。岸田内閣・自民党は、それに一言も触れようとしません。


◆NTT法改正問題を考える(高野嘉史)
(内容紹介)
 軍拡予算を捻出するために「国がNTTの株式の1/3以上を持つ義務があるとするNTT法」を改正して「NTT株を大量売却しよう」という自民党の主張を「動機が邪道」と批判(そもそも筆者は岸田軍拡自体に否定的)。
 但し、筆者は「NTT同様、前身のKDD国際電信電話)時代は国が株式を保有していたKDDI*7」には現在、NTTのような「国が株式の1/3以上を持つ義務がないこと」から「1/3規定」には必要性はあまりないのではないか、国の株式保有が「NTTと総務省の癒着(天下り)を助長してるのではないか」とし「1/3規定」をなくすことそれ自体には反対していない。
 「1/3規定をなくすこと」で「過疎地域のサービスが劣化するのではないか」と言う危惧については「法律や政令でサービス義務づけを図る」べきとしている。
 また売却益については軍拡財源ではなく「過疎地域のサービス充実」など、通信環境の向上に用いるべきとしている。

*1:順天堂大学講師

*2:龍谷大学教授。著書『再生可能エネルギーの政治経済学』(2010年、東洋経済新報社)、『原発のコスト』(2011年、岩波新書)、『原発はやっぱり割に合わない』(2012年、東洋経済新報社)等

*3:この場合の排出とは勿論CO2

*4:参院議員。共産党政策委員長(党常任幹部会委員兼務)

*5:明治大学名誉教授。著書『現代会計制度の構図』(2005年、大月書店)、『国有林会計論』(2006年、筑波書房)

*6:衆院議員。日本共産党名誉役員。著書『現代エネルギー危機論』(1978年、新日本出版社)、『記録米・イラン危機』(1980年、連合出版)、『暮らしのなかのエネルギー危機』(1981年、新日本新書)、『転換期の日本経済』(1983年、新日本出版社)、『どうみる世界と日本の経済』(1986年、新日本出版社)、『おしよせる大失業』(1987年、新日本出版社)、『変貌する財界:日本経団連の分析』(2007年、新日本出版社)、『財界支配:日本経団連の実相』(2016年、新日本出版社)、『日本の支配者』(2019年、新日本出版社

*7:2000年にKDD、DDI(第二電電:京セラ系)、IDO日本移動通信トヨタ系)が合併して誕生