今日のMSN産経ニュース(10/5分)(追記・訂正あり)

【書評】『日本、買います 消えていく日本の国土』平野秀樹
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121006/bks12100607550001-n1.htm
本来、きちんと調べて書くべきですが今回、いつも以上にかなりアバウトに書いてますので要注意(いつも結構アバウトですが)。
なお、この平野さん、以前も『奪われる日本の森外資が水資源を狙っている―』(新潮文庫)と言う本を書いてる筋金入りのトンデモさんのようです。最後に『奪われる日本の森』への批判書評エントリを紹介しましょう。平野さんは元お役人のようですが大丈夫なんでしょうか、この人。

大阪の92%、東京の79%は、地籍がない

地籍ってのは土地の細かい図面みたいなもんだったと思います。役所が調査して作るわけですが、手間もかかるし人手も足りないのでかなりの土地が地籍を作らずほったらかしになってるって事です。それは大阪と東京だけじゃないでしょう。もちろんいいことではない。
ただしこんなに地籍がないってことはおそらくそれほど大きなトラブルは起こってないって事です。トラブル続出だったら嫌でも作るでしょうから。土地の境界争いとかトラブルが起きない限り、「地籍がなくていいわけではない」がなくても実害が発生することはまずないってことです。産経が騒ぐほどの問題じゃあたぶんない。物事には優先順位ってものがありますから。優先度が低ければ後回しも仕方がないでしょう。そしてこれ外国の土地購入云々と全く関係ない。土地境界の争いとか土地問題のトラブルなんてお互いが日本人でも起こりますから。
 また地籍調査を推進したいのならそれだけの予算と人手が必要だと思いますがその当たりどう考えてるんですかね。
 なお、地籍がないことは後々トラブルの原因になりかねませんので、「結果的には外国人の買収阻止」になる可能性があります。まあ、手を出さないでおくのは外国人だけではないでしょうが。

北海道には所有者不明の山林が4万ヘクタールもある

そのうち国庫に入るんじゃないですか?。持ち主不明を国もいつまでもほったらかしにはしないでしょう。つうか何でそんなことになるんですかね?。いずれにせよ今のところ何のトラブルもないんでしょう?。
良くないことは是正すべきですがたいしたトラブルが発生してないのならバカみたいに騒ぐ事じゃない。優先順位ってものがありますから。優先度が低ければ後回しも仕方がないでしょう。そしてこれまた外国人関係ない。

外資による土地買収の横行

何か問題があるんですか?

簡単に言えば、「日本人は済州島を買えないが、外国人は対馬をはじめ全土を無制限に買える」というわけです。

で一体、それに何の問題があってどんな規制をすべきと考えてるんですか?(大体さすがに全土は買わないでしょうよ)
で、最後に『奪われる日本の森』への批判書評エントリを紹介。

http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2010/03/post-feb0.html
書評「奪われる日本の森」その1
 新潮社より発行された「奪われる日本の森」(平野秀樹安田喜憲・著)。
 昨年より繰り返される「日本の水源を中国人が買っている」という風説の集大成?らしいので購入して読んでみた。
 サブタイトルが「外資が水資源を狙っている」であり、帯文は「このままでは日本の国土全体が、中国人や欧米人のものになってしまうかもしれないー」「今まさに私たちの喉元に及んでいる危機」である。
 ようするに外国人がどんどん日本の土地、とくに水源地域の山を買っていて、それは国家の危機であるとして、そのための対策を提言している。
 余談ながら、この本を書店で探したところ、森林分野の棚にはなく、社会問題の棚にあった。これは、なかなか本の性格を言い当てているように感じた。とはいえ、日本の森林問題であるのは間違いなく、林業も重要な関わりがあるのはいうまでもない。
 一日であっさり読了。そして頭に浮かんだ言葉は、「風が吹けば、桶屋が儲かる」だった(笑)。
 ここに提言されている内容は、少し深慮して感想を記したいが、その前に指摘したいのだが、この本は、少なくてもルポルタージュとしては失格。まったく話にならない。
 そもそもの命題が論理的ではないのだ。
 外国人が日本の森林地帯を買っているという証拠はどこにも示されていないからだ。
 そこに記されるのは、まず噂話である。外国人らしき人が、山を買いたいと訪ねてきたとか、中国名の男性が現地を見に来たとか。
 一方で、外資が中小企業やゴルフ場を買収した話、対馬の土地を韓国資本が買っている、羽田空港のターミナルビルの株式をオーストラリアの投資銀行が買った*1……などいった事例を散りばめている。
 そして日本の大山主が手放した山林を、林業に門外漢の企業が購入した話を並べる。あるいは中国が日本の木材をほしがっている事例も登場する。
 ところが、肝心の噂に上がった山には、売れるような木材資源がない。ではなぜ?
 そこで、いきなり話は、水だ! と飛ぶのである(笑)。木材狙いでなければ、水しかないのだと決めつける。どんな論理的結びつきを頭に描いているのだろう。一応、CO2の排出権や生物多様性、そしてバイオマスエネルギーも可能性としては出しながら、その点については十分に検証せず、あっさりと済ます。
 ウォータービジネスについても紹介されているが、それは上下水道の運営に関する事業だ。他国の水を汲み上げて、それを輸出入する事例がない。
 では、日本の水源林を仮に購入したとして、本当にビジネスになるのだろうか。
 さすがに河川の取水は、水利権があるから難しいという認識があるからとくに触れていない。そこで地下水を汲み上げるのだろう、と推測する。
 とはいえ水源地域だからといって、簡単に地下水が汲めるとは限らない。本気なら購入前に地質調査をしなければ無謀な投資になる。が、その気配は感じられない。
 さらに、極めて単純なことに気づいていないらしい。単に地下水を汲み上げるのなら、井戸の面積だけあればよいということを。極端に言えば10メートル四方でも足りる。ボトリング工場を併設するにしても、1〜3ヘクタールもあればよいだろう。何百ヘクタールもの水源林を買う意味はないのである。山の中に1ヘクタールでも平地を作るのは大変だろうけど。
 そもそも水源地で地下水を汲むのは、あまり意味がない。地下水が欲しければ、もっと下流の平野部の方が向いている。
 そして、汲み上げた地下水は、どうするのか。まさか中国まで運んで水道水にはしないだろうからミネラルウォーターだろうけど、その想定需要は何万トンか。
 そして日本の地下水の埋蔵量?はいかほどか。(この当たりはあがたしさんの解説が欲しいところですね。)降水量の多い日本は、慢性的に地下水脈が満水に近いように感じるが、どれほど汲み上げ可能なのだろう。
 そしてコストは。ちゃんとペイすると見込めるのか。いくら富裕層が多いと言っても、高すぎては売れまい。日本の山から港に運ぶのも大変だ。すごい流通コストがかかりそう。
 本当にミネラルウォーターとして汲み上げる量で、地域の水資源が枯渇する可能性があるのか、なんら検証……どころか推測さえしていない。これでは説得力はないよ。
 そういえば日本もフランスのエビアン水を輸入しているが、現地の水源は大丈夫なのだろうか。
 多くの情報は詰め込んであるが、なんら有機的につながっていない。にもかかわらず、3段飛びのように噂話から国際資本の戦略的日本の国土買収への想像力を広げ、ひたすら危機を煽っている。
 それは「風が吹くと、砂が舞う。砂が舞うと、目に入って目が見えなくなる人が増える。盲人が増えると三味線引きが増えて、三味線用の猫が捕られる、猫が減るとネズミが増えて、ネズミは桶をかじるから、桶屋は儲かる」みたいな話なのである。
 この手のルポを書く場合、まず外国人が土地を各地で買っていることを証明する必要がある。次にその意図を納得できるほど理論的に推測しなければならない。その上で、それが日本にとってどんな意味を持つか、危険なのか経済活性化につながるのかまで考えて、問題点を指摘してほしい。
 それから、各所で数字も含めて間違いが多い。ちゃんと取材していないとわかってしまう(笑)。企業名まで間違えたら失礼でしょう。そこの保有森林面積も違うし、ゴルフ場の面積も違うなあ。この点でも、失格。
 思想的に「外国人が日本の土地を買うのは危険」と考えているのは勝手だが、それなら突っ込まれないようなデータを集めるべきだろう。そしてつながりを描かないといけない。その上で理論を構築する必要がある。それに失敗したのに、強引に各事例を並べて、読者に怖い印象だけを与えようとした跡がありあり。このままだとトンデモ本になってしまう。
 でも、この手の情報に敏感に反応する人は、意外と多い。極めて理論的と思えた人が、あっさり「外国人が日本の国土を買う!」と聞くと危機感を持つらしい。でも、まず事実を積み上げようよ。
 私も研究者ではないから、ルポを行った場合、どうしてもつかめなかった部分を推測で埋める場合はある。だが、そのためには条件証拠を集めるし、これは推測であることを明記する。少なくても推測の上に推測を重ねることはしない。

ただし
書評「奪われる日本の森」その2
http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2010/03/post-cbf9.html
によれば外資規制云々と言う話は怪しすぎるが、そのための対策として出してる案はそれなりに検討に値するようだが(ただし外資規制に役立つからと言うよりは、林業推進に役立つなどと言った別のことに役立つのだそうで話がねじれてるようだが)。

*1:株式購入なんて森林どころか土地にも関係ないじゃん